1 / 8
第1話 喋るラジオ
しおりを挟む
「近頃、おばあちゃんのラジオの調子がおかしいんだけど……。風子ちょっと見てくれない?」
「ラ、ラジオ……?」
風舞風子。高校1年。お昼休みにそんな話を持ち掛けられて、風香は困惑していた。
「私、機械苦手だし、ラジオのことなんか分からんけども……」
「そぉじゃなくって! 風子巫女さんじゃん! 変な現象に詳しそうじゃん!」
「いつもなんか可愛いの着て神社でほうき掃いてたりしてるじゃん! 羨ましい!」
「いや、詩織。あれは家の掃除を押し付けられてるだけだから……」
神社の娘である風子は、巫女として、家のあれやこれやを手伝わされていた。そんな愚痴をクラスで漏らしていたところ、特別な能力がある存在として認知されてしまっていた。
「ラジオが調子悪いってどう調子悪いの……? 修理に出せば良いんじゃない?」
「そういうんじゃなくて! 人の声とか聞こえるんだよぉ!」
「そりゃ聞こえるでしょ……。ラジオなんだから……」
「もーだから違うんだってぇ!」
話が噛み合わない風子とクラスメイト詩織の会話。いつまでも不毛なやり取りが続き、風子は業を煮やしていた。
「はぁ……。分かったよ……。とにかく行ってみるから……」
「そうこなくっちゃ! 放課後よろしく!」
風子は憂鬱な気持ちのまま、放課後を迎えた。そして、詩織に連れられ彼女の家へと向かう。
「こんにちは~。お邪魔します~」
「あら! 詩織のお友達? よく来たわね! 上がって上がって!」
風子を出迎えたのは詩織のおばあちゃん。見た目も若々しく元気ハツラツなおばあちゃんだった。
「ばあちゃん。風子がラジオ見てくれるって!」
「あら! 悪いわねぇ! 長年使ってるからもうおかしくなってるのよ!」
「あ、あの。直せるとかそういうのじゃないので、あまり期待しないでください……」
「大丈夫大丈夫! ほら!」
詩織のおばあちゃんが自慢げに取り出したのは、ツヤツヤボディーの可愛らしい小さなラジオだった。どう見てもまだ開けたばかりのホヤホヤの新品だった。
「もう新しいの買っちゃったから! 壊れてても使わないのよぉ!」
「……おい。ちょっと」
「なぁに? 風子?」
詩織の腕を引っ張り、おばあちゃんから見えないように廊下の角へと連れて行く風子。詩織はどうしたのかとキョトンとしていた。
「新しいラジオもうあるじゃん!? 私、いらなくない!?」
「え~? そんなことないよぉ~!」
「古いラジオ。電源切ってても電池抜いてもずぅ~っと変な声するんだよぉ!」
「そんな気持ち悪いの捨てられないじゃん! 捨てたら呪われそうじゃん!」
「……だから風子に引き取ってもらおうと思って……」
「ええええええ……!?」
一方的にめちゃくちゃなお願いをしてくる詩織。風子はこんなことなら来なければ良かったと、心底後悔していた。
「とにかく一回そのラジオ見てみてよ! 勘違いかもしれないし!」
「うぅ……しょうがないな……。とりあえず見るだけね……」
家まで来てしまいもう断るに断りきれない風子。流されるまま、ラジオを確認することになってしまった。
「ばあちゃん! 古いラジオ風子が見たいって!」
「あら、そうなの? じゃあ見せてあげるわね!」
(もう帰りたい……)
おばあちゃんの部屋から、ついに問題のラジオが姿を現した。年季の入った旧型でボロボロの小型ラジオ。霊感のある風子は、ひと目見ただけですでに異様な空気を感じ取っていた。
「カエリタイ……ざざ……。カエ……ざざざ……カエリタイ」
(めちゃくちゃ怖えええ!!)
ひたすら助けを求めるラジオ。聞かされていた通り、電源は入っておらず、電池も抜かれていた。それなのに、ラジオは雑音を蒔き散らしながらひたすら助けを求めている。
「うん、どう見てもなんか憑いてるねこれ……」
「ゲッ! やっぱりぃ~? じゃあこれよろしくね!」
「……え?」
「ばあちゃん! 詩織があのラジオ欲しいって!」
「あら! そうなの? 良いわよ! 風子ちゃん! おばあちゃんの思い出のラジオ! 大事にしてね!」
「ハ……ハハハ……。ありがとうございます……」
詩織とおばあちゃんの波状攻撃。いらないとは言えない雰囲気に持ち込まれてしまい、風子は結局不気味なラジオを引き取らされてしまった……。
その日の夜。
「カエリタイ……ざざざ……。ざざ……カエリタイ……。カエリタイカエリタイ」
「ね、眠れん……」
風子の部屋の片隅に置かれた詩織のおばあちゃんのラジオ。そこからずっと声が聞こえ続けている。
「私の未熟な巫女の力じゃ祓えないんだよね……」
「かと言って、ウチの親はこれも修行の一貫とか言って、心霊関係の問題には協力してくれないし……」
「ラジオを処分しようにも、詩織の言う通り、捨てたら何かありそうで捨てづらいし……」
「ハハハ……詰んだわ……」
風子は引きつった笑顔を浮かべながら、心霊ラジオとの共同生活に絶望していた。その時。
『こちら、廃品回収車です』
『ご不要になったぁ~テレビ、エアコン、冷蔵庫など、ございましたら~。お引き取りいたします~』
「え……?」
深夜1時。真夜中も真夜中。廃品回収車なんて走り回っていた日には、大問題の苦情の嵐であろう時間。それにも関わらず、スピーカーを通したような声で、廃品回収が風子の家の近くを巡回していた。
「ラ、ラジオ……?」
