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#173 まずは結婚式から
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「カルとミルは夫婦になる事を決意し、こうして村人全員に見届けられて祝われた。寄って、ここにこのふたりを夫婦と認めます。おめでとうございます」
司祭であるタカアシが淡々と言い上げると、見届け人であり参列者である村人全員から歓声が上がった。
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「幸せにな!」
口々に祝いの言葉を投げ掛ける村人たち。カルは照れ臭そうに口角を上げ、嬉しそうに微笑むミルの目元には、薄っすらと輝くものがあった。
サユリと並んで1番後ろで見ていた壱も「おめでとう!」と言い、惜しみ無い拍手を送った。
この世界、いや、コンシャリド村の結婚式は、驚く程にシンプルなものだった。
控え室代わりにもなっている食堂から、手を繋いだ新郎新婦が出て来、村人の拍手に迎えられながら花のアーチを潜り、台の前でスタンバイしている司祭の前に並んで立つ。
台の上に置かれている用紙に、新郎、新婦の順に署名をし、普段着の新郎とドレスの新婦を前に、司祭が先述の台詞を告げるのみ。
壱は元の世界でもあまり結婚式などに参列した経験は少ないが、司祭の話はもっと長かった筈だし、賛美歌斉唱や誓いの言葉、指輪の交換など、様々な行程があった。
ああしかし、一区切りと言う意味では、こういう式もありなのかも知れない。結婚したと言う自覚を持つには充分だろう。
大人はともかく子供でも退屈せずに祝いが出来るだろうし。
「これにて結婚の儀を終了します」
タカアシが言い軽く頭を下げると、前列にいた茂造がみんなの前に進み出た。
「では引き続き宴会じゃ。すぐに仕上げるからの。歓談などして待っててくれの」
その声と同時に壱、カリルとサントは列からするりと抜けて食堂の厨房へ。マユリたちも出来た料理を運ぶ為に動く。
「よし、では仕上げじゃ。少し急ぐかのう」
「うん」
「おう!」
割烹着と三角巾を着けた壱とカリルが威勢良く返事をし、サントは頷く。
パスタを茹でる湯を沸かす。温めが必要な料理を火に掛け、冷蔵庫に入れておいた物を使う順番に取り出して行く。
まずはカットしておいた鮭に塩胡椒をし、小麦粉を満遍無く叩き、オリーブオイルとバターを敷いたフライパンで両面を焼いて行く。
それを大皿に並べ、カットしたレモンを添えて、鮭のムニエルが完成する。
次に表面を焼いて蒸した豚肉をスライスして行く。出来るだけ薄く、薄く。
外側は焼き目も付いてしっかりとしているが、中も火はちゃんと通っているがほんのりとピンク色で、しっとりと柔らかい。美味しそうだ。
そうして切り分けたそれを大きな皿に綺麗に並べて行く。そして冷えたソースを添えて、ローストポークの完成である。
続けてパスタを茹でる。
その横で、フライパンにオリーブオイルを敷き、にんにくのスライスと唐辛子の輪切りをじっくりと炒める。
にんにくがじんわりと色付き香りが出て来たら、きゃべつを炒める。途中で塩をして、しんなりとし易い様に。
火が通ったらツナを入れ、さっと混ぜ合わせる様に炒めたら、茹だったパスタとパスタの茹で汁を入れる。
しっかりと混ぜて、仕上げに塩。ツナときゃべつのペペロンチーノが出来た。
さて次。また大きな皿を出し、冷蔵庫から出したスライス玉ねぎを敷き詰め、その上に茹でたブロッコリと割いた鶏肉を彩り良く置いて行く。
それにオリーブオイルとビネガー、塩胡椒で作ったシンプルなドレッシングを添えて、蒸し鶏のサラダ出来上がり。
お次は鰹。藁焼きにして冷やしておいたそれをスライスし、大皿に。玉ねぎスライスとにんにくスライス、塩を添えて、鰹のたたき完成だ。
