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第一章 魔法都市サムサラ
星の消えた夜 2
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「リル……無理しちゃダメよ」
葬儀の前に、一端屋敷に戻ったリルフィーナの肩に、手を乗せて気遣うセリ。
「平気。私は大丈夫だから」
痛い思いをしたのも、苦しい思いをしたのも、自分ではない。
獣らしきに深手を負わされ命尽きたなら、どんなに恐ろしく苦痛に塗れながら死んでいったのだろう。
そんな死に方をしていい娘ではなかったのに。
遺体を目の当たりにしても、未だに信じられなかった。
まだ何かの拍子に息を吹き返すのではとか、本当はたちの悪い悪戯で、ひょっこり生きている本人が出てくるのではと期待してしまう。
それが有り得ないと理解していても。
「……私……ギルドを抜ける時『実家の家族が大変だから』って出任せを言って、出てきたの……」
あの時は咄嗟に思い付いた口実だったのに、戻った先でこんなことになってしまうとは。
「だから、エステルは死んじゃったのかな……私が嘘を、ついたせいで」
「そんなのっ、関係ないわよ!」
椅子に掛けて項垂れるリルフィーナを、セリぼ腕がぎゅっと抱き締める。
「リルのせいだなんて、ある訳ないわ。あんたは何も悪くない」
「でも……っ」
セリの温もりと声に、じわりと涙が滲む。
優しくされるのが辛い。
「自分を責めなきゃ耐えられない? でもね、これは事実なの。エステルは死んだ。リルの、なんにも関わりのないところで」
本当に、彼女の言う通りだ。
頭では解っているのに、受け入れられないだけ。
こんな酷いことになったのは、自分が悪いことをしたからだと、自罰の思いにすり替えて現実から目を逸らそうとしている。
『自分を下げるのはよくないわ』
親友の、優しく嗜める声が頭の中に響く。
(エステルも……私がこんな風に自分を責めようとするのを、きっと望まない)
それならば、今自分はどうするべきなのか。
少しずつ少しずつ、悪い考えから別の方へ、思考を移していく。
「ありがとう、セリ……もう大丈夫だから」
「ん」
リルフィーナの顔を見て、セリは少しほっとしたように離れた。
「お葬式に出る準備をしなきゃ」
「服とか? このままでも大丈夫?」
これが自分の一張羅、とばかりに着ている道着を見せるセリに「大丈夫だよ」と答える。
「一般の人……たまたま近くで鐘を聞いて参列する人もいるから」
「そっか」
確か昔着た黒いワンピースがあった筈だと、リルフィーナはポーチを探る。
確かにワンピースはあったにはあった。
けれど、取り出していざ着てみようとするとサイズが小さい。
「あ、あれ?」
「それだけ大きくなったってことよね」
小さくなったワンピースを身体に当てたまま、目が点になっているリルフィーナを見て、微笑ましげにセリが言った。
確かに、ここ一年二年で大夫背丈が伸び、体つきも丸みを帯びて女性らしくなってきていた。
それまでは、周りの子と比べると成長が遅かったのだ。
毎日自分の身体と付き合っている本人は、そこまで実感や自覚がなくても、セリやニコルと再会した時「大きくなった」と感心されただけの成長はしていたらしい。
それはそれとして、服をどうしようと思っているところで、扉がノックされた。
「今、よろしいですか?」
やって来たのは、滑車の付いた衣紋掛けを引くメイドを伴ったニコルだった。
「わぁ……」
リルフィーナは鏡に映る自分の姿に目を煌めかせた。
弔事用の黒いドレスは装飾こそシンプルだが、上等な布地にレースやリボンがあしらわれている。
青みがかった艷やかな黒髪は、ハーフアップにして結んだところに黒い花の飾りが着けられていた。
全部リルフィーナが戸惑っている間に、メイドたちがあっという間にやってくれた。
自分の方が魔術師のくせに、手際がよすぎて「まるで魔法みたい」だと思ってしまった。
「おお~~~! すんごい可愛いじゃない! こういう格好すると、やんごとなきご令嬢って感じね」
「そ、そうかな」
大人の女性らしく意匠の違う喪服を着せられたセリが、自分の姿そっちのけでテンションを上げている。
「むふーーーーーほんっと可愛い。こんな姿なかなか見られないだろうし、写真機があったら絶対撮るのにぃ……!」
「それはいいですね」
はっとしたニコルが、メイドに魔導写真機を持って来るようにと伝えた。
「え、あるの!? 流石上流階級! 神様仏様ニコル様~~~!」
「先代のコレクションですけど、こういう時に使わなければ宝の持ち腐れですもんね」
「ですです! 道具は使ってこそ!」
「あ、あの~……」
被写体(予定)をそっちのけで盛り上がっている二人に、完全に置いてけぼりのリルフィーナだった。
ひとしきり撮影会が終わって。
「ひとつ、気になることがあるのです」
改まった様子でニコルが切り出した。
