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10 一夜の? ②

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「ぬいぐるみ、増えましたね。でも、これからは、一緒にいるから。寂しがり屋なのはかわってないんだね」
「え?」

 口調が変わってどきっとした。

 ルイーズ=ヴァレリーと三度目に会った時。
 私がベッドにぬいぐるみを置いたら寂しくないって話をして、それから異国の女の子は自分で作る子もいるんだって、私の話なんだけど。そんな話をしたんだよね。

 それから部屋でルイーズ=ヴァレリーが持ってきたおやつを食べたんだ。
 それは、ソースのかかっていないお好み焼きで、この国にはないもので。
 スパイシーなトマトソースが添えてあった。

『すごくおいしい! なんだか昔懐かしい味がする! これは、ヴァレリーの国のおやつ?』
『これは、異国の本にあったのを、料理長に作ってもらったんだ』

 よく隣の家に兄と遊びに行って、小腹が空くとホットプレートが登場した。
 ホットケーキとか好きなように焼いて食べていいよって。
 兄達はよく食べるし、遊びの一つみたいな感じで楽しかった。

 兄と同い年のルイくんは、私より五つ上。
 あの頃はまだ幼くて、一人で留守番が嫌だと駄々をこねてついて行ったんだよね。

 お好み焼きは私が上手にひっくり返せなくて、面倒をみてくれて。
 ソースをかけると全部ソースの味になっちゃうのが嫌だって言ったら、カリカリに焼いてソースを添えてくれた。
 
 雑な兄と違って優しいから、初恋も彼だった。
 思い出すと、胸がキュンとする。
 一度だけ、高校生になった私とデートしたはずなんだけど……懐かしい。

 そんなことを思い出しながら、あの時食べたんだ。とてもおいしかった。
 その後しばらくして、両親が亡くなったのもあってお茶会どころではなくなって、それから会っていない。

「アリス、思い出した? せっかくまた会えたのに、もう二度と離れたくないんだ」

 私の胸にぴたりと耳をつける。
 心臓が早くて、口から飛び出しそう。

「すごいドキドキしてるね。……まさか、記憶を持ったまま生まれるとは思わなかったよね。日本なんてない世界で、女に生まれて、なかなか受け入れられなかった。でも、アリスが男として生まれていたから、今の自分を受け入れることができたんだよ」

 思考停止していた私だけど。
 えーと、つまり。
 私、アリスティドの前世の名前はありす。
 ルイーズがルイくん?

 待って待って、ネーミングセンスがおかしいの?
 いやー! ナニコレ!
 それも含めて運命なの⁉︎
 お互いが出会った時にわかるように?

 そして、今、私との関係を深めようとしてる?
 でも、前世のルイくんを好きだった私は今、男で。
 そのルイくんは、女として生まれている。

 そんなのだめでしょー!
 だって私の心は女の子で、初恋の人は女性に生まれて、心が男の子?
 ん? ダメじゃないってこと……なのかな⁉︎
 
 頭の中がこんがらがるーー!


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