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雪女、転生する。
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…サアァ。チュンチュン。
目を開けると青空が広がっていた。
体を風と草花がくすぐる感覚。
いつも私が目覚めるのはゴツゴツした洞窟の中だったので、こんな気持ちの良い目覚めは初めてだった。
起き上がって周りを見ると遠くに大きな山。大きな湖。大きなお城なんかも見える。
とにかく何もかも大きかった。
「どこだろうここ…。」
私は確かに日没後の薄暗い街中でトラックに轢かれたはずだった。また変な夢でも見ているのかと思った。
「……?」
自分の体の違和感に気付く。妙に温かい。
上手く言えないけど、なんだか生きているという感覚がした。
むしろ死んだはずなのに。
自分の腕を見てみる。綺麗な肌色だ。
私の腕は完全な真っ白のはずだった。どう見ても人間の腕の色。誰の腕だろうこれは。
「生まれ変わった…?」
そうとしか思えなかった。
鈴子ちゃんはよく漫画やアニメの話をしてくれたので、そういう現象があることは知っていた。
当然、お話の中のことなので、現実に起こるかどうかなんて知る由もなかった。
体を見た感じ性別は変わっていない。女のまま。
肌の色が違うくらいだった。
生まれ変わったのなら、氷の能力はどうなったのだろう。それが気になった。私はとにかくあの能力とさよならしたかった。
少し歩くと、目の前に大きな川が見えた。ちょうど良かった。
もし、もう私に能力が無いのなら、川を凍らせることは不可能。それを願って川に向けて手をかざした。
『バキンッ。』
凍った。完全に凍った。
むしろ、より強力に。大きな川の向こう岸まで凍っているのが見えた。
私は落胆した…。せっかく生まれ変わったのに、何故一番いらない物がそのままなのかと。
これでは、私は鈴子ちゃんを失い、別の世界でまたひとりぼっちになっただけだった。
鈴子ちゃんはあれからどうなっただろう。
友達を自称する少女3人組。
追い払うことには成功したが、私がいなくなった後にまたいじめられていないか心配だった。
会いたかった。彼女だけが私の救いだった。
しかしそれはもう叶わない。
仮にこの世界から元の世界に戻れたとしても、氷の能力がある限り、彼女を危険に晒すことになる。
夢も希望もありはしなかった。
「あははは…。」
私は自暴自棄になりながら、自分で凍らせた川の上を歩いて向こう岸まで渡った。
目を開けると青空が広がっていた。
体を風と草花がくすぐる感覚。
いつも私が目覚めるのはゴツゴツした洞窟の中だったので、こんな気持ちの良い目覚めは初めてだった。
起き上がって周りを見ると遠くに大きな山。大きな湖。大きなお城なんかも見える。
とにかく何もかも大きかった。
「どこだろうここ…。」
私は確かに日没後の薄暗い街中でトラックに轢かれたはずだった。また変な夢でも見ているのかと思った。
「……?」
自分の体の違和感に気付く。妙に温かい。
上手く言えないけど、なんだか生きているという感覚がした。
むしろ死んだはずなのに。
自分の腕を見てみる。綺麗な肌色だ。
私の腕は完全な真っ白のはずだった。どう見ても人間の腕の色。誰の腕だろうこれは。
「生まれ変わった…?」
そうとしか思えなかった。
鈴子ちゃんはよく漫画やアニメの話をしてくれたので、そういう現象があることは知っていた。
当然、お話の中のことなので、現実に起こるかどうかなんて知る由もなかった。
体を見た感じ性別は変わっていない。女のまま。
肌の色が違うくらいだった。
生まれ変わったのなら、氷の能力はどうなったのだろう。それが気になった。私はとにかくあの能力とさよならしたかった。
少し歩くと、目の前に大きな川が見えた。ちょうど良かった。
もし、もう私に能力が無いのなら、川を凍らせることは不可能。それを願って川に向けて手をかざした。
『バキンッ。』
凍った。完全に凍った。
むしろ、より強力に。大きな川の向こう岸まで凍っているのが見えた。
私は落胆した…。せっかく生まれ変わったのに、何故一番いらない物がそのままなのかと。
これでは、私は鈴子ちゃんを失い、別の世界でまたひとりぼっちになっただけだった。
鈴子ちゃんはあれからどうなっただろう。
友達を自称する少女3人組。
追い払うことには成功したが、私がいなくなった後にまたいじめられていないか心配だった。
会いたかった。彼女だけが私の救いだった。
しかしそれはもう叶わない。
仮にこの世界から元の世界に戻れたとしても、氷の能力がある限り、彼女を危険に晒すことになる。
夢も希望もありはしなかった。
「あははは…。」
私は自暴自棄になりながら、自分で凍らせた川の上を歩いて向こう岸まで渡った。
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