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おまけ
side アンジー 3
ヴァルが女性に囲まれている。
私には横顔しか見えないけど、和やかな雰囲気で楽しそうに見える。
客観的に見ても、ヴァルは格好がいい。
背は高いし、すらっとしてるし、顔立ちも整っている。
私がいる時は女性に対して表情がなかったり気難しそうな顔をしたり、寄せつけることはなかったのに。
結婚して私以外を見る余裕ができたのかもしれない。
だってあの子達、みんなきれいだもの。
なんだか、ちょっと胸が痛い。
私もあんな風な、鳥の羽根がいっぱいついた帽子をかぶったほうがいいのかな?
ヴァルがじっとみつめているから。
それとも、あっちの方がお好み?
チラチラと見てるもの。
髪を高く山のように盛って、生花を差している。
その季節の花しか飾れないからとっても贅沢だと思う。
髪の長さは十分あるから、私だって侍女に頼めばやってくれるかも。
あら?
お互いに手袋はしているけれど、ヴァルが女性の手をとった。
二の腕を覆うほどの長い手袋に包まれた華奢な腕をじっと見つめている。
自分の腕と見比べてちょっと悲しくなった。
「……買い物してから帰りましょう」
「……アンジー様、あちらに行きませんか?」
ちょっと大きな声で侍女が話すから、たしなめようと口を開いたところで、ヴァルに気づかれた。
私と目が合うとぱっと笑顔になって、周りに一声かけてから走り寄ってくる。
その姿を見てスッとする私って心が狭い。
ただヴァルを好きなだけで、もっとおおらかでいたいのに。
「アンジー、今日は忙しいって訊いていたから誘うの我慢したのに‼︎ 今からどこか行くの? 僕ついて行ってもいい?」
矢継ぎ早に言われて、いつもの様子のヴァルに驚きながら答える。
「ええ、少し息抜きで買い物に……、あの、ヴァルこそいいの?」
さっきの女の子達がこっちを見ているから。
「うん、もういいんだ。アンジーがいるしね?」
それって、私がいなかったら女の子と過ごしたということ?
一瞬表情に出てしまったらしい私の眉間に指を当てる。
「あ、ごめんね? ちょっと待って」
手袋を外して私の頬に触れた。
「アンジーのことはそのまま触れたいんだ。アンジーしか触れたくないからね」
「……でも、さっき手を……」
女の子の手をとってた。
言いかけた私に、ヴァルが慌てて私の手を握る。
「さっきのはっ! 大切なアンジーにああいう長い手袋を外では身につけてもらいたくて、どの店で売ってるか聞いただけなんだ! 僕だけのアンジーが誰かに触れられるのは嫌だから、あれなら色気のあるアンジーの素肌も見えないし、触れることができないと思って……僕以外は」
まっすぐなヴァルの言葉に私は笑んだ。
「ヴァル、一緒にお店に行って、一緒に選びましょう? そうしたい気分なの」
「アンジー、僕が好きなのはアンジーだけだからね? 不安に感じるような行動をとってごめんね」
「ううん。やきもち焼いちゃったみたい」
ヴァルがぴょんと飛び上がって私を抱きしめ、かわいい、大好きと呟く。
彼は派手な羽根の帽子も、山のように高さを出した髪型も珍しくて見ていただけで、してほしかったわけじゃなかった。
私はそのままでいいって。
ヴァルが選んだものをつけてくれると嬉しいって。
そんな彼が手に取ったのは大きなリボンで、今度これだけを身につけてってお願いされた。
恥ずかしいって答えたけれど、なんだかすごくしょんぼりしてたから……。
誕生日に、頑張ってみようかな。
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