ドケチな私はアイテムも魔法も使いたくないっ!!

ざとういち

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ドケチな私の過去

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モンスター討伐を終え、変なスキルを習得してから数日が経っていた。
私はいつも通り、手頃な依頼を求め、ギルドへと歩みを進めていた。

すると、ギルドがなにやら人で賑わっている。
いつもは冒険者が各々うろついているくらいで、こんな光景は見たことなかった。

なんだろう…。私は不思議に思った。
よく見ると、ギルドの前にド派手な馬車が止まっていた。
キラキラとした装飾が無駄にたくさん付いていて、無駄にデカい馬車である…。

私はあからさまに嫌な顔をした…。
天敵のにおいを感じ取ったのである…。

恐る恐るギルドの中を伺う。
仲間を募る集会所に人だかりが出来ている。
その中心にいる人物が、この騒ぎの原因だと思った。

そこには無駄に派手な金髪の長い髪で、胸が無駄に大きい貴族のような格好の女の子が立っていた。
近くにはボディーガードのような屈強な男が、彼女を両サイドから守るように立っている。

お金持ちか…。ひと目で分かった。
私はお金持ちが嫌いだった…。

私はドケチだ。何故ドケチなのか?
その答えは簡単。お金がないからだ。

私が生まれ育った家庭は、裕福なものではなかった。私のお父さんは冒険者で、家族を養うために今の私と同じように、ギルドの依頼をこなしていた。
だが、ある時。無理をして難しいクエストに挑んでしまい、それから消息を断ってしまった…。

今も生きているのか死んでいるのか分からない…。お母さんはそんな中、女手ひとつで私を育ててくれたのだった。

そして、私はそんなお母さんに少しでも楽をさせてあげようと、父と同じ冒険者稼業で稼いでいるのである。…まだあんまり稼げてはいないのだが。

お母さんは今の私を、行方不明になってしまった父と重ねて、危険なことはやめて欲しいと言う。でも、日々薬草を摘んだり、裁縫をしたりして、必死に働いているお母さんを見ていたら、やはりほおっておけないのであった…。

…と、つい自分のことを考えてしまったが、今は目の前のド派手女のことだ。
この子は一体何者なんだろうか。

すると、ド派手女が声を発した。

「わたくしの仲間に相応しい人に、
 100万マニーを支払います!
 誰か、我こそはという者は
 いらっしゃいますでしょうか?」

100万マニー?私がこの前オオカミを討伐して貰った報酬が2000マニーだった。
それをケンジくんと2人で分けて、私たちは喜んでいた。

あまりにも桁が違いすぎて、ちょっと何を言っているのか分からなかった…。

集会所はざわざわと騒がしくなった。
100万マニーはしばらく働かなくても暮らせるほどの大金だ。
誰もが欲しいのは当たり前だった。

俺が行こう。いや俺だ。と男たちが揉めているのを余所に、一人の人影がド派手女の前へ歩みを進めた。

「…本当に100万マニー
 いただけるんですか…?」

聞き覚えのある声。
その人はケンジくんだった。
私の仲間のケンジくん。

なんだケンジくんか…。
って……えっ!?

「フフ…もちろんです!
 わたくしは嘘をつきません!」

「なら、俺を仲間にしてください…!」

はあああああああっ!?

意味が分からなかった。

なんで!?なんでケンジくんが!?

私は不倫されたような気持ちになってわなわなと震えていた…。

金か…!?乳か…!?

金も乳も私はあの女に負けている…!
いや、金はともかく、乳はそこそこある…!
そんな負けてないわっ…!

私はなにがなんだか分からなくて、
頭の中がぐちゃぐちゃになった。
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