異世界でパクリと食べられちゃう小話集

能登原あめ

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政略結婚は家と家との契約なので、後出しはやめてね♡(R15)

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* 現代の倫理はそ~っと置いてください。R15のコメディ寄りの話。前世の記憶持ちヒロインはやや口が悪いです。


 
 




******

 
「三年以内に二人の子だと言って養子をとる。その時になったら出て行ってくれ」

 あー、はいはい。
 初夜のベッドに入る前にそういうこと言うわけね。
 わかるわかる。読んだ、読んだ。
 お前を愛することはない、の亜種かな?

 数度顔を合わせたジョン・ジェームス・ディーキン伯爵とは親同士の取り決めで結婚した。
 私は今こっぱずかしいぴらぴらのうっすいナイトドレスを着ているんだけど、なんで昼間に言ってくれなかったかなぁ?

「子は、遠縁の夫妻に頼むつもりだ」
 
 私には前世の記憶がある。
 ゲームだの小説だのの異世界に転生する話は大好きで読んできた。
 これもそれ系なのかもしれない。

「女児でもかまわないと思っている。いや、女児のほうが有能な婿を選べていいだろう……いや、どちらでもいい」
 
 社交界で人気の5つ年上のディーキン伯爵は最初からこの結婚に乗り気ではなかった。
 顔はいい。
 顔だけはいいんだけど、美しくないものには優しくないし、女癖が悪かった。
 
 特定の女性はいないけど毎晩誰かの寝室を訪れているらしい。入れ込んでることもなく貢いでいる様子もないと私専属の侍女調べでわかっている。
 
 多分一生なおらないよね。
 領地運営はまずまず成功していて、裕福な暮らしはできそうではある。
 
 結婚に割り切りは必要だ。
 前世は恋愛結婚で失敗したから、親が厳選して総合的に判断した相手というのも悪くないと思ったんだけど、会うたびにディーキン伯爵の悪いところが目についてしまった。

 そんなに鏡ばっかり見なくていいのよー。
 私の顔を見てしかめるとか失礼なのよー。
 前世基準だと普通に可愛いと思うけど、この世界レベルだと地味、だと思う。

『はぁ……もう少しなんとかならないのか』

 精一杯おしゃれしたのに、本当に失礼。
 そのうち慣れるわよー。

 多分、女心がわからないけど美人たちにチヤホヤされて改善されないまま過ごしてきた男なのかも。でもきっと女に詳しいと思い込んでる気がする。
 
「それなら養子を迎えたら暮らしに困らない支援金を用意するという契約書を書いてほしいです。離縁後の女が一人で生きていくのは大変なので」

 この際、持参金に上乗せして返してくれてもいいんだけど。
 若いご令嬢の付き添いのお仕事でもしようかな~。
 ダメ男を見極める自信ならあるし!

「は? 王都のタウンハウスではなく領地に住めばいいだろう。それなら金は都度必要分用意できるし、顔を合わせることもなく体面が保てる」

 えー?
 一生ディーキン伯爵夫人(名前だけ)として生きていけって?
 初夜にそんなこと言い出さなきゃそうするつもりだったけど、私の前世の経験がこの結婚はダメだと言っている。
 
 だってずっと田舎に引っ込んでろってことでしょ?
 友人とも会えなくなるし、知り合いのいない閉鎖的な領地で一生終えろと?
 しかも自分の子じゃなくて養子を育てるの?
 そんなの病むわー。無理無理。
 
 これが恋愛小説の中ってことなら今からヒロインが現れて略奪愛もあるのかな。
 クズ男改心もの……ぜひヒロインに引き受けていただきたい。私には調教、じゃなくて教育する気力も体力も知力もない。

 もしかして、ここはドロシーのための世界かも。
 
 もうすぐ社交界にデビューする異母妹ドロシー。
 両親に溺愛され、何をしても叱られない彼女はディーキン伯爵をキラキラした目でうっとり見つめていた。
 代わりたかったよ、彼女が16歳で未成年じゃなければ。
 
 つまり、私が当て馬?
 それともよくあるすぐ死んじゃう脇役なの?
 ツヤッツヤでピンピンしてるけどね、私。まだ18歳だし。
 子どもを産んで、とか病死のセンはないかな。ないはず!
 
