紋章最強の転生者はほのぼの生活したい(希望形)

燕上ゆうき(旧名:クゲルブ)

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1章【緑の竜と新しき伝説】

17話─襲撃-1-

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今更な気もしますが、とうとう累計・年間ポイントが100万を超えました!
これからもがんばります!
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 護衛最終日。

 この日は帰りの日となっている。


「準備はできたかの?」

「はい、もう大丈夫です」


 既にリュークを除く3人は準備を終えて馬車の中にいる。

 リュークは王都では手に入らなかった食材を買っていたためすこし遅れてきた。


「それでは頼むぞ」

「分かりました」


 リュークは馬車の御者をしている。

 これはこちらに来るときもやっていた。

 理由としてはリュークが馬を操れること、そしてエミルの視界を万全に確保するためだ。


 エミルの視力が高く、彼が見える視界はリュークの気配察知の範囲を超えている。

 そのため、リュークが御者、エミルが視界で警戒、そして気配察知の使えるアジルが気配察知を使って警戒をしている。

 なお、エマとヴィイは見える範囲での警戒をしている模様。


「ねぇねぇリューク」

「ん?どうした?」

「あそこの木影に誰かいたきがする」

「うん、わかった」


 どうやらエミルが木影に誰かが居たのを見たらしく、リュークに伝えた。

 リュークもその木影を最大限に警戒しつつ、馬を進める。


「…きのせいか?」


 エミルが言っていた木を通り過ぎても何も起こらなかった。


「ごめん、何でもなかったっぽいね」

「いや、警戒するに越したことは──」


 その時だった。


「…誰かが魔法を使ったようじゃのぉ」

「ッ!?リューク!」

「なに!?」


 ゴゴゴゴゴ…

 突如、リュークたちの後ろに土の壁が現れた。

 その壁は止まらずに大きくなっていった。

 後ろだけだと思った壁も、どうやらリュークたちを中心として円状にできている。


 そして、太陽が消えた。


「な、なに!?」

「おちつくのじゃ、光魔法か火魔法をつかっ────ッ!?」

「…どうやら魔封じをされてるな。リューク、どうする?」

「3人は学園長の周りに居て護衛をしてて」

「リュークはどうすんだ?」

「目が慣れてきたから…これをやってる張本人のところへ行くけど、3人は学園長のもとに居て、何かあれば大声で叫んでくれ」


 3人がわかったというのを聞くと、リュークは馬車から飛び出して木々の中へと消えた。

 元々森のなかに住んでいた彼は、ある程度の森を知っている。

 そのため、異変の感じる方向へと走れば自ずとわかる…そう思っていたのだが。


「異変がない…」


 彼の思う森の異変とは、例えば踏み倒された草木であったり、人が通った形跡のあるようにすこし折れている草木であったり、だ。

 だが、そのような異変は少なく、こっちだと断定できるほどの変化がない。


「…クソッ!」


 視界はあれどその視界から得ることができる情報は少ない。

 その為気配察知もろくな機能を果たしていなければ、今できる最大限での気配察知をしてもなにも情報を得ることはできなかった。


「何かあれば叫ぶよう伝えてあるしまだ叫んでいる声は聞こえないからまだ何もないんだろうけど…ああもう…」


 それでもリュークはめげずに足を進めていく。

 折れている草木を見つければそちらの方向に、音が聞こえれば聞こえる方向に歩いた。


「…なんだ、リスか」


 歩いても歩いても出会うのは動物ばかり。

 だが、どれは仕方がないことだろう。動物たちも、いきなり太陽が消えたことに驚いているのだ。


「…光?」


 光もなく、未だ魔封じは続いている。

 そんな中、リュークには唐突に光が見えた。


「…とりあえず見てみるか」


 足音を立てないように慎重に歩きつつ、光のある方向へと進んでいく。

 そして光に到達した時に見た物、それは…


「火…っておい!?」


 それは火だった。

 枝の先に小さくついているだけなのだが、先端部分は一部灰になっていることからこの火を付けてからは相当な時間が経ったことがわかる。


「って読み取っている場合じゃない。こんなの火事になるぞ…」


 リュークはその火を足元に置き、踏み消した。


「他のところもこんなのはあるのか…?」



 リュークの疑問、それは不幸にも当たっていた。




☆☆☆




「…リュークくん…1人で大丈夫かな?」

「俺も目が慣れてきたし、リュークのところへ行きたいのは山々なんだが…」

「行ったらダメだよ?ボクもエマも魔法以外使えないし、唯一の戦力は剣が扱えるアジルがいないと誰が学園長を守るの?」

「そうだよな…って剣取り出さなきゃ意味ないか。……やべ」

「ん?どうしたの?」

「魔封じされてるせいで、剣取り出せない」

「はぁ…わかった、じゃあボクがお手頃な木とか落ちてないか見てくる」

「すまん、頼む」


 エミルは馬車から飛び出した。

 そして馬車の方を気にしつつ、剣の代わりになるのを探す。


「んー……あ、これなんてどうだろう」


 見つけたのは長さが1メートル、太さが4~5センチほどの木だ。


「うん、コレでいいかな…ん?」


 エミルが見つけた木、その先に小さな光を見た。

 その光は小さく、おそらくエミルでなければ気づかなかっただろう。

 エミルは光の原因を見るより、木を届けることと報告を優先するべく、一度馬車へと戻った。


「ただいまー」

「お、おかえり。どうだった?」

「これでいい?」


 エミルは見つけた木をアジルへと渡す。


「…うん、こことここを折れば…よし、ありがとう」

「とういたしまして。それより、変な光を見たからちょっと行ってくる」

「変な光?それって近寄っても大丈夫なの?」

「だから確かめに行くんだよ」

「そうか…気をつけてな」


 エミルは馬車を降り、光の源へと歩いていった。

 嫌な予感しつつも光の元へ突くのに数分、その光を見てエミルは驚いていた。


「なん…で…火が…」


 火は小さい光ではなく、大きく他の木に燃え広がっていた。

 嫌な予感を思い出したエミルは、すぐさま走って馬車へと戻っていった。

 戻ってみると、馬車の周りには火が広がっていた。


「え、エミルくん!」

「みんな!リュークは!?」

「まだだ、今はこの状況をどうするか考えているところだ」

「学園長は何かいい考えはないの?」

「魔封じされておる状況では、ワシはなんの戦力にもならなくてのぉ。特にいい考えも浮かばぬ…すまんのぉ」

「とりあえず壁まで行こう、土を削れば出れるかもしれない!」

「それだ!誰か馬扱える?」

「ワシがする」

「わかりました、学園長お願いします!」 


 学園長が御者をし、土壁へと進んでいった。

 道中火が付いている木が倒れてきたりしたものの、数分で土壁へたどり着いた。


「…魔法でできた土だけど、もろいから崩せるよ!」

「ならちょっとどいてろ!俺がやる!」


 アジルは土の前に立ち、木を構えた。

 剣の先端は何かがたまったように黄色く光っている。


「妖斬刀一式、気斬」


 アジルが剣を振り下ろすと、黄色い光は土壁にあたり、弾けた。

 失敗か。アジルを除く誰もが思った。


 ───ピシッ。


 その音を堺に、だんだんと土壁は崩れていった。


「げっ!やべえ急いで出るぞ!」

「ど、どうしたの!?」

「やりすぎた、崩壊する!」

「え、リュークくんがまだ…」

「大丈夫だ、リュークならきっと!それより早く出なければ俺達の命も危ない!」

「早く乗るんじゃ!」


 3人は馬車に乗り、土壁を抜けた。




☆☆☆☆




 森に火がつき始めるすこし前。


「やばい…やばいぞ」


 リュークは4人のもとへ行くために走っていた。

 1つの火でも不審なのに、そのあと3つもの火を見つけた彼は、ヴィイが狙われているのではないかと確信したためいそいで戻っている。


「…ちっ、誰かいるな」


 効果の薄くなった気配察知。そんな気配察知が反応を示した。

 示した場所、それは真上だ。


「ッ!」

「ちっ、いまので当たってくれればよかったんだけどな」


 リュークの頭上からとこが振ってき、リュークに殴りかかろうとした。

 リュークは寸前で回避し、当たりはしなかった。


「何やってんだよ、スキだらけだったじゃないか」

「うるせぃ、寸前でかわしたんだよ」

「はいはい、言い訳お疲れ様です」


 リュークが後ろに退くと、他の木の上や間から人が次々と出てきた。

 その数、男女合計7名。


「…なるほど、狙いは学園長じゃなくて僕ってわけね」

「お、頭が回るのが早いこった。出来ればそのまま俺たちに捕まってくれるとありがたいんだけどな」

「目的は何だ?誰に指示されている?」

「そんなもの言えるわけ無いだろ。目的は俺達も知らん」

「ま、恨まないでね。コレもウチらの仕事のうちだから」


 7人は一気にリュークに襲いかかる。


「ぐっ」


 リュークは体捌きでなんとか交わしてはいるものの、多勢に無勢。徐々にリュークの体は傷ついてゆく。

「はあああ!」

 リュークもやられているばかりではなく、反撃を試みる。

 リュークは剣が扱えない。だが、レルクから教わった拳の技術でなんとか…いや、それでもリュークが不利なのは変わらない。


「チッ、魔法だけって聞いてたのに…よ!」

「誰からそんな情報を聞いたのか教えてはッ…くれないのかな」

「残念それは無理だ。契約違反なんでナ!」


 リュークの反撃により、人数は7人から4人まで減った。

 だが、それでも多い人数の差。7人を相手にするためと広がりゆく火の温度による体力の差と対人戦という経験の差。そして場所の問題によりだんだんとリュークの傷はましてゆく。


