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雪女、ギャルと会う。
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雪山の森の中を徘徊していると、目の前に巨大な熊が見えた。この時期は大体大人しく寝ているのだが、たまに何かの拍子に起きている子がいるのだ。
気が立っているのか、私を見つけると私を攻撃対象として睨み付けてきた。
私はやれやれと思いながら熊を見る。
『グアウウウウウウッ!!』
唸り声を上げながら熊は突進してきた。
私は熊に向かって右手をかざす。
『パキンッ。』
熊は全身が凍り付いていた。ピクリとも動かなくなった。私が凍らせたから。
『妖怪。それは古くからその存在が
確認されている人ならざる者たち。
彼らは人間に友好的な者もいれば、
危害を及ぼすことこそが存在意義と
なっている者もいる。』
『そんな妖怪の中で幾つも伝承が
語られている存在のひとつ。雪女。
雪女は白装束を身に纏い、
人間を凍死させる危険な妖怪という
イメージが強い。』
『彼女はそんな危険な妖怪の一人だった。』
私は、物心ついた時から雪山の中で暮らしていた。寒さは全く感じない。そして、冷気を操る能力を持っていた。それが私には普通だった。
私の周りには仲間や家族なんて者はなく、何もない雪山の中、ずっと一人で過ごしていた。それはもう寂しくて寂しくて気が狂いそうだった。
そんな生活に耐えられなくなった私は雪山を降り、人間という存在を知る。自分と姿形は似ている。仲良く出来るのではないかと思った。
しかし、現実は非情だった。
話し掛けようとするとみんな悲鳴を上げて逃げてしまう。私の白装束がどうやら恐怖心を煽るようだった。
しかし、私はこれしか服を持っていないのだ…。他の服が欲しくても、人間と接触出来なければ手に入れることは出来ない。
私は詰んだと思った…。
雪山にいても何もないので精神的におかしくなりそうになる。寂しくて街へと降りれば人に見つかり怖がられる。
そんな日々を過ごしていたある日、私はあてもなく、夕暮れ時にフラフラとひと気のない路地を歩いていた。
そうすると、一人の少女が小型の機械をいじりながら段差に座っていたのが目に入った。 私はまた怖がられるだろうな…と思い、彼女に見つかる前に踵を返そうとした。
「もしかしてあんた雪女?」
あっさりと声を掛けてきた少女に、私はビックリして2度見してしまう。
「ぶっ、何そのリアクション!
マジウケるんだけど!」
なんかテンションの高い少女だった…。あまりにも私との温度差があるので、私は話し掛けてくれた喜びよりも、どう接したら良いのか分からず、どんどん彼女と距離を取り、物陰に隠れて様子を伺う。
「ちょ…ちょっとちょっと!
隠れなくてもいーじゃん!」
「あたし、怖くないよ?ほれ!」
彼女は両手を広げて、自分は武器など何も持ってないとアピールした。
「ふふふっ…!」
私がいつも怖がられる側なのに、怖くないと言われたのは初めてだったので、なんだかおかしくて笑ってしまった。
「笑ってくれた!よっしゃ!
ほれほれ、こっち来なよ!」
異様に馴れ馴れしい彼女は、私を隣に座らせてくれた。
「うわっ!冷たっ!
マジもんの雪女じゃん!」
私の体温に驚き飛び上がる少女。なんだか申し訳ないが、普段からこんな感じなので、我慢してもらうしかなかった。
「こんなとこでなにしてんの?」
彼女にふと聞かれた。なにしてる…?自分でも自分が何してるのか分からなかった。
「い…いえ、別に何も…。」
そう答えるしかなかった。
「あっそー。ふ~ん…。」
私の回答に物珍しげな顔をしながら、小型の機械を何やらいじっている。さっきからずっと気になっていたので、私は思わず聞いてしまう。
「あ…あの…。
なんですかそれは…?」
「え?…これのこと?
これはスマホ!
なんかいろいろ出来んの!」
私は説明になっていない説明を聞きながら、とりあえず納得したフリをする…。
「はぁ…。スマホ…。」
「スマホ知らないってマジヤバイね!
人間のことあんま知らない系な感じ?」
「は、はい…。知らない系な感じです…。」
「マジかー…。じゃ、あたしが
教えてあげるよ!WINEやってる?」
「わ…わいん…?」
「あー!ごめんごめん!
やってる訳ないっつーの!
スマホ知らないんだから!」
「馬鹿だね!あたし!あはははっ!」
勝手にいろいろ喋って勝手に一人で笑っている…。
よく分からないが、優しくて親切な人だということは分かった。
「んじゃそうだな~…。
ここで待ち合わせでいっか?」
「このくらいの時間に
気が向いた時にここに来てよ!」
「あたしも気が向いたら来るから!
来ない時もあるかもしんないけど、
そん時はごめんね!あははっ!」
「は、はい…。分かりました…。」
彼女のペースで全てが決まっていく…。
だけど、私は他に何もすることなんてないので、彼女に委ねることにした。
「んじゃまたねー!」
立ち去ろうとする彼女。私は大事なことを聞いていなかったので急いで呼び止める。
「あ、あの…!お名前は…?」
「あー!だよねー!
名前言ってないつーの!」
「あたしは朝風 鈴子!
