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番外編
憔悴の理由②
「ごちそうさま。お風呂入ってくるね」
「あ、うん。ああっ!お皿運ぶからいいよ!」
「でも」
「いいのいいの!食洗機回したら先に寝室に行ってるね」
「じゃあ、お願いするね。ありがとう」
「いいえとんでもない!」
燈哉さんの体調が心配なのは紛れもない事実で、それが一頭のほとんどを占めていたはずなのに瞬間的に煩悩に負けた。完敗だ!
食器を片づけてから歯磨きを済ませて、燈哉さんがお風呂から上がって来る前に、ベッドに潜り込む。大放出したアドレナリンのせいかやたら目が冴えている。残念すぎる自分が悲しくてたまらない。
相変わらずカラスの行水より早いんじゃないかというスピードでお風呂から上がった燈哉さんが、私の隣に横になった。そして、こちらに向かって腕を伸ばしてくれる。
「おいで」という言葉を聞いてすぐに、私は喜んでその腕に頭を乗せた。
「おやすみ、桜」
「おやすみなさい」
触れるだけのキスをして、目を閉じる。
待てど暮らせど、ちっとも睡魔はやって来ない。でも寝ないと、明日が辛くなる。
本当は、燈哉さんと一緒にいられる時間が少ない今の生活を、とてもとても寂しいと思っている。だからこそ、この生活に終わりが見えたことが嬉しかった。燈哉さんを待つのはちっとも苦にはならないし、顔を見られない寂しさに比べれば大したことないと思える。
仕事なんだから仕方ないのはわかっていても、もっと一緒にいたいなんていうわがままな気持ちは日ごと増すばかりで、初めて深く感じる寂しさを、少し持て余していた。
でも、彼はいずれ社長になって、会社を動かしていかなければならない人なんだから。
だから私も、簡単に寂しいだなんて言っちゃいけない。
「さくら」
「ん?」
「ちょっと、だけ…触っていい?」
私が返事をするよりも早く、ルームウェアであるチュニックの裾からやたらと熱い手が入り込んで来る。
驚いて顔を上げれば、まん丸の瞳と視線がぶつかった。
「明日も早いんでしょう?」
「うん…だから、ちょっとだけ」
「っ、」
腕枕を外した彼が私の体に覆いかぶさって来て、両手で膨らみを掴まれた。
眠たそうな瞳と声、なのにその手付きに翻弄される。
ぐにぐにとそこを揉みしだいて、わざとらしく頂きに触れて来る。
「んっ…」
頂きを摘まんで擦るから、久しぶりに感じる快感に身体が疼く。
親指と中指で頂きを挟んで、人差し指が引っ掻くように動く。人差し指が円を描くようにそこを動き出した頃には、息が上がっていた。
「あ…っん、は…っ、ぁ」
舌を差し込むようにキスをされる。
柔らかい舌がどうしようもなく気持ちいい。
「ふっ、……ッ、」
人差し指の動きが早くなる。小刻みに弾かれて、身体が跳ねた。
「ぁっ、んやぁ…っ、あ、あぁっ」
唇が離れて息を吸い込もうとしたのに、漏れたのは喘ぐ声。甘ったるい自分の喘ぎ声が頭に響く。うるさい程に。
両手で膨らみを寄せて、近づいた両方の頂きを燈哉さんが食べてしまう。ちゅ、ちゅ、と、吸い付き舐られる。
「んあぁっ、と、やさん…っ、ッ!あぁ…!」
吸い付きながら舐める、なんて器用なことをしないで欲しい。高まってしまう。感情も、快感も。狙いすましたように膝で蕾を潰されれば、一溜まりもない。
「ふ、あぁッ!!だ、ッ…めぇ…!」
あまりにも気持ちが良くて、腰が浮いた。
中途半端に脱げていたチュニックもブラも、ショートパンツも全て取り払われてしまう。
