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エリート、狼狽える。
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そよ風が心地よく全身をくすぐる。
今日は天気が良い。
絶好の討伐日和である。
「魔法学校のエリートであるあたしが、
貴女をじきじきに指導するのです。
しっかりと学びなさい。」
「は、はい!リン先輩!」
あたしはリン・フロウナ
魔法学校のエリート学生。
いつも成績優秀。容姿端麗。空前絶後。
みんなの憧れの的の美少女魔法使い。
今日は可愛い後輩の女の子を連れて、魔法の力をみせびら…じゃなかった。指導してあげようと魔物がよく出現する平原まで来たのだった。
「ここ本当に魔物が
出る場所なんすよね…?
私怖いっす…。」
後輩ちゃんが怯えている。可愛い。
あたしはこの後輩ちゃん、モエ・プランティアちゃんを気に入っている。
いつもあたしのことを先輩と呼び慕ってくれるのだ。そりゃもう目に入れても痛くないほどだった。
「大丈夫です。このあたしが。
貴女を守りますから。」
ふんぞり返って胸を張る。
カッコいいところを見せて、先輩ポイントを稼がなければ。うふふ。
魔法学校とは、その名の通り魔法を学び、魔物と戦うための力を身に付ける学校である。
この世界には魔法の力が溢れている。その影響を受けやすい生物は、時として人間に危害を加える危険な魔物と化すことがあるのだ。
魔法学生には適切な魔物と戦える目安として、F~Sのランクに分けられ強さを判定される。
あたしはその魔法学校の中のAランクなのである。
上から2番目。すなわち優秀なのである。
ちなみに後輩ちゃんはEランク。まだまだ可愛い新米ちゃんだ。
だからこそ、Aランクのあたしがしっかりお手本を見せてあげて、彼女を育成してあげるのだ。そういう口実で親睦を深めたい(本音)。
「さて、そろそろ魔物が
出現しやすいポイントに
到着します。気を付けて。」
「は、はいっす…。」
この辺に出る魔物は強くてもせいぜいCランク止まり。Aランクのあたしにとってはまぁウォーミングアップ程度の退屈な相手なのだが。
しかし、後輩ちゃんの安全を考えれば、このくらいがベストであろう。
あたしは手頃な魔物がいないか品定めをする。あれは弱すぎる。あれもかなり弱い…。後輩ちゃんに良い格好を見せるには役不足すぎる…。
せめてCランクの魔物が欲しいところである。
仕方ない。あれを使うか。
あたしは懐から紫色の細長い石を取り出す。強い魔物はこの石が発する魔力に引き寄せられやすい。当然、危険もあるのでむやみやたらと使う物ではないのだが、まぁここなら大丈夫だろ。
あたしは右腕を伸ばし、石を出来るだけ高く掲げる。そしてあたしの魔力を石に込め、石の力を増幅させる。
綺麗な紫色の光が辺りを照らす。さぁ来なさい。Cランクの魔物。力が出来るだけ遠くに届くように願いつつ、特に意味はないが石をふりふりと振る。
しかし、なかなか来ない。後輩ちゃんにカッコ悪いところは見せられない。さっさと来なさいよ。
あたしは苛立ち始めた。
「あ…あのう、リン先輩…。」
「あ、ちょっと待ってね…。
もうすぐ来るから…。」
「う、上…。」
「上?」
視界に入ってなかっただけで魔物は来ていた。しかもかなり大型の魔物。こ、これは…。
「Aランク…?」
見た感じあたしと同じランクの魔物だった。
大きな翼を羽ばたかせる四足の獣型の魔物。爪と牙は大きく鋭い。体格もガッシリしている。
なんでこんなところにAランクがと思ったが、来てしまったのだからそんなことを考えている場合ではない。
本腰を入れて戦わないと勝てる相手ではなかった。なんとか倒さなければ…!
「モエちゃん!離れて!」
「は、はいっす…!」
後輩ちゃんを離れさせ、あたしは全力で応戦するため魔力を溜める。
『グオオオオオオオッ!!』
魔物の咆哮で耳が痛い…!あたしは思わず魔力を溜めるのを中断して耳を塞いでしまった。
その隙を狙うかのように、魔物が上空から爪を振り下ろしてきた…!
『ズドォッ…!!』
「くっ…!」
あたしはなんとか攻撃をかわして、再び魔力を溜めることに専念するが…。
『グオオオオオオオッ!!』
魔物が吼える。とにかくうるさい…!!
Aランクの魔物が相手となると、魔力をある程度溜めて放出しないとダメージを与えられる威力は確保出来ない。
それなのに咆哮のせいで集中出来ない…!かなり厄介な相手だった…!
「くっ…ブリズ!!」
あたしはなんとか溜められた分の魔力で魔法攻撃を試みる。無数の氷の刃が魔物めがけて飛んでいくが…。
『ビュシュシュシュゥッ』
『グオアアアアアアッ!!』
浅い…ッ!!氷の刃が魔物の皮膚に弾かれる…!並大抵の魔法は跳ね返される硬い皮膚をしている…!
「せ…せんぱぁい…。」
後輩ちゃんが心配そうに見つめている…。
くそっ!こんな奴さっさとやっつけて後輩ちゃんにカッコいいところ見せたいのに…!
落ち着け…!頭を使え…!あたしは優秀なAランクのエリート魔法学生なんだ…!
…そうだ。
あたしはさっき魔物を呼ぶのに使った紫の石を取り出す。こいつを使って魔物の注意を逸らそうと考えた。
石に微量の魔力を流す。また危険な魔物を呼びかねないので細心の注意を払う。
「それっ!」
石を遠くに投げる…。食い付いてくれと願った。
『グアアアアアッ!!』
思惑通り、魔物は石の方に引き寄せられた…!よしっ!このチャンスを逃す訳にはいかない!
あたしは急いで込められるだけの魔力を両手に込める。最大の力で撃てる魔力は溜まった…!
「喰らいなさいっ!
ブリズオンッ!!」
風の魔法と氷の魔法の合わせ技、ブリズオンを唱えた。氷を纏った暴風の塊が魔物を襲う。皮膚を抉るかのようにガリガリという音を立てながら、暴風の塊は回転し続けた…!
『ギィアアアアアアアアッ!!』
効いた!が、倒し切れない…!!
魔物が激高し、あたしに向かって突進してきた…!
あたしは回避しようと身構えるが…。
魔物は急に方向転換した。
「…え?」
「後輩ちゃん…ッ!!」
魔物が後輩ちゃんの方に向かってしまった…!
マズい…!あたしでも手を焼いている魔物だ。後輩ちゃんに対処出来る訳がない…!
あたしは魔力を込めながら後悔していた…。カッコつけたい、ただそれだけのために後輩ちゃんをこんな危険に晒してしまったのだ…。自分の愚かさに苛立っていた…。
なんとしても守らなければ…!!
あたしが再びブリズオンを唱えようとしたその時だった。
『パキンッ。』
後輩ちゃんの前で魔物は凍り付いていた…。
あたしは今、暴風の魔法を使おうとしていた。
あたしが放った魔法ではない。
後輩ちゃんは植物の魔法使い。氷とは相性最悪だった。
そもそもAランクの魔物を一瞬で凍らせるなんて…そんなのSランクの魔法学生じゃないとありえなかった。
じゃあ、一体誰が…?
後輩ちゃんの近くに、黒髪で白い服を着た女の子が立っていた。
「せ、先輩…!助けてくれて
ありがとうございますっす…!」
後輩ちゃんがあたしの魔法ではないことに気付かずに、あたしにお礼を言ってきた…。
あたしは自分じゃないとは言いづらかったので、なんとなくそのまま自分の手柄にしてしまったが…やはり今のはあの女の子の魔法だろうか…。
「あ、あなたは一体誰ですか?」
あたしはたまらずその子に尋ねた。
「雪女。」
「ゆ、雪…女?」
あまりにもそのまんまの回答に、あたしはポカンとしていた…。
今日は天気が良い。
絶好の討伐日和である。
「魔法学校のエリートであるあたしが、
貴女をじきじきに指導するのです。
しっかりと学びなさい。」
「は、はい!リン先輩!」
あたしはリン・フロウナ
魔法学校のエリート学生。
いつも成績優秀。容姿端麗。空前絶後。
みんなの憧れの的の美少女魔法使い。
今日は可愛い後輩の女の子を連れて、魔法の力をみせびら…じゃなかった。指導してあげようと魔物がよく出現する平原まで来たのだった。
「ここ本当に魔物が
出る場所なんすよね…?
私怖いっす…。」
後輩ちゃんが怯えている。可愛い。
あたしはこの後輩ちゃん、モエ・プランティアちゃんを気に入っている。
いつもあたしのことを先輩と呼び慕ってくれるのだ。そりゃもう目に入れても痛くないほどだった。
「大丈夫です。このあたしが。
貴女を守りますから。」
ふんぞり返って胸を張る。
カッコいいところを見せて、先輩ポイントを稼がなければ。うふふ。
魔法学校とは、その名の通り魔法を学び、魔物と戦うための力を身に付ける学校である。
この世界には魔法の力が溢れている。その影響を受けやすい生物は、時として人間に危害を加える危険な魔物と化すことがあるのだ。
魔法学生には適切な魔物と戦える目安として、F~Sのランクに分けられ強さを判定される。
あたしはその魔法学校の中のAランクなのである。
上から2番目。すなわち優秀なのである。
ちなみに後輩ちゃんはEランク。まだまだ可愛い新米ちゃんだ。
だからこそ、Aランクのあたしがしっかりお手本を見せてあげて、彼女を育成してあげるのだ。そういう口実で親睦を深めたい(本音)。
「さて、そろそろ魔物が
出現しやすいポイントに
到着します。気を付けて。」
「は、はいっす…。」
この辺に出る魔物は強くてもせいぜいCランク止まり。Aランクのあたしにとってはまぁウォーミングアップ程度の退屈な相手なのだが。
しかし、後輩ちゃんの安全を考えれば、このくらいがベストであろう。
あたしは手頃な魔物がいないか品定めをする。あれは弱すぎる。あれもかなり弱い…。後輩ちゃんに良い格好を見せるには役不足すぎる…。
せめてCランクの魔物が欲しいところである。
仕方ない。あれを使うか。
あたしは懐から紫色の細長い石を取り出す。強い魔物はこの石が発する魔力に引き寄せられやすい。当然、危険もあるのでむやみやたらと使う物ではないのだが、まぁここなら大丈夫だろ。
あたしは右腕を伸ばし、石を出来るだけ高く掲げる。そしてあたしの魔力を石に込め、石の力を増幅させる。
綺麗な紫色の光が辺りを照らす。さぁ来なさい。Cランクの魔物。力が出来るだけ遠くに届くように願いつつ、特に意味はないが石をふりふりと振る。
しかし、なかなか来ない。後輩ちゃんにカッコ悪いところは見せられない。さっさと来なさいよ。
あたしは苛立ち始めた。
「あ…あのう、リン先輩…。」
「あ、ちょっと待ってね…。
もうすぐ来るから…。」
「う、上…。」
「上?」
視界に入ってなかっただけで魔物は来ていた。しかもかなり大型の魔物。こ、これは…。
「Aランク…?」
見た感じあたしと同じランクの魔物だった。
大きな翼を羽ばたかせる四足の獣型の魔物。爪と牙は大きく鋭い。体格もガッシリしている。
なんでこんなところにAランクがと思ったが、来てしまったのだからそんなことを考えている場合ではない。
本腰を入れて戦わないと勝てる相手ではなかった。なんとか倒さなければ…!
「モエちゃん!離れて!」
「は、はいっす…!」
後輩ちゃんを離れさせ、あたしは全力で応戦するため魔力を溜める。
『グオオオオオオオッ!!』
魔物の咆哮で耳が痛い…!あたしは思わず魔力を溜めるのを中断して耳を塞いでしまった。
その隙を狙うかのように、魔物が上空から爪を振り下ろしてきた…!
『ズドォッ…!!』
「くっ…!」
あたしはなんとか攻撃をかわして、再び魔力を溜めることに専念するが…。
『グオオオオオオオッ!!』
魔物が吼える。とにかくうるさい…!!
Aランクの魔物が相手となると、魔力をある程度溜めて放出しないとダメージを与えられる威力は確保出来ない。
それなのに咆哮のせいで集中出来ない…!かなり厄介な相手だった…!
「くっ…ブリズ!!」
あたしはなんとか溜められた分の魔力で魔法攻撃を試みる。無数の氷の刃が魔物めがけて飛んでいくが…。
『ビュシュシュシュゥッ』
『グオアアアアアアッ!!』
浅い…ッ!!氷の刃が魔物の皮膚に弾かれる…!並大抵の魔法は跳ね返される硬い皮膚をしている…!
「せ…せんぱぁい…。」
後輩ちゃんが心配そうに見つめている…。
くそっ!こんな奴さっさとやっつけて後輩ちゃんにカッコいいところ見せたいのに…!
落ち着け…!頭を使え…!あたしは優秀なAランクのエリート魔法学生なんだ…!
…そうだ。
あたしはさっき魔物を呼ぶのに使った紫の石を取り出す。こいつを使って魔物の注意を逸らそうと考えた。
石に微量の魔力を流す。また危険な魔物を呼びかねないので細心の注意を払う。
「それっ!」
石を遠くに投げる…。食い付いてくれと願った。
『グアアアアアッ!!』
思惑通り、魔物は石の方に引き寄せられた…!よしっ!このチャンスを逃す訳にはいかない!
あたしは急いで込められるだけの魔力を両手に込める。最大の力で撃てる魔力は溜まった…!
「喰らいなさいっ!
ブリズオンッ!!」
風の魔法と氷の魔法の合わせ技、ブリズオンを唱えた。氷を纏った暴風の塊が魔物を襲う。皮膚を抉るかのようにガリガリという音を立てながら、暴風の塊は回転し続けた…!
『ギィアアアアアアアアッ!!』
効いた!が、倒し切れない…!!
魔物が激高し、あたしに向かって突進してきた…!
あたしは回避しようと身構えるが…。
魔物は急に方向転換した。
「…え?」
「後輩ちゃん…ッ!!」
魔物が後輩ちゃんの方に向かってしまった…!
マズい…!あたしでも手を焼いている魔物だ。後輩ちゃんに対処出来る訳がない…!
あたしは魔力を込めながら後悔していた…。カッコつけたい、ただそれだけのために後輩ちゃんをこんな危険に晒してしまったのだ…。自分の愚かさに苛立っていた…。
なんとしても守らなければ…!!
あたしが再びブリズオンを唱えようとしたその時だった。
『パキンッ。』
後輩ちゃんの前で魔物は凍り付いていた…。
あたしは今、暴風の魔法を使おうとしていた。
あたしが放った魔法ではない。
後輩ちゃんは植物の魔法使い。氷とは相性最悪だった。
そもそもAランクの魔物を一瞬で凍らせるなんて…そんなのSランクの魔法学生じゃないとありえなかった。
じゃあ、一体誰が…?
後輩ちゃんの近くに、黒髪で白い服を着た女の子が立っていた。
「せ、先輩…!助けてくれて
ありがとうございますっす…!」
後輩ちゃんがあたしの魔法ではないことに気付かずに、あたしにお礼を言ってきた…。
あたしは自分じゃないとは言いづらかったので、なんとなくそのまま自分の手柄にしてしまったが…やはり今のはあの女の子の魔法だろうか…。
「あ、あなたは一体誰ですか?」
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