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オリーブちゃんの話 1
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私たちの元に大金が送られてきたのは、お姉様が王宮にお勤めに出てから少ししてのことだった。
百万ギルスという大金が、王宮に出入りしている身元の確かな配達人によって届けられて、それがお姉様からの仕送りだと知った時、私はローズマリーと手を取り合って喜んだものである。
私のお父様と、あまり記憶にはないのだけれどお母様という人は、親としては駄目な部類に入る人たちだった。
お父様は学者肌の好事家で、お母様はともかくのんびりした人だった。
お姉様もお父様とお母様に似て、どことなくふわふわのんびりした人だったように思うけれど、私たち妹を守るためだろう、率先して働いてくださるしっかり者へと変わっていった。
私たちが伯爵家の実情に絶望して、もう駄目だと言っても、いつも大丈夫だと励ましてくれた。
お姉様は私たちの希望であり、お姉様に頼るしかない私はいつも歯がゆい思いをしていた。
そして、お姉さまはお金を稼ぐため侍女試験を受けて、巷では冷酷だと恐れられている皇帝陛下の侍女になった。
お姉様は喜んでいたけれど、状況を聞けばそれは誰もやりたがらない仕事を押し付けられたようなものだ。
常日頃落ち込んでいるお父様はますます落ち込み、私とローズマリーは手を取り合って、こっそりと泣いた。
不安な日々を過ごす中で、お姉様がお給金の前借りができたと、私たちに送ってきてくださったのが百万ギルスというわけである。
お姉様が必死に働いて稼いでくださったお金だ。
大切に使わなくては。お父様に見せてはいけないとローズマリーと話し合っていた矢先のこと。
いつもの借金取りの方々が現れたのは。
「噂によれば、お前の姉ちゃんは王宮で働き始めたらしいじゃねぇか。せっかく、うちで働かせて稼いでやろうと思ってたのによ」
借金取りの男とも長い付き合いだ。
まるで我が家のように、悪趣味な金飾りをじゃらじゃらつけた男がリビングの古びたソファに座って足を組んで言った。
男はマグノア商会から来ている商会の人間である。
いつも部下の男たちを連れている。
お姉様は私たちには隠していたけれど、マグノア商会とは娼館の運営やら賭博場の運営やらのあくどい仕事で稼いでいる、商会とは名ばかりの破落戸の集まりのような集団だと私は知っている。
お姉様が娼館に売られそうになっていたことも。
私は、オリーブちゃんとお父様、それからティグルちゃんやシスちゃんには隠れて貰って、男たちと対峙していた。
「お嬢ちゃん、可哀想になぁ。父親が屑のせいで、まだ小せぇのに、怖いお兄さんたちの相手をしなきゃいけねぇなんてよ」
「お兄さん? おじさんの間違いじゃないですか?」
「お嬢ちゃんから見るとおじさんか。まぁ、お嬢ちゃんももう少し大きくなれば、そのおじさんの相手を喜んでするようになる」
男は下卑た笑みを浮かべながら言った。
私は背筋を正して、男を真っ直ぐ睨む。
毎月のお金は、お姉様が送ってくださったお給金で準備できている。
きっかり三十万ギルス。金貨が三十枚である。
一万ギルスもあれば数か月は贅沢をしなければ十分暮らせるのだから、大金だ。
私は袋に入れた三十万ギルスを差し出した。
「ぴったり入っています。受け取ったらお帰り下さい」
「甘いなぁ、お嬢ちゃん。貴族連中は、考えの甘い馬鹿ばかりだ。お前たちが支払えねぇっつうから、仕方なく月々三十万ギルスにしてやってるんだよ。お前の父親が借りた金の、月の利息が四十万だな。つまり、三百万ギルスの返済は、少しもできてねぇ。その上、月々十万ずつ負債が増えてるってわけだ」
「そんな……」
それって、かなり悪辣なのではないのかしら。
お金を借りたら、借りたお金が増えるというのは理解できる。けれど、利息分しか月々支払うことができていないというのは、酷い話なのではないかしら。
「お姉様はそれを知っているのですか……?」
「言ってねぇから知らねぇんじゃねぇか? お前の姉ちゃんは顔は悪くねぇが、頭は悪そうだからな」
「お姉様の悪口は許しません」
「許さねぇっていわれても、お嬢ちゃんに何ができるんだか。俺たちは金を受け取りに来た。きっちり金を用意できてるってことは、もっとあるんだろ? 王宮で働いて、給金が三十万ぽっちなんてことはねぇだろうからよ」
男は座ったまま「探せ」と、部下に命じた。
部下たちは立ち上がって、家探しをはじめた。
大丈夫だ。お金は見つからない場所に隠している。オリーブちゃんたちも、隠れて貰っている。
私はどきどきしながら、じっと堪えていた。
「どこかなぁ、お嬢ちゃん。どこに隠したのかな、金を、さ。さっさと出せよ。そうすりゃ、乱暴なことはしねぇ」
男たちが家じゅうを探し回る音が聞こえる。
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