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第1話 喋るラジオ
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「近頃、おばあちゃんのラジオの調子がおかしいんだけど……。風子ちょっと見てくれない?」
「ラ、ラジオ……?」
風舞風子。高校1年。お昼休みにそんな話を持ち掛けられて、風香は困惑していた。
「私、機械苦手だし、ラジオのことなんか分からんけども……」
「そぉじゃなくって! 風子巫女さんじゃん! 変な現象に詳しそうじゃん!」
「いつもなんか可愛いの着て神社でほうき掃いてたりしてるじゃん! 羨ましい!」
「いや、詩織。あれは家の掃除を押し付けられてるだけだから……」
神社の娘である風子は、巫女として、家のあれやこれやを手伝わされていた。そんな愚痴をクラスで漏らしていたところ、特別な能力がある存在として認知されてしまっていた。
「ラジオが調子悪いってどう調子悪いの……? 修理に出せば良いんじゃない?」
「そういうんじゃなくて! 人の声とか聞こえるんだよぉ!」
「そりゃ聞こえるでしょ……。ラジオなんだから……」
「もーだから違うんだってぇ!」
話が噛み合わない風子とクラスメイト詩織の会話。いつまでも不毛なやり取りが続き、風子は業を煮やしていた。
「はぁ……。分かったよ……。とにかく行ってみるから……」
「そうこなくっちゃ! 放課後よろしく!」
風子は憂鬱な気持ちのまま、放課後を迎えた。そして、詩織に連れられ彼女の家へと向かう。
「こんにちは~。お邪魔します~」
「あら! 詩織のお友達? よく来たわね! 上がって上がって!」
風子を出迎えたのは詩織のおばあちゃん。見た目も若々しく元気ハツラツなおばあちゃんだった。
「ばあちゃん。風子がラジオ見てくれるって!」
「あら! 悪いわねぇ! 長年使ってるからもうおかしくなってるのよ!」
「あ、あの。直せるとかそういうのじゃないので、あまり期待しないでください……」
「大丈夫大丈夫! ほら!」
詩織のおばあちゃんが自慢げに取り出したのは、ツヤツヤボディーの可愛らしい小さなラジオだった。どう見てもまだ開けたばかりのホヤホヤの新品だった。
「もう新しいの買っちゃったから! 壊れてても使わないのよぉ!」
「……おい。ちょっと」
「なぁに? 風子?」
詩織の腕を引っ張り、おばあちゃんから見えないように廊下の角へと連れて行く風子。詩織はどうしたのかとキョトンとしていた。
「新しいラジオもうあるじゃん!? 私、いらなくない!?」
「え~? そんなことないよぉ~!」
「古いラジオ。電源切ってても電池抜いてもずぅ~っと変な声するんだよぉ!」
「そんな気持ち悪いの捨てられないじゃん! 捨てたら呪われそうじゃん!」
「……だから風子に引き取ってもらおうと思って……」
「ええええええ……!?」
一方的にめちゃくちゃなお願いをしてくる詩織。風子はこんなことなら来なければ良かったと、心底後悔していた。
「とにかく一回そのラジオ見てみてよ! 勘違いかもしれないし!」
「うぅ……しょうがないな……。とりあえず見るだけね……」
家まで来てしまいもう断るに断りきれない風子。流されるまま、ラジオを確認することになってしまった。
「ばあちゃん! 古いラジオ風子が見たいって!」
「あら、そうなの? じゃあ見せてあげるわね!」
(もう帰りたい……)
おばあちゃんの部屋から、ついに問題のラジオが姿を現した。年季の入った旧型でボロボロの小型ラジオ。霊感のある風子は、ひと目見ただけですでに異様な空気を感じ取っていた。
「カエリタイ……ざざ……。カエ……ざざざ……カエリタイ」
(めちゃくちゃ怖えええ!!)
ひたすら助けを求めるラジオ。聞かされていた通り、電源は入っておらず、電池も抜かれていた。それなのに、ラジオは雑音を蒔き散らしながらひたすら助けを求めている。
「うん、どう見てもなんか憑いてるねこれ……」
「ゲッ! やっぱりぃ~? じゃあこれよろしくね!」
「……え?」
「ばあちゃん! 詩織があのラジオ欲しいって!」
「あら! そうなの? 良いわよ! 風子ちゃん! おばあちゃんの思い出のラジオ! 大事にしてね!」
「ハ……ハハハ……。ありがとうございます……」
詩織とおばあちゃんの波状攻撃。いらないとは言えない雰囲気に持ち込まれてしまい、風子は結局不気味なラジオを引き取らされてしまった……。
その日の夜。
「カエリタイ……ざざざ……。ざざ……カエリタイ……。カエリタイカエリタイ」
「ね、眠れん……」
風子の部屋の片隅に置かれた詩織のおばあちゃんのラジオ。そこからずっと声が聞こえ続けている。
「私の未熟な巫女の力じゃ祓えないんだよね……」
「かと言って、ウチの親はこれも修行の一貫とか言って、心霊関係の問題には協力してくれないし……」
「ラジオを処分しようにも、詩織の言う通り、捨てたら何かありそうで捨てづらいし……」
「ハハハ……詰んだわ……」
風子は引きつった笑顔を浮かべながら、心霊ラジオとの共同生活に絶望していた。その時。
『こちら、廃品回収車です』
『ご不要になったぁ~テレビ、エアコン、冷蔵庫など、ございましたら~。お引き取りいたします~』
「え……?」
