理不尽な連座はごめんです!

能登原あめ

文字の大きさ
7 / 11

6 夜会②

しおりを挟む


「な、な、何を言っているんだ、え、エロイーザ! 俺を好きだと言っただろう?」
「ええ、言いました。好きですわ。でも、わたくしはただの子爵家の娘ですから」

「べ、べつに、どこかの公爵家の養女になれば問題ないんだ!」
「その……わたくしの肉親は父だけなのです。一人娘で婿をとるので、このような事態は望んでいなかったのですが」

 ここに来て不穏な展開!
 だけどジュリオ様がステファニアの手を握り、守るように立つ。
 はぁ、と息を吐いたヴィンチェンツォ殿下がこめかみを押さえた。

「カッシオ、真実の愛なのだろう? じっくり、話し合いの時間が必要だね。両陛下が戻ってきたら希望を伝えるといい」

 叶うかどうかはべつだが、とヴィンチェンツォ殿下が漏らしたけれど、聞こえていないみたい。

「2人きりで話し合おう、エロイーザ。俺たちならわかり合える」
「…………」

 エロイーザの手を引いてカッシオ殿下がホールから消え、公爵夫妻が音楽家たちに明るい曲を演奏させる。

「今日は隣国でも名高い音楽団を呼びました。さらに……国外に出ないことで有名な歌姫が、なんと特別に歌ってくださることになりましたの。どうぞお入りになって!」

 本当はもっと盛り上がってから登場するはずだったであろう歌姫が現れると、人々の関心がそちらに向く。
 エロイーザの反応に不安は感じるものの、ジュリオ様もヴィンチェンツォ殿下も、隣に立つクレメンテ様も笑顔でいた。

「ルフィナ、何も心配することはないよ。だからこの後、踊ってくれないか?」
「仕方ないですわね、一曲くらいならいいですわ」


 無事に戻ってきてくれたクレメンテ様。
 穏やかなのにやる時はしっかり決める方。
 澄んだ歌声を聴いていたら、本当に大丈夫なのだと思えてきた。

 顔が緩みそうになって口元をひきしめる。
 歌姫に拍手喝采の後、静かにワルツが流れ始めた。いつもの優雅な公爵家の夜会に戻っている。
 クレメンテ様に手をとられて私はホールに進む。周りも同じように集まり出した。
 
「ルフィナ、きれいだ。戻って早々に夜会となってしまって、心配かけたね」
「心配などしておりません。クレメンテ様は戻ってくるとわかっていましたから。それに、お義母様とステファニアと一緒に屋敷で楽しく待っていたのですわ」

 きっと自宅に戻っていたら、やっぱり何か手伝えるんじゃないかって焦って、馬車でダンジェロ伯爵家の領地に向かっていたかもしれない。
 でも、すぐに伝令から話を聞いて、皆で励まし合って過ごせたから乗り切れた。
 でもそのことはクレメンテ様に秘密。

「あぁ。驚いたが、一番にルフィナに会えて嬉しかった。結婚したら、ああやっていつも出迎えてもらえるのだな」
「……もう、飛びつきませんわ! あれはっ……あれは、特別です」

 クレメンテ様が怪我ひとつなく入ってきて、私を見て嬉しそうに笑うから。
 だから我慢できなかった。
 ヒールを脱いでいた私はただの室内履きで、いつもより大きく見上げなくてはならなくて。
 クレメンテ様は軽々と抱き上げてくださったから、視線が同じになったけれど。

 誰もいなかったら口づけくらいしてしまったかもしれない。
 ダンジェロ伯爵夫妻もいちゃいちゃしていたから、それでもよかったかもしれない。
 でも結婚前だから、思い出すと恥ずかしい。

「レディですもの、しませんわ。そんなこと……」
「それは残念だな」
「…………1年に1度くらいなら、しないこともありませんわ」
「そうか。それでもいい」

 私だってやりたくないわけではないの。
 そんなに嬉しそうな顔をされたら、たまになら――。

 その夜、久しぶりにクレメンテ様に触れることができて胸がいっぱいになった。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

[完結」(R18)最強の聖女様は全てを手に入れる

青空一夏
恋愛
私はトリスタン王国の王女ナオミ。18歳なのに50過ぎの隣国の老王の嫁がされる。最悪なんだけど、両国の安寧のため仕方がないと諦めた。我慢するわ、でも‥‥これって最高に幸せなのだけど!!その秘密は?ラブコメディー

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

「離婚しよう」と軽く言われ了承した。わたくしはいいけど、アナタ、どうなると思っていたの?

あとさん♪
恋愛
突然、王都からお戻りになったダンナ様が、午後のお茶を楽しんでいたわたくしの目の前に座って、こう申しましたのよ、『離婚しよう』と。 閣下。こういう理由でわたくしの結婚生活は終わりましたの。 そう、ぶちまけた。 もしかしたら別れた男のあれこれを話すなんて、サイテーな女の所業かもしれない。 でも、もう良妻になる気は無い。どうでもいいとばかりに投げやりになっていた。 そんなヤサぐれモードだったわたくしの話をじっと聞いて下さった侯爵閣下。 わたくし、あなたの後添いになってもいいのでしょうか? ※前・中・後編。番外編は緩やかなR18(4話)。(本編より長い番外編って……orz) ※なんちゃって異世界。 ※「恋愛」と「ざまぁ」の相性が、実は悪いという話をきいて挑戦してみた。ざまぁは後編に。 ※この話は小説家になろうにも掲載しております。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

処理中です...