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1章 お祖父ちゃんが遺した縁
第11話 アグレッシブお祖母ちゃん
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「大将さん、お願い言うか、お話があるんやけどねぇ」
お祖母ちゃんが言うと、大将さんは「ほ、なんでしょう」と目を丸くする。
「この前若大将さんに聞いたんやけどねぇ、このお店、移転先ってもう決まったんやろうか」
訊くと、大将は困り顔になって「いやぁ」と首を振る。
「なかなかこれや言うところが無くて。いよいよ長居を出ることも考えなあかんかも知れんと思っとるんですわ。大和川超えて堺にでも出たら、もう少し賃料も下がるでしょうし」
長居から2駅南下した北花田駅は堺市なのだが、JR阪和線でも浅香まで行けば堺市だ。確かに大阪市である長居よりは借りやすくなるだろう。大将さんもリリコと同じ様なことを考えておられた様だ。
「そうなんやねぇ。実はうちねぇ、お家を建て替えようと思ってるんよ」
「へぇ、新しいお家、ええですねぇ」
「その時にねぇ、1階をお店にして、この「いちょう食堂」さんに入ってもらえたらなぁて思ってるんよ」
「は、え?」
大将さんは大いに驚いた様子で、目を何度も瞬かせる。
「え、どういうこ、ことですやろ。え?」
大将さんは突然の話が飲み込めない様で、しどろもどろになる。
「言葉の通りやよ。このお店は美味しいし雰囲気もええねぇ。とっても素敵なお店やんねぇ。それになにより夫が繋いでくれたお店やから、いつでも来れるところにあって欲しいんよ」
「そりゃあもの凄うありがたいお話ですけど、支払える家賃もそう高う無いんですわ。損させてしまうかも知れませんで」
「もともとハイツにしようか思ってたからねぇ。せやから多分、今のお家賃とそう変わらん額でお貸しできると思うんよ。どうやろう。考えてみてもらわれへんやろうか」
大将さんはまだ困惑した様子で「そ、そりゃあ」と口を開く。
「願っても無いお申し出ですわ。ありがたくて仕方が無いですわ。でもほんまにええんでしょうか」
「もちろんよぉ。私もすぐそばに「いちょう食堂」さんがあったら嬉しいからねぇ。内装とか設備とかね、これからお話して行きましょうねぇ」
「はい。よろしゅうお願いします。息子にも相談せなあきませんけど、嫌やなんて言わんはずですわ。ちょっと待ってくださいね。悠太、悠太ー!」
大将さんがカウンタにいる若大将さんを呼ぶと、ややあって「なんや」と言いながら出て来る。
「久実子さんが家建て替えはる言うてはってな、その時1階を店舗にして、うちに貸してくれるて言うてはるんや」
「ええっ?」
若大将さんも驚いて目を剥く。
「なんやそれ。どういうことや親父」
「そのままや。家賃とかもえらい寄り添うてくれはる言うてくれてはってな。わしはほんまにありがたいお話や思ってるんやけど」
「そりゃあめちゃめちゃありがたいけど。久実子さん、ほんまにええんですか?」
「ええ、もちろん」
お祖母ちゃんがにっこり笑って言うと、若大将さんは一瞬茫然とした様な顔になり、すぐに「うわぁ」と嬉しそうに目を輝かせた。
「それはほんまに助かりますわ。久実子さん、リリコちゃん、ほんまにありがとうございます!」
若大将さんは言って、がばっと頭を下げた。
「頭上げたって、若大将さん。こちらもねぇ、その方が嬉しいんやからねぇ。リリちゃんとも言うとったんよ。「いちょう食堂」さんがどっか行ってしまうんは残念やねぇて。ねぇ」
「うん」
リリコが強く頷くと、若大将さんは目をぱちくりさせる。
「大将さん、若大将さん、私もお祖母ちゃんも、これからも通わせてもらいたいですから。すぐ近くにあったら嬉しいです」
大将さんと若大将さんは嬉しさを滲ませた顔を見合わせる。そして揃って深く腰を曲げた。
「ほんまに助かります。ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「いいえぇ、ほんまにとんでも無いんよ。この場所が来月いっぱいやから、新しいお店が完成するまでお休みしてもらわなあかんねやろうけど、今まで忙しかったやろうから、少しゆっくりお休みしてもええんかも知れへんねぇ」
「いやぁ、わしらなんてまだまだですわ。でもその間にお世話になっとる農家さんとか酪農さんとか、回ってもええかも知れんですね」
「せやな。けど親父、これで探すんは家だけで済むな」
「ああ。ほんまに助かるわ。それやったらそう難し無いやろ」
「家?」
リリコが首を傾げると、大将さんも若大将さんも「はい」と頷く。
「わしら、今ここの2階に住んどるんですわ。せやからそこも出て行かなあかんのです。店の移転先探すんは大変でしたけど、家やったら親子ふたりでどうにでもなりますよってに」
「あら、せやったら」
お祖母ちゃんが良いこと思い付いたと言う様にぽんと手を打った。
「うちを3階建てにして、2階か3階を賃貸にして、そこに住んでもろたらええやんねぇ」
気軽に言われたそれに、皆はさらに驚く。一瞬騒然となった。
「お祖母ちゃん、そこまでする!?」
「あかん?」
「いや、あかんことは無い思うけど、今までうち2階建てやったやん。3階て大丈夫なん?」
「うちは角っこやし、住宅街の端っこやし、周りも3階建て多いし、大丈夫と違う? もちろん方々に挨拶はさしてもらうけどねぇ。テナントになるんやし」
「それはもちろんいるやろうけど。でも、ハイツにするにしても女性限定にしようって言うてたやん」
「それは、万が一があったらあかんからねぇ。でも大将さんと若大将さんやったら大丈夫やろ?」
「それはそうやけど、お祖母ちゃんにはほんまにびっくりさせられるわ~」
リリコが少しばかり動揺すると、お祖母ちゃんは「うふふ」とおかしそうに笑う。
「大丈夫やで、リリちゃん。ぜぇんぶ、うまいこと行くからねぇ」
お祖母ちゃんが確信に満ちた顔で微笑むので、リリコは戸惑いながらも「う、うん」と頷いた。
お祖母ちゃんが言うと、大将さんは「ほ、なんでしょう」と目を丸くする。
「この前若大将さんに聞いたんやけどねぇ、このお店、移転先ってもう決まったんやろうか」
訊くと、大将は困り顔になって「いやぁ」と首を振る。
「なかなかこれや言うところが無くて。いよいよ長居を出ることも考えなあかんかも知れんと思っとるんですわ。大和川超えて堺にでも出たら、もう少し賃料も下がるでしょうし」
長居から2駅南下した北花田駅は堺市なのだが、JR阪和線でも浅香まで行けば堺市だ。確かに大阪市である長居よりは借りやすくなるだろう。大将さんもリリコと同じ様なことを考えておられた様だ。
「そうなんやねぇ。実はうちねぇ、お家を建て替えようと思ってるんよ」
「へぇ、新しいお家、ええですねぇ」
「その時にねぇ、1階をお店にして、この「いちょう食堂」さんに入ってもらえたらなぁて思ってるんよ」
「は、え?」
大将さんは大いに驚いた様子で、目を何度も瞬かせる。
「え、どういうこ、ことですやろ。え?」
大将さんは突然の話が飲み込めない様で、しどろもどろになる。
「言葉の通りやよ。このお店は美味しいし雰囲気もええねぇ。とっても素敵なお店やんねぇ。それになにより夫が繋いでくれたお店やから、いつでも来れるところにあって欲しいんよ」
「そりゃあもの凄うありがたいお話ですけど、支払える家賃もそう高う無いんですわ。損させてしまうかも知れませんで」
「もともとハイツにしようか思ってたからねぇ。せやから多分、今のお家賃とそう変わらん額でお貸しできると思うんよ。どうやろう。考えてみてもらわれへんやろうか」
大将さんはまだ困惑した様子で「そ、そりゃあ」と口を開く。
「願っても無いお申し出ですわ。ありがたくて仕方が無いですわ。でもほんまにええんでしょうか」
