異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#115 ドロップクッキーを作ろう。その1

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 さぁ、ドロップクッキーを作ろう!

 メモと紅茶葉を片手にサユリとともに厨房に降りると、そこには茂造とマユリがいた。

「あれ、じいちゃん、マユリ、どうしたの?」

 訊くと、茂造もマユリも笑みを浮かべた。

「クッキーを作ると言っておったからの。作り方も知りたいしの、是非出来立てを食いたいとも思っての」

「わ、私も作り方を知りたいのと、そ、それと、あの、あ、あの、お手伝いを、出来たらと」

 ふんわりと笑う茂造と、壱に詰め寄る勢いのマユリ。

 何の不都合も無い。壱は頷く。

「うん、一緒に作ろう」

 すると茂造はにこやかなまま頷き、マユリは破顔する。

「じゃ、先にオーブンを予熱しておこう」

 壱自身はあまり使う機会の無いオーブン。使い方は教えて貰っていたので、難なくセットする。壱たちの世界のオーブンよりもずっとシンプルな作りだ。

「さ、材料を用意するよ」

 壱は冷蔵庫を開け、卵とバターを出す。棚からは小麦粉と砂糖を。

「菓子作りは軽量が生命らしいからね」

 普段はあまり使わないスケールを出し、メモを見ながら分量を計って行く。

「じゃあ、マユリにやってもらおうかな。まずはバターと砂糖をり合わせるよ。まだバターが固いから頑張ってね」

 バターと砂糖を入れたボウルをマユリの前に起き、泡立て器を手渡す。

「は、はい! が、頑張ります!」

 マユリは泡立て器を手に、バター相手に奮闘する。

 やがてバターも柔らかくなって、砂糖も綺麗に混ざって空気も入り、ふんわりとして来た。

「こ、こんな感じで、しょうか」

「うん、完璧。じゃあここに卵を入れるよ」

 壱が別のボウルで解してあった卵を少量ずつ入れ、マユリが混ぜて行く。混ぜ終えると、もったりとしたクリーム状のものが出来上がる。

「ここに振るった小麦粉を入れて、また混ぜる。少し力要ると思うから代わろうか?」

「い、いえ、あの、が、頑張ってみます」

 楽しそうに作業を進めているマユリが笑顔で応える。

「じゃあ粉入れるよ」

 振るっておいた小麦粉を一度に、粉が上がらない様にそっと入れる。マユリはまた丁寧に合わせて行く。

 やがて色斑いろむらの無い滑らかな生地が出来上がった。

「これで生地の出来上がり。これを半分ずつに分けて、まずはノーマルの方を焼いて行こう」

 別のボウルに生地の半分を移し、スプーンを出す。

「スプーンで鉄板に落として焼く作り方で、ドロップクッキーって言うんだよ。ええと、クッキングシートが無いから、鉄板に油を塗っておかなきゃだな」

 壱は布にオリーブオイルを染み込ませ、鉄板の内側の隅々すみずみまで塗った。

 これはサントがパンを焼く時にもしている事だ。生地にも油分が含まれているが、こうしておかないとくっついてしまうのだ。

「スプーンを2本使うよ。こうやって」

 1本のスプーンで生地をすくう。

「これをもう1本のスプーンで、鉄板に落とすんだ」

 言った通りにすると、鉄板にとろりと生地が落ちた。それはゆるやかに少し広がり、少しいびつな円形になる。

「間隔を開けながら落として言ってね。じいちゃんもやってみる?」

「挑戦してみようかの」

 茂造とマユリの分のスプーンを出して渡してやると、ふたりは早速取り掛かる。

 3人でやると早い。あっという間に鉄板は生地で埋まった。

「12、3分もあれば焼き上がるからね」

 予熱しておいたオーブンに入れ、タイマーをセットし直す。後は焼き上がりを待つだけだ。

 ノーマルの生地はまだ半分ほどある。紅茶味の分も含めたら、後3回は焼く事になるか。

 鉄板はもう1枚あるので、壱はそれにもオリーブオイルを塗る。

「じゃ、この鉄板は紅茶味の分を焼いて行こうか」

「こ、紅茶味のクッキーは、は、初めて、です」

「多分わしもじゃ。そんなハイカラな味もあるんじゃのう」

「美味しいよ。巧く出来たら良いけど」

 壱は紅茶葉を袋に入れる。それを袋ごと棒で叩いて行く。出来るだけ細かく細かく。

 終わって袋を開けると、紅茶のほのかな良い香り。分けておいた生地の半分に入れて混ぜて行く。

 これで生地が全て完成。もう1枚の鉄板にもオリーブオイルを塗り、紅茶味の生地を3人掛かりで落として行った。

 今オーブンに入っている分が焼き上がったらこれを入れて、その間に鉄板を少しでも冷まして、残りのノーマル生地を置く。

「よ、良い香りが、します」

 オーブンから甘い香りが漂っている。クッキーが巧く焼けている証拠でもある。

「本当だ。美味しく出来ると良いけどなぁ」

 壱が言うと、マユリがぐい、と壱に詰め寄る。

「ぜ、絶対、お、美味しく出来てると、思います! だ、だって、こんなに良い香りが、し、してるんですから!」

「ありがとう。マユリたちにも美味しいクッキー食べて欲しいからね」

 マユリのこの距離感にも大分慣れて来た。壱はややけ反りながらも笑みを浮かべた。
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