 嵐の中馬車を飛ばしたり、山道走る予定もないし。
 雨が降ったら川なんか渡らず屋敷にこもっていればいいんでしょー。
 大丈夫、大丈夫。
 
 ヒロイン視点だと半分血のつながった姉が元妻だったら、体の関係はないほうがいい。
 私ならいやだ。

 つまり!
 この結婚は白い結婚だ。
 絶対!
 むしろ、この男としなくてラッキーかも!
 
 私は別に伯爵夫人というステータスがなくても生きていける。
 前世ではガツガツ働いて自分のためのマンション購入資金を貯めた。
 
 買う前に倒れたみたいだけど、今度は手当もらってコンドミニアム買えばいいじゃない!
 一人だって寂しくないのよー、なんでこの気楽さが通じないの⁉︎

「では伯爵様、自室に戻らせていただきますね」
 
 くるりと背を向けると、慌てた様子の伯爵が声をかけてきた。

「待て、屋敷の者に怪しまれると困る。一度限りの契りだ。さぁ、ベッドに行こう」
「きっ……」

 きっっしょ‼︎
 今の流れでどうしてそういう話になるの?

 ディーキン伯爵が私に手を伸ばしてきたから、急いで扉に向かった。
 鳥肌を両手で撫でていると、

「怖がらなくていい。子をなさない方法は知っている。マーガレット、このまま妻として過ごしたらいい」

 ああん?
 離縁は認めないってこと?
 
「……伯爵様の3年後のお話がショックで……今夜は……」
「ああ、こちらの配慮が足りなかったな。夜が明けてから伝えればよかった」

 そっちのが無理!

「……今夜は一人で考えさせてもらえませんか? 血液ならこちらで用意しますから」
「どうやって?」
「果物ナイフで指先でも傷付ければいいでしょう」

 想像したのか伯爵が眉をひそめた。

「あ……っ、お腹が……緊張しすぎて……いた、痛いです……もしかしたら、ツキノモノが……」

 棒読み、許して~。

「はぁ……もういい。こっちでそれっぽくしておくから、そこじゃなくて続き部屋の扉から戻るように」
「はい、では! 失礼します!」
 





 


「奥様、お疲れでしょう。旦那様が今日はゆっくり休むようにとのことです」
「……そうね。そうさせていただくわ」

 ディーキン伯爵は時々派手に楽しんだ風に寝室を乱して装った。一度のぞいたら大乱闘した後みたいだったけど、この世界の人は激しいのかな。
 
 最初の一年は時々一緒にパーティーに参加してそれなりに円満な夫婦を装って王都暮らし。
 
 寝室の中では婚姻継続して養子を望む伯爵VS白い結婚のまま離縁希望の私で静かに争った。

「わがままで気分屋の子どもは嫌いだから、自分の子どもなんてほしくない。それにすぐ泣くし弱い。うるさいし、面倒くさい」
 
「……私は子どもが大好きです。自分の子供を抱くことができないなんて……ぐずっ、愚図ッ」
「……はぁ、わかったよ。契約書を用意しよう」

 泣き真似もうまくなったし、ようやく勝利をつかんだ!
 すでに親同士は仕事でうまくやってるみたいだし、離縁したところで問題ないとそれとなく確認済み。

 賭けだったけど、伯爵と3年で離縁する契約を結ぶことができたし、離縁同意書ももらえた。さらに持参金分もいつでも使えるようにすぐに私名義にしてくれるって!

