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節約家vs浪費家
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私とド派手女…エリカはとある滝が流れる洞窟の前に立っていた。
彼女の両サイドには屈強なボディーガードが2人立っていた。ボディーガードと呼ぶには、ずいぶんと荒々しい見た目をしているが。
「勝負のルールを
確認しましょう!」
滝が流れているので、エリカは可能な限りの大声で話す。この女は普段から声がデカいので、滝を物ともせず声がよく聞こえる…。
「わたくしたちは、この洞窟で、
スマッシュというレアな
キノコを探す。」
「先にそのスマッシュを手に入れた方、
もしくは、先にギルドに持ち帰った方が
勝ち、ということでしたね?」
そう、掲示板の中から選んだのはこの依頼。
スマッシュというキノコは聞いたことがない。それくらい貴重なキノコのようだった。
殴る等の強い衝撃を与えると赤く光る性質があるらしい。だからスマッシュと呼ばれているそうだ。そのスマッシュを、どちらが先に手に入れるか勝負するのである。
私とエリカが近くにいて、どちらが先にキノコを手に入れたか分かる状況なら、その場で勝負がつく。
キノコが複数本生えていた場合のことを考え、目の前で勝敗が分かる状況以外は、先にギルドにスマッシュを持ち帰り、依頼完了の報告をした方が勝ちというルールにした。
その方が、どの状況でも勝敗が分かりやすいだろうと思った。
私はケンジくん抜きで一人でやらなければいけないので、討伐系の依頼を選ぶ訳にはいかなかった。
キノコの採取なら一人でも出来るだろうし、レアな物なら、見つけて手に入れた方の勝ちという、非常にシンプルな話で済む。
しかし、誤算だったのはエリカの隣りにいるボディーガードである。私は彼女に1対1でやろうと言い忘れてしまった…。私が不利なのは明らかだった。
でも、それでもやらなきゃ。
私はたった一人の仲間のケンジくんを取られてしまう…!不利でもなんでも負ける訳にはいかなかった…!
「では、始めましょうか!」
私とエリカは洞窟に足を踏み入れる。
洞窟の中は、苔のような植物が発する青白い光に照らされていた。非常に幻想的で綺麗な光景だった。勝負じゃなかったら、ゆっくり散策したい。そんな雰囲気が漂っていた。
洞窟は二股に分かれるなんてこともなく、一本道が続いていた。私はエリカと強面のボディーガードと並んで進む。
すると、眼前にコウモリ型のモンスターが複数匹現れた。大きな洞窟だ。当然、モンスターの棲家になっているだろう。
「貴方たちは手出ししなくて結構。
わたくしが片付けます!」
エリカがボディーガード2人に呼び掛けると、彼女は前に一歩踏み出す。
この女、てっきりこの2人に任せるのかと思いきや、自ら戦うつもりのようである。私はエリカが何者なのか全く知らない。どんな戦い方をするのか興味があった。
するとエリカは、なにやら両手をあげた。
ボディーガード2人が、それぞれ懐からカラフルな色の薬が入ったビンを取り出し、エリカの両手に手渡す。
エリカは2本の薬をグビグビと飲み干した。お嬢様な見た目をしているクセに豪快な飲みっぷりである。一体何を飲んだのか。
「はあああああっ!!」
エリカの体が赤と青が混じった光に包まれた。これは、攻撃力強化と素早さ強化の反応だ…!ということは、あの薬は力増強薬と速さ増強薬である…!
この2つの薬は、私がこの前なかなか飲めなかったMP回復薬とは比べ物にならないほど高価な代物だ。この女は金に物を言わせて、そんな高価な物をこんな序盤にがぶ飲みしているのである…!
「止まって見えますね!」
速さが大幅にアップしたエリカの速度に、コウモリの集団は全く追い付けない。そんなコウモリをエリカは素手で一撃で粉砕していく…。の、脳筋すぎる…。
「ふぅ…では、先に進みましょう!」
エリカは何事もなかったように涼しい顔で前に進み始めた。ボディーガード2人があとに続く。
ゆ…許せない…!
私はわなわなと震えていた。
ドケチの私が必死こいてやりくりしているのに、この女は好きな物を好きなように使い放題な訳である。それはもう許せなかった…。羨ましい…!