風舞風子。高校1年。お昼休みにそんな話を持ち掛けられて、風香は困惑していた。
「私、機械苦手だし、ラジオのことなんか分からんけども……」
「そぉじゃなくって! 風子巫女さんじゃん! 変な現象に詳しそうじゃん!」
「いつもなんか可愛いの着て神社でほうき掃いてたりしてるじゃん! 羨ましい!」
「いや、詩織。あれは家の掃除を押し付けられてるだけだから……」
神社の娘である風子は、巫女として、家のあれやこれやを手伝わされていた。そんな愚痴をクラスで漏らしていたところ、特別な能力がある存在として認知されてしまっていた。
「ラジオが調子悪いってどう調子悪いの……? 修理に出せば良いんじゃない?」
「そういうんじゃなくて! 人の声とか聞こえるんだよぉ!」
「そりゃ聞こえるでしょ……。ラジオなんだから……」
「もーだから違うんだってぇ!」
話が噛み合わない風子とクラスメイト詩織の会話。いつまでも不毛なやり取りが続き、風子は業を煮やしていた。
「はぁ……。分かったよ……。とにかく行ってみるから……」
「そうこなくっちゃ! 放課後よろしく!」
風子は憂鬱な気持ちのまま、放課後を迎えた。そして、詩織に連れられ彼女の家へと向かう。
「こんにちは~。お邪魔します~」
「あら! 詩織のお友達? よく来たわね! 上がって上がって!」
風子を出迎えたのは詩織のおばあちゃん。見た目も若々しく元気ハツラツなおばあちゃんだった。
「ばあちゃん。風子がラジオ見てくれるって!」
「あら! 悪いわねぇ! 長年使ってるからもうおかしくなってるのよ!」
「あ、あの。直せるとかそういうのじゃないので、あまり期待しないでください……」
「大丈夫大丈夫! ほら!」
詩織のおばあちゃんが自慢げに取り出したのは、ツヤツヤボディーの可愛らしい小さなラジオだった。どう見てもまだ開けたばかりのホヤホヤの新品だった。
「もう新しいの買っちゃったから! 壊れてても使わないのよぉ!」
「……おい。ちょっと」
「なぁに? 風子?」
詩織の腕を引っ張り、おばあちゃんから見えないように廊下の角へと連れて行く風子。詩織はどうしたのかとキョトンとしていた。
「新しいラジオもうあるじゃん!? 私、いらなくない!?」
「え~? そんなことないよぉ~!」
「古いラジオ。電源切ってても電池抜いてもずぅ~っと変な声するんだよぉ!」
「そんな気持ち悪いの捨てられないじゃん! 捨てたら呪われそうじゃん!」
「……だから風子に引き取ってもらおうと思って……」
「ええええええ……!?」
一方的にめちゃくちゃなお願いをしてくる詩織。風子はこんなことなら来なければ良かったと、心底後悔していた。
「とにかく一回そのラジオ見てみてよ! 勘違いかもしれないし!」
「うぅ……しょうがないな……。とりあえず見るだけね……」
家まで来てしまいもう断るに断りきれない風子。流されるまま、ラジオを確認することになってしまった。
「ばあちゃん! 古いラジオ風子が見たいって!」
「あら、そうなの? じゃあ見せてあげるわね!」
(もう帰りたい……)
おばあちゃんの部屋から、ついに問題のラジオが姿を現した。年季の入った旧型でボロボロの小型ラジオ。霊感のある風子は、ひと目見ただけですでに異様な空気を感じ取っていた。
「カエリタイ……ざざ……。カエ……ざざざ……カエリタイ」
(めちゃくちゃ怖えええ!!)
ひたすら助けを求めるラジオ。聞かされていた通り、電源は入っておらず、電池も抜かれていた。それなのに、ラジオは雑音を蒔き散らしながらひたすら助けを求めている。
「うん、どう見てもなんか憑いてるねこれ……」
「ゲッ! やっぱりぃ~? じゃあこれよろしくね!」
「……え?」
「ばあちゃん! 詩織があのラジオ欲しいって!」
「あら! そうなの? 良いわよ! 風子ちゃん! おばあちゃんの思い出のラジオ! 大事にしてね!」
「ハ……ハハハ……。ありがとうございます……」
詩織とおばあちゃんの波状攻撃。いらないとは言えない雰囲気に持ち込まれてしまい、風子は結局不気味なラジオを引き取らされてしまった……。
その日の夜。
「カエリタイ……ざざざ……。ざざ……カエリタイ……。カエリタイカエリタイ」
「ね、眠れん……」
風子の部屋の片隅に置かれた詩織のおばあちゃんのラジオ。そこからずっと声が聞こえ続けている。
「私の未熟な巫女の力じゃ祓えないんだよね……」
「かと言って、ウチの親はこれも修行の一貫とか言って、心霊関係の問題には協力してくれないし……」
「ラジオを処分しようにも、詩織の言う通り、捨てたら何かありそうで捨てづらいし……」
「ハハハ……詰んだわ……」
風子は引きつった笑顔を浮かべながら、心霊ラジオとの共同生活に絶望していた。その時。
『こちら、廃品回収車です』
『ご不要になったぁ~テレビ、エアコン、冷蔵庫など、ございましたら~。お引き取りいたします~』
「え……?」
深夜1時。真夜中も真夜中。廃品回収車なんて走り回っていた日には、大問題の苦情の嵐であろう時間。それにも関わらず、スピーカーを通したような声で、廃品回収が風子の家の近くを巡回していた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※「なろう」にも重複投稿しています。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる