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第3部
8話 鎧修理はお手のもの?
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「じゃあ、アルティくん。確認よろしくにゃ」
「では、失礼して……」
ミーナの手から防具一式を受け取る。
防具は全部で四つのパーツに分かれていた。額当てと、手首から肘までの腕鎧、足首から膝までの脛当て、そして胴鎧だ。
マーピープルや獣人は重い防具を好まないから、最低限に絞っているのだろう。装飾品もほとんどない。その代わり全ての防具には最高純度の金めっきが施されていて、光に照らすとその輝きに目が眩みそうになる。
中でも胴鎧は特にシンプルな作りだった。二枚の円盤に皮のベルトが取り付けられていて、前後から胸部を守るようになっている。いわゆるブレストアーマーだ。
鎧の裏側には風切り羽の刻印がなされていた。時代的に、リリアナの鎧兜を作ったのと同じ職人だろう。相変わらず惚れ惚れとする腕だ。魔機があまり普及していない時代に、ここまで完璧な円状に鋼板を切り出すのは難しかっただろうに。
革のベルトにはやや劣化が見受けられるが、防具自体は百年経過しているとは思えないぐらい状態がよかった。保護魔法のおかげだろう。これなら外に持ち出しても、十分使用には耐えそうだ。
しかし、問題がひとつ。
「……見事に喰われてるな」
「……そうですね」
正面から見たときは気づかなかったが、唯一、胴鎧の背中側のめっきが消えてなくなっていた。目的のものだけ綺麗に溶かすのはスライムの特徴だ。
どうやら「そんなうまい話」があったらしい。スライムは核にしたものを主食にする。さっき遭遇したスライムはゴールドスライムで間違いなさそうだ。
剥き出しになった下地には、ところどころ錆が浮いている。ここは汽水湖だから海水に強い白銅を使ったのだろうが、他が綺麗な金色なので余計に目立つ。
「背中側だから、隠せばわからないよにゃ?」
「いや、やめた方がいい。金は富と権力の象徴だ。特に獣人にとってはな。だから、初代村長も跡目争いを解消する手段として、この鎧を残したんじゃないのか。一目見て権威をしらしめないと、難癖をつけられる可能性があるぞ。『隠すなんてやましいことでもあるのか』。もしバレても『こんなのが初代村長の鎧なはずがない』とかな」
「今の兄ちゃんたちなら言いそう……」
うんざりした表情のウルフに、ミーナが眉を下げる。
「何とか直せないかにゃ?」
「錆取りをして、もう一度金めっきを施せば……」
ウルフの闇から出した荷物一式の中から、電解めっきの本を手に取る。
電解めっきとは、金属を溶かしためっき液に漬けた素材に電気を流すことで、表面に薄い金属被膜を形成させ、素材に新たな性質を付与する技術である。
洞窟の中にはめっき槽代わりのシンクも、めっき液代わりのゴールドスライムもいる。電気はミーナの雷魔法で賄えるし、前処理のための酸やアルカリ液も一応持ってきた。
条件は揃っている。しかし、できるだろうか。
めっきには脱脂、洗浄、中和などの複雑な工程が存在し、当然のことながら、皮膜の適切な厚みを見極めるには豊富な経験が要求される。
ど素人のアルティが下手に手を出して、鎧本体を損なってしまったら?