「魔術師ギルドの検分の結果を見せて貰ったのですが、エステルさんのお身体には、他の方にはないものがあったようで」
「あ……」
エステルの服の下にある特徴は、リルフィーナにも心当たりがあった。
子供の頃から一緒に過ごしていたから、着替えや入浴もいつも一緒だったから知っている。
「エステルの胸元には、何かの紋のような印がありました」
「以前からあったものだったのですね」
「はい。昔聞いたんですけど、生まれつきのもので孤児院に来る前、一緒に暮らしていたお祖母さまにも同じものがあったそうです」
左寄りの胸元にある、不思議な紋様。
彼女自身は、その由来などは聞かされていなかったらしい。ただ、祖母は『とても大切なものだから、信頼の置ける人以外には見せないように』と言っていたという。
「……小さい頃のお風呂なんて、それこそ芋洗い状態でしたから、隠すのは無理でしたけどね」
それでもエステルの秘密は、孤児院の子供たちと、シスターのような運営に関わる者たちしか知らなかったろう。
「もしかして、それが今回の件と関係があるんですか?」
「いえ、まだそこまでは分かりません」
ニコルは申し訳なさそうに首を振った。
「ギルドの方でも今調べているところで、あの印が何らかの意味を持つこと以外はまだ……。エステルさんが襲われたこととの因果関係も、これからですね」
「そうですか……」
その返答に、リルフィーナは肩を落とした。
何かが見え掛けた気がしたのは一瞬で、真相はまだ夜闇の中に置き去りにされたままだ。
知りたい。
どうして、彼女が死ななければならなかったのか。
犯人を突き止めて、そして――
「リ~ルっ」
呼び掛けにはっと目を向けると、セリが緩やかな顔で微笑んでいた。
「今はとりあえずさ、見送ってあげよう。悔いのないようにね」
葬儀の時間が迫っている。
姉妹のように育った大切な親友に、お別れを告げる時が。
リルフィーナはセリに頷いて、佇まいを正した。
「それとさ、作り掛けの髪飾り」
「?」
シスターから受け取った、形見のようになってしまったもののことに言及されて、リルフィーナはぱちりと瞬きをひとつ。
「あれ、続きをあたしがやって、仕上げてもいい? リルが着けたら、あの子も喜ぶんじゃないかって思ってさ」
「セリ……」
その提案に、思わずうるっとしてしまう。
ちょっと照れ臭そうに、手をパタパタと振るセリ。
「いや~、あたし繕い物くらいしかしないから、手芸でござい! みたいな腕はないしアレだけどね」
「……お願いしても、いい?」
「当たり前だよ。あたしの方が頼んでるんだからね」
セリの取り出したハンカチが、少女の目許を拭った。
葬儀の前に、一端屋敷に戻ったリルフィーナの肩に、手を乗せて気遣うセリ。
「平気。私は大丈夫だから」
痛い思いをしたのも、苦しい思いをしたのも、自分ではない。
獣らしきに深手を負わされ命尽きたなら、どんなに恐ろしく苦痛に塗れながら死んでいったのだろう。
そんな死に方をしていい娘ではなかったのに。
遺体を目の当たりにしても、未だに信じられなかった。
まだ何かの拍子に息を吹き返すのではとか、本当はたちの悪い悪戯で、ひょっこり生きている本人が出てくるのではと期待してしまう。
それが有り得ないと理解していても。
「……私……ギルドを抜ける時『実家の家族が大変だから』って出任せを言って、出てきたの……」
あの時は咄嗟に思い付いた口実だったのに、戻った先でこんなことになってしまうとは。
「だから、エステルは死んじゃったのかな……私が嘘を、ついたせいで」
「そんなのっ、関係ないわよ!」
椅子に掛けて項垂れるリルフィーナを、セリぼ腕がぎゅっと抱き締める。
「リルのせいだなんて、ある訳ないわ。あんたは何も悪くない」
「でも……っ」
セリの温もりと声に、じわりと涙が滲む。
優しくされるのが辛い。
「自分を責めなきゃ耐えられない? でもね、これは事実なの。エステルは死んだ。リルの、なんにも関わりのないところで」
本当に、彼女の言う通りだ。
頭では解っているのに、受け入れられないだけ。
こんな酷いことになったのは、自分が悪いことをしたからだと、自罰の思いにすり替えて現実から目を逸らそうとしている。
『自分を下げるのはよくないわ』
親友の、優しく嗜める声が頭の中に響く。
(エステルも……私がこんな風に自分を責めようとするのを、きっと望まない)
それならば、今自分はどうするべきなのか。
少しずつ少しずつ、悪い考えから別の方へ、思考を移していく。
「ありがとう、セリ……もう大丈夫だから」
「ん」
リルフィーナの顔を見て、セリは少しほっとしたように離れた。
「お葬式に出る準備をしなきゃ」
「服とか? このままでも大丈夫?」
これが自分の一張羅、とばかりに着ている道着を見せるセリに「大丈夫だよ」と答える。
「一般の人……たまたま近くで鐘を聞いて参列する人もいるから」
「そっか」
確か昔着た黒いワンピースがあった筈だと、リルフィーナはポーチを探る。