同じように裸になった彼に強く抱きしめられれば、直接伝わる体温に心が安らぐ。首に腕を回して、ぎゅっと抱き付いた。そのまま身体を引っ張り上げられて、ベッドの上に、足を投げ出して座った状態の燈哉さんの上に、私も座るような体勢になる。
「さくら。膝立てて」
耳の側で低く囁かれたら、私は絶対に逆らえない。
分かっていてわざとそれをする燈哉さんに、非難の視線を送った。そんな私に向かってあまりにも嬉しそうに微笑むから、やっぱり今日も逆らえない。
言われた通りに燈哉さんの足を片方跨いで、膝を立てる。
「手は、ここ」
両手を彼の肩に導かれる。
「しっかり支えてて」
唇がくっつくくらいの近い距離でそう囁いたあと、秘所に指が這う。
「んっ」
反対の腕が私の腰に回る。胸元に燈哉さんの頭が埋まって、二本の指が内壁を擦る。
「あっ……ッ、んぁ…ああっ」
奥まで入ってきた指が、前後に激しく動いた。頂きをまた舐られたら、快感の波が揺れる。
丸く膨らむように、限界がすぐそこまで来ていた。
「まっ、ぃやぁ…っ!あ、んっ!」
前のめりになっていく身体を、なんとか腕で支える。
親指で蕾を揺らされて、背筋が震えた。
ぐちゅぐちゅと、水音が鳴る。音の理由が太ももをつたっていく。その感覚があまりにも恥ずかしくて、泣きたくなる。
「そんなに気持ちいい?」
笑いを含んだ声で、やたら嬉そうに燈哉さんが言った。
気持ちいいに決まってる。
でも上手く返事が出来ない。
丸く膨らんだ限界は、あっけなく弾けてしまう。
「ぁっ、あぁ…ッ!あんッ、…ああぁっ!」
長く続く痙攣を、燈哉さんの頭を抱き締めて耐えた。
そこが閉じたり開いたりして、彼の指を締め付けているのが自分でも分かってしまう。
気づかないふりをする指先がまだ激しく動くから、続けざまに絶頂が身体を走る。
二度もそれを感受すれば、身体に力なんて入らない。
「んっ…、は、ぁあッ」
「く…っ」
足を大きく開かれて、そのまま燈哉さんが中に入ってくる。
私の臀部が燈哉さんの太ももにつく頃には、律動が始まっていた。
下から突き上げるような刺激は、苦しくて甘い。
「あっ、んぁっ、…はぁっ、ぁあんっ!」
燈哉さんの左腕が、私の腰に絡まる。
私も首元に腕を回して、そのまま首筋に唇を寄せて舌を這わせた。
「……っ、だめだよ桜。すぐ、終わっちゃう…から、」
「んんっ、だっ、てぇ…っ、ずっと、触りたかっ…あぁッ!」
のしかかるように燈哉さんが体重をかけ来て、私の背中がシーツに沈む。
突き上げが殊更激しくなって、視界が揺れた。
「も…っ、さ、くら…!」
果てる時に、譫言のように燈哉さんが私の名前を呼ぶ。
大好きな首筋に顔を埋めながら、私は幸せだと思った。
「ちょっと、だけ?」
「そのつもりだったんだけどね」
寝入った時とまた同じように、燈哉さんの左腕に頭を乗せる。
ふたりとも服を身につけていないから、全く同じではないけれど。
なめらかな胸元に手を伸ばして、すべすべと温もりを楽しむ。欲求が満たされたせいか、幸せ過ぎて溜め息を吐いてしまう。
このところの己の変態っぷりは本当に手に負えない。やっぱり私欲求不満だったんだな……と、目を細めて遠くを見つめた。
「ごめんね。朝も早いのに」
「ううん。燈哉さんの体調が心配だけど。大丈夫?」
「俺は全然平気。仕事が忙しいのは苦じゃないんだ。もう慣れてるしね。それより桜と過ごす時間が短かすぎて、そっちの方が辛い」
擦り寄るようにほっぺたを合わせてくれた燈哉さんに、私ももっと擦り寄って、全力でそれを堪能する。
「あー…、幸せ……。もう寂しくて寂しくて」
「え……?寂しい、の?」
まさか燈哉さんも自分と同じように思っていたなんて、と、びっくりして目を見張った。