今まで綿々と繋いできたマーピープルの想いも、初代村長の想いも、それを受け継いだミーナの想いも、全て台無しにしてしまうのではないだろうか。
「アルティ? 大丈夫か?」
リリアナの呼びかけにハッと我に返る。その弾みで地面に落とした本の隙間から封筒が滑り出た。実家から届いたものだ。栞代わりに挟んだままだったらしい。
誘われるように封を切り、中の手紙を取り出す。ざらざらした便箋には近況も何もなく、たった一行だけ。
『お前ならできるよ』
そう書かれていた。
「……なんだよ」
鼻にツンとしたものが込み上げる。長兄にはきっとわかっていたのだ。つまらない意地を張る弟が封筒を開くときは、自分の進む道に迷ったときだけだと。
「やります」
鼻を啜って手紙を封筒に戻し、心配そうに見下ろすリリアナの目を見返す。
「みんなの力を貸してください」
その声は自分でもわかるぐらい、力強かった。
「うわ……。うじゃうじゃいるにゃ……」
光魔法に淡く照らされたスライムたちを見て、ミーナが顔をしかめる。
ここは別れ道の右側を進んだ先にある洞窟の中だ。闇魔法で全身に闇をまとって気配を遮断しているため、スライムたちは壁際に立つアルティたちの存在にまだ気づいていない。
とはいえ、大きな声は出せないので自然と囁き声になる。スライムには目も鼻も耳もないが、体表にまとう魔力で空気の振動を感知しているからだ。
逃亡のときに捨てたのだろうか。地面のあちこちに槍や剣が転がっていた。当然、保護魔法などかかっていないので、どれも朽ちている。
その奥には、薄暗闇の中でもくっきりと浮かび上がる金塊の山があった。マーピープルたちの隠し財産のようだが、悲しいかな、端っこが齧られて溶けてしまっている。
「随分と豪華な食事だな」
「もったいな……」
ウルフが嘆息する。
「で? 私たちはどうすればいいんだ、アルティ」
「まず、本当にゴールドスライムなのか確認します。金属系のスライムは攻撃するときに体表を硬化させるので……ウルフくんには、この板に当たるように誘導してほしいんだ」
懐から取り出した黒い石の板を見せる。玄武岩でできた試金石だ。ここに金を擦り付けて鑑定するのは、昔から用いられている方法である。
本来は純度をはかるものだが、ここには幸い、スライムたちの核の元になったとおぼしき金塊がある。板についた条痕が金塊と同じ色をしていれば、金と確定と言えるだろう。
「オッケー! 狩りは獣人のオハコだよ。任せて!」
「よろしくね。で、もしゴールドスライムで確定だったら、そのときはミーナさんの雷魔法で……」
「気絶させればいいんだにゃ? 了解!」
「おい、アルティ。私は?」
リリアナが不服そうな声を出す。
「……リリアナさんはもしもの時のために待機しててください」
スライムがびびって逃げてしまっては元も子もない。リリアナには気配を消したままでいてもらおう。
「じゃあ、アルティさんと俺の闇魔法解くね。ミーナたちは念のため、離れてて」
頷いたミーナたちが端に寄ったのを合図に、ウルフが体にまとわりついていた闇を消した。
洞窟の中を張り詰めた空気が支配する。
ぴいぴいと甲高い鳴き声を上げたスライムたちが、アルティたちを取り囲むようににじり寄ってくる。縄張りに侵入されて、どの個体も怒り心頭といった様子だ。空で森大鴉に襲われたときもそうだが、殺気が肌を突き刺す感覚は一向に慣れない。
「酸がくるよ! 頭下げて!」
前に立つウルフの言葉に従って体を屈める。スライムたちが吐き出した酸は、まっすぐにアルティたちを目掛けて飛んできたが、ウルフが闇魔法で全て防いでくれた。
酸が効かないとわかったスライムたちが、さらに間合いを詰めてくる。そして、ついにそのうちの一匹が体を硬化させて飛びかかってきた。
「アルティさん! 構えて!」
吠えるように叫び、ウルフがスライムを避ける。壁に背中をつけて衝撃を殺したものの、腕を走る強い痺れに思わず声が出る。攻撃を塞がれたスライムは、鈍い音を立てて地面に落ちると、ボールのように洞窟の隅に転がっていった。
試金石にはしっかりと条痕がついている。成功だ。しかし、その場を離れようとしたとき、怒りで体表を波立たせたスライムたちが一斉に飛びかかってきた。
「アルティ!」
すんでのところで、横から伸びてきた腕に引き寄せられた。リリアナだ。そのまま場所を入れ替わるように、ミーナの方に放り投げられる。
「ウルフ! 私の魔法を解け!」
言い放つと同時に、鮮やかなコバルトブルーがあらわになった。スライムたちの注意がリリアナに向いた隙に、前もって拝借していた金塊を試金石に擦り付け、条痕と見比べる。同じ色。金だ。それも最高純度の。
「ミーナさん! お願いします!」
「わかったにゃ!」
ウルフとリリアナが横に跳躍したタイミングで、ミーナが雷魔法を放つ。金は導電率がいい金属だ。空中を走る稲光をもろに食らったスライムたちは完全に沈黙した。
「ありがとうございます。これだけいれば十分です」
「まさか希少なゴールドスライムがこんなところにごろごろいるとはな……。でも、金塊がなかったらどう判別するつもりだったんだ?」
「一応、持ってきてたんですよ。師匠がこっそり隠してあった金の延べ棒。使わなくて済んでよかったです」
ズボンのポケットから小さな棒を取り出す。金塊とは比べものにならないぐらい低純度のものだが、一応金は金である。
「……前々から思ってたんだが、普段は赤字を気にするのに、自分の仕事となると利益を度外視するよな。お師匠さんに似てきたんじゃないのか?」
「やめてください。俺は最低限のラインは守ってます」
その場の空気が緩んだとき、リリアナの腰のあたりからノイズが走り、洞窟中に切羽詰まった声が響いた。
『ごめん~! 陽動って気づかれたみたい~! お兄ちゃんたち、そっちに向かったよ~!』
エトナだ。通信機を手にしたリリアナと顔を見合わせる。
「どれくらい必要だ?」
端的な問いだが意図はわかる。目を逸らさずに「朝までには」と返すと、リリアナはふっと笑みを漏らし、通信機を口元あたりの闇に当てた。
「わかった。エトナ、お前もこっちに来い。時間を稼ぐから援護してくれ」
『了解~! 文字通り飛んで行くよ~。気をつけてねえ~』
沈黙した通信機をミーナに渡し、リリアナが腰の剣を抜く。
「ウルフ、お前はスライムたちを運んだら上がってこい。ミーナはアルティを頼むぞ。もしものことがあれば通信機を使え」
「リ、リリアナさん。相手はミーナさんのお兄さんたちなので……」
「わかってるさ。まあ、多少は大丈夫だろう。獣人はタフだしな!」
不穏なことを言い放って駆けていくリリアナの背中を見送り、アルティは叫んだ。
「急ぎましょう! ここから先は時間との勝負です!」
「では、失礼して……」
ミーナの手から防具一式を受け取る。
防具は全部で四つのパーツに分かれていた。額当てと、手首から肘までの腕鎧、足首から膝までの脛当て、そして胴鎧だ。
マーピープルや獣人は重い防具を好まないから、最低限に絞っているのだろう。装飾品もほとんどない。その代わり全ての防具には最高純度の金めっきが施されていて、光に照らすとその輝きに目が眩みそうになる。
中でも胴鎧は特にシンプルな作りだった。二枚の円盤に皮のベルトが取り付けられていて、前後から胸部を守るようになっている。いわゆるブレストアーマーだ。
鎧の裏側には風切り羽の刻印がなされていた。時代的に、リリアナの鎧兜を作ったのと同じ職人だろう。相変わらず惚れ惚れとする腕だ。魔機があまり普及していない時代に、ここまで完璧な円状に鋼板を切り出すのは難しかっただろうに。
革のベルトにはやや劣化が見受けられるが、防具自体は百年経過しているとは思えないぐらい状態がよかった。保護魔法のおかげだろう。これなら外に持ち出しても、十分使用には耐えそうだ。
しかし、問題がひとつ。
「……見事に喰われてるな」
「……そうですね」
正面から見たときは気づかなかったが、唯一、胴鎧の背中側のめっきが消えてなくなっていた。目的のものだけ綺麗に溶かすのはスライムの特徴だ。
どうやら「そんなうまい話」があったらしい。スライムは核にしたものを主食にする。さっき遭遇したスライムはゴールドスライムで間違いなさそうだ。
剥き出しになった下地には、ところどころ錆が浮いている。ここは汽水湖だから海水に強い白銅を使ったのだろうが、他が綺麗な金色なので余計に目立つ。
「背中側だから、隠せばわからないよにゃ?」
「いや、やめた方がいい。金は富と権力の象徴だ。特に獣人にとってはな。だから、初代村長も跡目争いを解消する手段として、この鎧を残したんじゃないのか。一目見て権威をしらしめないと、難癖をつけられる可能性があるぞ。『隠すなんてやましいことでもあるのか』。もしバレても『こんなのが初代村長の鎧なはずがない』とかな」
「今の兄ちゃんたちなら言いそう……」
うんざりした表情のウルフに、ミーナが眉を下げる。
「何とか直せないかにゃ?」
「錆取りをして、もう一度金めっきを施せば……」
ウルフの闇から出した荷物一式の中から、電解めっきの本を手に取る。
電解めっきとは、金属を溶かしためっき液に漬けた素材に電気を流すことで、表面に薄い金属被膜を形成させ、素材に新たな性質を付与する技術である。
洞窟の中にはめっき槽代わりのシンクも、めっき液代わりのゴールドスライムもいる。電気はミーナの雷魔法で賄えるし、前処理のための酸やアルカリ液も一応持ってきた。
条件は揃っている。しかし、できるだろうか。
めっきには脱脂、洗浄、中和などの複雑な工程が存在し、当然のことながら、皮膜の適切な厚みを見極めるには豊富な経験が要求される。
ど素人のアルティが下手に手を出して、鎧本体を損なってしまったら?
