30 / 32
=途切れた道筋を頼りに=
しおりを挟む
中でも気になっていたとある人に近づく。
本当は危険だけど、確かめたかった。
えいっ、
私は意を決してシアターを捲った。
……やっぱり。
「間違いない……この人は私らのクラスの先生だよ……」
「……あらー、そうなのか。」
先生の馴染みのあった濃い赤色の肌が寒色に浸食され、あからさまに全身が真っ青になっている。
心の色も真っ黒に包まれてどんより揺れ動いていた。危機的な程多くのネガティブな感情を抱えていたのだろう。
何でこんな所にいるのだろうか、何をしている最中だったのだろうか?
「他にも先生たちが……」
この空間には他にも何人かの先生と研究者がいるように見える。
でもこんなに肌が変色しているのは私の先生だけだ。
「んぁ?これは?」
先生の目線の先にはシアターに被さっていたペンと"紙で出来たノート"がテーブルに寄りかかっていた。
私はその事に気づいた途端、真っ先にノートを手に取り、そっと開いた。
* * * * *
私はあの日嘘を吐いた。
残忍非道な計画。
その犠牲者達に向かって。
こんなことになるなら初めから私は教師なんて目指すべきじゃなかったのかもしれない。
あれから何度もそう思った。なす術無く時が来て嘘つきになってしまった。
誰か、教師として私は何をすべきなのか、どれが正しい道なのか、導いてほしい。
* * * * *
「……先生?」
「っわぁー、……これは……」
!?
開いた途端に目に入るのは先生らしからぬ言い草で始まった、嘘みたいな文章。
数行しか目を通していないのに、動かない姿も相まって、すでに読むのが辛い。
* * * “もう何もかもだめだ” * * *
???
その言葉はノートのページをまたがるように、圧のある字体で書かれていた。さらに上から掻き消す様にその言葉は抹消されていた。
「うーん、この人何だか思い詰めてそうだね。結構な期間、後悔とか絶望とかそういう類いを抱え込んでたんだろうな」
「えっと……」
明らかに様子がおかしいと察した。
授業の素振りを思い返してみても精神的に参ってしまうような何かがあるとは全く思えなかった。
気づけなかった。
文字の群れは走り書きで怯えているようだった。
私の中の何かが擦り減るようで、次のページを捲るのが怖くなる。
そんなことになってるなんて知りたくなかった。でも知れたからには続きの正直な気持ちも知りたい。
訳の分からない事が起きてきた理由に迫れるかもしれない。
明確な気持ちが定まらないまま、指をかける。
好きだった紙を捲る独特の感覚。なのに動けない。この文章から離れられない。
ここで進まなかったら、ここまで進めてきた何もかもが失われるような感覚に苛まれ進展は無いだろう。
さぁ捲ろうか。擦り減らそう。
* * * * *
いつからだろうか、私はそう思うようになっていった。
私は私が正気を保つために、今も尚、続いている我々ノロールム人による過ちの物語を、私が知れた分、このノートに手記として授業の合間に少しずつ書き記すことにした。そしてそれは誰にも悟られないよう、データにせず、手書きに留めておく。
これは希望の灯りが消えないように、''自分の中の真実''を無くさないように書いている。
もしくは単なる憂さ晴らしと精神安定のためのどうしようもない一人の男の''戯言''なのかもしれないが。
そして、もしもの話だが、この手記を何らかの手段で私以外の仲間、心優しき誰かが見ているのなら、誰でもいい——
ここに書いた文章を読み終えて、
……この世界をどうにかして救ってほしい。
こんなのはどうせ叶わぬ馬鹿の願いなのだろう。
そんな願いも秘めながら私が見た光景を思いと共にこの一冊に綴っていく。よろしく。
* * * * *
本当は危険だけど、確かめたかった。
えいっ、
私は意を決してシアターを捲った。
……やっぱり。
「間違いない……この人は私らのクラスの先生だよ……」
「……あらー、そうなのか。」
先生の馴染みのあった濃い赤色の肌が寒色に浸食され、あからさまに全身が真っ青になっている。
心の色も真っ黒に包まれてどんより揺れ動いていた。危機的な程多くのネガティブな感情を抱えていたのだろう。
何でこんな所にいるのだろうか、何をしている最中だったのだろうか?