「あとすこしなんだがな…殺すなって言われてるから今すぐにでも気を失ってくれるとありがたいんだけどな」


 リュークも出血により、段々とだが意識が薄くなっていく。

 今のリュークは気合で起きている。そんな状況だ。

 どうにかできないか。そんなことを全員が思った時だった。


────ドゴゴゴゴ


「な、なんだ!」

「リーダー!壁が崩壊しています!」

「何!?魔封じの効果はまだ残っているだろ!修復はできないのか!」

「今から行っても遅いと思われます!そしてあちらでも気づいているでしょうが、おそらく修復より崩壊のスピードのほうが早いのかと!」

「ちっ、早くやるぞお前ら」

「「「はっ!」」」


 男たちの攻撃の速度は上がり始めた。

 リュークはその速度に追いついて行けず、躱すことが精一杯だった。


(……ん、この感覚は…)


 空の土が崩れ、日が見え始めた時、リュークは一つの感覚を感じた。否、戻ったというべきだろう。

 その感覚とは、魔法が扱える感覚。魔力が全身に感じる感覚だ。


(これなら…!)

「───!!やばい!みんな逃げろ!」

「はぁぁ!!!」


 リュークは自分を中心に風を起こした。

 その風は周りの火を消し、崩れかかっていた木々をなぎ倒し、男たちを飛ばした。

 風の中心に居たリュークは風の影響を受けていない。理由は台風と同じ理由、と言えば分かりだろう。


「はぁ、はぁ、これはたぶん…アジルか…あっちから崩れているし…あっちに行くか…」


 リュークは浮遊魔法を使い、土が崩壊し始めたところへと飛んでいった。




☆☆☆




「「「「リューク(くん)!!!」」」」

 リュークが着いたときは、4人がリュークの安否を気にしていてこの後どうするかを話し合っていた状況だ。

「りゅ、リューク、ボロボロじゃねぇか!」


 リュークの格好は所々服と一緒に体まで切れており、頭からも出血していた。


「は、はは、アジル、ありがとな」

「お、おう?何がだ?」

「土、壊して、その影響で、魔法使えた」


 それだけを言うと、リュークは気を失った。


「リューク!!」

「…大丈夫じゃ。魔力と体力切れ、そして出血によって倒れただけじゃ」

「な、なんだ…よかった」

「魔力切れって、そんな大魔法使ったのかな、リュークくんは?」

(大魔法…違うのぉ。これは回復魔法を使った痕じゃが…服まで直しおって…心配をかけまいとしたことじゃろうが…それが魔力切れの原因じゃろう)


 リュークの服は複数箇所が不自然になっている。

 それは、血があったようにすこし濃くなっているのに、その下には傷一つなかったり、変なところで血の痕がなくなっていたり、だ。


「早く戻って見せたほうが良いかもしれんのぉ、それでは出発するぞ」

「「「はい…」」」


 ヴィイは馬車を学校へと走らせた。




☆☆☆




 とある領地にある部屋の一室、そこで1人の女は報告書を見ていた。


「…どういうことだ?…失敗した、だと?」

「すみません、マーリン様・・・・・


 彼女はとあるが欲しかった。


 その人物とは、リュークである。

 彼の作った浮遊魔法。あれがほしかったのだ。


 とある学校の学園長を努めている彼女。彼女は学園長としての発言は影響力がさほどなかった。

 学校内であれば別だが、学園長同志での集会などでは彼女の権利は少ない。

 明確に「彼にはこれがあって彼女にはこれがない」という権利はない。だが、他の学園長達の気持ちの問題である。


 学園長という立場の殆どの物は、その分野で活躍したものがほとんどだ。

 魔術学校であれば新魔法や魔術に関する新発見など。騎士であればそれなりのくらいに居たものだ。

 だが、マーリンはそういうものがない。そのため、周りの学園長からは下に見られている。


 そんな時見たのが、リュークの作った浮遊魔法という新作魔法である。

 彼女はそれを見た時、「あれさえあれば」と思った。

 だがそれはかなわない。そして次に思ったことは────彼がほしい。だ。


「ちっ、せっかくの金と案をだしたっつーのに…証拠の隠滅はできてるだろうな?」

「はっ、問題ありません」

「本当か?さっきもそう言ってダメではなかったじゃないか」

「申し訳…ございません」

「こっちもそれなりの人材を出したんだが、それでも失敗とは。次の案を考えなければ」


 マーリンの案、それはこういうものだ。


 この街から王都までの道のり、その途中には広い森がある。

 そこを通ったらマーリン直属の魔法部隊が土魔法でドーム状の壁を作る。

 そしてその中で魔封じの波動を使い魔法を扱えなくする。

 魔法が扱えず、暗くなっている森の中に火を放つ。すると彼らは動揺する。

 そこを別の部隊が襲撃し、リュークを奪う。他のものの生死は問わない。そんなものだ。


 だが、それは失敗に終わった。理由はアジルという人物を知らなかったためだろう。


「…なんとしても…なんとしても手に…私の手の中に…」


 マーリンは「どうすれば魔術に関する名声がもらえるか」よりも「どうすればあの少年を手に入れられるか」を考えていた。それも狂えるほどに。

 まるで麻薬の効果がなくなった麻薬依存症のような彼女の様子を誰かがこう言った。


─────名誉と魔法に飢えたもの───と。
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