22 / 23
パターン6 (執着心と独占欲の塊だと自覚のある根暗ヤンデレ)
2 離れてみたら
ブレーカーの寮の部屋は、たくさん物が置かれているわけじゃないけど、彼らしくて居心地が良かった。
椅子に腰掛けて部屋を見渡す。
もうこのまま帰ってこないんじゃないかと思うくらいに、物が揃いつつある。
ブレーカーはずっと私が好きだった。
私も彼が好きだし、彼の強い想いに気がついていたし、それに応えるつもりでいたのに。
このまま離れ離れになるのは嫌で嫌でたまらない。
せめて、最後くらいちゃんと話をしてただの幼馴染に戻るしかない。
考えるだけで胸が苦しくなるけど、私だって立ち止まってはいられない。
卒業まであと1週間。
パーティドレスも用意してあるけど、ブレーカーにふられたら着ないままかも……。
でも用意してくれた両親や、遠くへ行ってしまう友達と話もしたいから、1人で行くことになるんだろうな。
そんなことを考えながら待っていると、部屋が開いた。
「……エリン? どうしてここに?」
ブレーカーのとがめるような低い声に、勇気が無くなりそうになったけど、明るい声で挨拶する。
「ブレーカー、ひさしぶりね。どうしてるか気になって……」
ブレーカーの影から1人の女性が顔を出して、私は何も言えなくなった。
「あら……噂の幼馴染? あらあら……どうしたらいいかしら」
私達よりいくつか年上の色っぽい女性が、私を見て笑った。
ブレーカーは黙ったままだし、私はショックで頭の中が真っ白になる。
「……ホリー」
ブレーカーが困ったように彼女の名前を呼んだ。
親密な関係に見えて、私の口から言葉が出てこない。ただ呼吸をするだけで、なんと言っていいかもわからなかった。
「んー。じゃあ、先に行ってるから。バイバイ、幼馴染さん」
ブレーカーの肩を撫でるように触れて、彼女はあっさり去って行く。
「…………」
「…………」
中に入った彼がため息をついた。
扉は開けたままだし、ちゃんと話をする気もないみたい。
「…………何のよう?」
「あの……話がしたくて……さっきの人と付き合っているの?」
「…………そうだと言ったら?」
仄暗い瞳のまま、私を見つめる。
どうしてそんな顔で見つめるのだろう。
思い違いでなければ、まだ彼は私が好きなのだと思うのに。
嫌ってる顔じゃない、はず。
心臓が大きく音を立てているから、私は大きく息を吐いた。
「……私はブレーカーが好き。だから、はっきりさせたくなったの。一緒に卒業パーティに出てほしい」
「……他の女がいる男と?」
そう言われてぐっとあごに力が入る。
「ブレーカーが彼女を本気で好きなら、私も頑張って忘れる。ただの幼馴染に戻れるように努力する。……だから、ブレーカーの本当の気持ちを知りたい」
彼がそっと扉を閉じた。
ガチャリと鍵がかかる音が大きく響く。
「エリンは……ここへ来るべきじゃなかった」
「どうして? 私はブレーカーに会いたかったし、話もしたかったし、ずっとずっとそばにいたかったよ」
これで最後になってしまうなら、全部打ち明けてしまえと言葉を重ねる。
「エリンの愛と俺の愛は違う」
「……私、ブレーカーの愛がすごく重くて深い愛だって知ってる。全部私に向けてよかったのに……もう嫌になっちゃった……?」
ブレーカーは想いを乗せて見つめてくるから、いつも伝わってきた。
縛りつけるくらいの重たさも私は嬉しくて幸せで、息苦しいと思ったこともなくて。
学園に入ってからは燻って、煮詰まったみたいでわかりづらくなってしまったけど。
「私達はもうすぐ卒業で、ほとんど大人なんだよ? もう自分のことは自分で責任とれるの」
ぎゅっと目蓋を閉じたブレーカーが、大きく息を吐いて私を見据える。
少し冷たく感じて、私の体がこわばった。
「エリンは俺のことをわかっていて、やってきたの? 俺が掴まえたらもう逃げられなくなるのに」
「ブレーカーから逃げたいなんて思ったことない。ずっと掴まえていてほしいよ」
「俺の本心を知ってもそう言えるのかな。エリンが俺以外と話しているのを見たくない……本当は誰にも会わさず部屋に閉じ込めて俺だけのものにしてしまいたいって思っている。俺以外、その目に映さないでほしい。……それでも、いいってこと?」
ブレーカーが私の顔を探るように見るから、彼の目をじっと見つめたまま口を開いた。
「それだけ私のこと、好きなんだよね。私は嬉しいって思う。ブレーカーとずっと一緒にいたいし、離れている間寂しかったから……」
近づいてきたブレーカーが私を抱きしめた。幼い頃と違って、大きな体にすっぽり包まれる。
「ブレーカー、大好き。もう離れていかないで」
「エリン……こんな欠陥ばかりの俺でいいのか?」
「ブレーカーのこと、丸ごと愛してるよ」
「俺も……愛してる。2度と……もう永遠に離さないから」
私からもブレーカーの背中に腕を回して抱きしめる。
ぎゅーっと思いっきり。
だけど――。
「……さっきの人は? ブレーカー、本当に付き合ってる? これって二股? 修羅場になるのかな? 別れてくれる?」
ようやく気持ちが通じ合ったって、噛み締めていたかったけど、気になるものは気になる。もやもやした。
「いや、違う。商会の職員だよ。彼女は結婚してる……ごめん」
「それならいいけど……私も浮気は許さないんだよ? ブレーカーを閉じ込めるのは私かもしれないね」
そう言うと、ブレーカーが嬉しそうに笑った。
あなたにおすすめの小説
片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた
来栖 蘭
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。
高校生くらいから何十回も告白した。
全て「好きなの」
「ごめん、断る」
その繰り返しだった。
だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。
紛らわしいと思う。
彼に好きな人がいるわけではない。
まだそれなら諦めがつく。
彼はカイル=クレシア23歳
イケメンでモテる。
私はアリア=ナターシャ20歳
普通で人には可愛い方だと言われた。
そんなある日
私が20歳になった時だった。
両親が見合い話を持ってきた。
最後の告白をしようと思った。
ダメなら見合いをすると言った。
その見合い相手に溺愛される。
兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした
こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】
伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。
しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。
そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。
運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた――
けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった――
※「小説家になろう」にも投稿しています。
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!
158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・
2話完結を目指してます!