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魔王の息子、地上へ
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しおりを挟む我々の住む地上とはまた別の世界、所謂魔界。そこに君臨する魔の国を統べる王クラフは、滅多なことでも表情を変えなかった。幼き頃勝負に敗れた際も、軍師として戦争に勝利しても、顔面が凍りついているかのようだった。そしてそれは、自分の子供が生まれてからも同じだった。その子の名はザトス。ザトスは毎日のように家の中を暴れていた。生まれ持った魔力を持て余し、それを周囲に見せつけたかったのだ。ザトスのお目付役はいつもクラフに相談していた。「またザトス様が魔力で壁を破壊しました」クラフは気にも留めず「直せば良い」と告げる。加えていつも、その壁を貫いたかどうかを気にしていた。毎回、貫いてはおらずすぐに修繕が完了した。
ザトスはその父の力を受け継いでいる。クラフは自分の息子が成長すれば、自身の国の勢力を伸ばす戦力の一人と考えていたのだ。そしてザトスが生まれて6回目の誕生日、父は自分の息子に告げた。「お前には地上を征服してもらいたい」息子は父に応えた。「わかりました、必ずや期待にお答えします!」それは、魔界に似つかわしくない快活な声だった。
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