異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#167 コンシャリド村の懸念 その1

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 食堂に戻り、2階のダイニングへ。壱と茂造は椅子に掛け、サユリはテーブルの上に。各々おのおの好みの飲み物を前に、しばし深刻な表情で沈黙が続く。

 時折飲み物を飲む時の、ずずっとすする音だけが微かに響いていた。

 その重い空気の中、口を開いたのはサユリだった。

「やはりこの村の噂が、サロガン街以外で立っている様だカピ」

 その台詞で、壱の中でふたつの疑問が沸いた。まずはひとつ。

「サユリ、サロガン街って?」

「我たちが普段買い物に行っている街だカピ。ここから1番近い、中規模な街カピ。この村の事情も汲んで、良くしてくれる、平和で良い街なのだカピ。数人の魔法使いが強いのだカピよ。我程では無いカピが」

 成る程。壱は頷く。そしてもうひとつの疑問。

「この村の噂が他のところで出るのは良く無いの?」

「良く無いカピ」

「良く無いのう」

 サユリと茂造の声が重なる。そこまでの大事おおごとなのか。壱は息を飲む。

「この村にいると麻痺まひするカピが、この世界の者の、犯罪者に対する嫌悪感は凄いのだカピよ。以前のノルドの話を覚えているカピか?」

「ああ、うん。濡れ衣を着せられて大変だったって話だよね?」

「あれは病院側もノルドの無実を公表しなかったカピから、余計に酷いものになっていたかとも思うカピ。だが、凄絶せいぜつカピよ。実際に医療ミスをしたと思われる医者は、もっと酷い目に遭っていると思うカピ」

「俺たちの世界でも、前科者は警戒されたり色眼鏡で見られる事が多いと思うけど」

「そうなのカピか。だが、この世界では石を投げられたりとかもあるのだカピよ。弱い容疑の段階でもカピ」

「それ酷く無い!?」

 壱は驚いて、ほぼ反射的に声を上げる。

 壱も現実で見た訳では無い。だが軽い容疑の段階ならば、サスペンスドラマなどを見た上での想像ではあるが、軽度な罪の可能性なら、噂話くらいで留まるのでは無いのだろうか。

 とは言え警察が動く事が多いと思うので、周囲に知られない様にするのは難しいだろう。

 だが詳細は知らされないだろうし、マスコミは面白可笑おかしく書き立てたり報道したりするだろうから、その立場は相当に辛いものになるだろう。

 「人殺し!」そんな事を書かれた用紙が玄関に貼られる、もしくは直接書かれる、なんてシーンも見た事がある。

 犯罪とは無縁だった壱にとっては現実味があまり無く、人の善意の皮を被ったそんな悪意を、ノンフィクションだと解っていても、嫌な気持ちて見ていたものだ。

「勿論その村や街を加護する魔法使いの力量に寄るカピ。ノルドも言っていたカピ、元の街の魔法使いは余り強く無かったカピから、治安は良く無く、住人のモラルは低かったカピと」

「そうじゃの。この村が平和なのも、サユリさんの力が大きいからのう。勿論罪を償って反省しておるからの、元々の人間性もあって、加護はそう大きなものでは無いんじゃがの。じゃが、そんな事は関係無いんじゃ。罪を犯した理由が、例えば誰かを助けるためじゃったとしても、変わらんのじゃよ。少しぐらいの悪戯いたずらなんかは笑って許されるが、例えばそれで怪我人なんかが出たとしたら、もうそれは罪になっての、迫害の対象になるんじゃよ」

「何か凄い極端と言うか……そうさせる歴史でも、この世界にはあったの?」

 壱が眉をしかめると、サユリは小さく息を吐き、茂造は頷いた。
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