「寂しいよ」
困ったように笑ってから、燈哉さんはきつく私を抱き締めた。
寂しいと言ってくれた事に対して、ちょっとどころかかなり喜んでいる自分がいる。
「顔を見る時間が足りないし、こうして触れくてもさ、桜の睡眠時間考えると申し訳ないなと思うし。ただでさえ俺の生活に付き合ってもらってるのに」
「そんなこと……」
寂しいなんて言ったら、困らせてしまうと思っていた。
燈哉さんは頑張って働いているのにって、寂しいと感じることすら少し後ろめたくて。
でも、燈哉さんも同じ気持ちだったんだ。寂しさを感じるのは、悪いことじゃないんだ。
すとんと落ちて来た何かが、私の心の中にじんわりと広がる喜びを連れて来る。
なら、もしかすると。
私も寂しい、なんて言ったら、燈哉さんもこんな気持ちになるのかな。
「あの……」
「ん?」
「あの、あのね。私も……その、寂しかった、よ」
「…ホントに!?」
「う、ん。仕事が忙しいんだから、そんなこと言って困らせるのもって、うわあ!!」
言葉の途中で強く抱きすくめられて、私は盛大に慌てふためくことになった。
なんならもう抱き締めるの範疇超えている、もっと言うとただ絞めてるみたいになっている!
「と、とーやさん!苦しい!」
彼の背中を割と強めにバンバン叩いて、私はある意味の命乞いをした。ただでさえ人よりミニサイズの私が、サイズ的に規定をはみ出している燈哉さんに本気で絞められたらぺっちゃんこになってしまう。
「あっ、ごめん!嬉しくてつい!」
満面の笑みで私を見つめる燈哉さんが、愛しくてたまらない。だから私も、やっぱり自然と顔がほころんでしまう。
「困るなんて!俺がいなくて寂しいって思ってくれるなんて、すっごい幸せ」
「あははっ!言いきった!」
「桜に寂しい思いをさせてることは、申し訳ないんだけど…、ごめんね、やっぱり嬉しい。俺自分勝手だね」
「ううん。私も燈哉さんが寂しいって言ってくれて、嬉しかったもん」
満面の笑みのまま、額を合わせてそっと目を閉じた。
燈哉さんはこうして額を合わせるのが好きみたい。私も好きだ。笑いあって顔を寄せ合って、寂しいと思う気持ちすらも、お互いを思い合う証みたいに思える。
それは燈哉さんが、いつだってこうして想いを見せてくれるから。
ならば私も、もう少しだけ素直になってみて、燈哉さんがくれる愛情を少しは返したい。私だって、燈哉さんを喜ばせたいと思うから。
「あとね……私も、触りたかったんだ。燈哉さんに」
両手を広げて燈哉さんの頬を包む。まん丸の瞳は潤み、頬も耳も赤く染まっている。
ああもう、何度見てもかわいい。たまらない。
ちょっとでいいから腰骨触らせてくれないかな…、いやダメか。今そんなこと言ったら雰囲気的に台無しだもの。
「桜…、ごめん、今日もう寝られないかも」
「んんっ!」
性急に唇を塞がれて、彼の指先が私の体中を這い回る。
あれ……?もう寝られないっていうのはどういう意味…だろう……。
夜が明けるまではまだかなり時間があるのに、彼はまさか、朝までずっとこうしているつもりなんだろうか。それはいらゆる意味で大丈夫なのかな…!?お主に私の体力とか、私の体力
とかがっ!
「と、燈哉さん!さすがにちょっとは寝た方がいいと思われる!」
「ごめん、無理」
「ちょ、……っ!!」
そうしてその後、本当に一睡もしないまま数時間を過ごし、スーツに着替えた旦那さんは。
実に…、実にすがすがしい笑顔で、元気良く出勤されました。
憔悴していた燈哉さんはどこいったんだろうね……。
寝ていないはずなのに、彼だって相当の体力を消耗したはずなのに、なぜにあんなに元気なのだろうか…!
