英雄たちはもう一度。

鼓月幸斗

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ドワーフ達の牢獄

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「ミネル・ガーネット……」

『はい!あ、これでも私昔はちょっと名前が残る程度には有名なんですけど……御存じなかったですか……?』

 そんな事は無いだろう、既に二人の英雄を知っているというのに一人だけ知らないなど。

「いや、知ってるよ。でもまさかこんな地下にいるなんて思わなかったけど」

『それは……閉じ込められてるんです……』

「閉じ込められてる?」

 エクトは首を傾げた、カナカやヴァルトと同じ霊だとしたら、天井をもすり抜けて地上へ出るなど簡単なはずだが

『この牢獄には結界が張られているんです、私が通ろうとしても弾かれて抜け出す事が出来なくて……』

「それじゃあどうやってここから抜け出せば……」

『それは大丈夫です!ここの牢獄の設計は理解しているので抜け道も把握してます!』

 そう言ってミネルは壁の一部分を指差した。よく見れば壁に僅かに切れ目が入っている。

『ここの壁、剥がせるんです。ここを剥がせば……』

 エクトは素直に従い、切れ目に指をかけ壁を剥がすとしゃがめば人一人はギリギリ通れそうな穴が空いていた。

『通気口になっているんです、ここから脱出しましょう!』

「あ、その前に仲間がいるんだ。そっちも助け出したいんだけど」

『はい!』

 ・
 ・
 ・

「ったく……どうしたもんかねぇ」

 桑名は牢獄の中をうろついていた、特に理由がある訳では無いが、何かこの状況を打破する何かが無いかと思いながら。

「この格子……これくらいなら拙僧でも切れるだろうが……二人の護衛を受けた以上騒ぎを起こしたら不味いだろうな……ううむ」

 その時、足音が聞こえた。

「!」

 桑名は耳を澄ます、二人の足音は覚えている。既に脱出しているなら……

「(いや、二人の足音じゃねぇ……というより)?」

 足音が近づき、自分の前を通った時その姿がわかった。

「―――――正常、正常」

「マジか……絡繰りの警備?何でもありだなこの街」

 人の形を真似たであろう形状をした機械の警備が青い眼を文字通り光らせながら周囲を巡回していた。

 そして足音が通り過ぎ行った時、自分の上……天井で音がするのが聞こえた。

「何だ?天井に部屋でもあるの―――――」

 ガコン!と大きな音を立てて天井が取り外されるとそこから一人の男が覗いていた。

「あんた!こっちだ!」

「 ド……ドワーフ!?」

 ・
 ・
 ・

「しかし嬢ちゃんも災難だったな、こんな時に来ちまったばっかりによう……」

「大丈夫」

 オリリアは穴に落ちている途中、壁に空いていた穴を見つけワイヤーを使い逃げ込んだため一人だけ牢獄に囚われる事は無かった。

 そして進んでいる時、偶然工具を持ったドワーフを発見、そして共にとある場所へ向かっている最中だった。

「そういや名乗ってなかったな、俺っちはジスト!この地下牢獄のレジスタンスだ」

「レジスタンス?」

「ああ、今この街のドワーフは全員この地下に閉じ込められて強制的に服を作らされてるんだ。服を作る事自体はまあ悪くは無い……悪くは無いががもう数か月もここに閉じ込められてる。それに服ばっか作るのはもう飽きた!」

「飽きたんだ」

「嬢ちゃんだってずっと同じ飯ばっか食ってたら飽きちまうだろ?」

「うん」

「俺っち達も同じさ、ドワーフは何でも作る、武器でも細工でも建物でも。服だって作るのはやぶさかじゃない……が!同じもんばっか作ってられるかってんだ!……まあたまにずっと同じもん作る変わり者はいるけどな」

 そうこうしているうちに二人は開けた場所が見える。

 そこは工場だった、機械に囲まれた広い場所で何人もの職人ドワーフが何度も服を作らされている。よく見れば彼らの周りを警備らしき機械が棒を手に巡回していた。

「……ひどい」

「まるで奴隷だろ?今時奴隷なんて流行るもんじゃねぇ……それにほとんど休まず作らされてるんだ。見な、あいつなんかもう三日連続で作ってる」

 一人のドワーフをジストが指した瞬間、疲労によってか支える事も出来ずに後ろに倒れてしまった。

「――――怠けを検知、怠けを検知」

「ひっ……ま、待て……動ける、動けるからやめてく――――ああああっ!!!」

 突然、眼の色が赤く光った警備が手に持っている棒を構えると電流が流れだし、それを容赦なく倒れたドワーフに叩きつけた。

 電流のショックとドワーフの身でさえ怪我は免れない衝撃に悲鳴が上がる。

「っ!」

「待て待て待て待て!!気持ちはわかるが耐えてくれ!」

 躊躇いなく飛び出しかけたオリリアを体を張って止めるジスト、オリリアは魔力が漏れる程の怒りが生まれていたがジストに止められ一先ず魔力を抑える事になった。

「ふぅ……その気持ちはありがたいが今は駄目だ、俺っち達は今準備をしている……それまでは全員で耐えるしかないんだ。着いてきてくれ」

 ・
 ・
 ・

『それではエクトさんはカナカさんとヴァルトさんとも一緒にいるのですか!?』

「そう、それと二人の仲間と……ね」

 通気口を匍匐で進みながら話すエクトは、頭だけを出して前を先行しているミネルについていた。

『ああ……懐かしい名前です、あの時の旅は今でも覚えています。大変でしたけど四人での旅は楽しくて……こんな私でも役に立てるんだなって実感できて……うぅ、それだけに何もできない今が辛いです……』

「……と、所でこれは何処に続いてるの?」

『あ、結界を発している装置の所ですね。あの結界は私だけでなくここに捕まっているドワーフ達も出られなくしているんです、それを破壊できれば彼らも反撃の糸口が掴めます』

「まさか……ドワーフがこの地下に集められて、しかも服の為だけに囚われてるなんてね……」

『……今ここを管理しているのはサリア・ガーネット、私の子孫なんです……あの子は貴方様と同じように私が見えていて、こんな事をするような子では無かったんです……』

「何かあったと……?」

『ある日、サリアが衣服の制作をしていた時……どこからともなく黒い靄があの子に憑りついたんです。そうしたらあの子は……服への執着が強くなって自分の部下たちだけでなく町中のドワーフを捕えて自分のデザインした服を作らせ始めたんです……私は止めようとしましたがこの体では何もできず、いつの間にか作られた結界に一緒に閉じ込められてしまって……』

「黒い靄……!」

 エクトは森の王を思い出す、あの時オリリアによって浄化された黒い靄、それがサリアとやらにも憑りついているのか。

「それなら早くなんとかしないと……!装置の所までどれくらい?」

『もうすぐです!』

 ・
 ・
 ・

「――――セイッ!」

 斬。斬られた警備はその体から火花を散らし、その機能を停止させた。

「た、助かったわ。あんた強いんやな」

「拙僧これでも地元では名の知れた侍よ、たかが鉄屑なんてことない……が、見つかっちまったな」

 桑名は牢獄から脱出させてくれた……クォーツと名乗ったドワーフはレジスタンスという一団のリーダーのようでこの牢獄を脱し、元凶であるサリア・ガーネットを倒すという。

「大丈夫や!こいつらは強力やが各警備兵に連絡機能は無い。うちらドワーフを止めるなぞこれくらいで十分思っとったんやろうな」

「じゃあ大丈夫なんだな?」

「ああ、ただ何度も出くわす度に喧嘩売るのも効率が悪い。基本は隠れながら行くとしようや」

「所で今は何処に向かってるんだ?」

「ここの警備兵達は端末や、いわば子分。こいつらを一網打尽するには親玉を倒すのが一番っちゅう訳や!」

「成程な、そこで拙僧の出番って訳か」

「せや、警備兵を倒せたら強制労働させられてる仲間も助けられるし、あの悪ガキに一泡吹かせられるしで一石二鳥!故に失敗する訳にはいかん!」

 クォーツと桑名は通路を進む、時々現れる警備兵は隠れ、時には切り伏せながら進んでいく。

 そして彼らは廊下から一際大きな部屋に出る。

 巨大な倉庫と思しきそこは幾つもの警備兵が並んでおり、奥には十メートルはありそうな程大きな球体が浮かんでいた。

「あの大きな球がこの警備兵達のコアや、あそこの警備兵はまだ起動してないが親玉を壊したら一斉に目覚める筈、せやから一発であの球を破壊する!」

「あいつをぶっ壊せばいいんだな?拙僧それくらいなら朝飯前よ!」

 足場から飛び降りた桑名は巨大な球体に近づくとある事に気が付く。

「ん……?なんか薄い膜っぽいのが張られてないか?」

「ま、待つんやクワナ!」

 クォーツが止めるが一歩遅かった。桑名が踏み出した足の先には赤い線の光が伸びており、そこを踏んだ瞬間。

「―――――警報、警報、侵入者を検知。

「!しまっ」

 それまで眠っていた警備兵が一斉に起動し、数十の警備兵がその手に持った

 ・
 ・
 ・

「う……うるさい」

 警報の音を聞いたオリリアは思わず耳を塞ぐ、そして同時にジストも冷や汗をかいていた。

「リーダーがしくじったか!?嬢ちゃん、俺っち達も急ぐぞ!」

「うん……」

 走り出したジストに、オリリアは耳を塞いだままついていく。

「いいか、俺っち達は隠れたレジスタンスのメンバーで奴らに対抗する兵器を作ってる!外殻は完成したが問題は中身!こんな場所じゃ満足に動かせる燃料が無かったが……嬢ちゃんならそれを補える!」

 そして壁から飛び降りたジストに続きオリリアが降りると、乱暴にくりぬかれた空間に出た。

 何もない空間から無理矢理穴を掘り生み出した秘密のアジトは、数人のドワーフによって一つの兵器が作られていた。

 警備兵を改造したのか似たような形をしているが、何倍も大きな体をしている。蒸気機関が積まれているのか随分とごちゃついていた。

「ジスト!戻って来たか!」

「警報が鳴っている!恐らくリーダーがバレた!」

「わかってる、お前ら挨拶しろ!この譲ちゃんは俺達の秘密兵器を動かしてくれる切り札だ!」

 ジストの言葉にドワーフ達はおおっと沸き立ち、わらわらとオリリアの周りを囲っていた。

「わわ、何?」

「嬢ちゃんエルフか!成程これならいける!」

「嬢ちゃんが俺達の兵器を動かす切り札か!ジストもやるじゃねぇか!」

「わ、私は何するの?」

「どけどけお前ら、嬢ちゃんいいか?ここに水を入れるんだが支給用の飲料水だけじゃ絶対的に足りなかった!だが嬢ちゃんの力でこのタンクに水を入れられれば……!」

「俺達はここを脱出できるって訳だ!」

 オリリアはそれを眺めた、大きく、そして力強い雰囲気を感じさせるそれは静かに眠っている。

「名前、あるの?」

「おう!こいつは俺達を解放する切り札……リベリオンだ!」

「それ俺は反対だって言ったじゃねぇか!こいつはフリーダムだ!」

「バッカこいつはジョーカーだよ!センスがねぇなお前ら!」

「何だとこの野郎!?上等だ表出ろや!!」

「……もうやっていい?」
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