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第2部 悲劇を越えた先へ
38話
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「大したもてなしもできず、申しわけなかったね」
「とんでもない。お尋ね者の我々を城内に招き入れてくださり、本当に感謝しています。旅の支度まで整えていただいて……」
フランとカシウスに山と積まれた荷物を見て、エミリアが眉を下げた。これだけあれば、しばらくは街に寄らずとも十分持つだろう。彼女が身にまとっている女性用の旅装も、アメリアが用意してくれたものだ。
ダンテとの対談から一夜明け、フランチェスカに向けて旅立つサミュエルたちを、公爵夫妻とラティウスが見送りに来てくれていた。ダンテからすでに話を聞いているのだろう。彼らは皆一様に、気まずそうな表情を浮かべている。
対してエミリアは、スッキリとした顔でアメリアの抱擁を受け入れていた。やるべきことは全てやったのだ。ダンテの気持ちを動かすことは叶わなかったが、後は天命に任せるしかない。
「どうか、お気をつけて。治安が悪くなっていますから」
「ありがとう、ラティウス卿。大丈夫、サミュエルが守ってくれる」
エミリアがにこっと微笑んだ。全幅の信頼を寄せられ、頬が熱くなる。そんな二人の様子を見て、ラティウスもふっと笑みを漏らした。
「ごちそうさまと言っておきましょう。貴女の護衛騎士は幸せ者だな」
最初に会った時よりも、少し口調がくだけたものになっている。夜通しルキウスについて語り合ったからか、彼とはささやかな絆が芽生えていた。
ティーガー家からの手紙も預かったことだし、ルキウスがどんな顔をするのか、今から楽しみだ。
「アレクシウス様、ダンテ殿下によろしくお伝えください。あなたの意思を尊重します。そして、我々は必ず生き延びてみせます、と」
「こんなことを言える立場ではないが、フランチェスカの武運を心から祈っているよ。二人の行く先に、ルビーの輝きがありますように」
「ありがとうございます。ファウスティナに住む方々が、これから先も、良きパンに出会えますように」
馬に乗り、晴れやかに笑うエミリアの姿を、アレクシウスが眩しそうに見つめていた。
千切れんばかりに手を振るアメリアに手を振り返し、馬首を南に向ける。ここから先はひたすらフランチェスカを目指す旅だ。森を抜ければ、ギリギリ秋祭りまでには戻れるだろう。
秋風を頬に浴びながら、そっと背後を振り返る。アレクシウスたちの後ろに聳える尖塔の上で、太陽に煌めく金髪が見えたような気がした。
治安が悪くなっている、との言葉通り、何度か野盗に襲われはしたが、森に入る頃にはそれも止んだ。森番がストライキを起こしたせいか、他に旅人の姿もなく、お尋ね者の身としては順調な旅路だった。
王都を逃げ出して北に行ったという設定を遵守するため、ラスティの小屋を訪ねるのは諦め、野宿を繰り返してようやく森を抜けたのは、まもなく完全に日が落ちようかという頃だった。
開けた視界の先には、フランチェスカ領マルキアのささやかな明かりがぽつぽつと点っている。
ロマーニャを超えた先にあるマルキアは、宿場町であるクノーブルとは違い、農業と牧畜に特化した小さな田舎の村だ。それ故に訪れるものも少なく、村の設備も最低限のものしかない。
サミュエルも訪れるのは初めてで、そもそもフランチェスカにくるまではこんな村があることすら知らなかった。
領主であるエミリアは当然きたことがあるが、女性の姿をしているからか、誰も領主だとは思わないようだった。
それどころか、珍しいはずの旅人が村をうろいているにもかかわらず、みんな秋祭りの準備に集中していて、こちらを気にする素振りもない。
最後の秋祭りだと覚悟しているのだろうか。よくある農村の風景の中に、場違いなほど気合の入った装飾が施されていた。
その中心で一際大きな声を張り上げている男に、自然と視線が引き寄せられた。少し高い声をして、女みたいに長い栗色の髪が宙に踊っている。
細身の割に、肩と腕まわりだけはやたらとがっしりしている後ろ姿は、間違いようもなく、無二の従者のものだった。
「テオ!」
自分でも驚くぐらいの大声が出た。その声にテオは弾かれるように振り返ると、まるで幻でも見ているかのように両目を瞬かせ、一瞬の沈黙ののち、満面の笑みを浮かべた。
「サミュエル様!」
繋いだエミリアの手を引きながら、テオに駆け寄る。肩に担いでいた木材を放り出したテオも、一直線にこちらに駆けてくる。
