紋章最強の転生者はほのぼの生活したい(希望形)

燕上ゆうき(旧名:クゲルブ)

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1章【緑の竜と新しき伝説】

18話─襲撃-2-

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「…ん…んー…?」

「ん?おお、ようやく目覚めたようだのぉ」

「がく…えんちょう?……ということはここは天国ですか?」

「ちょっと…いや、結構ひどくないかのぉ」


 リュークは体を起こした。


「…ここは?」

「学校の医療室じゃよ。お主が来たと思ったらすぐ倒れたからのぉ。他のものもすごい心配しておったぞ」

「そうですか…でもなんで倒れたんですか?」


 リュークは自分が倒れた原因をわかっていなかった。

 学園長は、リュークが気づいていないことにすこし驚きながらも、その疑問に答えた。


「…貧血と、魔力枯渇じゃよ」

「魔力枯渇…でもそこまで魔力使ってないですよ」

「あの場で魔封じをされたのは覚えておるじゃろ?」

「はい、魔法が一切使えませんでしたし」

「魔封じと言うものの効果、それは魔力を魔素化する。と言うものなのじゃ」


 魔素、それは空気中に漂う魔力の名前である。

 だが、魔力とはすこし異なるため魔素で直接魔法を使ったりはできない。

 魔力を持ったもの─動物や植物など、生命のあるものが死ぬと、その体内に残っている魔力は魔素となる。

 だが、死ぬ以外にも特別なものを用いることにより魔力を魔素に、または魔素を魔力に変換させることができる。


 魔封じも変換させることの出来る物の一つである。

 効果としては、体内から放出される魔力を魔素に変換するものである。

 いくら体内の魔力を使おうと、魔素から魔力に変換させて使おうとも、魔素に変えられてしまうために魔法が使えなくなる。


「おそらく魔法を使ったときも、その魔封じの効果がのこっており、結果的に消費した魔力が多くなった。ということじゃろ」

「どういうことですか?」

「たとえばじゃ、火の魔法を使う時に通常なら1割消費する魔力が、魔封じの効果が残っており、1割ではなく8割使われた。ということじゃ。8割のうち、必要な量は魔法に、残る7割は魔素に変換させられてしまった。ということじゃ。」

「そうですか…それで、その後襲撃はありましたか?」

「いや、なかったぞ」

「よかった…えっと、みんなはどうしたんですか?」

「今かの?授業中じゃよ」

「…え?」

「お主はまる1日寝取ったからの。普通に授業中じゃよ」


 そしてヴィイは座っている椅子から立ち、リュークに頭を下げた。


「すまなかった」

「が、学園長!?ど、どうしたんですか!?」

「あそこで襲われたのはお主じゃろ。だとしたら責任の一環はワシにもある」

「どういうことですか?」

「ワシの予想でじゃが…お主を襲うよう仕向けたのはマーリンじゃ」

「マーリンって…あの会議のときの?」

「そうじゃ」


 そしてヴィイはマーリンの立場、なぜリュークを襲ったのかの予想を言った。

 マーリンのことを知ったリュークはため息をついた。


「魔法属性の相性を否定するだけで十分に名声は得られると思うんだけどな…」

「ワシもそのことは言ったのじゃが…信じてくれなくてのぉ」

「…ん?学園長も属性相性がないことを知ってるのですか?」

「属性相性は若い魔法使いしか信じておらんよ。ただ否定するにも否定材料が少ないし、ワシらが気づかなくても誰かが気づくだろう。ということで若い者の名声のために老人は否定していないんじゃ」

