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8   クラウス 2

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 今日は二人で過ごす五回目のデート。
 街歩き以外に美術館や音楽会、演劇も観た。

 それから、夜はこっちの文字を習って、簡単な絵本ならだいたいわかるようになってきた。
 クラウスは教師なだけあって、教え上手。
 
 昼間外で動き回って、夜に言葉の勉強したら疲れてぐっすり眠る。
 同じベッドで眠っているけど、触れ合うこともなく。
 あれ?
 セックスレスの夫婦みたいになってる?
 
 居心地がいいからってこれじゃダメか。
 だって、私からOK出さないといけないんだよね。

 そんなわけで、ちょっと雰囲気が必要かなと思うんだけど、そんなイベントはなく。

 今回は、学校運営のための子供たちによるコンサートを見学して、その後行われるクッキーの販売を手伝うことになった。
 ちゃんと先生しているところをみるのは初めて。
 子どもたちに好かれているのは街を歩けば明るく声をかけられることでわかっていたけど。
 同僚の先生たちとイチャ……じゃなくて和気あいあいとしてる姿がまぶしい。
 こういうのが見たかった。
 和む~。

「スズ、ありがとうございます。こっちはもう大丈夫なので、休憩にしましょう」

 クラウスに促されて私は控え室へと向かう。
 
「本当にたくさんお客さん来るんだね。試食のクッキー、私も食べたの。変わってるけどおいしかった」
「本当ですか! 私が作ったんです……なので売れないかと思ったのですが、スズが立ったらあっという間でした」
「そうなの? 役に立ててよかった」

 大袈裟だけど、褒められて悪い気はしない。

「いつも売れ残るのですが。……おいしかったとは……よかったです……ふふっ……」
「……なんか、甘塩っぱくて、スパイシーで、このあたりの主流なのかな?」
「ああ! 私のオリジナルです! 今年はガラムマサラやターメリック、クミンにコリアンダーを入れてスパイシーな辛口のクッキーを目指しました」

 カレーだったら正解だったかも、と思って私は脱力する。
 得意げに言うクラウスはかわいいけど、料理下手な人あるあるだな。
 基本押さえないでアレンジしちゃうんだよね、基本大事!
 
「クラウスが作ったら普通のクッキーだっておいしいと思うけど」
「うーん……。配合通りに作るのってつまらないんですよね……みんなにも言われますけど」

 言うと思った。
 つまらないんじゃなくて美味しく作れるように考えられてるのにな。

「ちなみに……具合が悪い時は何食べてるの?」
「食べません。食べないのが一番早く治るんです。動物もそうしてますから」

 そう言う答えが来るとは思わなかったけど、栄養価のいい、相性の悪い食材をかけ合わせるとかなくてよかった。
 
「そっか……具合が悪くならないのが一番だよね」

 クッキーは私が売った時のまま残ってしまったから、みんなで痛み分け……で分けて持ち帰った。
 
「手、繋いで帰ろう?」

 クラウスの指と私の指を絡ませて家まで歩く。

「今年はクッキーが無くなるまで一か月くらい毎朝食べないですみます。ありがとうございます、スズ」
「それは……よかったね。これ、多分ぶどう酒と一緒に食べたら美味しいと思う。どうかな?」
「スズがそういうならそうしましょう」






 今夜は勉強はしないで二人でクッキーをつまみにお酒をいただく。

「スズ……今日も私と過ごして下さってありがとうございます。幸せです」
「私もクラウスのおかげで文字が読めるようになってきたし、この世界のこともたくさん教えてもらって、毎日が楽しくなってきたよ……ありがとう」
「よかった……スズのことが好きです」

 あ、ここで言わなきゃ。

「私も、クラウスのこと、好き」
「スズ……」

 思わず立ち上がったクラウスの固く握り締める拳を両手で包んだ。

「あの、ね……今夜はベッドで私に、優しく触れてくれる?」
「スズ、いいんですね……?」
「あの……一度だけだからね?」
「わかりました。抱きしめていいですか?」

 頷いた私に回りこんできてそっと包む。

「大好きです……キスしても?」
「うん」

 私の頬に手を添えて唇を寄せる。

「ちゅっ」

 初めにやることやっちゃったけど、私たちの初キスだ。

「柔らかいですね。もう一度しても?」

 あれ、もしかして、やっちゃった?
 
「いちいち聞かなくてもいいよ。嫌だったら言うから、ちゃんと止めてね?」
「……そういうわけにはいきません。反省しているので……二度目のキス、しますね」

 唇が触れた。

「舌、入れていいですか?」
「~~っ!」

 私から舌を突っ込んでやる。
 絶対に私が恥ずかしいとわかっていてやってる!

「……積極的ですね。嬉しいです。脱がせてもいいですか?」
「自分で脱ぐから、クラウスも自分で脱いでよ!」

 ちょっとキレ気味に私は言った。

「スズ……そんな様子もかわいいです。あなたの身体に触れさせてください」
「どうぞ!」

 こんな羞恥プレイは求めてない!

「スズ。濡れてますね……舐めていいですか?」
「いや!」

 私はクラウスに馬乗りになって、剛直を握った。
 
 早く受け入れてしまおう。
 
「クラウス……我慢してね」

 蜜口に当てて少しずつ受け入れていく。
 ちょっときついけど、彼とのやりとりはそれなりに刺激になっていたようで。
 認めたくないけど。

「嬉しいです。気持ち、いいですね……」
「うん。私も……」
「……動いて、いいですか……?」
「もうちょっと、待って……馴染むまで」

 苦しそうな表情を見せて耐える様子に、愛おしい気持ちが湧いてきた。
 単純なのは承知だ。

 腰をゆっくりと上下させて彼のすべてを受け入れる。
 私の中でピクンと震えた。
 身体を逸らして気持ちいいところに当たるように調整すると、ぬちゃぬちゃと音がしてもっと濡れてくる。
 私は息を細く吐いた。

「動いていいよ……だけど、止めてって言ったら止めてね。かわりに、イイ時はイイって、言うように、するから」

 ものすごく恥ずかしいけど。
 赤くなった私に柔らかな笑みを見せる。

「先に……口づけだけお願いします。スズ……あなたがかわいくて」

 私は身体を倒して唇を重ねた。
 甘い雰囲気にきゅんとする。

「動きますね……」

 私の中を味わうように腰を押しつけられて、私も前後に揺らす。

「んっ……あっ……」
「あなたの声は甘い、ですね……」
「くら、うす、いいっ……」

 欲を孕んだ瞳に見つめられて身体が熱くなる。

「気持ち、いい」
「あなたの中で、イかせてください」
「んあぁぁっ……」

 彼に下から打ちつけて目の前が白む。
 険しい顔をした彼が、私の中で欲望を吐き出した。




 




「あの時はあなたに本当にひどいことをしてごめんなさい。今なら違いがすごくわかります……抱きしめても?」

 震える手をのばすクラウスに私は身を寄せた。
 心から反省してる彼の頭を抱きしめる。
 もともと相性はよかったはず。
 女神様がそう言ってたから間違いない。

「これから積み重ねていこうよ、クラウス。そういうところ、好きだよ」



 
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