その様子を見ていた村人が何だ何だと視線を向けてくる中、サミュエルとテオはお互いを力強く抱きしめ合った。
「よくご無事で! もー、遅いですよ! ギリギリじゃないですか! どこで道草食ってたんです?」
「ファウスティナまで行ってたんだから、これでも早い方だろ? それにしても、お前、ここで何やってるんだよ? 籠城戦の準備はどうした?」
「籠城戦の準備はつつがなく。人が増えてやること減っちゃったんで、お二人を迎えに行ってこいって言われて……。でも、ちっとも戻ってこないから、秋祭りの準備の手伝いをしてたんですよ。今年はフランチェスカ史上一のものにしたいって、村のみんなが……」
「ちょっと待て。人が増えた? どういうことだ?」
愚痴まじりの報告を遮られ、テオが剣呑な目をエミリアに向けた。他人の邪魔をするのはいいが、自分が邪魔をされるのは嫌な男なのだ。
しかし、何かが引っかかったのか、テオはしげしげとエミリアを眺めると、首を傾げてキョトンとした顔をした。
「あれ? エミリア様? ほんとに?」
「他に誰だと思ってたんだ。というか、サミュエルしか見えてなかったな? 失礼な奴め」
「すみません。何処の馬の骨かと思って。えー、でも、なんか……」
じとっと、嫌な目つきで見られて身の危険を感じたのか、エミリアがサミュエルの背に隠れた。その可愛らしい仕草に思わず破顔する。
そんなサミュエルの間抜け面にピンときたらしく、テオは目を糸みたいに細めると、いじけるように呟いた。
「あー、そう。そういうことですか。俺たちがこんなに必死に頑張ってるときに、あなたたちときたら……」
「な、何だよ。別に悪いことはしてないぞ」
「えーえーそうでしょうとも。お幸せそうで何より。ミゲルさんたちも、さぞや喜ぶでしょうね」
「うっ」
青筋を立てる保護者たちの姿が脳裏に浮かび、サミュエルはうめいた。エミリアに手を出したことは後悔していないが、対面するのは怖い。
テオはこちらの葛藤を鼻で笑うと、サミュエルの背後から顔を出したエミリアに、いつもと変わらぬ笑顔を向けた。
「とりあえず、フランチェスカに戻りましょう。話はそれからです。あ、休んでる暇はないですからね。みんな、あなたたちの帰りを待ってるんですから!」
「……何だ、これは」
朝日に照らされた城壁を眺めていたエミリアが、今にも倒れそうな声でうめいた。彼女の隣に立つサミュエルも同様である。
テオの宣言通り、野宿する暇もなく馬を飛ばし、疲労困憊のサミュエルたちを出迎えたのは、立派な軍事要塞と化したフランチェスカだった。
堅牢な城壁の上に設置されているのは、未来でも見たバリスタ、そして見慣れぬ鉄の筒のようなもの。
木と違って、温もりというものを感じられないせいだろうか。こちらに向けられている暗い井戸の底のような穴を見ると、背筋が寒くなる心地がする。
見慣れた城門の両脇には、ファウスティナの騎士たちのような重装備に身を包んだ男たちが佇み、その向こうでは、祭りのときでも見ないほどの人が行き交っていた。
「凄いでしょう! ミケーレから入手した最新兵器、大砲ですよ。お隣では、これでドンぱちやらかすそうです」
「……そういや、ずっと気になっていたけど、お前が担いでるのも、いつものクロスボウじゃないよな。ただの木の筒じゃないってことか?」
「そうそう。銃っていって、クロスボウみたいに遠くの敵を仕留める武器です。でもね、殺傷力が段違いなんですよ! 弾が限られてるってこととが難点ですが、これさえあれば兜なんて易々とぶち抜けます。開戦したら、獲物を狩り尽くしてやりますよ」
相変わらず物騒なことをあっけらかんと言う。黙り込むサミュエルの隣で、顔を青ざめたエミリアが果敢にも言葉を繋いだ。
「城門を警備しているのは、傭兵か? 中にもいるよな? 雇ったのか?」
「いえ、れっきとした騎士たちですよ。後で説明しますから、まずは城に向かいましょう」
先導するテオに続いて、城門をくぐる。両脇に立っていた男たちはこちらに会釈すると、すぐに視線を前方に戻した。隙のない雰囲気といい、しっかりと訓練された騎士たちのようだ。
城壁を見たときから覚悟していたが、約二ヶ月ぶりに戻ってきた城下は、すっかり様変わりしていた。城壁に沿うように設置された投石器や、臨時で建てたとおぼしき物見櫓の合間合間を、領民たちが忙しなく走り回っている。
火矢による燃焼を防止するためだろう。木製の建物には獣の皮が満遍なく貼り付けられ、その中で秋祭りの青と黄色のペナントがはためいている様は一種異様な雰囲気だった。