じゃあねー!バイバーイ!」
さらっと名乗り、そしてまたすぐ去っていく鈴子ちゃん。
私は初めて人間が話し掛けてくれた喜びで、暖かい気持ちで胸をぽかぽかさせながら、山の中へと帰っていった。
気が立っているのか、私を見つけると私を攻撃対象として睨み付けてきた。
私はやれやれと思いながら熊を見る。
『グアウウウウウウッ!!』
唸り声を上げながら熊は突進してきた。
私は熊に向かって右手をかざす。
『パキンッ。』
熊は全身が凍り付いていた。ピクリとも動かなくなった。私が凍らせたから。
『妖怪。それは古くからその存在が
確認されている人ならざる者たち。
彼らは人間に友好的な者もいれば、
危害を及ぼすことこそが存在意義と
なっている者もいる。』
『そんな妖怪の中で幾つも伝承が
語られている存在のひとつ。雪女。
雪女は白装束を身に纏い、
人間を凍死させる危険な妖怪という
イメージが強い。』
『彼女はそんな危険な妖怪の一人だった。』
私は、物心ついた時から雪山の中で暮らしていた。寒さは全く感じない。そして、冷気を操る能力を持っていた。それが私には普通だった。
私の周りには仲間や家族なんて者はなく、何もない雪山の中、ずっと一人で過ごしていた。それはもう寂しくて寂しくて気が狂いそうだった。
そんな生活に耐えられなくなった私は雪山を降り、人間という存在を知る。自分と姿形は似ている。仲良く出来るのではないかと思った。
しかし、現実は非情だった。
話し掛けようとするとみんな悲鳴を上げて逃げてしまう。私の白装束がどうやら恐怖心を煽るようだった。
しかし、私はこれしか服を持っていないのだ…。他の服が欲しくても、人間と接触出来なければ手に入れることは出来ない。
私は詰んだと思った…。
雪山にいても何もないので精神的におかしくなりそうになる。寂しくて街へと降りれば人に見つかり怖がられる。
そんな日々を過ごしていたある日、私はあてもなく、夕暮れ時にフラフラとひと気のない路地を歩いていた。
そうすると、一人の少女が小型の機械をいじりながら段差に座っていたのが目に入った。 私はまた怖がられるだろうな…と思い、彼女に見つかる前に踵を返そうとした。
「もしかしてあんた雪女?」
あっさりと声を掛けてきた少女に、私はビックリして2度見してしまう。
「ぶっ、何そのリアクション!
マジウケるんだけど!」
なんかテンションの高い少女だった…。あまりにも私との温度差があるので、私は話し掛けてくれた喜びよりも、どう接したら良いのか分からず、どんどん彼女と距離を取り、物陰に隠れて様子を伺う。
「ちょ…ちょっとちょっと!
隠れなくてもいーじゃん!」
「あたし、怖くないよ?ほれ!」
彼女は両手を広げて、自分は武器など何も持ってないとアピールした。
「ふふふっ…!」
私がいつも怖がられる側なのに、怖くないと言われたのは初めてだったので、なんだかおかしくて笑ってしまった。
「笑ってくれた!よっしゃ!
ほれほれ、こっち来なよ!」
異様に馴れ馴れしい彼女は、私を隣に座らせてくれた。
「うわっ!冷たっ!
マジもんの雪女じゃん!」
私の体温に驚き飛び上がる少女。なんだか申し訳ないが、普段からこんな感じなので、我慢してもらうしかなかった。
「こんなとこでなにしてんの?」
彼女にふと聞かれた。なにしてる…?自分でも自分が何してるのか分からなかった。
「い…いえ、別に何も…。」
そう答えるしかなかった。
「あっそー。ふ~ん…。」
私の回答に物珍しげな顔をしながら、小型の機械を何やらいじっている。さっきからずっと気になっていたので、私は思わず聞いてしまう。
「あ…あの…。
なんですかそれは…?」
「え?…これのこと?
これはスマホ!
なんかいろいろ出来んの!」
私は説明になっていない説明を聞きながら、とりあえず納得したフリをする…。
「はぁ…。スマホ…。」
「スマホ知らないってマジヤバイね!
人間のことあんま知らない系な感じ?」
「は、はい…。知らない系な感じです…。」
「マジかー…。じゃ、あたしが
教えてあげるよ!WINEやってる?」
「わ…わいん…?」
「あー!ごめんごめん!
やってる訳ないっつーの!
スマホ知らないんだから!」
「馬鹿だね!あたし!あはははっ!」
勝手にいろいろ喋って勝手に一人で笑っている…。
よく分からないが、優しくて親切な人だということは分かった。
「んじゃそうだな~…。
ここで待ち合わせでいっか?」
「このくらいの時間に
気が向いた時にここに来てよ!」
「あたしも気が向いたら来るから!
来ない時もあるかもしんないけど、
そん時はごめんね!あははっ!」
「は、はい…。分かりました…。」
彼女のペースで全てが決まっていく…。
だけど、私は他に何もすることなんてないので、彼女に委ねることにした。
「んじゃまたねー!」
立ち去ろうとする彼女。私は大事なことを聞いていなかったので急いで呼び止める。
「あ、あの…!お名前は…?」
「あー!だよねー!
名前言ってないつーの!」
「あたしは朝風 鈴子!
じゃあねー!バイバーイ!」
さらっと名乗り、そしてまたすぐ去っていく鈴子ちゃん。
私は初めて人間が話し掛けてくれた喜びで、暖かい気持ちで胸をぽかぽかさせながら、山の中へと帰っていった。
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