今まで綿々と繋いできたマーピープルの想いも、初代村長の想いも、それを受け継いだミーナの想いも、全て台無しにしてしまうのではないだろうか。
「アルティ? 大丈夫か?」
リリアナの呼びかけにハッと我に返る。その弾みで地面に落とした本の隙間から封筒が滑り出た。実家から届いたものだ。栞代わりに挟んだままだったらしい。
誘われるように封を切り、中の手紙を取り出す。ざらざらした便箋には近況も何もなく、たった一行だけ。
『お前ならできるよ』
そう書かれていた。
「……なんだよ」
鼻にツンとしたものが込み上げる。長兄にはきっとわかっていたのだ。つまらない意地を張る弟が封筒を開くときは、自分の進む道に迷ったときだけだと。
「やります」
鼻を啜って手紙を封筒に戻し、心配そうに見下ろすリリアナの目を見返す。
「みんなの力を貸してください」
その声は自分でもわかるぐらい、力強かった。
「うわ……。うじゃうじゃいるにゃ……」
光魔法に淡く照らされたスライムたちを見て、ミーナが顔をしかめる。
ここは別れ道の右側を進んだ先にある洞窟の中だ。闇魔法で全身に闇をまとって気配を遮断しているため、スライムたちは壁際に立つアルティたちの存在にまだ気づいていない。
とはいえ、大きな声は出せないので自然と囁き声になる。スライムには目も鼻も耳もないが、体表にまとう魔力で空気の振動を感知しているからだ。
逃亡のときに捨てたのだろうか。地面のあちこちに槍や剣が転がっていた。当然、保護魔法などかかっていないので、どれも朽ちている。
その奥には、薄暗闇の中でもくっきりと浮かび上がる金塊の山があった。マーピープルたちの隠し財産のようだが、悲しいかな、端っこが齧られて溶けてしまっている。
「随分と豪華な食事だな」
「もったいな……」
ウルフが嘆息する。
「で? 私たちはどうすればいいんだ、アルティ」
「まず、本当にゴールドスライムなのか確認します。金属系のスライムは攻撃するときに体表を硬化させるので……ウルフくんには、この板に当たるように誘導してほしいんだ」
懐から取り出した黒い石の板を見せる。玄武岩でできた試金石だ。ここに金を擦り付けて鑑定するのは、昔から用いられている方法である。
本来は純度をはかるものだが、ここには幸い、スライムたちの核の元になったとおぼしき金塊がある。板についた条痕が金塊と同じ色をしていれば、金と確定と言えるだろう。
「オッケー! 狩りは獣人のオハコだよ。任せて!」
「よろしくね。で、もしゴールドスライムで確定だったら、そのときはミーナさんの雷魔法で……」
「気絶させればいいんだにゃ? 了解!」
「おい、アルティ。私は?」
リリアナが不服そうな声を出す。
「……リリアナさんはもしもの時のために待機しててください」
スライムがびびって逃げてしまっては元も子もない。リリアナには気配を消したままでいてもらおう。
「じゃあ、アルティさんと俺の闇魔法解くね。ミーナたちは念のため、離れてて」
頷いたミーナたちが端に寄ったのを合図に、ウルフが体にまとわりついていた闇を消した。
洞窟の中を張り詰めた空気が支配する。
ぴいぴいと甲高い鳴き声を上げたスライムたちが、アルティたちを取り囲むようににじり寄ってくる。縄張りに侵入されて、どの個体も怒り心頭といった様子だ。空で森大鴉に襲われたときもそうだが、殺気が肌を突き刺す感覚は一向に慣れない。
「酸がくるよ! 頭下げて!」