マルキアと同じく、領民たちはまだこちらに気づいていないようだった。目を凝らして見知った人間がいないか見渡してみるも、人が多すぎて何が何だかよくわからない。
「なぁ、親父って……」
「まだですよー。まあ、そのうち来ますって。せっかちな男は嫌われますよ」
振り返りもせずに言われ、二の句が紡げなくなる。今は話すべき場面じゃないと言いたいのだろう。こういうときのテオに何を聞いても無駄だ。
城へ続く道を道なりに進むと、巨大な倉庫と化した市庁舎が見えてきた。歴史ある重厚な門の前に、中に入り切らなかったとおぼしき武器や防具が山と積まれている。
ひっきりなしに出入りする男たちは、確か役場の職員たちだ。いつも黙々と机に向かっているイメージしかなかったが、皆が皆、額に汗して働いていた。
懐かしさと戸惑いを噛み締めながら中央広場に進むと、そこは臨時の炊き出し場になっていた。
噴水の周りに、屋台のごとく調理場が設けられ、土と埃で汚れた領民たちや騎士たちが料理に舌鼓を打っている。腕を奮っているのは、サミュエル御用達の酒場の親父だろうか。変わらない姿に、胸が熱くなる。
溢れんばかりの人混みの片隅に、真剣な表情でジュリオとアントニオと話しているルキウスの姿があった。若干疲れが垣間見えるが、おおむね元気そうだ。
声をかけようかと思ったとき、ふいにこちらを向いた彼と目があった。黒い瞳が大きく見開かれ、そして泣きそうに歪む。それに気づいたジュリオとアントニオも、こちらに目を向け、同じように目を見開いた。
「エミリア様!」
「ルキウス! ジュリオとアントニオも! 待たせてすまなかったな」
「いえ、そんな……よくご無事で……よく……」
「泣くんじゃねぇよぉ、ルキウス様。こういう時は笑顔笑顔!」
アントニオにばんばんと背中を叩かれ、ルキウスがむせる。その隣でジュリオが慈愛をたたえた瞳でエミリアを見つめ返していた。
「え? エミリア様?」
「本当だ! エミリア様だ! 戻ってきたんだ!」
手を取り合うエミリアたちに気づいた領民たちが、わっと近寄ってきた。
アヴァンティーノ邸のときと同じように、遠慮なく揉みくちゃにされる。歓迎の印というのは、どこも似たようなものなのかもしれない。
エミリアと共に手荒な愛情を一身に受けていると、ちゃっかり避難していたテオの背後から、両脇に騎士を伴った男が一人近づいてくるのが見えた。
フランチェスカではあまり見ない洗練された服を着て、背が低く、ずんぐりとした体格をしている。領民たちと同じく、土や埃で汚れてはいたが、その姿には既視感がある。
「バルテロ卿?」
いち早く正体に気づいたエミリアが声を上げる。それを合図に、サミュエルたちを取り囲んでいた人の輪がさっと左右に開いた。
バルテロは鷹揚な仕草で領民たちに会釈すると、王城で相対した時は打って変わって穏やかな目でエミリアに微笑んだ。
「なぜ、フランチェスカに? 王都はどうしたのです?」
「捨ててきました。私だけじゃありませんぞ。反戦派以外にもフランチェスカとアヴァンティーノに与すると決めた貴族は多いのです。ここに入り切らないので、周辺に散ってはいますがね」
バルテロが滔々とあげた名前には、建国から王家に仕えていた名家も多かった。テオに目を向けると、彼は悪戯が成功した子供みたいに、ニヤッと笑った。
騎士たちは貴族たちが連れてきたのだ。山と積まれていた物資や、未来よりも周到な籠城戦の準備も、彼らの協力があってのことだろう。
つまりは、戦力が著しく増強している。ロドリゴの作戦が功を奏したのだ。
「私たちに力を貸してくださるのですか……」
「世論もあなた方に傾いていますしな。それに……」
そこで言葉を切り、バルテロは少し寂しそうに眉を下げた。
「実は私は入り婿でしてな。本来ならサヴァティーニ家は妻が継ぐはずだった。夫の欲目を差し引いても優秀な妻でしたから、きっと歴代一の宰相になっていたでしょう。……継承権さえあれば」
バルテロの瞳に、一瞬だけ悲しみの色が浮かんで消えた。彼の妻は若くして亡くなっている。出産時に赤子諸共、命を落としたのだ。
「あなたの上げた声に胸を打たれたものは多い。サミュエル卿、君の言葉にもだ。広間であなたたちをかばった伯爵夫人は若い頃に双子を産んでいる。それがどういうことかわかるでしょう?」
エミリアが唇を噛んだ。ベアトリーチェについて話していたとき、涙を浮かべていたのは、失った我が子を思い出していたからなのかもしれない。
「さらに言うなら、我ら建国からの貴族には、脈々と受け継がれた誓いがあるのです。ロドリゴ卿もそれを見越して反旗を翻したのでしょう。人のいい顔をして、なかなか食えぬ御仁ですからな。我らに貴族の誇りを取り戻そうとしたに違いありません」
