愛は重くてもろくて、こじれてる〜私の幼馴染はヤンデレらしい

能登原あめ

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パターン6 (執着心と独占欲の塊だと自覚のある根暗ヤンデレ)

2 離れてみたら



 ブレーカーの寮の部屋は、たくさん物が置かれているわけじゃないけど、彼らしくて居心地が良かった。
 椅子に腰掛けて部屋を見渡す。
 もうこのまま帰ってこないんじゃないかと思うくらいに、物が揃いつつある。

 ブレーカーはずっと私が好きだった。
 私も彼が好きだし、彼の強い想いに気がついていたし、それに応えるつもりでいたのに。
 このまま離れ離れになるのは嫌で嫌でたまらない。
 せめて、最後くらいちゃんと話をしてただの幼馴染に戻るしかない。
 
 考えるだけで胸が苦しくなるけど、私だって立ち止まってはいられない。
 卒業まであと1週間。
 パーティドレスも用意してあるけど、ブレーカーにふられたら着ないままかも……。

 でも用意してくれた両親や、遠くへ行ってしまう友達と話もしたいから、1人で行くことになるんだろうな。
 そんなことを考えながら待っていると、部屋が開いた。

「……エリン? どうしてここに?」

 ブレーカーのとがめるような低い声に、勇気が無くなりそうになったけど、明るい声で挨拶する。

「ブレーカー、ひさしぶりね。どうしてるか気になって……」

 ブレーカーの影から1人の女性が顔を出して、私は何も言えなくなった。

「あら……噂の幼馴染? あらあら……どうしたらいいかしら」

 私達よりいくつか年上の色っぽい女性が、私を見て笑った。
 ブレーカーは黙ったままだし、私はショックで頭の中が真っ白になる。

「……ホリー」

 ブレーカーが困ったように彼女の名前を呼んだ。
 親密な関係に見えて、私の口から言葉が出てこない。ただ呼吸をするだけで、なんと言っていいかもわからなかった。

「んー。じゃあ、先に行ってるから。バイバイ、幼馴染さん」

 ブレーカーの肩を撫でるように触れて、彼女はあっさり去って行く。

「…………」
「…………」

 中に入った彼がため息をついた。
 扉は開けたままだし、ちゃんと話をする気もないみたい。

「…………何のよう?」
「あの……話がしたくて……さっきの人と付き合っているの?」
「…………そうだと言ったら?」

 仄暗い瞳のまま、私を見つめる。
 どうしてそんな顔で見つめるのだろう。
 思い違いでなければ、まだ彼は私が好きなのだと思うのに。

 嫌ってる顔じゃない、はず。
 心臓が大きく音を立てているから、私は大きく息を吐いた。

「……私はブレーカーが好き。だから、はっきりさせたくなったの。一緒に卒業パーティに出てほしい」
「……他の女がいる男と?」

 そう言われてぐっとあごに力が入る。

「ブレーカーが彼女を本気で好きなら、私も頑張って忘れる。ただの幼馴染に戻れるように努力する。……だから、ブレーカーの本当の気持ちを知りたい」

 彼がそっと扉を閉じた。
 ガチャリと鍵がかかる音が大きく響く。
 
「エリンは……ここへ来るべきじゃなかった」
「どうして? 私はブレーカーに会いたかったし、話もしたかったし、ずっとずっとそばにいたかったよ」

 これで最後になってしまうなら、全部打ち明けてしまえと言葉を重ねる。

「エリンの愛と俺の愛は違う」
「……私、ブレーカーの愛がすごく重くて深い愛だって知ってる。全部私に向けてよかったのに……もう嫌になっちゃった……?」

 ブレーカーは想いを乗せて見つめてくるから、いつも伝わってきた。
 縛りつけるくらいの重たさも私は嬉しくて幸せで、息苦しいと思ったこともなくて。
 学園に入ってからはくすぶって、煮詰まったみたいでわかりづらくなってしまったけど。

「私達はもうすぐ卒業で、ほとんど大人なんだよ? もう自分のことは自分で責任とれるの」

 ぎゅっと目蓋を閉じたブレーカーが、大きく息を吐いて私を見据える。
 少し冷たく感じて、私の体がこわばった。

「エリンは俺のことをわかっていて、やってきたの? 俺が掴まえたらもう逃げられなくなるのに」
「ブレーカーから逃げたいなんて思ったことない。ずっと掴まえていてほしいよ」

「俺の本心を知ってもそう言えるのかな。エリンが俺以外と話しているのを見たくない……本当は誰にも会わさず部屋に閉じ込めて俺だけのものにしてしまいたいって思っている。俺以外、その目に映さないでほしい。……それでも、いいってこと?」

 ブレーカーが私の顔を探るように見るから、彼の目をじっと見つめたまま口を開いた。
 
「それだけ私のこと、好きなんだよね。私は嬉しいって思う。ブレーカーとずっと一緒にいたいし、離れている間寂しかったから……」

 近づいてきたブレーカーが私を抱きしめた。幼い頃と違って、大きな体にすっぽり包まれる。

「ブレーカー、大好き。もう離れていかないで」
「エリン……こんな欠陥ばかりの俺でいいのか?」
「ブレーカーのこと、丸ごと愛してるよ」
「俺も……愛してる。2度と……もう永遠に離さないから」

 私からもブレーカーの背中に腕を回して抱きしめる。
 ぎゅーっと思いっきり。
 だけど――。

「……さっきの人は? ブレーカー、本当に付き合ってる? これって二股? 修羅場になるのかな? 別れてくれる?」

 ようやく気持ちが通じ合ったって、噛み締めていたかったけど、気になるものは気になる。もやもやした。

「いや、違う。商会の職員だよ。彼女は結婚してる……ごめん」
「それならいいけど……私も浮気は許さないんだよ? ブレーカーを閉じ込めるのは私かもしれないね」

 そう言うと、ブレーカーが嬉しそうに笑った。

 
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