ドケチな私はアイテムも魔法も使いたくないっ!!

ざとういち

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ドケチな私の日常

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ギルドの依頼を失敗し、私とケンジくんはトボトボと帰路についた。

当然報酬も無し。私たちは、体力とMPマジックポイントを消費しただけに終わった。

つまり、『無駄』になったという訳だ…。
体力とMPを回復するのにも、アイテムや施設のお世話になる必要がある…。出費がかさむのだ…。

さっきも言ったように、私はドケチだ。
無駄という物を何より嫌う…。
私は盛大に無駄な出費を出してしまったことに、嫌悪な気持ちを噴出させていた…。

こんなことなら、中級魔法をあの時使っとくべきだったか…と私は思った…。
だが、後悔しても、もう遅い…。
私はたびたび、自分の性格のせいでこんな後悔を、何度も繰り返しているのであった…。

「まぁ…上手く行かなかった物は
 しょうがないよ…次、
 決めれば良いだけだって…!」

ケンジくんは左腕を包帯でぐるぐる巻きにしながら、覇気のない笑顔で私につぶやいた。
彼はこんな私と組んでいるせいで、こんな目に遭っているのだ…。私は罪悪感を感じていた…。

私、モッタ・イネーナは、ドケチです。
超が付くほどのドケチです…。
彼と会う前にもいろいろとやらかし、
ドケチなことが知れ渡っているせいで、集会所では仲間の募集をしても、避けられる人間だった…。

一人でポツンと、ぼーっとしながら集会所の待合スペースで座っていたところを、
物好きな彼が声を掛けてきてくれたのだ。
私の何を気に入ったのかは分からないが…。

正直、一人で依頼をこなすのは無理があるので、彼の申し出はとてもありがたかった…。
歳も近いので、話しやすいし…。
しかし、私とケンジくんが組んでから、まだ依頼を成功させたことは一度もない。

なので、私はいつ彼に見放されるかとハラハラしているのだ…。

「モッタ、良かったらこのあと…。」

「あぁーッ!!」

彼が何か言い掛けていたが、私はある重大なことを思い出していた。
そうだ。始まってしまう…!

「私行かなきゃだから!!
 ケンジくん、またね!!」

「え…!?あっ…ちょ…。」

何か言いたそうな彼を尻目に、私は猛ダッシュで、その場を後にした。

ここは、冒険者が集う街タムロス。
いろんな地方からいろんな人種が集まるので、なかなか賑やかで楽しい街である。

私はお店がいろいろと立ち並んでいる商店街の奥へと進んでいく。今は夕方。夕日が当たり、商店街に並んでいるお店はオレンジ色に照らされている。

何気ない街の景色に少し見惚れながら、
ズンズンと、暗がりのひと気のない路地裏を進む。
そして、私はあるお店の前に辿り着く。

ここは知る人ぞ知るお店。
どこからか流れてきたアイテムを、
高値だったり、格安で売ってたりする。
店名は道具屋としか書いてないのだが、
私はここを『発掘屋』と呼んでいる。

このお店は夜の客向けに営業しているので、
夕方から開店するのだ。
私はいち早く、掘り出し物がないかを偵察しに来ているのである。
格安の物があれば真っ先に買ってしまうのだ。フフフ…。

さて、今日は何が売っているか…。
私は店内をふらふらと見て歩く。
うーん。いつもと変わらないラインナップ。

今日はハズレの日かと思い、
さっさと冷やかして帰ろうとしたその時、

「あぁっ!?」

MP回復薬が売っている…。
体力を回復する普通の回復薬はどこにでもあるが、何故かMP回復薬は滅多に市場に出回らないのである…。それが今日売っている…。

しかし、落ち着け。問題は値段だ…。
値段が高かったら私は買う気などさらさらない。ぬか喜びして手ぶらで帰るのはごめんだ。

私は緊張しつつ値札を見る。

安い…。相場の半額だ…。

なんでこんなに安いのかはよく分からないが、この店は気まぐれに値段が変動するので、まぁよくあることではある。

これは今ここで買わなければ絶対他の客に取られると思い、私はさっさと会計を済ませる。

これがあれば気兼ねなく魔法が撃てる…。
次こそはモンスターを討伐し、報酬をがっぽりゲットしよう!
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