前に立つウルフの言葉に従って体を屈める。スライムたちが吐き出した酸は、まっすぐにアルティたちを目掛けて飛んできたが、ウルフが闇魔法で全て防いでくれた。
酸が効かないとわかったスライムたちが、さらに間合いを詰めてくる。そして、ついにそのうちの一匹が体を硬化させて飛びかかってきた。
「アルティさん! 構えて!」
吠えるように叫び、ウルフがスライムを避ける。壁に背中をつけて衝撃を殺したものの、腕を走る強い痺れに思わず声が出る。攻撃を塞がれたスライムは、鈍い音を立てて地面に落ちると、ボールのように洞窟の隅に転がっていった。
試金石にはしっかりと条痕がついている。成功だ。しかし、その場を離れようとしたとき、怒りで体表を波立たせたスライムたちが一斉に飛びかかってきた。
「アルティ!」
すんでのところで、横から伸びてきた腕に引き寄せられた。リリアナだ。そのまま場所を入れ替わるように、ミーナの方に放り投げられる。
「ウルフ! 私の魔法を解け!」
言い放つと同時に、鮮やかなコバルトブルーがあらわになった。スライムたちの注意がリリアナに向いた隙に、前もって拝借していた金塊を試金石に擦り付け、条痕と見比べる。同じ色。金だ。それも最高純度の。
「ミーナさん! お願いします!」
「わかったにゃ!」
ウルフとリリアナが横に跳躍したタイミングで、ミーナが雷魔法を放つ。金は導電率がいい金属だ。空中を走る稲光をもろに食らったスライムたちは完全に沈黙した。
「ありがとうございます。これだけいれば十分です」
「まさか希少なゴールドスライムがこんなところにごろごろいるとはな……。でも、金塊がなかったらどう判別するつもりだったんだ?」
「一応、持ってきてたんですよ。師匠がこっそり隠してあった金の延べ棒。使わなくて済んでよかったです」
ズボンのポケットから小さな棒を取り出す。金塊とは比べものにならないぐらい低純度のものだが、一応金は金である。
「……前々から思ってたんだが、普段は赤字を気にするのに、自分の仕事となると利益を度外視するよな。お師匠さんに似てきたんじゃないのか?」
「やめてください。俺は最低限のラインは守ってます」
その場の空気が緩んだとき、リリアナの腰のあたりからノイズが走り、洞窟中に切羽詰まった声が響いた。
『ごめん~! 陽動って気づかれたみたい~! お兄ちゃんたち、そっちに向かったよ~!』
エトナだ。通信機を手にしたリリアナと顔を見合わせる。
「どれくらい必要だ?」
端的な問いだが意図はわかる。目を逸らさずに「朝までには」と返すと、リリアナはふっと笑みを漏らし、通信機を口元あたりの闇に当てた。
「わかった。エトナ、お前もこっちに来い。時間を稼ぐから援護してくれ」
『了解~! 文字通り飛んで行くよ~。気をつけてねえ~』
沈黙した通信機をミーナに渡し、リリアナが腰の剣を抜く。
「ウルフ、お前はスライムたちを運んだら上がってこい。ミーナはアルティを頼むぞ。もしものことがあれば通信機を使え」
「リ、リリアナさん。相手はミーナさんのお兄さんたちなので……」
「わかってるさ。まあ、多少は大丈夫だろう。獣人はタフだしな!」
不穏なことを言い放って駆けていくリリアナの背中を見送り、アルティは叫んだ。
「急ぎましょう! ここから先は時間との勝負です!」
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