すれ違わない二人の恋の話

能登原あめ

文字の大きさ
24 / 26
おまけ 

side アンジー 3



 ヴァルが女性に囲まれている。
 私には横顔しか見えないけど、和やかな雰囲気で楽しそうに見える。
 
 客観的に見ても、ヴァルは格好がいい。
 背は高いし、すらっとしてるし、顔立ちも整っている。

 私がいる時は女性に対して表情がなかったり気難しそうな顔をしたり、寄せつけることはなかったのに。
 結婚して私以外を見る余裕ができたのかもしれない。
 だってあの子達、みんなきれいだもの。
 なんだか、ちょっと胸が痛い。

 私もあんな風な、鳥の羽根がいっぱいついた帽子をかぶったほうがいいのかな?
 ヴァルがじっとみつめているから。

 それとも、あっちの方がお好み?
 チラチラと見てるもの。
 髪を高く山のように盛って、生花を差している。
 その季節の花しか飾れないからとっても贅沢だと思う。
 髪の長さは十分あるから、私だって侍女に頼めばやってくれるかも。
 
 あら?
 お互いに手袋はしているけれど、ヴァルが女性の手をとった。
 二の腕を覆うほどの長い手袋に包まれた華奢な腕をじっと見つめている。
 自分の腕と見比べてちょっと悲しくなった。
 
「……買い物してから帰りましょう」
「……アンジー様、あちらに行きませんか?」

 ちょっと大きな声で侍女が話すから、たしなめようと口を開いたところで、ヴァルに気づかれた。
 私と目が合うとぱっと笑顔になって、周りに一声かけてから走り寄ってくる。

 その姿を見てスッとする私って心が狭い。
 ただヴァルを好きなだけで、もっとおおらかでいたいのに。

「アンジー、今日は忙しいって訊いていたから誘うの我慢したのに‼︎ 今からどこか行くの? 僕ついて行ってもいい?」

 矢継ぎ早に言われて、いつもの様子のヴァルに驚きながら答える。
 
「ええ、少し息抜きで買い物に……、あの、ヴァルこそいいの?」

 さっきの女の子達がこっちを見ているから。

「うん、もういいんだ。アンジーがいるしね?」

 それって、私がいなかったら女の子と過ごしたということ?
 一瞬表情に出てしまったらしい私の眉間に指を当てる。

「あ、ごめんね? ちょっと待って」

 手袋を外して私の頬に触れた。

「アンジーのことはそのまま触れたいんだ。アンジーしか触れたくないからね」
「……でも、さっき手を……」

 女の子の手をとってた。
 言いかけた私に、ヴァルが慌てて私の手を握る。

「さっきのはっ! 大切なアンジーにああいう長い手袋を外では身につけてもらいたくて、どの店で売ってるか聞いただけなんだ! 僕だけのアンジーが誰かに触れられるのは嫌だから、あれなら色気のあるアンジーの素肌も見えないし、触れることができないと思って……僕以外は」

 まっすぐなヴァルの言葉に私は笑んだ。

「ヴァル、一緒にお店に行って、一緒に選びましょう? そうしたい気分なの」
「アンジー、僕が好きなのはアンジーだけだからね? 不安に感じるような行動をとってごめんね」
「ううん。やきもち焼いちゃったみたい」

 ヴァルがぴょんと飛び上がって私を抱きしめ、かわいい、大好きと呟く。

 彼は派手な羽根の帽子も、山のように高さを出した髪型も珍しくて見ていただけで、してほしかったわけじゃなかった。
 私はそのままでいいって。
 ヴァルが選んだものをつけてくれると嬉しいって。

 そんな彼が手に取ったのは大きなリボンで、今度これだけを身につけてってお願いされた。
 恥ずかしいって答えたけれど、なんだかすごくしょんぼりしてたから……。

 誕生日に、頑張ってみようかな。
感想 153

あなたにおすすめの小説

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

仮面王の花嫁

松雪
恋愛
婚約者を腹違いの妹に奪われ、新しい相手も見つからず修道院に行く覚悟を決めたルチア。修道女となるため髪を切った日の夜、王城から「国王がルチアを妻に望んでいる」という書簡を持った使者がやって来た。 しかし、従兄弟であり恋仲だったニールが国王のせいで死に至った過去を持つルチアは、国王からの求婚を喜べずーー。

お人形令嬢の私はヤンデレ義兄から逃げられない

白黒
恋愛
お人形のように綺麗だと言われるアリスはある日義兄ができる。 義兄のレイモンドは幼い頃よりのトラウマで次第に少し歪んだ愛情をアリスに向けるようになる。 義兄の溺愛に少し悩むアリス…。 二人の行き着く先は…!?

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

ガネス公爵令嬢の変身

くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。 ※「小説家になろう」へも投稿しています