私はますます、この女には負けたくない!そう思った。
しばらく進むとまたモンスターが現れた。今度は子供の身長くらいのトカゲ型のモンスターが1匹。
次は私の番と言わんばかりに、私は彼女たちより一歩前に出る。
「お手並み拝見といきましょうか!」
エリカは余裕たっぷりの様子で、私を眺めている。じゃあ、見てなさいよ!私の戦いを!
トカゲは前に出た私に襲い掛かった。
私はトカゲの攻撃を杖で防ぎつつ、すかさず、魔法で反撃する。
私はオオカミとの戦いのあと、新しい戦い方を編み出していた。それは…。
「フレッ…!!」
下級魔法のフレイ。ではない。
そのさらに下の未完成な何かだ。
杖の先端からちょっとだけ魔法が出る。
かなり小型の火球だ。
それをトカゲの顔面にぶつけてやると、トカゲは慌てふためいている。その隙にボカッと杖で頭を殴る。
「グエッ!?…グギァッ!!」
トカゲが怒り、再び私に向かってきた。
「フレッ…!!」
フレイの寸止め魔法を撃つ。
かなりの至近距離で顔面に火を浴びせるのだ。普通の生き物だったら怖がって当然だ。
「グ…グギャッ…!」
私の目論見通り。トカゲは火を恐れて上手く戦えない。このフレイの未完成版は威力はほぼ皆無だが、その分、ほとんどMPを消費しない。
私はそれを利用し、魔法で怯ませ、杖で叩くというパターンを繰り返す。ひたすらそれを続けているうちに、トカゲはドシンッと力尽き倒れた。
「ふぅ…どうよ…?」
「MPを使わず敵を倒す…
これが私の『節約術』よ!!」
私はドヤ顔でエリカの方を見る。
これぞ、私の編み出した新技『節約術』だ!!
MPの消費を極限まで抑え敵に勝つ、これほど気持ちの良いことはなかった。
「せ…セコい…!!」
エリカは私の素晴らしい戦術に身を震わせて驚愕しているようだった。
彼女の両サイドには屈強なボディーガードが2人立っていた。ボディーガードと呼ぶには、ずいぶんと荒々しい見た目をしているが。
「勝負のルールを
確認しましょう!」
滝が流れているので、エリカは可能な限りの大声で話す。この女は普段から声がデカいので、滝を物ともせず声がよく聞こえる…。
「わたくしたちは、この洞窟で、
スマッシュというレアな
キノコを探す。」
「先にそのスマッシュを手に入れた方、
もしくは、先にギルドに持ち帰った方が
勝ち、ということでしたね?」
そう、掲示板の中から選んだのはこの依頼。
スマッシュというキノコは聞いたことがない。それくらい貴重なキノコのようだった。
殴る等の強い衝撃を与えると赤く光る性質があるらしい。だからスマッシュと呼ばれているそうだ。そのスマッシュを、どちらが先に手に入れるか勝負するのである。
私とエリカが近くにいて、どちらが先にキノコを手に入れたか分かる状況なら、その場で勝負がつく。
キノコが複数本生えていた場合のことを考え、目の前で勝敗が分かる状況以外は、先にギルドにスマッシュを持ち帰り、依頼完了の報告をした方が勝ちというルールにした。
その方が、どの状況でも勝敗が分かりやすいだろうと思った。
私はケンジくん抜きで一人でやらなければいけないので、討伐系の依頼を選ぶ訳にはいかなかった。
キノコの採取なら一人でも出来るだろうし、レアな物なら、見つけて手に入れた方の勝ちという、非常にシンプルな話で済む。
しかし、誤算だったのはエリカの隣りにいるボディーガードである。私は彼女に1対1でやろうと言い忘れてしまった…。私が不利なのは明らかだった。
でも、それでもやらなきゃ。
私はたった一人の仲間のケンジくんを取られてしまう…!不利でもなんでも負ける訳にはいかなかった…!
「では、始めましょうか!」
私とエリカは洞窟に足を踏み入れる。
洞窟の中は、苔のような植物が発する青白い光に照らされていた。非常に幻想的で綺麗な光景だった。勝負じゃなかったら、ゆっくり散策したい。そんな雰囲気が漂っていた。
洞窟は二股に分かれるなんてこともなく、一本道が続いていた。私はエリカと強面のボディーガードと並んで進む。
すると、眼前にコウモリ型のモンスターが複数匹現れた。大きな洞窟だ。当然、モンスターの棲家になっているだろう。
「貴方たちは手出ししなくて結構。
わたくしが片付けます!」
エリカがボディーガード2人に呼び掛けると、彼女は前に一歩踏み出す。
この女、てっきりこの2人に任せるのかと思いきや、自ら戦うつもりのようである。私はエリカが何者なのか全く知らない。どんな戦い方をするのか興味があった。
するとエリカは、なにやら両手をあげた。
ボディーガード2人が、それぞれ懐からカラフルな色の薬が入ったビンを取り出し、エリカの両手に手渡す。
エリカは2本の薬をグビグビと飲み干した。お嬢様な見た目をしているクセに豪快な飲みっぷりである。一体何を飲んだのか。
「はあああああっ!!」
エリカの体が赤と青が混じった光に包まれた。これは、攻撃力強化と素早さ強化の反応だ…!ということは、あの薬は力増強薬と速さ増強薬である…!
この2つの薬は、私がこの前なかなか飲めなかったMP回復薬とは比べ物にならないほど高価な代物だ。この女は金に物を言わせて、そんな高価な物をこんな序盤にがぶ飲みしているのである…!
「止まって見えますね!」
速さが大幅にアップしたエリカの速度に、コウモリの集団は全く追い付けない。そんなコウモリをエリカは素手で一撃で粉砕していく…。の、脳筋すぎる…。
「ふぅ…では、先に進みましょう!」
エリカは何事もなかったように涼しい顔で前に進み始めた。ボディーガード2人があとに続く。
ゆ…許せない…!
私はわなわなと震えていた。
ドケチの私が必死こいてやりくりしているのに、この女は好きな物を好きなように使い放題な訳である。それはもう許せなかった…。羨ましい…!
私はますます、この女には負けたくない!そう思った。
しばらく進むとまたモンスターが現れた。今度は子供の身長くらいのトカゲ型のモンスターが1匹。
次は私の番と言わんばかりに、私は彼女たちより一歩前に出る。
「お手並み拝見といきましょうか!」
エリカは余裕たっぷりの様子で、私を眺めている。じゃあ、見てなさいよ!私の戦いを!
トカゲは前に出た私に襲い掛かった。
私はトカゲの攻撃を杖で防ぎつつ、すかさず、魔法で反撃する。
私はオオカミとの戦いのあと、新しい戦い方を編み出していた。それは…。
「フレッ…!!」
下級魔法のフレイ。ではない。
そのさらに下の未完成な何かだ。
杖の先端からちょっとだけ魔法が出る。
かなり小型の火球だ。
それをトカゲの顔面にぶつけてやると、トカゲは慌てふためいている。その隙にボカッと杖で頭を殴る。
「グエッ!?…グギァッ!!」
トカゲが怒り、再び私に向かってきた。
「フレッ…!!」
フレイの寸止め魔法を撃つ。
かなりの至近距離で顔面に火を浴びせるのだ。普通の生き物だったら怖がって当然だ。
「グ…グギャッ…!」
私の目論見通り。トカゲは火を恐れて上手く戦えない。このフレイの未完成版は威力はほぼ皆無だが、その分、ほとんどMPを消費しない。
私はそれを利用し、魔法で怯ませ、杖で叩くというパターンを繰り返す。ひたすらそれを続けているうちに、トカゲはドシンッと力尽き倒れた。
「ふぅ…どうよ…?」
「MPを使わず敵を倒す…
これが私の『節約術』よ!!」
私はドヤ顔でエリカの方を見る。
これぞ、私の編み出した新技『節約術』だ!!
MPの消費を極限まで抑え敵に勝つ、これほど気持ちの良いことはなかった。
「せ…セコい…!!」
エリカは私の素晴らしい戦術に身を震わせて驚愕しているようだった。
応援ありがとうございます!
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