温めておいた牛肉、鯛や浅蜊も、大きくてやや深みのある器に盛り付ける。牛肉の赤ワイン煮込み、鯛のアクアパッツァ、完成。
「よっしゃ出来た! いいんじゃね? 旨そー!」
カリルが声を上げ、サントが頷く。壱もうんうんと首を振った。
「うん。旨そうに出来た!」
「ふむふむ、良い匂いじゃのう」
茂造も嬉しそうに鼻をひくつかせた。
「では運んで貰うかの。マユリたちいるかの?」
茂造がホールに向かって声を上げると、3つの返事が返って来た。
「出来たぞい。運ぶの手伝ってくれの」
「はーい!」
「はぁ~い」
「は、はい」
マユリたちがまた返事をしながら厨房に入って来る。調理台に乗せられたパーティ料理の品々を眼にし、歓声を上げた。
「あらぁ~、美味しそうねぇ~」
「ホントだ! 楽しみ!」
「た、食べた事の無いものばかりで、で、でも、とても良い香りが、し、します」
「あ、そっか。マユリは村生まれ村育ちだもんね。ボク村に来る前に食べた事のあるものあるよ。美味しいよ!」
「た、楽しみ、です」
女性?陣は嬉しそうに騒いでいる。それを抑える様に茂造が大きく手を叩いた。
「ほれほれ、お喋りは後じゃ。みんな待っとるぞい」
「あ、はーい」
メリアンはウインクしてぺろっと舌を出す。
「ご、ごめんなさい!」
マユリは慌てて謝り、マーガレットも「ごめんねぇ~」と肩を竦める。
「じゃあよろしく! マユリは1番軽いパンの籠を頼むな」
「は、はい」
サントの声にマユリが早速動き、籠に両手を伸ばす。するとメリアンから「えー?」と不満気な声が上がった。
「どうしてマユリだけ女の子扱いするんだよー」
するとサントは心底呆れた様に溜め息を吐く。
「メリアンもマーガレットも、んな格好してるだけで男だろうが。ぐだぐだ言って無ぇで、ほら、運べ運べ」
「むー」
メリアンはまだ不服そうだが、マーガレットがそんなメリアンの背中を優しく叩き、促す。
「はいはいはぁ~い、アナタはワタシみたいに心まで女性な訳じゃ無いんだからぁ、これ以上聞き分けの無い事言ってみんなに迷惑掛けていたらぁ、店長さんに怒られちゃうわよぉ~」
マーガレットのその台詞にメリアンがハッと眼を見開き、顔を強張らせる。そのままゆっくりと首を回しその視線は、口角は穏やかに上げながらも眼が笑っていない茂造の顔へ。
「ごっ、ごめんごめん! ボクだって可愛いのにって悔しかったの! は、運ぶね!」
そう慌てて言うと、ローストポークの皿に手を伸ばした。
壱は一連の流れに苦笑しつつ、アクアパッツァの皿を抱えた。
司祭であるタカアシが淡々と言い上げると、見届け人であり参列者である村人全員から歓声が上がった。
「おめでとう!」
「おめでとう!」
「幸せにな!」
口々に祝いの言葉を投げ掛ける村人たち。カルは照れ臭そうに口角を上げ、嬉しそうに微笑むミルの目元には、薄っすらと輝くものがあった。
サユリと並んで1番後ろで見ていた壱も「おめでとう!」と言い、惜しみ無い拍手を送った。
この世界、いや、コンシャリド村の結婚式は、驚く程にシンプルなものだった。
控え室代わりにもなっている食堂から、手を繋いだ新郎新婦が出て来、村人の拍手に迎えられながら花のアーチを潜り、台の前でスタンバイしている司祭の前に並んで立つ。
台の上に置かれている用紙に、新郎、新婦の順に署名をし、普段着の新郎とドレスの新婦を前に、司祭が先述の台詞を告げるのみ。
壱は元の世界でもあまり結婚式などに参列した経験は少ないが、司祭の話はもっと長かった筈だし、賛美歌斉唱や誓いの言葉、指輪の交換など、様々な行程があった。
ああしかし、一区切りと言う意味では、こういう式もありなのかも知れない。結婚したと言う自覚を持つには充分だろう。
大人はともかく子供でも退屈せずに祝いが出来るだろうし。
「これにて結婚の儀を終了します」
タカアシが言い軽く頭を下げると、前列にいた茂造がみんなの前に進み出た。
「では引き続き宴会じゃ。すぐに仕上げるからの。歓談などして待っててくれの」