「誓い……?」
「そう。王が道を踏み外したら、彼と杯を酌み交わした者たちはそれを止めること。それが初代国王、アウグスト一世と交わした誓いです。王家の血を引くフランチェスカやファウスティナには託せなかった、盟友の誓い。我々は今こそ、それを果たすべきだ」
凛とした声が、中央広場にいる者たちの胸を打った。その中心で、エミリアが泣きそうな顔をしている。
アウグスト一世の誓い。それはおそらく、エミリアが考察したように、双子の入れ替わりによる内乱があったからなのだろう。彼は、自分も兄と同じ道を辿るのが怖かったのだ。
そのために王家に貴族という抑止力をつけ、胡乱な迷信を広げて双子を遠ざけた。二度と争いが起こらないことを願って。
しかし、四百年経った今、彼の願いは破られてしまった。他でもない、子孫たちの手で。
「申しわけない、バルテロ卿。なんと言えばいいのか……」
「と、まあ、妻なら言いそうな事ですがね。私は商売の腕を見込まれて入り婿になった男です。損をする賭けには乗りません。私を儲けさせてくれるのでしょう、フランチェスカ公爵。販路を預けてくださる約束、お忘れになったわけではありませんな?」
エミリアの言葉を遮って、バルテロが肩をすくめる。その目には強かな商人の光があった。
にやりと口元を歪めるバルテロに、つられたようにエミリアが笑う。お互いが右手を差し出したのは同時だった。
「もちろんです。双子川の女神の名にかけて、あなたを王国一の商人にして見せますよ」
「結構。これで契約成立ですな。そのためには、この一面を乗り切りませんと。さあ、城にお行きなさい。三日後には秋祭りだ。もうあまり時間はありませんぞ」
しっかり手を組み交わし、バルテロは市内の見回りに出かけて行った。アヴァンティーノが不在の今、貴族方の筆頭として、精力的に動いてくれているらしい。王都にいる頃は食えない狸親父だとばかり思っていたが、人はわからないものだ。
「私たちは、いろんな人の想いに支えられてるんだな」
「そうですね。こんな事態にならなければ、知らないままだったかもしれません」
しんみりした気持ちを抱えつつ、ルキウスとジュリオと共に坂道を上って城の広場に着くと、玄関先にいつもと違う門番がいることに気がついた。新しく雇ったのだろうか。背丈からして、随分と若いような気がする。
ルキウスが紹介してくれるかと思いきや、背後に控える彼は何も言わない。エミリアと顔を見合わせつつ目をすがめるようにしてよく見ると、腰に剣を下げ、後ろ手を組んで直立不動で周囲を見渡している騎士の瞳は、珍しいオッドアイだった。
「まさか、コリン? コリンか?」
「その声は……師匠? あっ、エミリア様も!」
ぱあっと顔を輝かせて駆けてくるコリンを抱き止めようと両手を広げたとき、ハッと我に返ったようにコリンが足を止めた。
そして、呆気に取られるサミュエルの眼前で、音を鳴らして踵を合わせ、胸に手を当てる。その仕草は、一端の騎士のものと相違なかった。
「我らフランチェスカ騎士団一同、お二人のご帰還を心よりお待ちしておりました。エミリア様、サミュエル卿、本当に無事で良かった。お帰りなさい」
「お前、いつの間に、そんな立派に……」
「何だよ師匠。大袈裟だなぁ」
そう言って笑みを浮かべるコリンは、一回りも二回りも大きく見えた。ちょっと離れていただけなのに、この成長ぶりは反則だ。
隣で涙ぐむエミリアに追従するように、サミュエルの喉もつまる。そんな二人を背後で見守っていたルキウスが、小さく笑った。
「まだ見習いですがね。非常時ですから、戦力は一人でも多い方がいいでしょう。サミュエルの言う通り、剣の筋もいいし、何しろ本人にやる気と根性がある。こいつは伸びますよ」
「ありがとう、ルキウスさん。俺の言ったこと、守ってくれたんですね」
「酒の席とはいえ、約束だからな。でも、勘違いすんなよ。お前のためじゃねぇからな。あくまでもエミリア様を守るためなんだから」
「本当に素直じゃないですね。ラティウス卿にチクりますよ」
「なんで、お前が兄貴の名前を知ってるんだよ!」
目を剥くルキウスを軽くあしらって、サミュエルは声を上げて笑った。なぜだか無性に、可笑しくて仕方がなかった。
涙を流して腹を抱える主人に、テオが呆気に取られたような顔をしている。その笑い声に触発されたように、エミリアとコリンも肩を揺らして笑い出した。
それを聞きつけたトマスや、城内にいた面々が次々と現れ、周囲が俄かに賑やかになる。