「もちろんよぉ。私もすぐそばに「いちょう食堂」さんがあったら嬉しいからねぇ。内装とか設備とかね、これからお話して行きましょうねぇ」
「はい。よろしゅうお願いします。息子にも相談せなあきませんけど、嫌やなんて言わんはずですわ。ちょっと待ってくださいね。悠太、悠太ー!」
大将さんがカウンタにいる若大将さんを呼ぶと、ややあって「なんや」と言いながら出て来る。
「久実子さんが家建て替えはる言うてはってな、その時1階を店舗にして、うちに貸してくれるて言うてはるんや」
「ええっ?」
若大将さんも驚いて目を剥く。
「なんやそれ。どういうことや親父」
「そのままや。家賃とかもえらい寄り添うてくれはる言うてくれてはってな。わしはほんまにありがたいお話や思ってるんやけど」
「そりゃあめちゃめちゃありがたいけど。久実子さん、ほんまにええんですか?」
「ええ、もちろん」
お祖母ちゃんがにっこり笑って言うと、若大将さんは一瞬茫然とした様な顔になり、すぐに「うわぁ」と嬉しそうに目を輝かせた。
「それはほんまに助かりますわ。久実子さん、リリコちゃん、ほんまにありがとうございます!」
若大将さんは言って、がばっと頭を下げた。
「頭上げたって、若大将さん。こちらもねぇ、その方が嬉しいんやからねぇ。リリちゃんとも言うとったんよ。「いちょう食堂」さんがどっか行ってしまうんは残念やねぇて。ねぇ」
「うん」
リリコが強く頷くと、若大将さんは目をぱちくりさせる。
「大将さん、若大将さん、私もお祖母ちゃんも、これからも通わせてもらいたいですから。すぐ近くにあったら嬉しいです」
大将さんと若大将さんは嬉しさを滲ませた顔を見合わせる。そして揃って深く腰を曲げた。
「ほんまに助かります。ありがとうございます」
「ありがとうございます!」
「いいえぇ、ほんまにとんでも無いんよ。この場所が来月いっぱいやから、新しいお店が完成するまでお休みしてもらわなあかんねやろうけど、今まで忙しかったやろうから、少しゆっくりお休みしてもええんかも知れへんねぇ」
「いやぁ、わしらなんてまだまだですわ。でもその間にお世話になっとる農家さんとか酪農さんとか、回ってもええかも知れんですね」
「せやな。けど親父、これで探すんは家だけで済むな」
「ああ。ほんまに助かるわ。それやったらそう難し無いやろ」
「家?」
リリコが首を傾げると、大将さんも若大将さんも「はい」と頷く。
「わしら、今ここの2階に住んどるんですわ。せやからそこも出て行かなあかんのです。店の移転先探すんは大変でしたけど、家やったら親子ふたりでどうにでもなりますよってに」
「あら、せやったら」
お祖母ちゃんが良いこと思い付いたと言う様にぽんと手を打った。
「うちを3階建てにして、2階か3階を賃貸にして、そこに住んでもろたらええやんねぇ」
気軽に言われたそれに、皆はさらに驚く。一瞬騒然となった。
「お祖母ちゃん、そこまでする!?」
「あかん?」
「いや、あかんことは無い思うけど、今までうち2階建てやったやん。3階て大丈夫なん?」
「うちは角っこやし、住宅街の端っこやし、周りも3階建て多いし、大丈夫と違う? もちろん方々に挨拶はさしてもらうけどねぇ。テナントになるんやし」
「それはもちろんいるやろうけど。でも、ハイツにするにしても女性限定にしようって言うてたやん」
「それは、万が一があったらあかんからねぇ。でも大将さんと若大将さんやったら大丈夫やろ?」
「それはそうやけど、お祖母ちゃんにはほんまにびっくりさせられるわ~」
リリコが少しばかり動揺すると、お祖母ちゃんは「うふふ」とおかしそうに笑う。
「大丈夫やで、リリちゃん。ぜぇんぶ、うまいこと行くからねぇ」
お祖母ちゃんが確信に満ちた顔で微笑むので、リリコは戸惑いながらも「う、うん」と頷いた。
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