まさか、憔悴の理由も、もしかして私と同じく欲求不満だったのかな、なんて。
「あ、うん。ああっ!お皿運ぶからいいよ!」
「でも」
「いいのいいの!食洗機回したら先に寝室に行ってるね」
「じゃあ、お願いするね。ありがとう」
「いいえとんでもない!」
燈哉さんの体調が心配なのは紛れもない事実で、それが一頭のほとんどを占めていたはずなのに瞬間的に煩悩に負けた。完敗だ!
食器を片づけてから歯磨きを済ませて、燈哉さんがお風呂から上がって来る前に、ベッドに潜り込む。大放出したアドレナリンのせいかやたら目が冴えている。残念すぎる自分が悲しくてたまらない。
相変わらずカラスの行水より早いんじゃないかというスピードでお風呂から上がった燈哉さんが、私の隣に横になった。そして、こちらに向かって腕を伸ばしてくれる。
「おいで」という言葉を聞いてすぐに、私は喜んでその腕に頭を乗せた。
「おやすみ、桜」
「おやすみなさい」
触れるだけのキスをして、目を閉じる。
待てど暮らせど、ちっとも睡魔はやって来ない。でも寝ないと、明日が辛くなる。
本当は、燈哉さんと一緒にいられる時間が少ない今の生活を、とてもとても寂しいと思っている。だからこそ、この生活に終わりが見えたことが嬉しかった。燈哉さんを待つのはちっとも苦にはならないし、顔を見られない寂しさに比べれば大したことないと思える。
仕事なんだから仕方ないのはわかっていても、もっと一緒にいたいなんていうわがままな気持ちは日ごと増すばかりで、初めて深く感じる寂しさを、少し持て余していた。
でも、彼はいずれ社長になって、会社を動かしていかなければならない人なんだから。
だから私も、簡単に寂しいだなんて言っちゃいけない。
「さくら」
「ん?」
「ちょっと、だけ…触っていい?」
私が返事をするよりも早く、ルームウェアであるチュニックの裾からやたらと熱い手が入り込んで来る。
驚いて顔を上げれば、まん丸の瞳と視線がぶつかった。
「明日も早いんでしょう?」
「うん…だから、ちょっとだけ」
「っ、」
腕枕を外した彼が私の体に覆いかぶさって来て、両手で膨らみを掴まれた。
眠たそうな瞳と声、なのにその手付きに翻弄される。
ぐにぐにとそこを揉みしだいて、わざとらしく頂きに触れて来る。
「んっ…」
頂きを摘まんで擦るから、久しぶりに感じる快感に身体が疼く。
親指と中指で頂きを挟んで、人差し指が引っ掻くように動く。人差し指が円を描くようにそこを動き出した頃には、息が上がっていた。
「あ…っん、は…っ、ぁ」
舌を差し込むようにキスをされる。
柔らかい舌がどうしようもなく気持ちいい。
「ふっ、……ッ、」
人差し指の動きが早くなる。小刻みに弾かれて、身体が跳ねた。
「ぁっ、んやぁ…っ、あ、あぁっ」
唇が離れて息を吸い込もうとしたのに、漏れたのは喘ぐ声。甘ったるい自分の喘ぎ声が頭に響く。うるさい程に。
両手で膨らみを寄せて、近づいた両方の頂きを燈哉さんが食べてしまう。ちゅ、ちゅ、と、吸い付き舐られる。
「んあぁっ、と、やさん…っ、ッ!あぁ…!」
吸い付きながら舐める、なんて器用なことをしないで欲しい。高まってしまう。感情も、快感も。狙いすましたように膝で蕾を潰されれば、一溜まりもない。
「ふ、あぁッ!!だ、ッ…めぇ…!」
あまりにも気持ちが良くて、腰が浮いた。
中途半端に脱げていたチュニックもブラも、ショートパンツも全て取り払われてしまう。
同じように裸になった彼に強く抱きしめられれば、直接伝わる体温に心が安らぐ。首に腕を回して、ぎゅっと抱き付いた。そのまま身体を引っ張り上げられて、ベッドの上に、足を投げ出して座った状態の燈哉さんの上に、私も座るような体勢になる。