——ようやく帰ってこられた。ここが自分の居場所だ。
強く、強くそう思った。
「とんでもない。お尋ね者の我々を城内に招き入れてくださり、本当に感謝しています。旅の支度まで整えていただいて……」
フランとカシウスに山と積まれた荷物を見て、エミリアが眉を下げた。これだけあれば、しばらくは街に寄らずとも十分持つだろう。彼女が身にまとっている女性用の旅装も、アメリアが用意してくれたものだ。
ダンテとの対談から一夜明け、フランチェスカに向けて旅立つサミュエルたちを、公爵夫妻とラティウスが見送りに来てくれていた。ダンテからすでに話を聞いているのだろう。彼らは皆一様に、気まずそうな表情を浮かべている。
対してエミリアは、スッキリとした顔でアメリアの抱擁を受け入れていた。やるべきことは全てやったのだ。ダンテの気持ちを動かすことは叶わなかったが、後は天命に任せるしかない。
「どうか、お気をつけて。治安が悪くなっていますから」
「ありがとう、ラティウス卿。大丈夫、サミュエルが守ってくれる」
エミリアがにこっと微笑んだ。全幅の信頼を寄せられ、頬が熱くなる。そんな二人の様子を見て、ラティウスもふっと笑みを漏らした。
「ごちそうさまと言っておきましょう。貴女の護衛騎士は幸せ者だな」
最初に会った時よりも、少し口調がくだけたものになっている。夜通しルキウスについて語り合ったからか、彼とはささやかな絆が芽生えていた。
ティーガー家からの手紙も預かったことだし、ルキウスがどんな顔をするのか、今から楽しみだ。
「アレクシウス様、ダンテ殿下によろしくお伝えください。あなたの意思を尊重します。そして、我々は必ず生き延びてみせます、と」
「こんなことを言える立場ではないが、フランチェスカの武運を心から祈っているよ。二人の行く先に、ルビーの輝きがありますように」
「ありがとうございます。ファウスティナに住む方々が、これから先も、良きパンに出会えますように」
馬に乗り、晴れやかに笑うエミリアの姿を、アレクシウスが眩しそうに見つめていた。
千切れんばかりに手を振るアメリアに手を振り返し、馬首を南に向ける。ここから先はひたすらフランチェスカを目指す旅だ。森を抜ければ、ギリギリ秋祭りまでには戻れるだろう。
秋風を頬に浴びながら、そっと背後を振り返る。アレクシウスたちの後ろに聳える尖塔の上で、太陽に煌めく金髪が見えたような気がした。
治安が悪くなっている、との言葉通り、何度か野盗に襲われはしたが、森に入る頃にはそれも止んだ。森番がストライキを起こしたせいか、他に旅人の姿もなく、お尋ね者の身としては順調な旅路だった。
王都を逃げ出して北に行ったという設定を遵守するため、ラスティの小屋を訪ねるのは諦め、野宿を繰り返してようやく森を抜けたのは、まもなく完全に日が落ちようかという頃だった。
開けた視界の先には、フランチェスカ領マルキアのささやかな明かりがぽつぽつと点っている。
ロマーニャを超えた先にあるマルキアは、宿場町であるクノーブルとは違い、農業と牧畜に特化した小さな田舎の村だ。それ故に訪れるものも少なく、村の設備も最低限のものしかない。
サミュエルも訪れるのは初めてで、そもそもフランチェスカにくるまではこんな村があることすら知らなかった。
領主であるエミリアは当然きたことがあるが、女性の姿をしているからか、誰も領主だとは思わないようだった。
それどころか、珍しいはずの旅人が村をうろいているにもかかわらず、みんな秋祭りの準備に集中していて、こちらを気にする素振りもない。
最後の秋祭りだと覚悟しているのだろうか。よくある農村の風景の中に、場違いなほど気合の入った装飾が施されていた。
その中心で一際大きな声を張り上げている男に、自然と視線が引き寄せられた。少し高い声をして、女みたいに長い栗色の髪が宙に踊っている。
細身の割に、肩と腕まわりだけはやたらとがっしりしている後ろ姿は、間違いようもなく、無二の従者のものだった。
「テオ!」
自分でも驚くぐらいの大声が出た。その声にテオは弾かれるように振り返ると、まるで幻でも見ているかのように両目を瞬かせ、一瞬の沈黙ののち、満面の笑みを浮かべた。
「サミュエル様!」
繋いだエミリアの手を引きながら、テオに駆け寄る。肩に担いでいた木材を放り出したテオも、一直線にこちらに駆けてくる。
その様子を見ていた村人が何だ何だと視線を向けてくる中、サミュエルとテオはお互いを力強く抱きしめ合った。
「よくご無事で! もー、遅いですよ! ギリギリじゃないですか! どこで道草食ってたんです?」