 きっと私が使い込んで離縁しない方向に進むのを望んでいるんだろうけど、そんなことありえない。
 大切に管理しなくちゃ。

 白い結婚だと言うことを秘密にすることも盛り込まれたけど問題ない。
 元伯爵夫人というステータスは何かと役立ちそうだし、白い結婚って公表しても誰も得しないと思う。
 
 最後に自由恋愛もOKって伯爵がつけ加えていたのは、後々揉めないようにかな。
 
 そんなやりとりを繰り広げる中で、私は今後のことを考えて人脈を広げた。
 社交界のマダムに取り入り、離縁しても変な噂が流れないよう健気な年下妻を演じたのさ。
 
 一度も夫を非難しなかったし、浮気相手たちの挑発にも乗らなかった。
 会社の社長が浮気したのをよそから見ている気分。会社が潰れるとかじゃなきゃ、おもしろがっても怒るほどでもない。夫との距離感はそれ。

 でもたまに浮気相手からマウントとられてイラッとしたけど、お手当ともいえる毎月の小遣いや突発的にネックレスや指輪が贈られたから相殺。
 
 妻にはきれいに着飾っていてほしいらしいし、話題のティールームとかには乗り遅れないように遠慮せず行けとも言っていた。
 愛妻家と周りに言われて嬉しいらしい。

 妻を大事にしつつ(?)何人もの恋人がいるって、この世界では甲斐性のある男にみえるのかなぁ?
 ふーん、へー、まぁいいけど。

 王都での伯爵夫人としての生活リズムができた頃、

「そろそろ領地で暮らしてほしい。遠縁の夫婦に妊娠の兆候があるらしい」

 すでに子どもが4人いるその夫婦は小さな領地を切り盛りしているらしいけど、万年金欠なんだとか。
 ディーキン伯爵がいくらか援助することで話し合いはついているそう。
 
「わかりました、ではいよいよとなったら領地のはずれにある小さな屋敷に数名で移りたいと思います。それまでに口のかたい使用人を選ばないとですね」
「ああ、極秘で進める。また連絡する」

 ディーキン伯爵が私の手をとり、キスした。
 ぞわ。二人きりの時にやめてー。
 私たちそんな関係じゃないし!
 私の顔には慣れたらしいけどさっ。

「子が生まれたら、王都に戻ってくるといい」
「はい?」

 なんで?
 私としては再出発のためには活動しやすくていいけど。

「マーガレットのいる生活が当たり前となった今、別れる必要性を感じない」
「……そうですか」

 特に何もしてないんだけど?

 そういえば、結婚した当初は時々どこかのマダムの寝室にいそいそ出かけていたけど、最近は家にいることが多いかも。よくこっちをじっと見ていだから、監視してるのかなって思っていた。

「君を妻に迎えてから、周りの評判もいい。できた妻だと褒められる。あと、その顔も美しくないが愛嬌があってよい」

 最後、余計なんだけどー!
 なんでこいつモテるんだ?
 顔か、顔だ!

 健気に夫を待つ控えめな妻を外では演じてたからかな?
 その分、家では気を抜きたかったんだけどね。
 気楽に自分の部屋で夕食食べたいのに、伯爵がいるとガッツリ晩餐用意されて長時間拘束されるんだよ。

 適当に相槌打っていれば良いお酒が飲めたけど、化粧してドレスを着なきゃならないから、面倒だった。
 あれは労働時間と思って過ごしてたんだよなぁ。
 
「待っているから、戻って来る時はあの書類は破り捨てて俺の胸に飛び込んでこいよ」

 キラっと光る白い歯。まぶしい笑顔。
 相変わらずだぁー。
 顔だけはいい。しかし顔だけじゃやっていけない!

「向こうでゆっくり考えさせてください」
「ああ、そうだな。ゆっくり考えてみてほしい。あまり焦らし過ぎるなよ」
 
 キラーン。
 







 結婚して丸2年、ニセ妊娠ライフを過ごした後、ディーキン伯爵と髪色と瞳が同じ養子を静かに迎えた。
 小さな子どもとの生活は、生まれたての子猫を育てている時に似ている。
 
 乳母まかせだけど。
 すくすく育つのをわいわいしながら見守るのって楽しい!
 大変そうだけど可愛い!
 一日があっという間で、すごく早い。
 すぐ戻るつもりだったけど領地で過ごすのも楽しくなってきた。

『やっぱり君しかいない。向かいに座る君の姿が残像となって現れる。寂しいんだ。この気持ちが愛だと気づいた。こっちで二人仲良く本物の夫婦として暮らそう』

 伯爵からそんなことが書かれた手紙が頻繁に届く。
 なにがあった?
 なに残像って? 怖いんだけど。
 妻のいない間も楽しむんじゃなかったのー?