「他にも先生たちが……」
この空間には他にも何人かの先生と研究者がいるように見える。
でもこんなに肌が変色しているのは私の先生だけだ。
「んぁ?これは?」
先生の目線の先にはシアターに被さっていたペンと"紙で出来たノート"がテーブルに寄りかかっていた。
私はその事に気づいた途端、真っ先にノートを手に取り、そっと開いた。
* * * * *
私はあの日嘘を吐いた。
残忍非道な計画。
その犠牲者達に向かって。
こんなことになるなら初めから私は教師なんて目指すべきじゃなかったのかもしれない。
あれから何度もそう思った。なす術無く時が来て嘘つきになってしまった。
誰か、教師として私は何をすべきなのか、どれが正しい道なのか、導いてほしい。
* * * * *
「……先生?」
「っわぁー、……これは……」
!?
開いた途端に目に入るのは先生らしからぬ言い草で始まった、嘘みたいな文章。
数行しか目を通していないのに、動かない姿も相まって、すでに読むのが辛い。
* * * “もう何もかもだめだ” * * *
???
その言葉はノートのページをまたがるように、圧のある字体で書かれていた。さらに上から掻き消す様にその言葉は抹消されていた。
「うーん、この人何だか思い詰めてそうだね。結構な期間、後悔とか絶望とかそういう類いを抱え込んでたんだろうな」
「えっと……」
明らかに様子がおかしいと察した。
授業の素振りを思い返してみても精神的に参ってしまうような何かがあるとは全く思えなかった。
気づけなかった。
文字の群れは走り書きで怯えているようだった。
私の中の何かが擦り減るようで、次のページを捲るのが怖くなる。
そんなことになってるなんて知りたくなかった。でも知れたからには続きの正直な気持ちも知りたい。
訳の分からない事が起きてきた理由に迫れるかもしれない。
明確な気持ちが定まらないまま、指をかける。
好きだった紙を捲る独特の感覚。なのに動けない。この文章から離れられない。
ここで進まなかったら、ここまで進めてきた何もかもが失われるような感覚に苛まれ進展は無いだろう。
さぁ捲ろうか。擦り減らそう。
* * * * *
いつからだろうか、私はそう思うようになっていった。
私は私が正気を保つために、今も尚、続いている我々ノロールム人による過ちの物語を、私が知れた分、このノートに手記として授業の合間に少しずつ書き記すことにした。そしてそれは誰にも悟られないよう、データにせず、手書きに留めておく。
これは希望の灯りが消えないように、''自分の中の真実''を無くさないように書いている。
もしくは単なる憂さ晴らしと精神安定のためのどうしようもない一人の男の''戯言''なのかもしれないが。
そして、もしもの話だが、この手記を何らかの手段で私以外の仲間、心優しき誰かが見ているのなら、誰でもいい——
ここに書いた文章を読み終えて、
……この世界をどうにかして救ってほしい。
こんなのはどうせ叶わぬ馬鹿の願いなのだろう。
そんな願いも秘めながら私が見た光景を思いと共にこの一冊に綴っていく。よろしく。
* * * * *
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋愛リベンジャーズ
廣瀬純七
SF
拓也は、かつての恋人・純への後悔を抱えたまま生きてきた。ある日、過去へ戻れる不思議なアプリを手に入れるが戻った先で彼を待っていたのは、若き日の純ではなく――純そのものになってしまった自分自身だった。かつての恋人とやり直すはずが、過去の自分を相手に恋をするという奇妙で切ない関係が始まっていく。時間と心が交差する、不思議な男女入れ替わりストーリー。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる