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おまけ
父様と母様
* ヴァルの父様と母様の話です。
******
「……母様は政略結婚だったんですよね?」
父様はすでに書斎にいて、今朝は起きることのできなかったアンジーをそのまま寝かせておいて、母様と二人での朝食。
せっかくだからと、訊いてみたものの。
僕の言葉に、一口お茶を飲んでからにっこり微笑んだ。
母様の笑顔が怖い。
「ええ、そうよ。……何か、聞いたの?」
「……いえ、何も。……いえ、強いて言うなら、父様が母様をお好きだと」
「まぁ……そう。……ふふっ……」
満足気に笑う母様だけど、何か聞いてはいけない秘密があるのかな。
我慢のできなかって僕はさっそく父様のところへ。
「……あなたも結婚して、夜会などで噂を耳にするかもしれないね。……わかった。しかし、アンジー以外には話してはいけないよ?」
父様の話はこうだ。
公爵令嬢だった母様は、今の王様のお兄様、当時の王太子と婚約されていたそうだ。
しかし、夜会で突然王太子が婚約破棄と他の女性と結婚すると宣言し、しかもその女性を母様が虐めていたと濡れ衣を着せられたそうだ。
「……作り話ですか? どこかで聞いたことがあるのですが……?」
首を横に振って父が続きを話し始めた。
父様は社交界から追い出されそうになった母様の冤罪を晴らして、説得に説得を重ねて妻として迎え入れたと言う。
騒ぎを大きくした王太子は継承権を失い、この国の片隅でその女性とともに監視されながら暮らしているらしい。
今の王様は運良く王位につけた訳だけど、父様に感謝しているから大抵のことは聞いてもらえるとかなんとか言ってた。
「やっぱり作り話ですよね? 最近アンジーもそんな小説を読んでいましたけど……」
「いや、私たちの話をもとにそれらの物語が作られているのだよ」
母様がヒロインで。
父様、ヒーロー?
「信じられないかい?」
嘘をついていないか、じっと目の奥を見つめる。
「……あの頃の公爵令嬢は、氷のレディと呼ばれるような笑うこともなく、完璧を絵に描いたような淑女でね。当時の王太子との結婚以外に他国の王子からも求婚されていたんだよ。……今でも美しいだろう?」
「……そう、ですね」
確かにおきれいだと思うけど、僕にとってはただの母様だからね。
しかも、クール!
僕にも優しくないわけじゃないけどクール‼︎
今朝だって笑っているのになぜか怖いところもあってクール……?
父様が思い出しながらうっとりした顔を浮かべるのをただただ見つめた。
少し前に愛の形はいろいろって言ってたのはこういうことなのかな。
「彼女の笑顔を見て、心底惚れたんだ。これからは私が彼女を笑わせようと」
「そういえば、さっきも笑ってました」
僕の言葉に父様がぎろりと睨む。
いや、だって、僕の母様だよ?
僕、ただの息子!
僕が愛しているのはアンジーだけだし!
「と、父様が母様をお好きだって話したら、笑ってくださいました‼︎」
「そうか……。ちょっと妻に会いにいってくる」
父様。
父様、単純です!
弾むような父様の足取りを見ながら、僕もアンジーの元へ向かった。
あの小説達のモデルが父様と母様だって教えてあげないと‼︎
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