『君がいないと心が癒されない。海に流される砂のようだ。愛している。そんな田舎にいないで早く戻っておいで、ラブ』

 本人は2回しか会いに来なかったけど、何度もわけのわからないポエムが届く。

 私は子育てに慣れなくて(乳母が)大変だということと、今後を迷っているという返信をして領地で過ごしていたけれど。

「とうとう契約の3年。王都へ行きますか!」

 秘密を知る者たちだけで子どもと一緒に馬車に乗った。
 頼りになる乳母、私の侍女、それから――。

 








「マーガレット、よく戻ってきたね。疲れているだろう、湯浴みを用意してある」

 ディーキン伯爵がまるで愛妻を相手にするように話しかけてきた。
 そんな関係じゃなかったのに、なんで?
 社交界のレディたちにとうとう嫌われたとか?

「お久しぶりです。すぐにすみますので先にお話してもよろしいですか?」
「ん? あ、あぁ。心が決まったか。書斎へ……いや、困ることはない、ここで話してくれ」

 周りに使用人たちがいるけどいいの?
 部屋を見渡す私の様子を見て、何を勘違いしたか嬉しそうに頷いた。

「ここのほうが領地より豪華で居心地がいいだろう」

 そうでもない。言わないけど。

「ディーキン伯爵、跡継ぎもこうして大きくなりましたし、伯爵が初夜におっしゃった契約も満了ですね。最初の約束の3年が経ちました」

 伯爵が口を開く前に、急いで言葉を続ける。

「今までお世話になりました。この子はとても良い子で乳母にとても懐いていますから私がいなくても大丈夫です。さっき教会へ寄りまして、いただいていた離縁同意書を出して神官様にも離縁を認めてもらいました。ディーキン伯爵の最初の望み通りですね。それでは私はもう妻ではありませんから、このまま失礼しますわ」

 伯爵家に来る前に、教会に届けを出してきたのだけど、すんなり通ったから助かった。
 使用人たちもざわざわしてるけどしかたない。
 私は馬鹿正直なんだ。事実を知ってもらったほうがおひれがつかなくていいんじゃないのー?

「乳母はとても優秀ですから大丈夫ですわ。私の両親にも手紙は出しましたし、もう2度と会うことはありません。さようなら」

「え? 冗談はやめてくれ、マーガレット。君こそ俺の理想の人だと気づいたんだ。おおらかでうるさくない、ショクダイのような貴族の女性は君以外見たことない」

 ショクダイ……食台? 燭台……キャンドルスタンドか⁉︎
 どこのどういうところが⁉︎

 興味ないから、いちいち怒らなかっただけなのにな。
 だいたい褒めるところもおかしいし、女性たちにフラれたのかも?

「ディーキン伯爵、私、恋をしたんです。いえ、真実の愛を見つけたんです! 彼とこの国を出ます。契約書にも自由恋愛とありましたし、私たちの愛を止めることは誰にもできません!」

 後ろに向かって手を伸ばすと、ワイルドマッチョの庭師が私の手をグッと握った。

「まさか……君が平民と暮らせるはずがない……」
「そんなことはありません。愛があれば!」

 異母妹ドロシーが私の邪魔してくることもなかったし、ディーキン伯爵家に遊びにくる姿もなかったらしい。
 
 ドロシーも社交界にデビューしてたくさん出会いがあったっぽいし、釣書がたくさん送られてきているみたいだから、女癖の悪い既婚者、しかも姉の夫なんて魅力的じゃないってこと。普通の感性の子でよかった~。

 ここがゲームや小説の世界って可能性は低い。
 契約満了、好きにしたっていいじゃない。
 真実の愛(笑)に目覚めたっていいじゃない。

 出会って一年と少し、少しずつ距離を縮めてきた彼が、私の腰に腕を回す。
 彼の一途さに私はおひとりさまコースから外れることを決意したんだ。
 
 バンザイ、真実の愛(笑)
 
「私は隣国から見聞を広めるために旅をしていました。ジャック・ド・フォレスティエです。しばらく庭師として学んだことも悪くなかったですよ。色々経験してみるべきですね。ありがとうございました。これからの彼女のことは私に任せてください。幸せにしますから」

「……もしや、隣国の王女が降嫁したというフォレスティエ侯爵家か⁉︎」
「30年も前の話ですから。すでに両親……特に母が私たちのことを認めてくださっています」

 ジャックは私に一目惚れして庭師になったというし、彼の両親は略奪愛に駆け落ち婚だということで、全面的に応援してくれている。

 真実の愛、最高!
 