「ファウスティナまで行ってたんだから、これでも早い方だろ? それにしても、お前、ここで何やってるんだよ? 籠城戦の準備はどうした?」
「籠城戦の準備はつつがなく。人が増えてやること減っちゃったんで、お二人を迎えに行ってこいって言われて……。でも、ちっとも戻ってこないから、秋祭りの準備の手伝いをしてたんですよ。今年はフランチェスカ史上一のものにしたいって、村のみんなが……」
「ちょっと待て。人が増えた? どういうことだ?」
愚痴まじりの報告を遮られ、テオが剣呑な目をエミリアに向けた。他人の邪魔をするのはいいが、自分が邪魔をされるのは嫌な男なのだ。
しかし、何かが引っかかったのか、テオはしげしげとエミリアを眺めると、首を傾げてキョトンとした顔をした。
「あれ? エミリア様? ほんとに?」
「他に誰だと思ってたんだ。というか、サミュエルしか見えてなかったな? 失礼な奴め」
「すみません。何処の馬の骨かと思って。えー、でも、なんか……」
じとっと、嫌な目つきで見られて身の危険を感じたのか、エミリアがサミュエルの背に隠れた。その可愛らしい仕草に思わず破顔する。
そんなサミュエルの間抜け面にピンときたらしく、テオは目を糸みたいに細めると、いじけるように呟いた。
「あー、そう。そういうことですか。俺たちがこんなに必死に頑張ってるときに、あなたたちときたら……」
「な、何だよ。別に悪いことはしてないぞ」
「えーえーそうでしょうとも。お幸せそうで何より。ミゲルさんたちも、さぞや喜ぶでしょうね」
「うっ」
青筋を立てる保護者たちの姿が脳裏に浮かび、サミュエルはうめいた。エミリアに手を出したことは後悔していないが、対面するのは怖い。
テオはこちらの葛藤を鼻で笑うと、サミュエルの背後から顔を出したエミリアに、いつもと変わらぬ笑顔を向けた。
「とりあえず、フランチェスカに戻りましょう。話はそれからです。あ、休んでる暇はないですからね。みんな、あなたたちの帰りを待ってるんですから!」
「……何だ、これは」
朝日に照らされた城壁を眺めていたエミリアが、今にも倒れそうな声でうめいた。彼女の隣に立つサミュエルも同様である。
テオの宣言通り、野宿する暇もなく馬を飛ばし、疲労困憊のサミュエルたちを出迎えたのは、立派な軍事要塞と化したフランチェスカだった。
堅牢な城壁の上に設置されているのは、未来でも見たバリスタ、そして見慣れぬ鉄の筒のようなもの。
木と違って、温もりというものを感じられないせいだろうか。こちらに向けられている暗い井戸の底のような穴を見ると、背筋が寒くなる心地がする。
見慣れた城門の両脇には、ファウスティナの騎士たちのような重装備に身を包んだ男たちが佇み、その向こうでは、祭りのときでも見ないほどの人が行き交っていた。
「凄いでしょう! ミケーレから入手した最新兵器、大砲ですよ。お隣では、これでドンぱちやらかすそうです」
「……そういや、ずっと気になっていたけど、お前が担いでるのも、いつものクロスボウじゃないよな。ただの木の筒じゃないってことか?」
「そうそう。銃っていって、クロスボウみたいに遠くの敵を仕留める武器です。でもね、殺傷力が段違いなんですよ! 弾が限られてるってこととが難点ですが、これさえあれば兜なんて易々とぶち抜けます。開戦したら、獲物を狩り尽くしてやりますよ」
相変わらず物騒なことをあっけらかんと言う。黙り込むサミュエルの隣で、顔を青ざめたエミリアが果敢にも言葉を繋いだ。
「城門を警備しているのは、傭兵か? 中にもいるよな? 雇ったのか?」
「いえ、れっきとした騎士たちですよ。後で説明しますから、まずは城に向かいましょう」
先導するテオに続いて、城門をくぐる。両脇に立っていた男たちはこちらに会釈すると、すぐに視線を前方に戻した。隙のない雰囲気といい、しっかりと訓練された騎士たちのようだ。
城壁を見たときから覚悟していたが、約二ヶ月ぶりに戻ってきた城下は、すっかり様変わりしていた。城壁に沿うように設置された投石器や、臨時で建てたとおぼしき物見櫓の合間合間を、領民たちが忙しなく走り回っている。
火矢による燃焼を防止するためだろう。木製の建物には獣の皮が満遍なく貼り付けられ、その中で秋祭りの青と黄色のペナントがはためいている様は一種異様な雰囲気だった。
マルキアと同じく、領民たちはまだこちらに気づいていないようだった。目を凝らして見知った人間がいないか見渡してみるも、人が多すぎて何が何だかよくわからない。
「なぁ、親父って……」
「まだですよー。まあ、そのうち来ますって。せっかちな男は嫌われますよ」