深夜1時。真夜中も真夜中。廃品回収車なんて走り回っていた日には、大問題の苦情の嵐であろう時間。それにも関わらず、スピーカーを通したような声で、廃品回収が風子の家の近くを巡回していた。
「ラ、ラジオ……?」
風舞風子。高校1年。お昼休みにそんな話を持ち掛けられて、風香は困惑していた。
「私、機械苦手だし、ラジオのことなんか分からんけども……」
「そぉじゃなくって! 風子巫女さんじゃん! 変な現象に詳しそうじゃん!」
「いつもなんか可愛いの着て神社でほうき掃いてたりしてるじゃん! 羨ましい!」
「いや、詩織。あれは家の掃除を押し付けられてるだけだから……」
神社の娘である風子は、巫女として、家のあれやこれやを手伝わされていた。そんな愚痴をクラスで漏らしていたところ、特別な能力がある存在として認知されてしまっていた。
「ラジオが調子悪いってどう調子悪いの……? 修理に出せば良いんじゃない?」
「そういうんじゃなくて! 人の声とか聞こえるんだよぉ!」
「そりゃ聞こえるでしょ……。ラジオなんだから……」
「もーだから違うんだってぇ!」
話が噛み合わない風子とクラスメイト詩織の会話。いつまでも不毛なやり取りが続き、風子は業を煮やしていた。
「はぁ……。分かったよ……。とにかく行ってみるから……」
「そうこなくっちゃ! 放課後よろしく!」
風子は憂鬱な気持ちのまま、放課後を迎えた。そして、詩織に連れられ彼女の家へと向かう。
「こんにちは~。お邪魔します~」
「あら! 詩織のお友達? よく来たわね! 上がって上がって!」
風子を出迎えたのは詩織のおばあちゃん。見た目も若々しく元気ハツラツなおばあちゃんだった。
「ばあちゃん。風子がラジオ見てくれるって!」
「あら! 悪いわねぇ! 長年使ってるからもうおかしくなってるのよ!」
「あ、あの。直せるとかそういうのじゃないので、あまり期待しないでください……」
「大丈夫大丈夫! ほら!」
詩織のおばあちゃんが自慢げに取り出したのは、ツヤツヤボディーの可愛らしい小さなラジオだった。どう見てもまだ開けたばかりのホヤホヤの新品だった。
「もう新しいの買っちゃったから! 壊れてても使わないのよぉ!」
「……おい。ちょっと」
「なぁに? 風子?」
詩織の腕を引っ張り、おばあちゃんから見えないように廊下の角へと連れて行く風子。詩織はどうしたのかとキョトンとしていた。
「新しいラジオもうあるじゃん!? 私、いらなくない!?」
「え~? そんなことないよぉ~!」
「古いラジオ。電源切ってても電池抜いてもずぅ~っと変な声するんだよぉ!」
「そんな気持ち悪いの捨てられないじゃん! 捨てたら呪われそうじゃん!」
「……だから風子に引き取ってもらおうと思って……」
「ええええええ……!?」
一方的にめちゃくちゃなお願いをしてくる詩織。風子はこんなことなら来なければ良かったと、心底後悔していた。
「とにかく一回そのラジオ見てみてよ! 勘違いかもしれないし!」
「うぅ……しょうがないな……。とりあえず見るだけね……」
家まで来てしまいもう断るに断りきれない風子。流されるまま、ラジオを確認することになってしまった。
「ばあちゃん! 古いラジオ風子が見たいって!」
「あら、そうなの? じゃあ見せてあげるわね!」
(もう帰りたい……)
おばあちゃんの部屋から、ついに問題のラジオが姿を現した。年季の入った旧型でボロボロの小型ラジオ。霊感のある風子は、ひと目見ただけですでに異様な空気を感じ取っていた。
「カエリタイ……ざざ……。カエ……ざざざ……カエリタイ」
(めちゃくちゃ怖えええ!!)
ひたすら助けを求めるラジオ。聞かされていた通り、電源は入っておらず、電池も抜かれていた。それなのに、ラジオは雑音を蒔き散らしながらひたすら助けを求めている。
「うん、どう見てもなんか憑いてるねこれ……」
「ゲッ! やっぱりぃ~? じゃあこれよろしくね!」
「……え?」
「ばあちゃん! 詩織があのラジオ欲しいって!」
「あら! そうなの? 良いわよ! 風子ちゃん! おばあちゃんの思い出のラジオ! 大事にしてね!」
「ハ……ハハハ……。ありがとうございます……」
詩織とおばあちゃんの波状攻撃。いらないとは言えない雰囲気に持ち込まれてしまい、風子は結局不気味なラジオを引き取らされてしまった……。
その日の夜。
「カエリタイ……ざざざ……。ざざ……カエリタイ……。カエリタイカエリタイ」
「ね、眠れん……」
風子の部屋の片隅に置かれた詩織のおばあちゃんのラジオ。そこからずっと声が聞こえ続けている。
「私の未熟な巫女の力じゃ祓えないんだよね……」
「かと言って、ウチの親はこれも修行の一貫とか言って、心霊関係の問題には協力してくれないし……」
「ラジオを処分しようにも、詩織の言う通り、捨てたら何かありそうで捨てづらいし……」
「ハハハ……詰んだわ……」
風子は引きつった笑顔を浮かべながら、心霊ラジオとの共同生活に絶望していた。その時。
『こちら、廃品回収車です』
『ご不要になったぁ~テレビ、エアコン、冷蔵庫など、ございましたら~。お引き取りいたします~』
「え……?」
深夜1時。真夜中も真夜中。廃品回収車なんて走り回っていた日には、大問題の苦情の嵐であろう時間。それにも関わらず、スピーカーを通したような声で、廃品回収が風子の家の近くを巡回していた。
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