 私とディーキン伯爵の結婚は契約だし、白い結婚のことは向こうへ行ったら極秘で伝える……というか真実はジャックに伝わると思う。
 
「そんな……」
「ディーキン伯爵、今までお世話になりました。これからは別々の道となりますが、お互いに頑張りましょう」

 ざわつく屋敷の使用人たちと驚きすぎて口を開けたまま固まるディーキン伯爵に背を向けてから、ふと思った。
 
 あれ?
 これってもしかしてディーキン伯爵悔恨物語の始まり?
 私、ざまぁされるつもりはない。
 フォロー、フォローって大事!

「あの最後に一言だけよろしいですか? ディーキン伯爵は見目麗しく仕事もお出来になる方ですから、すぐに素敵な伴侶が見つかることと思います。きっと次は真実の愛……これからの幸せを祈っていますわ」

「そうだ……そうだな……真実の愛、それだ……」

 なんとなくディーキン伯爵の気分が上向いたように感じて、私たちは本当に最後の別れを告げた。

「マーゴ、俺たちの関係は真実の愛だと感じてたのか? 隣国で流行っている大衆劇では悪女なんだが」

 馬車に乗り込んだ後、ジャックが私を抱き寄せて笑う。ディーキン伯爵家では敬語だったけど、普段のジャックの話し方のほうが好き。

「前世でも真実の愛と言う奴は悪役だった。だからさっき必死で制裁されないように伯爵を持ち上げたんだけど……嫌だった?」
「少し。妬いた」

 ジャックは私のドストライクで、褒めるところしかない。私に前世の記憶があることもすんなり打ち明けることができた唯一の相手。

「どこから言えばいい? ジャックは私の理想の人で、カッコいいし鍛えた体もすごくエロ、じゃなくて好きだし、優しくて強くて、甘えるの下手なんだけど……甘えさせてくれるから……大好き。結婚なんて2度としないって思っていたのに、ジャックとならずっと一緒にいたい」

 私を饒舌にする男、ジャックが首まで顔を赤くして、厚い胸板に私の顔を押しつけた。

「しばらく俺の顔を見るな。動くな」

 赤い顔を見られたくない?
 というより。

「今耐えているんだ。襲われたくなかったら大人しくしていろよ。早く宿に着かないかな」

 ジャックの心音が私に伝わってくる。
 そのまま私たちは彼が予約しておいてくれた宿へ。

「長かった……」
「だって、一応既婚者だったから」

「相手は遊んでいたのに?」
「やっぱり前世の記憶が邪魔するみたい。自由恋愛OKって契約書にあったのにね」

 お互いに気持ちは通じ合っていたけど、ジャックとはキス以上はしていない。

「そんなマーゴも丸ごと好きだ」

 王族も泊まったことがあるらしく、すごく素敵で全部見てまわりたい……けどそんな余裕はなさそう。

 大好きな人とのキスは甘いレモンを天界に捧げたような幸せの味がした。
 あ、ディーキン伯爵のポエムっぽい……いや、忘れよう、やめよう。

「ジャック、愛してる」
「俺もだよ、マーゴ」

 ベッドに倒れ込み、お互いを貪り合う。
 ジャックは想像通りタフで、筋肉だった。
 すべてが筋肉だった‼︎
 
「休ませてあげたいが、おさまらない」
「好きにしていいよ……ジャック」

 私は心も体もメロメロで、ビックマグナムに撃ち抜かれた!

「……最高だぜ」
「私も」

 相性もサイコー!

 想像していた人生とは全然違うけど、私はワイルドマッチョな庭師をしていたジャックと、恋愛結婚することになった!
 
 

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