「若い者の名声…そんなことまで考えているんですか」

「じゃから、この学校では属性相性なんて教えておらんじゃろ?」


 ふと思い返してみれば、この学校に所属している教職員の口から「相性」なんて言葉が一度も出ていないことをリュークは思い出す。


「でも知っているならこの学校の教師の誰かが言ってもおかしくないような…」

「じゃから、断言できるほどの否定材料がないんじゃ。すこし前にも否定した者がおったが、あくまでも憶測や偶然などといって認可されなくてのぉ」


 するとヴィイは何か思いついたのか手をポンと叩き、リュークを見た。


「お主なら否定材料を持っておるじゃろ?お主が言ってみてはどうじゃ?」

「嫌ですよ…目立ちたくないの知ってますよね」

「そうじゃった…忘れておったわい」


 ヴィイは残念だとばかりに深いため息をつく。


「それで…僕はこの後授業に出た方がいいですかね?」

「今日は欠席扱いじゃから、出るも良いが休まなくて大丈夫かの?」

「欠席扱いであれば、自分の部屋で寝てきます…まだ眠いので」

「そうかそうか。ゆっくり休むんじゃぞ」

「はい、お疲れ様です」


 リュークはヴィイに挨拶をすると、医療室を出て寮の自分の部屋で寝た。




☆☆☆




「どうしたら!どうしたらいいの!」

「マーリン様!落ち着いてください!」

「落ち着いていられないわよ!あの子供が欲しいの!なのに全く案が思いつかないの!」


 マーリンは狂ったように部屋にある家具を投げたりしている。

 彼女はリュークを欲していた。その理由はリュークの魔法だけではなかった。


「あんな魔力量があるなら!私のあの仮説も証明できるはずなのよ!」


 リュークの捕捉に失敗した後、襲撃した者からの報告書により判明したことがある。


 魔封じには複数の種類がある。

 起動に時間がかかり、密室でしか使えないお香・煙型。

 飲ませれば封じさせることが可能であり、量により変動はするが場所に縛りがない液体型。

 完全に封じることが出来ないものの、風に乗せれば不特定多数にすることが可能な粉末型。

 そして範囲は狭いが即効性のある波型。

 今回使ったのは最後の波型魔封じだ。

 これは特殊な空気の波で魔封じの効果を与えるものである。

 だが強い風に弱く、風の吹かない、吹きにくいところでしか使えない。その効果を最大限引き出すのにも、土壁による密室は効果的であった。

 だが、土壁が崩壊し、その崩壊による風が起きた。

 その風で多少・・波の魔封じが乱れた。


 そう、多少・・である。

 最大限の魔封じはできないものの、それでもあの状況では9割の魔封じ効果があった。

 そんな中、人を吹き飛ばすほどの風を放ち、浮遊魔法を使った。

 浮遊魔法に使われる魔力量は不明であるのだが、あの状況での風魔法を見ただけでも彼の魔力量は最上位魔道士並の魔力量を持つことがわかる。

 それを知ったマーリンは、自分を超える魔力を有しているリュークを強く求めるようになった。


「何か…何かいい案は…」

「…そうだ、私から案があります」

「!?い、言ってみてくれ」


 マーリンの従者は、マーリンにふたつの案を出した。

 一つは、内容は証拠の隠滅を徹底しないとすぐに犯人が分かってしまうハイリスクな物だ。

 だが、成功確率は高いためハイリスクハイリターンな物となっている。


「…いや、それではだめだ。リスクが大きすぎる…」

「ではもう一つの方を。私の知り合いに、クルアーサル魔術学校に通っている人がいましてね」

「それで?」

「その人を使ってですね──────」


 そして内容を話した。

 それはリスクがない訳では無いが先ほどの提案より低く、成功確率も程々であるものだ。

「…!?そ、それだ!すぐに用意してくれ!」

「わかりました。ではあれ・・の使用許可を」

「え?あ、あれはまだ未完成でだな…」

「未完成と言っても使用に予め必要となる魔力があるだけじゃないですか」

「それだけではない。継続して魔力を与えなければならないものだ」

「それは解決しています。魔封じの効果で空気中に出た魔素を魔力に変換させ、その魔力を直接与えれぼいいのですよ」


 その発想は無かったのか、マーリンは驚いた様子で彼女を見る。

 彼女の瞳には嘘をついているようには見えなかった。


「だが…失敗した時はどうするのだ?誤作動で爆発しました。であれば最悪私の命がなくなるぞ」

「それについては先ほどと実験を終えているので問題はありません」

「…聞いていないのだが?」

「報告書を持ってきたらマーリン様が自暴自棄になってたではありませんか」

「いや…あれは自暴自棄という訳ではなくてだな…」


 思い出して少し恥ずかしいのか、少し顔を赤くしながら頬をかく。


