138 / 190
#138 豆味噌(赤味噌)を作ろう。その2
しおりを挟む
さて、全体に麹菌が塗されたので、ここから発酵に入る。
木製のバットに移して広げ、大豆が乾燥しない様に、濡らして硬く絞った布を被せる。
「サユリ、大豆の温度判る?」
「うむ? ん、29度だカピな」
「丁度良いな。この温度を保ったまま20時間ぐらい。頼める?」
「解ったカピ」
また右前足を上げるサユリ。
「終わったカピ」
「ありがとう。じゃあ手入れをして、と」
布を外し、大豆を手早く混ぜて行く。また布を掛ける。
「また29度を保ったまま、そうだな、30時間ぐらい。サユリ、お願い」
「うむカピ」
サユリの右前足が空を書く。
「終わりカピ」
「ありがとう。さて、どうかな」
布を外して見てみると、大豆の表面が緑の粉を吹いたみたいになっている。両手で掬い上げると、粒がバラバラになっていた。
「やった、豆麹完成! サユリありがとう! 次は味噌の仕込み!」
壱が安堵して息を吐きながら言うと、サユリはテーブルの上で得意げな表情。
さて、ここで漸く味噌作りである。先程大豆を洗ったり浸けたりしたボウルで、塩水を作る。
塩が溶ける様に、しっかりと手で掻き混ぜて。
塩水が透明になったら、先程完成した豆麹を入れ、混ぜて行く。
そうして出来上がった種を木桶に入れて行く。
「ここから2日ほど置く。サユリよろしく頼むよ。その間に俺、マッシャーと擂り鉢と擂り粉木取りに行って来る」
「解ったカピ」
壱は厨房に降りて、器具を取り、そしてついでとばかりに棚からきゃべつを取って、2階に戻る。
「壱、終わったカピよ」
「ありがとう。じゃ、水分吸ってもっと柔らかくなった大豆を潰すよ」
容器のままマッシャーを突っ込み、潰して行く。粗方潰れたら、擂り鉢に適量ずつ移しながら、更に細かくして行く。
そうして出来たものを、また木桶に戻し、本格的に熟成を始める。出来る限り空気に触れない様に布で蓋をして、中蓋をして、重石を乗せる。塩の容器を代用した。重ささえ足りていれば良いのだ。
「さて、これで2年!」
「2年カピか。それはなかなかカピな。ま、良いカピ」
サユリはまた右前足を上げ、回す。これは少し時間を要した。
「ふむ、終わったカピ」
「ありがとうサユリ! ちゃんと出来たかな!?」
待ち遠しくて堪らない。慌てて開けてみると、そこには艶々とした、濃い赤い色の味噌が出来上がっていた。
「おお……!」
壱は感嘆の声を上げると、スプーンを持って来て、早速少量を掬った。
心を躍らせながら、口に運ぶ。
広がる風味。やや辛い。しかし大豆の甘みもしっかりと感じる。
見事な赤味噌が出来上がっていた。
久しぶりの味。壱は懐かしさを感じ、眼を細めた。
「壱よ、どうじゃ? 出来たのかの?」
茂造がそわそわしながら訊いてくる。壱は嬉しさを隠そうとせず、大きく頷いた。
「出来た! じいちゃんも味見してみて。スプーン持って来る!」
壱が茂造に新しいスプーンを渡してやると、茂造がごっそりと掬おうとしたので、壱は慌てて止める。
「それだと辛いよ。ほんの少しで大丈夫。スプーンの先にちょこっとだけで充分」
茂造が壱の言う通りにし、少量を舐める様に口にする。
「おお! 成る程の! 赤味噌じゃ。これは良いのう。確かに辛いと言うか濃いんじゃが、旨味も甘みもしっかりあるのう。いつもの味噌汁も勿論旨いんじゃが、味噌が変わるとまた気分も変わって良いだろうからのう」
茂造は嬉しそうに頬を綻ばせる。
「そうじゃ、良く家内が赤味噌で蜆や浅蜊で味噌汁を作ってくれておったのう。懐かしいのう」
茂造がしみじみと眼を細める。この世界に連れて来られる直前に亡くした祖母を思い出しているのか。
確かに貝類の味噌汁に多く使われる味噌のイメージだ。だが豆腐でも麩でも美味しい。どちらもこの世界には無いものだが。
壱としては、味噌汁は勿論だが、醤油代わりの調味料に使う事が多くなると思う。そうすると汁物にもメインにも味噌が使える。それは壱にとってとても素晴らしい事なのだ。
「じゃあ早速、きゃべつに付けて食べてみよう!」
壱はきゃべつをざく切りにするとザルに入れて洗い、上下に振って良く水分を切る。
「少しずつ加減して味噌に付けてみて。赤味噌はきゃべつに良く合うよ」
茂造が嬉しそうにきゃべつを手にする。壱もきゃべつを取ると赤味噌を少し付け、サユリの口に運んでやる。サユリは香りを確認する様に鼻を動かした後、噛り付いた。
壱も自分の分を用意し、口に放り込む。しっかりと咀嚼して味わう。
やはり美味しく出来ている。きゃべつの甘みと相まって、味噌の旨味も引き出される。
「うむ、成る程カピ。これもなかなか良い味噌だカピな。いつものより確かに辛いカピが、甘いきゃべつと合っているカピ」
「うんうん、良いのう。旨いのう」
サユリも茂造も、満足げに口を動かしている。壱は嬉しくなって、笑みを浮かべた。