「さくら。膝立てて」
耳の側で低く囁かれたら、私は絶対に逆らえない。
分かっていてわざとそれをする燈哉さんに、非難の視線を送った。そんな私に向かってあまりにも嬉しそうに微笑むから、やっぱり今日も逆らえない。
言われた通りに燈哉さんの足を片方跨いで、膝を立てる。
「手は、ここ」
両手を彼の肩に導かれる。
「しっかり支えてて」
唇がくっつくくらいの近い距離でそう囁いたあと、秘所に指が這う。
「んっ」
反対の腕が私の腰に回る。胸元に燈哉さんの頭が埋まって、二本の指が内壁を擦る。
「あっ……ッ、んぁ…ああっ」
奥まで入ってきた指が、前後に激しく動いた。頂きをまた舐られたら、快感の波が揺れる。
丸く膨らむように、限界がすぐそこまで来ていた。
「まっ、ぃやぁ…っ!あ、んっ!」
前のめりになっていく身体を、なんとか腕で支える。
親指で蕾を揺らされて、背筋が震えた。
ぐちゅぐちゅと、水音が鳴る。音の理由が太ももをつたっていく。その感覚があまりにも恥ずかしくて、泣きたくなる。
「そんなに気持ちいい?」
笑いを含んだ声で、やたら嬉そうに燈哉さんが言った。
気持ちいいに決まってる。
でも上手く返事が出来ない。
丸く膨らんだ限界は、あっけなく弾けてしまう。
「ぁっ、あぁ…ッ!あんッ、…ああぁっ!」
長く続く痙攣を、燈哉さんの頭を抱き締めて耐えた。
そこが閉じたり開いたりして、彼の指を締め付けているのが自分でも分かってしまう。
気づかないふりをする指先がまだ激しく動くから、続けざまに絶頂が身体を走る。
二度もそれを感受すれば、身体に力なんて入らない。
「んっ…、は、ぁあッ」
「く…っ」
足を大きく開かれて、そのまま燈哉さんが中に入ってくる。
私の臀部が燈哉さんの太ももにつく頃には、律動が始まっていた。
下から突き上げるような刺激は、苦しくて甘い。
「あっ、んぁっ、…はぁっ、ぁあんっ!」
燈哉さんの左腕が、私の腰に絡まる。
私も首元に腕を回して、そのまま首筋に唇を寄せて舌を這わせた。
「……っ、だめだよ桜。すぐ、終わっちゃう…から、」
「んんっ、だっ、てぇ…っ、ずっと、触りたかっ…あぁッ!」
のしかかるように燈哉さんが体重をかけ来て、私の背中がシーツに沈む。
突き上げが殊更激しくなって、視界が揺れた。
「も…っ、さ、くら…!」
果てる時に、譫言のように燈哉さんが私の名前を呼ぶ。
大好きな首筋に顔を埋めながら、私は幸せだと思った。
「ちょっと、だけ?」
「そのつもりだったんだけどね」
寝入った時とまた同じように、燈哉さんの左腕に頭を乗せる。
ふたりとも服を身につけていないから、全く同じではないけれど。
なめらかな胸元に手を伸ばして、すべすべと温もりを楽しむ。欲求が満たされたせいか、幸せ過ぎて溜め息を吐いてしまう。
このところの己の変態っぷりは本当に手に負えない。やっぱり私欲求不満だったんだな……と、目を細めて遠くを見つめた。
「ごめんね。朝も早いのに」
「ううん。燈哉さんの体調が心配だけど。大丈夫?」
「俺は全然平気。仕事が忙しいのは苦じゃないんだ。もう慣れてるしね。それより桜と過ごす時間が短かすぎて、そっちの方が辛い」
擦り寄るようにほっぺたを合わせてくれた燈哉さんに、私ももっと擦り寄って、全力でそれを堪能する。
「あー…、幸せ……。もう寂しくて寂しくて」
「え……?寂しい、の?」
まさか燈哉さんも自分と同じように思っていたなんて、と、びっくりして目を見張った。
「寂しいよ」
困ったように笑ってから、燈哉さんはきつく私を抱き締めた。