「これが報告書になります。それでどうしますか?」

「うーん…だけどな…」

「これを使って効果があればリュークも捕まえられて、学会に提出できる案件も増えて、得々じゃないですか」


 例え捕まえられなくても、これの効果さえちゃんと出ていれば学会で発表できますし。と彼女は付け加える。

 マーリンは少し悩んだ末、頷いた。


「では、準備に取り掛かります」

「ああ、頼む」


 そして彼女は部屋を出た。

 残ったマーリンは、思考が冷静になり…部屋を見た。


「…頼むの忘れてた…………片付けるか」




☆☆☆




 マーリンの従者である彼女─ノリスは、地下にある実験施設に来ていた。


「ノリス様、どうなされました?」

「325番を使うから取りに来た」

「そうですか、わかりました。お通り下さい」


 実験施設の入り口には雇った警備が在中しており基本的にノリスとマーリン、そして実験を手伝う者しか入れない。

 手伝う者も、マーリンかノリスと共にでなければ入ることは許されない。


 理由としては実験途中の物の盗難対策の他に、未完成の物の誤作動による被害の最小限化、そして情報漏洩対策だ。

 情報漏洩は実験途中の物はまだ良い。それよりも人の前に出せないようなもの、出してはいけないものの情報漏洩の方が危うい。

 設計図や作成方法、物を消したとしても、痕跡や加護を使って作り方などが漏れてしまうかもしれない。

 それだけは阻止しなければならないため、このように厳重となっている。


「……ん?」


 ノリスは歩いている途中に一つの異変を感じた。

 その異変を確認し、すぐに警備の人たちの所へ訪れた。


「の、ノリス様、どうなされました?」

「時間表を見せてくれ?」

「えっ?わかりました」


 渡された時間表には、誰がどの時間に入ったかなどが書かれている。

 これは変装や偽装などをして中に入った場合、分からないよりはわかった方が良いということからだ。


「…これ以外で誰か入った人はいる?」

「あっ、私が一瞬入りました」

「いつのこと?」

「つい10分程前です」


 彼が言うには、10分ほど前に不審な音がしたという。

 入ってみると、物が棚から落ちてたという。


「そうか…わかった。では他に異変はあったか?」

「いえ、特にはありませんでした」

「わかった」


 ノリスはもう一度実験施設へ行き、盗まれている物がないか確認した。

 手元にある木に書かれた物と、実際にある物を照らし合わせ、少しの異変も見逃さないように見た。


「…大丈夫か」


 全てを確認し終えると、必要なものを取り出し、実験施設を出た。




☆☆☆




 暗い暗い部屋の中。

 白い光のみが照らす部屋に、一人の男が座っていた。

 その男は机にある木の箱をいじっている。


「陛下、お待たせしました」


 そんな部屋に、一人の女性が入ってきた。


「もうしてきたのか?」

「はい、報告を済ませ、今は作成途中のところです」

「そうか、わかった」

「…ところで陛下は何を作っているのですか?」


 彼女は男のいじっている箱が気になり、無礼だなと思いつつ聞いてみた。


「これか?作成段階だが…コアの予定のものだ」

「コア?一応あの保険として別のものが、その保険として今回のがあるじゃないですか。一体何に使うのですか?」

「んー…保険の保険の保険の保険…かな?」

「保険が多くないですか?」

「あー、三つ目の保険はこれだから」


 そう言いながら男は座っている椅子を足でつついた。


「…よく分かりませんが、つくった。ということですね」

「そゆこと。んじゃあ進展あったら報告よろしく」

「わかりました。では失礼します」
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感想 65

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みんなの感想(65件)

つぁんでぃれ改
ネタバレ含む
2017.04.07 燕上ゆうき(旧名:クゲルブ)

襲撃者と土を作り出した人は別人です。
魔封じの仕組みは次の話あたりで出てきます…まだ作成途中なので予定ですが

別動隊と分かりにくかったため、少々補足しました

解除
全人類の味方(♂)

あまり少年達に胸糞を覚えないのは何故だろうか。

解除
赤狐
2017.04.02 赤狐
ネタバレ含む
2017.04.03 燕上ゆうき(旧名:クゲルブ)

修正しました、報告ありがとうございます
面白いと言っていただけるとありがたいです。モチベがあがります

解除

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