振り返りもせずに言われ、二の句が紡げなくなる。今は話すべき場面じゃないと言いたいのだろう。こういうときのテオに何を聞いても無駄だ。
城へ続く道を道なりに進むと、巨大な倉庫と化した市庁舎が見えてきた。歴史ある重厚な門の前に、中に入り切らなかったとおぼしき武器や防具が山と積まれている。
ひっきりなしに出入りする男たちは、確か役場の職員たちだ。いつも黙々と机に向かっているイメージしかなかったが、皆が皆、額に汗して働いていた。
懐かしさと戸惑いを噛み締めながら中央広場に進むと、そこは臨時の炊き出し場になっていた。
噴水の周りに、屋台のごとく調理場が設けられ、土と埃で汚れた領民たちや騎士たちが料理に舌鼓を打っている。腕を奮っているのは、サミュエル御用達の酒場の親父だろうか。変わらない姿に、胸が熱くなる。
溢れんばかりの人混みの片隅に、真剣な表情でジュリオとアントニオと話しているルキウスの姿があった。若干疲れが垣間見えるが、おおむね元気そうだ。
声をかけようかと思ったとき、ふいにこちらを向いた彼と目があった。黒い瞳が大きく見開かれ、そして泣きそうに歪む。それに気づいたジュリオとアントニオも、こちらに目を向け、同じように目を見開いた。
「エミリア様!」
「ルキウス! ジュリオとアントニオも! 待たせてすまなかったな」
「いえ、そんな……よくご無事で……よく……」
「泣くんじゃねぇよぉ、ルキウス様。こういう時は笑顔笑顔!」
アントニオにばんばんと背中を叩かれ、ルキウスがむせる。その隣でジュリオが慈愛をたたえた瞳でエミリアを見つめ返していた。
「え? エミリア様?」
「本当だ! エミリア様だ! 戻ってきたんだ!」
手を取り合うエミリアたちに気づいた領民たちが、わっと近寄ってきた。
アヴァンティーノ邸のときと同じように、遠慮なく揉みくちゃにされる。歓迎の印というのは、どこも似たようなものなのかもしれない。
エミリアと共に手荒な愛情を一身に受けていると、ちゃっかり避難していたテオの背後から、両脇に騎士を伴った男が一人近づいてくるのが見えた。
フランチェスカではあまり見ない洗練された服を着て、背が低く、ずんぐりとした体格をしている。領民たちと同じく、土や埃で汚れてはいたが、その姿には既視感がある。
「バルテロ卿?」
いち早く正体に気づいたエミリアが声を上げる。それを合図に、サミュエルたちを取り囲んでいた人の輪がさっと左右に開いた。
バルテロは鷹揚な仕草で領民たちに会釈すると、王城で相対した時は打って変わって穏やかな目でエミリアに微笑んだ。
「なぜ、フランチェスカに? 王都はどうしたのです?」
「捨ててきました。私だけじゃありませんぞ。反戦派以外にもフランチェスカとアヴァンティーノに与すると決めた貴族は多いのです。ここに入り切らないので、周辺に散ってはいますがね」
バルテロが滔々とあげた名前には、建国から王家に仕えていた名家も多かった。テオに目を向けると、彼は悪戯が成功した子供みたいに、ニヤッと笑った。
騎士たちは貴族たちが連れてきたのだ。山と積まれていた物資や、未来よりも周到な籠城戦の準備も、彼らの協力があってのことだろう。
つまりは、戦力が著しく増強している。ロドリゴの作戦が功を奏したのだ。
「私たちに力を貸してくださるのですか……」
「世論もあなた方に傾いていますしな。それに……」
そこで言葉を切り、バルテロは少し寂しそうに眉を下げた。
「実は私は入り婿でしてな。本来ならサヴァティーニ家は妻が継ぐはずだった。夫の欲目を差し引いても優秀な妻でしたから、きっと歴代一の宰相になっていたでしょう。……継承権さえあれば」
バルテロの瞳に、一瞬だけ悲しみの色が浮かんで消えた。彼の妻は若くして亡くなっている。出産時に赤子諸共、命を落としたのだ。
「あなたの上げた声に胸を打たれたものは多い。サミュエル卿、君の言葉にもだ。広間であなたたちをかばった伯爵夫人は若い頃に双子を産んでいる。それがどういうことかわかるでしょう?」
エミリアが唇を噛んだ。ベアトリーチェについて話していたとき、涙を浮かべていたのは、失った我が子を思い出していたからなのかもしれない。
「さらに言うなら、我ら建国からの貴族には、脈々と受け継がれた誓いがあるのです。ロドリゴ卿もそれを見越して反旗を翻したのでしょう。人のいい顔をして、なかなか食えぬ御仁ですからな。我らに貴族の誇りを取り戻そうとしたに違いありません」
「誓い……?」
