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第3話 巫女とラジオ
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成り行きで不気味なラジオを預かることになってしまった風子。付喪神神の力によって、ラジオは付喪神の少年の姿へと変わっていた。
「わ、私がそのラジオの子預かるんですか……? え……? なんで……?」
「物というのは人間の思いが込もっているっす」
「付喪神神の自分より、物と身近な存在の巫女さんなら、きっと付喪神を導けるはずっす」
「お願いしますっす……。このままだとこの子は、ラジオにも付喪神にもなれないまま苦しみ続けてしまうっす……」
(そ、そんな無茶な……)
クラスメイトから押し付けられたラジオは付喪神と化し、今度は付喪神神から押し付けられようとしている……。
(さすがに男の子なんて預かれないっつーの……! なんとしても断らなければ……)
風子が断る算段を整えようとしていた時、少年化したラジオの視線が目に入った。
(な、何その目は……。やめてよ……そんな目で見ないでぇ……!!)
自分のことを見放そうとしていることに気付いたのか、ラジオは切ない表情で風子のことを見つめている……。
「うぅ……帰りたい……」
(風子負けるな……! ここで負けたら、男の子とひとつ屋根の下で同棲することになるよ……!)
「うぅ~……お姉ちゃん……」
「うぐぅ……!!」
ラジオの視線にノックアウトされた風子。気付いた時にはラジオは風子の傍らに立っていた。
「ワ、ワカリマシタ……」
「おぉー! さすが巫女さんっす! 自分は定期的にこの辺を巡回するようにするので、何かあったら言ってくださいっす」
(うぅ……。なんで私はいつもこうなのか……)
結局、風子は断ることが出来ず、付喪神化したラジオを預かることになってしまった……。どこまでもお人好しな自分に、風子はほとほと呆れていたのだった。
不安そうにしているラジオの手を繋ぎ、風子は家族が寝静まっている中こっそりと家へ帰った。
「うぅ……帰りたい……」
「私、明日学校休みだから、明日お話聞いてあげるから……。大人しくしててね……?」
「帰りたいよぉ……」
(だ、駄目だこりゃ……)
人の姿になっても、部屋の隅でひたすら帰りたいを繰り返すラジオ。結局、風子は眠れぬ夜を過ごすことになってしまった。
翌日。
「ふわぁ……えっと……。それで、ラジオくん。君は一体どこへ帰りたいのかな? もしかして、おばあちゃんの家?」
約束通りラジオの話を聞くことにした風子。心当たりを尋ねてみるが、ラジオは首を横に振っていた。
(そういえば、おばあちゃんの家にいる時にはもうカエリタイって言ってたもんな……。じゃあ一体どこへ帰りたいの……?)
「うぅ……あの頃に帰りたい……」
「あ、あの頃……?」
「おばあちゃんがおばあちゃんになる前の、懐かしい頃に帰りたい……」
「昭和の頃ってこと……?」
今度は首を縦に振ったラジオ。場所ならともかく、過去の時代に帰りたいと言うラジオに、風子は頭を抱えて考え込んでいた。
「うーん……じゃあ、お姉ちゃんと少しお出かけしようか……?」
可能な限りラジオの望みを叶えるため、風子はラジオと共に外出するのだった。
「ここは……?」
人の姿になってから初めての外出に怯えるラジオ。風子の袖を掴みながら、目の前の素朴な外観の建物について尋ねる。
「ここは駄菓子屋さん! ほら、懐かしい物がたくさんあるでしょー?」
風子がラジオを連れて訪れたのは、昔ながらの駄菓子屋だった。年季の入った木造建築、棚に入った品揃え豊富な駄菓子。壁にはスーパーボールやキャラクターのお面なんかも貼り付けられて売られている。
「あら、風子ちゃん。その子は弟さんかしら」
「いやぁ~おばちゃん……。なんというか訳あって預かってる子と言いますか……」
駄菓子屋の店主にラジオのことを当たり障りなく説明する風子。風子はよくこの駄菓子屋を訪れていた。慣れた様子で店内をフラフラと見て回る。
「ほら、ラジオくん。このノスタルジックな雰囲気。昭和成分を補給出来るでしょ?」
「わぁ……!」
「存分に好きなの選んでね! お姉ちゃんが買ってあげるから!」
(まぁ、安いし……)
目を輝かせながら駄菓子を選ぶラジオ。これで少しは気持ちが晴れるだろうと風子はひと安心していた。
ひと通り買い物を終え、いくつかの駄菓子を大事そうに抱えるラジオ。風子は、駄菓子屋の前に設置されているベンチで、なるべく昭和の空気に触れさせたまま、ラジオに駄菓子を楽しんでもらうことにした。
「どう? おいしい?」
コクンと頷くラジオ。きびだんごや海老せんべいを無我夢中で頬張っていた。
(元ラジオとはいえ、こうして見るとただの可愛い男の子ね……)
風子は問題が解決した安堵から、ラジオを愛おしく見つめる余裕も出てきた。付喪神化した小さな身体は、小型ラジオの面影を残していた。
(きっとおばあちゃんにも大事に可愛がられたから、付喪神にまでなったんだろうな……)
「ふぅ……」
「食べ終わった? どう? 満足したでしょ?」
「う、うぅ……」
「へ……?」
昭和の雰囲気を堪能させ、満足そうにしていたラジオだったが、駄菓子を食べ終えるとその表情は暗くなっていた……。
「うぅ~……帰りたいよぉ……。あの頃に帰りたいよぉ~……」
「ええええ……?」
ラジオは再び帰りたいを連呼し始めた。その様子は駄菓子屋を訪れる前よりさらに悪化していた……。
「そ、そんなぁ……。これでやっと解決したと思ってたのにぃ~……」
「どうっすか? 調子は?」
「あ。付喪神神神……」
「だから神がいっこ多いっす……」
泣き出したラジオに困り果てる風子。その風子の元に、ラジオの様子を見に来た付喪神神が姿を現したのだった。
「わ、私がそのラジオの子預かるんですか……? え……? なんで……?」
「物というのは人間の思いが込もっているっす」
「付喪神神の自分より、物と身近な存在の巫女さんなら、きっと付喪神を導けるはずっす」
「お願いしますっす……。このままだとこの子は、ラジオにも付喪神にもなれないまま苦しみ続けてしまうっす……」
(そ、そんな無茶な……)
クラスメイトから押し付けられたラジオは付喪神と化し、今度は付喪神神から押し付けられようとしている……。
(さすがに男の子なんて預かれないっつーの……! なんとしても断らなければ……)
風子が断る算段を整えようとしていた時、少年化したラジオの視線が目に入った。
(な、何その目は……。やめてよ……そんな目で見ないでぇ……!!)
自分のことを見放そうとしていることに気付いたのか、ラジオは切ない表情で風子のことを見つめている……。
「うぅ……帰りたい……」
(風子負けるな……! ここで負けたら、男の子とひとつ屋根の下で同棲することになるよ……!)
