私がキミを殺すとでも? 〜 異星人が見た地球 〜

混漠波

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=あの日の私と私=

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─退屈な日々。
──退屈な色。
───退屈な空。
────退屈な未来。
─────退屈な星。

ずっとページをめくっても変わらない。どこまでも同じ日々。



だからこそ私だけは、
私くらいは希望を持っていたかった。
持った振舞いをしていたかった。



「──それが今、唯一の楽しみなんだ。じゃあ、また明日。」

今、目に映るのは私が送ったメッセージ。毎日、同じ時間に予約で送信していたのを確認している。

いつからだっけ、見てくれなくなったの?
見てもらえなくなった言葉の大群を視界に入れる度に私の心が体から逃げ出したがっている。

ぐるぐる……ぐる。

はぁ。もう、やめようかこんなの。
見てくれるだろうとか、何時かまた会話できるだろう……なんて勘違いを続けているのは馬鹿らしいや。

最初から私は愛されて無かったんだよ。
現実を無視した届くはずのない幻想を勝手に拡大するのはやめにしようか。
二人が素晴らしい人生を送る為に私は生まれてきたんだ。
誰だってそうするさ、我慢しよう。
そうだよ、仕方無いよ。社会の構造上仕方ないんだ。

息を止め布から顔を出した。
ぷつりと切れたように。

明日の朝になればどうしようもなく垂れ下がったこの感情は忘れてる。でもこのシーンは繰り返すんだ。


私のために残してくれた物に傷をつければ私は満足なの……?変われるの……?
この感情とはもう二度と出会わなくて済むの……?
未だに傷ひとつない自分の幼い頃からの大切な機器たちを見つめて思う。

……このガラクタ、あの星に持っていくか。
両手で大きく掴み、かき集めて鞄へ詰め込んだ。

皆に対して明るくて元気で純粋な“ニオラス・アーベント”を演じていると自分自身、心が軽くなって安心できる。
そして何よりとても楽しい。
勿論ふと我に返ると悲しい。
理想と現実がすごく離れているから。
でも本当の私をさらけ出すことに比べたら苦しくない。
本当の私を忘れられたらいいのに──

「うん、大丈夫、私は間違ってないよ。」
毎朝言い聞かせている。空っぽにならないよう。ずっと。同じ言葉で。

今から私はあの箱に入らないといけない。
もう何度目だろう。
ライライライ──と、上から下へ降りてくるこの光線の音が嫌い。
うー。滅菌、滅菌、滅菌。
不純物を洗い流し、
体が少しだけ綺麗になった。
今までの私と少しだけ違うのかも。
最後は今一番好きな臭いにしてくれるから結局止められないんだけどね。

最後に私の本当の色がバレたの何時だっけ?

えーと、……バレたことなんて一度も無いんだった危ない。危ない。なに考えてんだろ。
……
また、全身に塗って暖色域を広げないと。
体を染めている間だけは自分だけの時間。作業なんかじゃない。
自分が自分であるために……だから。
青緑色は明るい私は好きじゃない。
やっぱり「鮮やかなオレンジ」じゃないとね。
塗り残しは無いかな?
よーし。笑顔。こうでなくっちゃ。はぁ。
座って、体に取り付けて、マッサージ。

あぁあぁあ。いい感じ。

揉みほぐしてくれた機械を脱ぐと今度は服を体に組み着けてもらう。
パチリ……パチリ……と。
地球人は一体どんな格好してるんだろ。どんなことを考えて生きているんだろ。
当日まで楽しみにしたくて授業ではその部分を飛ばして、見てないんだよね。

でさ、本当の私ってどっちだっけ。
……どっちもか。どっちもだよ。
本当とか偽りとかそんなこと明るい私は考えないよーだ。

ということで、今日もお別れ完了。
外に出ようか。
本日の部屋の全数値は適していたようだ。体も問題ない。うん。
息を吹き掛け、扉が開く。部屋の音が消えたのを確認し、
コミューターチューブを繋げる。
灰色の中から円い空を見上げ、雨は降ってないことを知る。

面白い事に出会いたいな。

私の興奮という感情に埃が被っている。もうずっと出してあげていない気がする。

はぁーあ、今朝見た夢の事を三人に語りたかったけど全然覚えてないや……
それこそ興奮できていたような、凄く感情を揺さぶられた気がしたんだけど……
ずっと時間が止まればいいのに、って感じるほど……
覚えているのは、誰かの背中を押した、そのシーンだけ。
何だったんだろ、起きたらこのザマだよ。虚しいね。

「この世界はいつになったら変わるのだろう。」
「世界を変えるために何をすれば良いのだろう──?」

私が世界を創れたらもう少しマシで幸せな世界になるはずなんだけれど……
いつかの朝、そんな風に考えていた。
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