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その後
16 思いがけない出来事①
しおりを挟む* フィーの家族のその後、全二話です。Rなしです。
******
生まれ故郷に手紙を出して一月ほど経った頃、ネッドさんの妻になった私は、久しぶりに早起きをした。
ネッドさんと結ばれてから、三日後に教会で共に歩むと誓い合って夫婦になった。
その後もいつも以上に食材を買い込んで、ネッドさんが大鍋に具沢山のスープを作ってくれて、しばらくはのんびりした朝を過ごしてきた。
ネッドさんは甲斐甲斐しく世話をしてくれたし、番の結婚はこういうものだって、その後やってきて、祝ってくれたコレット一家に言われた。
「パパもママも、いつもくっついてるよ? フィー、おじさん、すっごくがまんしてるとおもうー!」
ちらりとネッドさんを見たら、一度だけ頷いた。
そっか。みんなの前で恥ずかしいけど、その辺りは人間の感覚とは違うみたい。
とりあえず、今できること。
ネッドさんの手をぎゅっと握った。すぐに握り返されて、お互いに見つめ合った。
「ママぁ、ぼくも、てーつなぐーー!」
みんなに今のやりとりを見られていたことに気づいて、私は恥ずかしくなる。
「新婚なんだから、邪魔しちゃ悪いな。落ち着いたら、今度はうちに遊びにおいで」
ネッドさんのお兄さんにそう言われて、コレットはちょっぴり残念そうだったけど、また会う約束をしてご機嫌になって帰っていった。
二人にきりなったから、そわそわしているネッドさんに私から抱きついてみる。
「フィー、可愛い! ずっっと、こうしていたい!」
持ち上げられてくるくる回されて、二人とも目が回ってソファに倒れ込んだ。
そんなふうに過ごしていたから、二人だけで大きな朝市は結婚後初めて。
指を絡めて手をつなぎ、おいしそうな匂いのする店に立ち寄り、少しずつ買って歩く。
「フィオ!」
いきなり懐かしい呼び名が聞こえて辺りを見る。
こんな呼び方をするのは一人しかいない。
ネッドさんがぎゅっと手を握って、私を背中に隠した。
どこから現れたのか、叔父が目の前に立っていて。
「フィオ、久しぶりだな」
「トニー叔父さん……! ひさしぶりですね。あの……彼は私の、番のネッドさん。ネッドさん、こちら、私の、父方の叔父です」
警戒した顔で叔父のことを見ているから、そう言った。
ネッドさんなら、その紹介で気づくと思ったから。
こんなところで見知った顔に会うなんて、嬉しいような、懐かしいような……でも家族を思い出して複雑な気持ちでいるのがネッドさんに伝わったのかも。
「……はじめまして」
「やぁ。姪の番? アイツが言っていたことは、本当だったのか。嘘くさいと思って、迎えに来たんだ」
アイツ、は母のことなのかな。
叔父の言葉に目をぱちくりさせる。
その言葉にネッドさんは私を抱き寄せた。
「番なのは本当です。が、俺達が出会ったのは、彼女が独りにされてからです」
その言葉に叔父が、短く笑った。
「アイツならやりそうだな。……姪と二人で話したい」
「駄目です」
ネッドさんが即答して。
男同士、無言でにらみ合う。
「あの……っ、叔父さん、朝食食べました?」
二人が同時に私を見つめて居心地が悪い。
ちょっと間抜けだったかな。
なんて言ったらよかったんだろう。
けれど二人ともほんの少し顔を緩ませて、三人で朝食をとることになった。
前回はコレットがいたけれど、その代わりに、叔父……というか実の父なのかな。
向かいに座った叔父と私は、髪の色も目の色も、顔の作りまで見た目は似ていると思う。
母の言った通りなのかもしれない。
けど、叔父がそのことを知っているかわからない。
それに、性格は多分父に似ていて、叔父とは全く似ていないと思う。
「まずは美味いもん食っちまおうぜ」
叔父がたっぷりの野菜と蒸した肉を挟んだ、平たく焼いたパンにかぶりついた。
この国に来たら毎回食べると言って私とネッドさんにも買ってくれて、私達が買ったものも並べたけれど、叔父はそれだけで十分と言う。
さっぱりしたソースがかかっているけど、確かにボリュームがあるから、ひとつ食べたらかなりお腹にたまりそう。
私はネッドさんに手伝ってもらいながら、色々とつまんだ。
さすがに目の前に叔父がいるから、膝に乗せられることはないけど、当たり前のように食べさせるから恥ずかしい。
でも、食べないとネッドさんががっかりするから、困る。
叔父はにやにやしていたけど、番だから仕方ないよな、ってつぶやいていて、食事が終わってから話し出した。
「ここに来て三日、運良く会えてよかったぜ。幸せそうでなによりだ。……まずさ、兄貴家族が旅行から戻った後、フィオがいないって双子がババァに泣きついてさ」
ババァって俺の母親な、ってネッドさんのほうを見る。
「朝市で番と出会って運命の恋に落ちたから、帰らない、って。……アイツはそう説明したらしいけど、フィオの性格からして別れの挨拶くらいするだろ? アイツ、出港後にその話をしたらしいから、一旦家に着いてから兄貴が探しに行くって飛び出す勢いだったよ。けど、双子もいるし、すぐに手紙が届いたから俺が迎えに来た」
「お父さんが……」
仕事人間で、私のことなんてどうでもいと思っていたけど。ちょっと嬉しい。
「俺は美味い酒があれば、どこへでも行くからな」
叔父は縛られるのが嫌なんだと、笑った。
「今は兄貴と双子とババァで暮らしているぜ。そんなとこにいたくねぇから俺は一旦戻ったらしばらく帰らねぇ……けど、そのうち顔を出したら喜ぶんじゃねぇの?」
母はどうしたのだろう?
今だって、会いたいとは思えない。
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