木製のバットに移して広げ、大豆が乾燥しない様に、濡らして硬く絞った布を被せる。
「サユリ、大豆の温度判る?」
「うむ? ん、29度だカピな」
「丁度良いな。この温度を保ったまま20時間ぐらい。頼める?」
「解ったカピ」
また右前足を上げるサユリ。
「終わったカピ」
「ありがとう。じゃあ手入れをして、と」
布を外し、大豆を手早く混ぜて行く。また布を掛ける。
「また29度を保ったまま、そうだな、30時間ぐらい。サユリ、お願い」
「うむカピ」
サユリの右前足が空を書く。
「終わりカピ」
「ありがとう。さて、どうかな」
布を外して見てみると、大豆の表面が緑の粉を吹いたみたいになっている。両手で掬い上げると、粒がバラバラになっていた。
「やった、豆麹完成! サユリありがとう! 次は味噌の仕込み!」
壱が安堵して息を吐きながら言うと、サユリはテーブルの上で得意げな表情。
さて、ここで漸く味噌作りである。先程大豆を洗ったり浸けたりしたボウルで、塩水を作る。
塩が溶ける様に、しっかりと手で掻き混ぜて。
塩水が透明になったら、先程完成した豆麹を入れ、混ぜて行く。
そうして出来上がった種を木桶に入れて行く。
「ここから2日ほど置く。サユリよろしく頼むよ。その間に俺、マッシャーと擂り鉢と擂り粉木取りに行って来る」
「解ったカピ」
壱は厨房に降りて、器具を取り、そしてついでとばかりに棚からきゃべつを取って、2階に戻る。
「壱、終わったカピよ」
「ありがとう。じゃ、水分吸ってもっと柔らかくなった大豆を潰すよ」
容器のままマッシャーを突っ込み、潰して行く。粗方潰れたら、擂り鉢に適量ずつ移しながら、更に細かくして行く。
そうして出来たものを、また木桶に戻し、本格的に熟成を始める。出来る限り空気に触れない様に布で蓋をして、中蓋をして、重石を乗せる。塩の容器を代用した。重ささえ足りていれば良いのだ。
「さて、これで2年!」
「2年カピか。それはなかなかカピな。ま、良いカピ」
サユリはまた右前足を上げ、回す。これは少し時間を要した。
「ふむ、終わったカピ」
「ありがとうサユリ! ちゃんと出来たかな!?」
待ち遠しくて堪らない。慌てて開けてみると、そこには艶々とした、濃い赤い色の味噌が出来上がっていた。
「おお……!」
壱は感嘆の声を上げると、スプーンを持って来て、早速少量を掬った。
心を躍らせながら、口に運ぶ。
広がる風味。やや辛い。しかし大豆の甘みもしっかりと感じる。
見事な赤味噌が出来上がっていた。
久しぶりの味。壱は懐かしさを感じ、眼を細めた。
「壱よ、どうじゃ? 出来たのかの?」
茂造がそわそわしながら訊いてくる。壱は嬉しさを隠そうとせず、大きく頷いた。
「出来た! じいちゃんも味見してみて。スプーン持って来る!」
壱が茂造に新しいスプーンを渡してやると、茂造がごっそりと掬おうとしたので、壱は慌てて止める。
「それだと辛いよ。ほんの少しで大丈夫。スプーンの先にちょこっとだけで充分」
茂造が壱の言う通りにし、少量を舐める様に口にする。
「おお! 成る程の! 赤味噌じゃ。これは良いのう。確かに辛いと言うか濃いんじゃが、旨味も甘みもしっかりあるのう。いつもの味噌汁も勿論旨いんじゃが、味噌が変わるとまた気分も変わって良いだろうからのう」
茂造は嬉しそうに頬を綻ばせる。
「そうじゃ、良く家内が赤味噌で蜆や浅蜊で味噌汁を作ってくれておったのう。懐かしいのう」
茂造がしみじみと眼を細める。この世界に連れて来られる直前に亡くした祖母を思い出しているのか。
確かに貝類の味噌汁に多く使われる味噌のイメージだ。だが豆腐でも麩でも美味しい。どちらもこの世界には無いものだが。
壱としては、味噌汁は勿論だが、醤油代わりの調味料に使う事が多くなると思う。そうすると汁物にもメインにも味噌が使える。それは壱にとってとても素晴らしい事なのだ。
「じゃあ早速、きゃべつに付けて食べてみよう!」
壱はきゃべつをざく切りにするとザルに入れて洗い、上下に振って良く水分を切る。
「少しずつ加減して味噌に付けてみて。赤味噌はきゃべつに良く合うよ」
茂造が嬉しそうにきゃべつを手にする。壱もきゃべつを取ると赤味噌を少し付け、サユリの口に運んでやる。サユリは香りを確認する様に鼻を動かした後、噛り付いた。
壱も自分の分を用意し、口に放り込む。しっかりと咀嚼して味わう。
やはり美味しく出来ている。きゃべつの甘みと相まって、味噌の旨味も引き出される。
「うむ、成る程カピ。これもなかなか良い味噌だカピな。いつものより確かに辛いカピが、甘いきゃべつと合っているカピ」
「うんうん、良いのう。旨いのう」
サユリも茂造も、満足げに口を動かしている。壱は嬉しくなって、笑みを浮かべた。
11
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる