4 / 11
出会い 2
しおりを挟む「ん、ぅ、んん…?」
柔らかい。最初に感じたのはそんな感覚だった。ゆっくり目を開ける。
「目が覚めましたか。具合はいかがです」
大きな瞳がヘルトの顔を覗き込むようにして見つめていた。
「ッうわぁぁ!?」
どうやら少女は膝枕をしてくれていたようだ。目を開くと同時現れた少女の顔に驚き、勢いよく起き上がる。その際にお互いの額が鈍い音を立ててぶつかった。
「いってぇ!?」
「、」
鋼鉄か何かで出来ているのか、とでも言いたくなるほど少女の頭は硬かった。
思わず無言で悶絶するヘルトに対して、少女は驚いたように目を瞬かせ、額を一度さするだけだった。
「…お怪我は?」
「だ、いじょうぶ…き、君こそ大丈夫…?っていうか、それよりここは…?」
「あの屋敷の外の森の中です。一応、辺りに危険は無いか確認してあります」
なんとか痛みの引いてきたヘルトは涙目で少女に向き直った。
「その、助けてくれてありがとう」
「いえ。私も貴方の魔力を貰って強化出来たので、大事なくすみました。感謝します」
そう言った少女は、眉尻を下げ少し心配そうな表情になる。
「それより、私は貴方の額の方が心配ですが。本当に大丈夫ですか?」
「いや、…見た目によらず、丈夫な骨をしてるんだな…」
「あぁ、特注の氷雪ガラスだと先生は言っていたので、大抵の物よりは頑丈にできていますから」
「氷雪ガラスって…あぁ、帽子に練り込みでもしてるのか?」
少女の頭の上に乗った軍帽を見て言った。
「…、文脈的に、骨組みの話ですよね?」
ぱちぱちと目を瞬かせて首を傾げた少女に違和感を感じる。
「骨組みって…」
「あ、そうか。前提条件が噛みっていないのか……自己紹介が遅くなりました」
佇まいを正し、少女は胸元に手を当てる。
これまでの無表情が消え、和やかな、好意的にとも思える笑顔を見せる。
「初めまして、私はシュティル。エストレア国により産み出された戦闘用アンドロイド。種族はロイド種、属性はスノウロイド」
よろしくね、とこれまでとは違う、作られたような柔らかい声色で話す少女、シュティルの言葉にヘルトは目を白黒させた。
「戦闘用アンドロイド!?」
どこからどう見ても可憐と言う言葉が似合うような少女が伝えてきた内容が、あまりにも突拍子もないものだったため自分の耳を疑った。
「エストレア国に敵対するものを殲滅するべく作られたアンドロイド…とは言っても、実戦で使われた事は無いとは思われますが」
普通の少女のような自己紹介の後に、無表情かつ無機質ない声色で言ったシュティルにヘルトは首を傾げた。
「無いと思うって…どういう事だ?一応、自分の事なんだろう?」
「おそらく、私の記録は一部を除いて消えています」
「記憶喪失って事か?」
「記憶…って言うのは語弊がありますが、恐らくは。私が作られた西暦や、製造方法、これまでの経歴…不自然に抜けている記録が多い。それに…」
そこまで言った後、シュティルは静かにヘルトを見つめた。
「それに?」
途中で言葉を詰まらせたシュティルに問いかけるように言うと、シュティルは首を横に振った。
「いいえ、なんでもありません。…あなたは?」
あからさまに話題を変えられた、とは思ったが、そういえば自己紹介すらしていなかった事に気付く。
「あ、そうか…俺、まだ自己紹介もしてなかったのか…俺はヘルト、ヘルト・ゼルプスティ。一応、エストレア国の勇者に選定されてる」
「勇者…?…世界に五人選ばれる存在」
ポツリと繰り返し、不思議そうに首を傾げる。
「……どうして勇者が一人であんな所に?討伐命令でも出ていたのですか?」
「あー、ええと…契約できる強い魔物とかいないかな、と思って…」
「魔物と契約する為?…すみません。もうあの場所に魔物はいないのです」
「えっ!?それは、全部君が…?」
「一階にいた大きいドラゴンだけ取り逃してしまいましたが、あの部屋にいた魔物はすべてもう処理が済んでいます」
そこまで言うと、ヘルトはうなだれた。
「そうだよなぁ…いや、もし残っていたとしても俺には制御できなかっただろうし…いや、でも…」
頭を抱えるヘルトに気の毒そうな顔をしたシュティルがその背に手を当てた。
「どうしてあの場所で魔物と契約なんてしようとしたのですか?」
「それは、その…」
勇者として未熟すぎて、自分の相棒になってくれる人がいないから、なんて情けない事を言って笑われないだろうか。学園で散々馬鹿にされてきたという事実があるため、尚更他人に対して臆病になっていた。
目を伏せた後、シュティルを伺うように見つめた。彼女の瞳には負の色はなかった。
「……俺は、ハイルラントという学園に生徒として通っているんだけど…そこでは生徒は自分の相棒となる客生を見つけて入学させる義務がある。でも、俺はまだその相手を見つけられていないんだ」
「…それと魔物とどう関係が?客生と言うくらいだし、人じゃ無いといけないんでしょう?魔物を客呼ばわりするとは思えません」
「いや、生徒が選んだ相手なら何でも良いんだよ。動物でも、魔物でも…基本的には人だけど、生徒が制御出来るものなら許されるんだ」
「それなら、あなたはどうして人を選ばないのですか?基本的には人を選ぶのでしょう?」
不思議そうに聞くシュティルに、目が泳いだ。
誤魔化してしまおうか…。
そう考えたが、無機質なアンドロイドの瞳にそんな気も失せてしまう。
取り繕ったところで、どうとなる物でもない。
「その、恥ずかしいけど…俺は出来損ないの勇者だって言われてるんだ。俺を除いた今代の勇者は粒揃いだと噂されてる。魔法も氷魔法しか使えないし、その氷魔法の中でも氷雪ガラス作りとか、目くらましの吹雪しかまともに扱えない…だから、皆は恥さらしの勇者の相棒にはなりたがらないんだ」
目を伏せて、さらに続ける。
「それに、本当なら6年間の学生生活のうち、相棒は1年生の間に決めないといけないんだけど、俺はもう3年生だから、先生達も、もうかばい切れないらしくて…国から相棒候補を打診されそうなんだ。でも、俺は……」
そこまで言うと、黙り込んで真剣に何か考えているシュティルの姿を見て、慌てた。もしかして、気を使わせてしまったかもしれない。アンドロイドにそんな感情があるのかは分からないけれど。
「ああ、でも大丈夫だ。もし見つからなかったとしても「ヘルト」
ヘルトの言葉を遮るように言ったシュティルの表情は、何かを決めたように見えた。
「あなたは、アンドロイドはお嫌いですか?」
************
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる