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廃妃の呪いと死の婚姻8―4
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廃妃の呪いと死の婚姻8―4
たった今しがた侍従の出て行ったばかりの扉を睨みつけながら、クラレンスはもう何度目とも分からぬため息を落とした。
「そのうち扉に穴が開いてしまうことだろうね」
部屋の奥から揶揄い混じりの声が挙がる。苦虫を噛み潰したような表情で視線を遣れば、応接用のソファに深々と身を沈めたヒューバードが、にやにや笑いを向けていた。
「扉を睨みつけても仕方がないだろう。何度侍従を呼びつけたって結果は同じさ」
やれやれと肩をすくめて首を振る彼を睨めつけると、クラレンスは執務用の椅子にどっかと腰かけた。両肘を机について組んだ手に顎を預け、正面の壁を睨めつける。ブスッとした表情を隠そうともしない彼に、ヒューバードは肩を震わせた。
ジェネヴィエーヴから手紙が来ない。
当初は旅先の彼女からの書信を待って文通を再開し、離れ離れに不安な心を慰める心積もりだった。しかし、案の定というかなんといおうか、数週間過ぎた現在に至っても、ジェネヴィエーヴからの音沙汰はなしの礫であった。
「何故・・・」
極小さな声で唸るようにつぶやいたクラレンスの眉間には、深い皺が幾本も刻まれている。道中、不慮の出来事はないか、体調を崩してはいないかと心を乱した一日目二日目、遠く窓の外を眺めつつ今はどのあたりだろうか、食事はとれているかと案じ、もうそろそろ着く頃だろうか、そんな心不安と心配を押し殺し、無事を祈り続けた日々を過ごした日々。その後、ノクターンから無事に到着したというそっけない書簡を落手した。
それから十数日という間、焦れる思いでジェネヴィエーヴからの手紙を待ち続けてきた。
しかし、待てど暮せど待ち焦がれた手紙は届かなかった。もしや、長旅に体調を崩したのではないかと心配したが、そうでないことはすぐに分かった。彼女の消息を知るにはノクターンの何度目かの報告書を待たねばならなかった。その報告内容ですら、クラレンスの懊悩を見かねたヒューバードが、ノクターンに懇願して書かせたものだった。
報告書の最後に数行、ジェネヴィエーヴが数日前に床払いして、今では散策を楽しむまでになっているという文言を目にした瞬間、大方の予想に反して、クラレンスに訪れたのは彼女の動静を知ることができた喜びではなく、膝から崩れ落ちるような虚無感であった。
――これも因果応報というものだろうか。
一晩悩みぬいた末、クラレンスはとうとう筆を執った。彼からの手紙は今頃ジェネヴィエーヴの元に届いていることだろう。今度こそ彼女は返信をくれるだろうか。いやきっと今度こそ書いてくれるに違いない。幼馴染で婚約者である彼からの直筆の手紙を受け取って、それを無視するほど彼女は非情ではない。ひょっと、手紙といってもアリアの代筆で最後にジェネヴィエーヴが一言添え、署名するなんていうこともあるかもしれないが、それでも来もしない手紙を待ち続け、悶々とし続けるよりもずっとましだった。
――昔はこうではなかった。
組んだ手に額を当てて瞳を閉じる。幼い頃、特に婚約してから3、4年の間は今と関係性はまるで対極だった。連日手紙を書き送ってくるのも、溺れるほどにプレゼントを贈って寄こすのも、ほんの僅かの時間を見つけては直接顔を見て話したいからと訪れるのも全てジェネヴィエーヴだった。
お茶会や貴族の子弟が集うちょっとした場でクラレンスを見つけては、蕩けんばかりの笑みを浮かべながら駆け寄ってくる彼女を今でも覚えている。当時は彼女の言動の全てが負担で、嫌悪感すら抱いていた。だから、礼儀の許す範囲で冷淡と批判されない程度に、特に彼女の父であるナイトリー侯爵の機嫌を損ねないように細心の注意を払いながら、出来る限り彼女と距離を置こうと努めていた。贈り物でさえ、なんだかんだと理由を付けては形に残るもののほとんどは返却していた。当のジェネヴィエーヴはといえば、気分を害すどころか、いつだって平静なそぶりを崩すことはなかった。自分の愛情の深さを周囲に見せつけられればそれで満足だとでも言わんばかりに。いつも同じトロリとした笑みを浮かべ、熱に潤んだ瞳でひたすらクラレンスの姿を追い続けていた。
――病的なまでに。
しかし神殿でのあの事故をきっかけに、彼女の異常な執着は鳴りを潜めるようになった。彼女はすっかり変わってしまった。当初はその変貌ぶりに戸惑ったものだった。同時に、日を置かず届けられた手紙や、高価な贈り物の数々もなくなった。王宮で後ろ盾のないクラレンスが必要とする支援は継続され、彼が品位と体面を保ち得る限りの、最低限度以上の潤沢な援助が滞ることはなかった。ただ、送り主がジェネヴィエーヴではなく、ナイトリー侯爵に代わっただけだった。
数年後、彼がジェネヴィエーヴに一方ならぬ思いを寄せるようになると、立場はまるで逆転してしまった。追う者は追われる側に、追われる側は追う側になったのだ。思慕が深まるにつれ、クラレンスの苦悩は年を追う毎に深まっていった。ノクターンの存在も彼の不安に拍車をかけた。クラレンスが初めて妬心を自覚したのもこの頃だった。もしかして、ジェネヴィエーヴは釣った魚には餌をやらない主義なのではないか、などと品のない邪推までもが胸を去来する始末に自嘲した。
クラレンスは静かに瞼を上げると机の上に置かれたペンダントに視線を遣った。片頬をつきながら、右手でそっと蓋を開けると、現れたのは細密画だった。手元にある中でも最も幼い頃のジェネヴィエーヴの肖像画のひとつである。丸みを帯びた頬の輪郭がまだあどけなさを感じさせた。彼女と初めて出会ったのは10歳を漸く一つ二つ超えた頃だった。ナイトリー侯爵に伴われた彼女は、事前に聞いていた年の頃よりは幼く見えた。ほっそりとして、ドレスの重みすら耐えられないのではないかと思うほど華奢な少女だった。顔を上げた彼女を目にして、大人たちはなんて可愛らしいのかしらと称賛の言葉を浴びせたが、なるほどまるでお人形の様に可憐で透き通った美しさに、思わずため息をついたほどだった。
直接言葉を交わしたのは二言、三言程。それでも第一印象は悪くなかった。だから、ほどなくして婚約の打診を受けた時には驚きよりも喜びが勝っていた。母を亡くし、王宮で孤立無援のクラレンスにとって、権勢家のナイトリー侯爵からの申し出は一生に一度歩かないかという僥倖と言ってよかった。後ろ盾のない第3王子など、政略の駒でしかなく、下手をすれば兄弟達の外戚に命を奪われる可能性もあった。心を許せる見方はほんの一握り、息を殺しながら一日を繰り返す毎日。夜眠りに落ちるその瞬間まで、明日のわが身を案じ、まさにこの瞬間に殺手が伸びて来やしないかと、じっと耳をそばだてた。幼い彼は、それが永遠に続くように感じていた。
しかし、それがどうしたことだろう、待っていたのは国内きっての富豪であり、国王の信頼も篤い功臣の一人娘との縁談だった。その上、相手は病弱ではあるものの、探してもちょっと見つからないほどの美貌の少女だった。天にも昇る気持ちとはこのことか、彼は母を失ってこの方味わったことのないほどの己の幸運を噛みしめながら、安心と満足の中で眠りについた。
様子が変わったのは早、二度に顔を合わせた時だった。伏せていた目を上げた当初の彼女は無気力なお人形でなかった。強烈な意思を持つ何か、だった。どろりとした執着を湛えた瞳に、クラレンスの幼い本能は警告を発した。
――コレは危険だ。
心を許してはならない。そんな警句が頭の中でぐるぐると繰り返された。クラレンスの生存本能がジェネヴィエーヴを拒否したと言っても過言でなかった。
そんな彼をジェネヴィエーヴは訝しむことすらしなかった。何の疑問も不満も口にすることはなく、ただ他の少女たちがクラレンスに近づくことだけを執拗に警戒し続けた。
――こんなものは愛情ではない、常軌を逸している。
ある時、クラレンスは発熱して起き上がれなくなった。ジェネヴィエーヴとの定期的なお茶会の前日のことだった。クラレンスは全身全霊でジェネヴィエーヴを拒絶したのだ。彼女は何と思うだろうか。もし寝室まで彼女がやってきたら?高熱に身動きの取れない彼は抗うことすらできないだろう。でも、自分は一体何をこんなに恐れているのだろうか。あの小さな少女のどこを?
幸いなことに、ジェネヴィエーヴの反応は実に淡白なものだった。さして感情のこもらない声音で、残念なこと、お体をおいといくださいませと告げると、過分とも思われる見舞いの品々を送って寄こした。
そうしてクラレンスとジェネヴィエーヴの奇矯な婚約関係が幕を上げた。
それが送られてきたのは婚約を結んで数週間後のことだった。自分自身の姿を刻んだ細密画である。額縁に入れられた肖像画とは別に、いついかなる時でも離さずに身に着けていて欲しい、そんな願いを込めて贈られたそれを、当時のクラレンスは無情に突き返すことはできなかった。しかし、身に着けることはついぞなかった。
そうして月日が流れ、二人の関係に変化が訪れた頃、机の底の最も奥に押しやられたその場所に、例の細密画を見つけたのだった。探してみると、他にも数点、幼い彼女を描いた絵画を見つけることができた。大きくともせいぜい机に飾れる程度の小ぶりなものだった。
――この程度ならば持っていても不愉快ではないだろう、どうせ改めて取り出すこともないのだから。
そんな傲慢な感情を抱いていた当時の自分を呪いたくなる。自分の態度が違っていればもっと親密な関係を築けただろうか。クラレンスはまた溜息をついた。
現在のジェネヴィエーヴの肖像画を手に入れることはできなかったから、最近は時折、こうして幼い頃の彼女の肖像画を取り出しては眺めるようになっていた。
――我ながら見苦しいな
そう自覚し、自虐的に自嘲しながら、しかしクラレンスの心の拠りどころとなり得るものはこれしかなかったのだ。
「え、気持ち悪い」
小声で漏らされた台詞に顔を向けると、いつの間に近づいてきたのだろう、口元を覆ったヒューバードが几帳面に並べられた品々を見つめていた。肩を震わせて悲し気に眉を八の字に垂れた彼の口からは、嘘だろ、本当に、と隠すつもりがあるのかないのか分からない台詞がこぼれ落ちていた。チラチラと向けられる同情を孕んだ視線が煩わしいことこの上ない。
クラレンスは微笑むと、はっきり言ったらどうだい、それができないのなら口を閉じてこの部屋を出て行くのがよいだろうと告げた。自覚していたものの、気持ち悪いと他者の口から称されると流石に胸が痛んだ。
「かわいそうに」
右手は口元に添えたまま、心からそう思っているといった口調で、涙さえ浮かべるヒューバードに、クラレンスは机上にあった文鎮を投げつけてやりたい衝動にかられた。文鎮を握り締めた右手をもう片方の手で押さえつけながら、やはり、口を閉じてくれないかと低い声で絞り出す。
ブローチの金具がきらりと光を反射する。幼いジェネヴィエーヴの澄まし顔が愛おしくも憎たらしい。
そもそも、彼女がこれほど無沙汰にしているのが悪いのである。確かに、彼女にとってみれば、物心ついて初めての遠出である。親元を離れ、気の置けない魅力的な人々との非日常の中で、望まぬ婚約者の存在などすっかり忘却の彼方へと押しやられてしまったのかもしれない。
「彼女は」
我知らずため息を零すと、クラレンスはぽつりとつぶやいた。僕の顔を描いた細密画を贈ったら受け取ってくれるだろうか。
ヒューバードは顔を覆った。
これではいけない、あまりの居たたまれなさにクラレンスの執務室を後にしたヒューバードが再び姿を現したのは、次の日の午後のことだった。彼は一通の書信を手にしていた。
「フェラーズ博士からの報告が届いた」
王宮ではこれまでの王室に対する貢献が認められ、ケイ・フェラーズは平民でありながら「博士」として尊敬を以って呼ばれるようになっていた。御当人は非常に恐縮して、若輩の身で博士などと呼ばれるのは心苦しいと零していたものだったが、それで却ってヒューバードなどはそう呼ぶことが多くなっていた。
現在ケイ・フェラーズはジェネヴィエーヴと共に故郷に帰還していたが、その目的は王宮ではできない実験を試みるためだった。
公式の報告書とは別に、ヒューバードを通して公文書には記せないような報告が定期的に送られる。手紙にはジェネヴィエーヴの近況も記されていたが、今のクラレンスの精神状況では目に入れるべきかどうか悩みどころであった。
「植物学者に内々に調べて欲しいことがある」
今回の報告書には至急お願いしたいことであるがと前置の上、そう記されていた。
丁寧に梱包された小包が手紙に同封され、そこからはある植物の実と思われる物が出てきた。一つはカラカラに乾燥し黒く萎びた小さな実で、後の二つはまだ青々とした熟れる前の実と、深く色づき若干柔らかくなった果実であった。
ある程度、自由な差配を許されているヒューバードではあったが、植物学者などに伝手などあるわけがなく、一体どうしたものかとこうしてクラレンスのもとに持ち込んだのだった。クラレンスは書簡に目を通して一つ二つ頷くと、自分で預かろうと述べた。そして、鋭い目つきで、ヒューバードが敢えて抜き取った残りの報告書を渡すように告げたのだった。
この時、クラレンスの手元に渡ったケイ・フェラーズの報告書は、数日を置いてとある老植物学者の元へもたらされた。この数葉の書簡が後々重大な影響を及ぼすことになることを当のケイ・フェラーズを初め、誰も知る由もなかった。そしてこれはケイ・フェラーズと彼の一族の悲願成就の第一歩を踏み出した証として、闇夜に燦然と輝く一等星の如く家門の歴史に刻まれることになるのである。
たった今しがた侍従の出て行ったばかりの扉を睨みつけながら、クラレンスはもう何度目とも分からぬため息を落とした。
「そのうち扉に穴が開いてしまうことだろうね」
部屋の奥から揶揄い混じりの声が挙がる。苦虫を噛み潰したような表情で視線を遣れば、応接用のソファに深々と身を沈めたヒューバードが、にやにや笑いを向けていた。
「扉を睨みつけても仕方がないだろう。何度侍従を呼びつけたって結果は同じさ」
やれやれと肩をすくめて首を振る彼を睨めつけると、クラレンスは執務用の椅子にどっかと腰かけた。両肘を机について組んだ手に顎を預け、正面の壁を睨めつける。ブスッとした表情を隠そうともしない彼に、ヒューバードは肩を震わせた。
ジェネヴィエーヴから手紙が来ない。
当初は旅先の彼女からの書信を待って文通を再開し、離れ離れに不安な心を慰める心積もりだった。しかし、案の定というかなんといおうか、数週間過ぎた現在に至っても、ジェネヴィエーヴからの音沙汰はなしの礫であった。
「何故・・・」
極小さな声で唸るようにつぶやいたクラレンスの眉間には、深い皺が幾本も刻まれている。道中、不慮の出来事はないか、体調を崩してはいないかと心を乱した一日目二日目、遠く窓の外を眺めつつ今はどのあたりだろうか、食事はとれているかと案じ、もうそろそろ着く頃だろうか、そんな心不安と心配を押し殺し、無事を祈り続けた日々を過ごした日々。その後、ノクターンから無事に到着したというそっけない書簡を落手した。
それから十数日という間、焦れる思いでジェネヴィエーヴからの手紙を待ち続けてきた。
しかし、待てど暮せど待ち焦がれた手紙は届かなかった。もしや、長旅に体調を崩したのではないかと心配したが、そうでないことはすぐに分かった。彼女の消息を知るにはノクターンの何度目かの報告書を待たねばならなかった。その報告内容ですら、クラレンスの懊悩を見かねたヒューバードが、ノクターンに懇願して書かせたものだった。
報告書の最後に数行、ジェネヴィエーヴが数日前に床払いして、今では散策を楽しむまでになっているという文言を目にした瞬間、大方の予想に反して、クラレンスに訪れたのは彼女の動静を知ることができた喜びではなく、膝から崩れ落ちるような虚無感であった。
――これも因果応報というものだろうか。
一晩悩みぬいた末、クラレンスはとうとう筆を執った。彼からの手紙は今頃ジェネヴィエーヴの元に届いていることだろう。今度こそ彼女は返信をくれるだろうか。いやきっと今度こそ書いてくれるに違いない。幼馴染で婚約者である彼からの直筆の手紙を受け取って、それを無視するほど彼女は非情ではない。ひょっと、手紙といってもアリアの代筆で最後にジェネヴィエーヴが一言添え、署名するなんていうこともあるかもしれないが、それでも来もしない手紙を待ち続け、悶々とし続けるよりもずっとましだった。
――昔はこうではなかった。
組んだ手に額を当てて瞳を閉じる。幼い頃、特に婚約してから3、4年の間は今と関係性はまるで対極だった。連日手紙を書き送ってくるのも、溺れるほどにプレゼントを贈って寄こすのも、ほんの僅かの時間を見つけては直接顔を見て話したいからと訪れるのも全てジェネヴィエーヴだった。
お茶会や貴族の子弟が集うちょっとした場でクラレンスを見つけては、蕩けんばかりの笑みを浮かべながら駆け寄ってくる彼女を今でも覚えている。当時は彼女の言動の全てが負担で、嫌悪感すら抱いていた。だから、礼儀の許す範囲で冷淡と批判されない程度に、特に彼女の父であるナイトリー侯爵の機嫌を損ねないように細心の注意を払いながら、出来る限り彼女と距離を置こうと努めていた。贈り物でさえ、なんだかんだと理由を付けては形に残るもののほとんどは返却していた。当のジェネヴィエーヴはといえば、気分を害すどころか、いつだって平静なそぶりを崩すことはなかった。自分の愛情の深さを周囲に見せつけられればそれで満足だとでも言わんばかりに。いつも同じトロリとした笑みを浮かべ、熱に潤んだ瞳でひたすらクラレンスの姿を追い続けていた。
――病的なまでに。
しかし神殿でのあの事故をきっかけに、彼女の異常な執着は鳴りを潜めるようになった。彼女はすっかり変わってしまった。当初はその変貌ぶりに戸惑ったものだった。同時に、日を置かず届けられた手紙や、高価な贈り物の数々もなくなった。王宮で後ろ盾のないクラレンスが必要とする支援は継続され、彼が品位と体面を保ち得る限りの、最低限度以上の潤沢な援助が滞ることはなかった。ただ、送り主がジェネヴィエーヴではなく、ナイトリー侯爵に代わっただけだった。
数年後、彼がジェネヴィエーヴに一方ならぬ思いを寄せるようになると、立場はまるで逆転してしまった。追う者は追われる側に、追われる側は追う側になったのだ。思慕が深まるにつれ、クラレンスの苦悩は年を追う毎に深まっていった。ノクターンの存在も彼の不安に拍車をかけた。クラレンスが初めて妬心を自覚したのもこの頃だった。もしかして、ジェネヴィエーヴは釣った魚には餌をやらない主義なのではないか、などと品のない邪推までもが胸を去来する始末に自嘲した。
クラレンスは静かに瞼を上げると机の上に置かれたペンダントに視線を遣った。片頬をつきながら、右手でそっと蓋を開けると、現れたのは細密画だった。手元にある中でも最も幼い頃のジェネヴィエーヴの肖像画のひとつである。丸みを帯びた頬の輪郭がまだあどけなさを感じさせた。彼女と初めて出会ったのは10歳を漸く一つ二つ超えた頃だった。ナイトリー侯爵に伴われた彼女は、事前に聞いていた年の頃よりは幼く見えた。ほっそりとして、ドレスの重みすら耐えられないのではないかと思うほど華奢な少女だった。顔を上げた彼女を目にして、大人たちはなんて可愛らしいのかしらと称賛の言葉を浴びせたが、なるほどまるでお人形の様に可憐で透き通った美しさに、思わずため息をついたほどだった。
直接言葉を交わしたのは二言、三言程。それでも第一印象は悪くなかった。だから、ほどなくして婚約の打診を受けた時には驚きよりも喜びが勝っていた。母を亡くし、王宮で孤立無援のクラレンスにとって、権勢家のナイトリー侯爵からの申し出は一生に一度歩かないかという僥倖と言ってよかった。後ろ盾のない第3王子など、政略の駒でしかなく、下手をすれば兄弟達の外戚に命を奪われる可能性もあった。心を許せる見方はほんの一握り、息を殺しながら一日を繰り返す毎日。夜眠りに落ちるその瞬間まで、明日のわが身を案じ、まさにこの瞬間に殺手が伸びて来やしないかと、じっと耳をそばだてた。幼い彼は、それが永遠に続くように感じていた。
しかし、それがどうしたことだろう、待っていたのは国内きっての富豪であり、国王の信頼も篤い功臣の一人娘との縁談だった。その上、相手は病弱ではあるものの、探してもちょっと見つからないほどの美貌の少女だった。天にも昇る気持ちとはこのことか、彼は母を失ってこの方味わったことのないほどの己の幸運を噛みしめながら、安心と満足の中で眠りについた。
様子が変わったのは早、二度に顔を合わせた時だった。伏せていた目を上げた当初の彼女は無気力なお人形でなかった。強烈な意思を持つ何か、だった。どろりとした執着を湛えた瞳に、クラレンスの幼い本能は警告を発した。
――コレは危険だ。
心を許してはならない。そんな警句が頭の中でぐるぐると繰り返された。クラレンスの生存本能がジェネヴィエーヴを拒否したと言っても過言でなかった。
そんな彼をジェネヴィエーヴは訝しむことすらしなかった。何の疑問も不満も口にすることはなく、ただ他の少女たちがクラレンスに近づくことだけを執拗に警戒し続けた。
――こんなものは愛情ではない、常軌を逸している。
ある時、クラレンスは発熱して起き上がれなくなった。ジェネヴィエーヴとの定期的なお茶会の前日のことだった。クラレンスは全身全霊でジェネヴィエーヴを拒絶したのだ。彼女は何と思うだろうか。もし寝室まで彼女がやってきたら?高熱に身動きの取れない彼は抗うことすらできないだろう。でも、自分は一体何をこんなに恐れているのだろうか。あの小さな少女のどこを?
幸いなことに、ジェネヴィエーヴの反応は実に淡白なものだった。さして感情のこもらない声音で、残念なこと、お体をおいといくださいませと告げると、過分とも思われる見舞いの品々を送って寄こした。
そうしてクラレンスとジェネヴィエーヴの奇矯な婚約関係が幕を上げた。
それが送られてきたのは婚約を結んで数週間後のことだった。自分自身の姿を刻んだ細密画である。額縁に入れられた肖像画とは別に、いついかなる時でも離さずに身に着けていて欲しい、そんな願いを込めて贈られたそれを、当時のクラレンスは無情に突き返すことはできなかった。しかし、身に着けることはついぞなかった。
そうして月日が流れ、二人の関係に変化が訪れた頃、机の底の最も奥に押しやられたその場所に、例の細密画を見つけたのだった。探してみると、他にも数点、幼い彼女を描いた絵画を見つけることができた。大きくともせいぜい机に飾れる程度の小ぶりなものだった。
――この程度ならば持っていても不愉快ではないだろう、どうせ改めて取り出すこともないのだから。
そんな傲慢な感情を抱いていた当時の自分を呪いたくなる。自分の態度が違っていればもっと親密な関係を築けただろうか。クラレンスはまた溜息をついた。
現在のジェネヴィエーヴの肖像画を手に入れることはできなかったから、最近は時折、こうして幼い頃の彼女の肖像画を取り出しては眺めるようになっていた。
――我ながら見苦しいな
そう自覚し、自虐的に自嘲しながら、しかしクラレンスの心の拠りどころとなり得るものはこれしかなかったのだ。
「え、気持ち悪い」
小声で漏らされた台詞に顔を向けると、いつの間に近づいてきたのだろう、口元を覆ったヒューバードが几帳面に並べられた品々を見つめていた。肩を震わせて悲し気に眉を八の字に垂れた彼の口からは、嘘だろ、本当に、と隠すつもりがあるのかないのか分からない台詞がこぼれ落ちていた。チラチラと向けられる同情を孕んだ視線が煩わしいことこの上ない。
クラレンスは微笑むと、はっきり言ったらどうだい、それができないのなら口を閉じてこの部屋を出て行くのがよいだろうと告げた。自覚していたものの、気持ち悪いと他者の口から称されると流石に胸が痛んだ。
「かわいそうに」
右手は口元に添えたまま、心からそう思っているといった口調で、涙さえ浮かべるヒューバードに、クラレンスは机上にあった文鎮を投げつけてやりたい衝動にかられた。文鎮を握り締めた右手をもう片方の手で押さえつけながら、やはり、口を閉じてくれないかと低い声で絞り出す。
ブローチの金具がきらりと光を反射する。幼いジェネヴィエーヴの澄まし顔が愛おしくも憎たらしい。
そもそも、彼女がこれほど無沙汰にしているのが悪いのである。確かに、彼女にとってみれば、物心ついて初めての遠出である。親元を離れ、気の置けない魅力的な人々との非日常の中で、望まぬ婚約者の存在などすっかり忘却の彼方へと押しやられてしまったのかもしれない。
「彼女は」
我知らずため息を零すと、クラレンスはぽつりとつぶやいた。僕の顔を描いた細密画を贈ったら受け取ってくれるだろうか。
ヒューバードは顔を覆った。
これではいけない、あまりの居たたまれなさにクラレンスの執務室を後にしたヒューバードが再び姿を現したのは、次の日の午後のことだった。彼は一通の書信を手にしていた。
「フェラーズ博士からの報告が届いた」
王宮ではこれまでの王室に対する貢献が認められ、ケイ・フェラーズは平民でありながら「博士」として尊敬を以って呼ばれるようになっていた。御当人は非常に恐縮して、若輩の身で博士などと呼ばれるのは心苦しいと零していたものだったが、それで却ってヒューバードなどはそう呼ぶことが多くなっていた。
現在ケイ・フェラーズはジェネヴィエーヴと共に故郷に帰還していたが、その目的は王宮ではできない実験を試みるためだった。
公式の報告書とは別に、ヒューバードを通して公文書には記せないような報告が定期的に送られる。手紙にはジェネヴィエーヴの近況も記されていたが、今のクラレンスの精神状況では目に入れるべきかどうか悩みどころであった。
「植物学者に内々に調べて欲しいことがある」
今回の報告書には至急お願いしたいことであるがと前置の上、そう記されていた。
丁寧に梱包された小包が手紙に同封され、そこからはある植物の実と思われる物が出てきた。一つはカラカラに乾燥し黒く萎びた小さな実で、後の二つはまだ青々とした熟れる前の実と、深く色づき若干柔らかくなった果実であった。
ある程度、自由な差配を許されているヒューバードではあったが、植物学者などに伝手などあるわけがなく、一体どうしたものかとこうしてクラレンスのもとに持ち込んだのだった。クラレンスは書簡に目を通して一つ二つ頷くと、自分で預かろうと述べた。そして、鋭い目つきで、ヒューバードが敢えて抜き取った残りの報告書を渡すように告げたのだった。
この時、クラレンスの手元に渡ったケイ・フェラーズの報告書は、数日を置いてとある老植物学者の元へもたらされた。この数葉の書簡が後々重大な影響を及ぼすことになることを当のケイ・フェラーズを初め、誰も知る由もなかった。そしてこれはケイ・フェラーズと彼の一族の悲願成就の第一歩を踏み出した証として、闇夜に燦然と輝く一等星の如く家門の歴史に刻まれることになるのである。
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