「そう。王が道を踏み外したら、彼と杯を酌み交わした者たちはそれを止めること。それが初代国王、アウグスト一世と交わした誓いです。王家の血を引くフランチェスカやファウスティナには託せなかった、盟友の誓い。我々は今こそ、それを果たすべきだ」
凛とした声が、中央広場にいる者たちの胸を打った。その中心で、エミリアが泣きそうな顔をしている。
アウグスト一世の誓い。それはおそらく、エミリアが考察したように、双子の入れ替わりによる内乱があったからなのだろう。彼は、自分も兄と同じ道を辿るのが怖かったのだ。
そのために王家に貴族という抑止力をつけ、胡乱な迷信を広げて双子を遠ざけた。二度と争いが起こらないことを願って。
しかし、四百年経った今、彼の願いは破られてしまった。他でもない、子孫たちの手で。
「申しわけない、バルテロ卿。なんと言えばいいのか……」
「と、まあ、妻なら言いそうな事ですがね。私は商売の腕を見込まれて入り婿になった男です。損をする賭けには乗りません。私を儲けさせてくれるのでしょう、フランチェスカ公爵。販路を預けてくださる約束、お忘れになったわけではありませんな?」
エミリアの言葉を遮って、バルテロが肩をすくめる。その目には強かな商人の光があった。
にやりと口元を歪めるバルテロに、つられたようにエミリアが笑う。お互いが右手を差し出したのは同時だった。
「もちろんです。双子川の女神の名にかけて、あなたを王国一の商人にして見せますよ」
「結構。これで契約成立ですな。そのためには、この一面を乗り切りませんと。さあ、城にお行きなさい。三日後には秋祭りだ。もうあまり時間はありませんぞ」
しっかり手を組み交わし、バルテロは市内の見回りに出かけて行った。アヴァンティーノが不在の今、貴族方の筆頭として、精力的に動いてくれているらしい。王都にいる頃は食えない狸親父だとばかり思っていたが、人はわからないものだ。
「私たちは、いろんな人の想いに支えられてるんだな」
「そうですね。こんな事態にならなければ、知らないままだったかもしれません」
しんみりした気持ちを抱えつつ、ルキウスとジュリオと共に坂道を上って城の広場に着くと、玄関先にいつもと違う門番がいることに気がついた。新しく雇ったのだろうか。背丈からして、随分と若いような気がする。
ルキウスが紹介してくれるかと思いきや、背後に控える彼は何も言わない。エミリアと顔を見合わせつつ目をすがめるようにしてよく見ると、腰に剣を下げ、後ろ手を組んで直立不動で周囲を見渡している騎士の瞳は、珍しいオッドアイだった。
「まさか、コリン? コリンか?」
「その声は……師匠? あっ、エミリア様も!」
ぱあっと顔を輝かせて駆けてくるコリンを抱き止めようと両手を広げたとき、ハッと我に返ったようにコリンが足を止めた。
そして、呆気に取られるサミュエルの眼前で、音を鳴らして踵を合わせ、胸に手を当てる。その仕草は、一端の騎士のものと相違なかった。
「我らフランチェスカ騎士団一同、お二人のご帰還を心よりお待ちしておりました。エミリア様、サミュエル卿、本当に無事で良かった。お帰りなさい」
「お前、いつの間に、そんな立派に……」
「何だよ師匠。大袈裟だなぁ」
そう言って笑みを浮かべるコリンは、一回りも二回りも大きく見えた。ちょっと離れていただけなのに、この成長ぶりは反則だ。
隣で涙ぐむエミリアに追従するように、サミュエルの喉もつまる。そんな二人を背後で見守っていたルキウスが、小さく笑った。
「まだ見習いですがね。非常時ですから、戦力は一人でも多い方がいいでしょう。サミュエルの言う通り、剣の筋もいいし、何しろ本人にやる気と根性がある。こいつは伸びますよ」
「ありがとう、ルキウスさん。俺の言ったこと、守ってくれたんですね」
「酒の席とはいえ、約束だからな。でも、勘違いすんなよ。お前のためじゃねぇからな。あくまでもエミリア様を守るためなんだから」
「本当に素直じゃないですね。ラティウス卿にチクりますよ」
「なんで、お前が兄貴の名前を知ってるんだよ!」
目を剥くルキウスを軽くあしらって、サミュエルは声を上げて笑った。なぜだか無性に、可笑しくて仕方がなかった。
涙を流して腹を抱える主人に、テオが呆気に取られたような顔をしている。その笑い声に触発されたように、エミリアとコリンも肩を揺らして笑い出した。
それを聞きつけたトマスや、城内にいた面々が次々と現れ、周囲が俄かに賑やかになる。
——ようやく帰ってこられた。ここが自分の居場所だ。
強く、強くそう思った。
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