寂しいと言ってくれた事に対して、ちょっとどころかかなり喜んでいる自分がいる。
「顔を見る時間が足りないし、こうして触れくてもさ、桜の睡眠時間考えると申し訳ないなと思うし。ただでさえ俺の生活に付き合ってもらってるのに」
「そんなこと……」
寂しいなんて言ったら、困らせてしまうと思っていた。
燈哉さんは頑張って働いているのにって、寂しいと感じることすら少し後ろめたくて。
でも、燈哉さんも同じ気持ちだったんだ。寂しさを感じるのは、悪いことじゃないんだ。
すとんと落ちて来た何かが、私の心の中にじんわりと広がる喜びを連れて来る。
なら、もしかすると。
私も寂しい、なんて言ったら、燈哉さんもこんな気持ちになるのかな。
「あの……」
「ん?」
「あの、あのね。私も……その、寂しかった、よ」
「…ホントに!?」
「う、ん。仕事が忙しいんだから、そんなこと言って困らせるのもって、うわあ!!」
言葉の途中で強く抱きすくめられて、私は盛大に慌てふためくことになった。
なんならもう抱き締めるの範疇超えている、もっと言うとただ絞めてるみたいになっている!
「と、とーやさん!苦しい!」
彼の背中を割と強めにバンバン叩いて、私はある意味の命乞いをした。ただでさえ人よりミニサイズの私が、サイズ的に規定をはみ出している燈哉さんに本気で絞められたらぺっちゃんこになってしまう。
「あっ、ごめん!嬉しくてつい!」
満面の笑みで私を見つめる燈哉さんが、愛しくてたまらない。だから私も、やっぱり自然と顔がほころんでしまう。
「困るなんて!俺がいなくて寂しいって思ってくれるなんて、すっごい幸せ」
「あははっ!言いきった!」
「桜に寂しい思いをさせてることは、申し訳ないんだけど…、ごめんね、やっぱり嬉しい。俺自分勝手だね」
「ううん。私も燈哉さんが寂しいって言ってくれて、嬉しかったもん」
満面の笑みのまま、額を合わせてそっと目を閉じた。
燈哉さんはこうして額を合わせるのが好きみたい。私も好きだ。笑いあって顔を寄せ合って、寂しいと思う気持ちすらも、お互いを思い合う証みたいに思える。
それは燈哉さんが、いつだってこうして想いを見せてくれるから。
ならば私も、もう少しだけ素直になってみて、燈哉さんがくれる愛情を少しは返したい。私だって、燈哉さんを喜ばせたいと思うから。
「あとね……私も、触りたかったんだ。燈哉さんに」
両手を広げて燈哉さんの頬を包む。まん丸の瞳は潤み、頬も耳も赤く染まっている。
ああもう、何度見てもかわいい。たまらない。
ちょっとでいいから腰骨触らせてくれないかな…、いやダメか。今そんなこと言ったら雰囲気的に台無しだもの。
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「んんっ!」
性急に唇を塞がれて、彼の指先が私の体中を這い回る。
あれ……?もう寝られないっていうのはどういう意味…だろう……。
夜が明けるまではまだかなり時間があるのに、彼はまさか、朝までずっとこうしているつもりなんだろうか。それはいらゆる意味で大丈夫なのかな…!?お主に私の体力とか、私の体力
とかがっ!
「と、燈哉さん!さすがにちょっとは寝た方がいいと思われる!」
「ごめん、無理」
「ちょ、……っ!!」
そうしてその後、本当に一睡もしないまま数時間を過ごし、スーツに着替えた旦那さんは。
実に…、実にすがすがしい笑顔で、元気良く出勤されました。
憔悴していた燈哉さんはどこいったんだろうね……。
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