確かにワンピースはあったにはあった。
けれど、取り出していざ着てみようとするとサイズが小さい。
「あ、あれ?」
「それだけ大きくなったってことよね」
小さくなったワンピースを身体に当てたまま、目が点になっているリルフィーナを見て、微笑ましげにセリが言った。
確かに、ここ一年二年で大夫背丈が伸び、体つきも丸みを帯びて女性らしくなってきていた。
それまでは、周りの子と比べると成長が遅かったのだ。
毎日自分の身体と付き合っている本人は、そこまで実感や自覚がなくても、セリやニコルと再会した時「大きくなった」と感心されただけの成長はしていたらしい。
それはそれとして、服をどうしようと思っているところで、扉がノックされた。
「今、よろしいですか?」
やって来たのは、滑車の付いた衣紋掛けを引くメイドを伴ったニコルだった。
「わぁ……」
リルフィーナは鏡に映る自分の姿に目を煌めかせた。
弔事用の黒いドレスは装飾こそシンプルだが、上等な布地にレースやリボンがあしらわれている。
青みがかった艷やかな黒髪は、ハーフアップにして結んだところに黒い花の飾りが着けられていた。
全部リルフィーナが戸惑っている間に、メイドたちがあっという間にやってくれた。
自分の方が魔術師のくせに、手際がよすぎて「まるで魔法みたい」だと思ってしまった。
「おお~~~! すんごい可愛いじゃない! こういう格好すると、やんごとなきご令嬢って感じね」
「そ、そうかな」
大人の女性らしく意匠の違う喪服を着せられたセリが、自分の姿そっちのけでテンションを上げている。
「むふーーーーーほんっと可愛い。こんな姿なかなか見られないだろうし、写真機があったら絶対撮るのにぃ……!」
「それはいいですね」
はっとしたニコルが、メイドに魔導写真機を持って来るようにと伝えた。
「え、あるの!? 流石上流階級! 神様仏様ニコル様~~~!」
「先代のコレクションですけど、こういう時に使わなければ宝の持ち腐れですもんね」
「ですです! 道具は使ってこそ!」
「あ、あの~……」
被写体(予定)をそっちのけで盛り上がっている二人に、完全に置いてけぼりのリルフィーナだった。
ひとしきり撮影会が終わって。
「ひとつ、気になることがあるのです」
改まった様子でニコルが切り出した。
「魔術師ギルドの検分の結果を見せて貰ったのですが、エステルさんのお身体には、他の方にはないものがあったようで」
「あ……」
エステルの服の下にある特徴は、リルフィーナにも心当たりがあった。
子供の頃から一緒に過ごしていたから、着替えや入浴もいつも一緒だったから知っている。
「エステルの胸元には、何かの紋のような印がありました」
「以前からあったものだったのですね」
「はい。昔聞いたんですけど、生まれつきのもので孤児院に来る前、一緒に暮らしていたお祖母さまにも同じものがあったそうです」
左寄りの胸元にある、不思議な紋様。
彼女自身は、その由来などは聞かされていなかったらしい。ただ、祖母は『とても大切なものだから、信頼の置ける人以外には見せないように』と言っていたという。
「……小さい頃のお風呂なんて、それこそ芋洗い状態でしたから、隠すのは無理でしたけどね」
それでもエステルの秘密は、孤児院の子供たちと、シスターのような運営に関わる者たちしか知らなかったろう。
「もしかして、それが今回の件と関係があるんですか?」
「いえ、まだそこまでは分かりません」
ニコルは申し訳なさそうに首を振った。
「ギルドの方でも今調べているところで、あの印が何らかの意味を持つこと以外はまだ……。エステルさんが襲われたこととの因果関係も、これからですね」
「そうですか……」
その返答に、リルフィーナは肩を落とした。
何かが見え掛けた気がしたのは一瞬で、真相はまだ夜闇の中に置き去りにされたままだ。
知りたい。
どうして、彼女が死ななければならなかったのか。
犯人を突き止めて、そして――
「リ~ルっ」
呼び掛けにはっと目を向けると、セリが緩やかな顔で微笑んでいた。
「今はとりあえずさ、見送ってあげよう。悔いのないようにね」
葬儀の時間が迫っている。
姉妹のように育った大切な親友に、お別れを告げる時が。
リルフィーナはセリに頷いて、佇まいを正した。
「それとさ、作り掛けの髪飾り」
「?」
シスターから受け取った、形見のようになってしまったもののことに言及されて、リルフィーナはぱちりと瞬きをひとつ。
「あれ、続きをあたしがやって、仕上げてもいい? リルが着けたら、あの子も喜ぶんじゃないかって思ってさ」
「セリ……」
その提案に、思わずうるっとしてしまう。
ちょっと照れ臭そうに、手をパタパタと振るセリ。
「いや~、あたし繕い物くらいしかしないから、手芸でござい! みたいな腕はないしアレだけどね」
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