「うぅ~……お姉ちゃん……」
「うぐぅ……!!」
ラジオの視線にノックアウトされた風子。気付いた時にはラジオは風子の傍らに立っていた。
「ワ、ワカリマシタ……」
「おぉー! さすが巫女さんっす! 自分は定期的にこの辺を巡回するようにするので、何かあったら言ってくださいっす」
(うぅ……。なんで私はいつもこうなのか……)
結局、風子は断ることが出来ず、付喪神化したラジオを預かることになってしまった……。どこまでもお人好しな自分に、風子はほとほと呆れていたのだった。
不安そうにしているラジオの手を繋ぎ、風子は家族が寝静まっている中こっそりと家へ帰った。
「うぅ……帰りたい……」
「私、明日学校休みだから、明日お話聞いてあげるから……。大人しくしててね……?」
「帰りたいよぉ……」
(だ、駄目だこりゃ……)
人の姿になっても、部屋の隅でひたすら帰りたいを繰り返すラジオ。結局、風子は眠れぬ夜を過ごすことになってしまった。
翌日。
「ふわぁ……えっと……。それで、ラジオくん。君は一体どこへ帰りたいのかな? もしかして、おばあちゃんの家?」
約束通りラジオの話を聞くことにした風子。心当たりを尋ねてみるが、ラジオは首を横に振っていた。
(そういえば、おばあちゃんの家にいる時にはもうカエリタイって言ってたもんな……。じゃあ一体どこへ帰りたいの……?)
「うぅ……あの頃に帰りたい……」
「あ、あの頃……?」
「おばあちゃんがおばあちゃんになる前の、懐かしい頃に帰りたい……」
「昭和の頃ってこと……?」
今度は首を縦に振ったラジオ。場所ならともかく、過去の時代に帰りたいと言うラジオに、風子は頭を抱えて考え込んでいた。
「うーん……じゃあ、お姉ちゃんと少しお出かけしようか……?」
可能な限りラジオの望みを叶えるため、風子はラジオと共に外出するのだった。
「ここは……?」
人の姿になってから初めての外出に怯えるラジオ。風子の袖を掴みながら、目の前の素朴な外観の建物について尋ねる。
「ここは駄菓子屋さん! ほら、懐かしい物がたくさんあるでしょー?」
風子がラジオを連れて訪れたのは、昔ながらの駄菓子屋だった。年季の入った木造建築、棚に入った品揃え豊富な駄菓子。壁にはスーパーボールやキャラクターのお面なんかも貼り付けられて売られている。
「あら、風子ちゃん。その子は弟さんかしら」
「いやぁ~おばちゃん……。なんというか訳あって預かってる子と言いますか……」
駄菓子屋の店主にラジオのことを当たり障りなく説明する風子。風子はよくこの駄菓子屋を訪れていた。慣れた様子で店内をフラフラと見て回る。
「ほら、ラジオくん。このノスタルジックな雰囲気。昭和成分を補給出来るでしょ?」
「わぁ……!」
「存分に好きなの選んでね! お姉ちゃんが買ってあげるから!」
(まぁ、安いし……)
目を輝かせながら駄菓子を選ぶラジオ。これで少しは気持ちが晴れるだろうと風子はひと安心していた。
ひと通り買い物を終え、いくつかの駄菓子を大事そうに抱えるラジオ。風子は、駄菓子屋の前に設置されているベンチで、なるべく昭和の空気に触れさせたまま、ラジオに駄菓子を楽しんでもらうことにした。
「どう? おいしい?」
コクンと頷くラジオ。きびだんごや海老せんべいを無我夢中で頬張っていた。
(元ラジオとはいえ、こうして見るとただの可愛い男の子ね……)
風子は問題が解決した安堵から、ラジオを愛おしく見つめる余裕も出てきた。付喪神化した小さな身体は、小型ラジオの面影を残していた。
(きっとおばあちゃんにも大事に可愛がられたから、付喪神にまでなったんだろうな……)
「ふぅ……」
「食べ終わった? どう? 満足したでしょ?」
「う、うぅ……」
「へ……?」
昭和の雰囲気を堪能させ、満足そうにしていたラジオだったが、駄菓子を食べ終えるとその表情は暗くなっていた……。
「うぅ~……帰りたいよぉ……。あの頃に帰りたいよぉ~……」
「ええええ……?」
ラジオは再び帰りたいを連呼し始めた。その様子は駄菓子屋を訪れる前よりさらに悪化していた……。
「そ、そんなぁ……。これでやっと解決したと思ってたのにぃ~……」
「どうっすか? 調子は?」
「あ。付喪神神神……」
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