その声と同時に壱、カリルとサントは列からするりと抜けて食堂の厨房へ。マユリたちも出来た料理を運ぶ為に動く。
「よし、では仕上げじゃ。少し急ぐかのう」
「うん」
「おう!」
割烹着と三角巾を着けた壱とカリルが威勢良く返事をし、サントは頷く。
パスタを茹でる湯を沸かす。温めが必要な料理を火に掛け、冷蔵庫に入れておいた物を使う順番に取り出して行く。
まずはカットしておいた鮭に塩胡椒をし、小麦粉を満遍無く叩き、オリーブオイルとバターを敷いたフライパンで両面を焼いて行く。
それを大皿に並べ、カットしたレモンを添えて、鮭のムニエルが完成する。
次に表面を焼いて蒸した豚肉をスライスして行く。出来るだけ薄く、薄く。
外側は焼き目も付いてしっかりとしているが、中も火はちゃんと通っているがほんのりとピンク色で、しっとりと柔らかい。美味しそうだ。
そうして切り分けたそれを大きな皿に綺麗に並べて行く。そして冷えたソースを添えて、ローストポークの完成である。
続けてパスタを茹でる。
その横で、フライパンにオリーブオイルを敷き、にんにくのスライスと唐辛子の輪切りをじっくりと炒める。
にんにくがじんわりと色付き香りが出て来たら、きゃべつを炒める。途中で塩をして、しんなりとし易い様に。
火が通ったらツナを入れ、さっと混ぜ合わせる様に炒めたら、茹だったパスタとパスタの茹で汁を入れる。
しっかりと混ぜて、仕上げに塩。ツナときゃべつのペペロンチーノが出来た。
さて次。また大きな皿を出し、冷蔵庫から出したスライス玉ねぎを敷き詰め、その上に茹でたブロッコリと割いた鶏肉を彩り良く置いて行く。
それにオリーブオイルとビネガー、塩胡椒で作ったシンプルなドレッシングを添えて、蒸し鶏のサラダ出来上がり。
お次は鰹。藁焼きにして冷やしておいたそれをスライスし、大皿に。玉ねぎスライスとにんにくスライス、塩を添えて、鰹のたたき完成だ。
温めておいた牛肉、鯛や浅蜊も、大きくてやや深みのある器に盛り付ける。牛肉の赤ワイン煮込み、鯛のアクアパッツァ、完成。
「よっしゃ出来た! いいんじゃね? 旨そー!」
カリルが声を上げ、サントが頷く。壱もうんうんと首を振った。
「うん。旨そうに出来た!」
「ふむふむ、良い匂いじゃのう」
茂造も嬉しそうに鼻をひくつかせた。
「では運んで貰うかの。マユリたちいるかの?」
茂造がホールに向かって声を上げると、3つの返事が返って来た。
「出来たぞい。運ぶの手伝ってくれの」
「はーい!」
「はぁ~い」
「は、はい」
マユリたちがまた返事をしながら厨房に入って来る。調理台に乗せられたパーティ料理の品々を眼にし、歓声を上げた。
「あらぁ~、美味しそうねぇ~」
「ホントだ! 楽しみ!」
「た、食べた事の無いものばかりで、で、でも、とても良い香りが、し、します」
「あ、そっか。マユリは村生まれ村育ちだもんね。ボク村に来る前に食べた事のあるものあるよ。美味しいよ!」
「た、楽しみ、です」
女性?陣は嬉しそうに騒いでいる。それを抑える様に茂造が大きく手を叩いた。
「ほれほれ、お喋りは後じゃ。みんな待っとるぞい」
「あ、はーい」
メリアンはウインクしてぺろっと舌を出す。
「ご、ごめんなさい!」
マユリは慌てて謝り、マーガレットも「ごめんねぇ~」と肩を竦める。
「じゃあよろしく! マユリは1番軽いパンの籠を頼むな」
「は、はい」
サントの声にマユリが早速動き、籠に両手を伸ばす。するとメリアンから「えー?」と不満気な声が上がった。
「どうしてマユリだけ女の子扱いするんだよー」
するとサントは心底呆れた様に溜め息を吐く。
「メリアンもマーガレットも、んな格好してるだけで男だろうが。ぐだぐだ言って無ぇで、ほら、運べ運べ」
「むー」
メリアンはまだ不服そうだが、マーガレットがそんなメリアンの背中を優しく叩き、促す。
「はいはいはぁ~い、アナタはワタシみたいに心まで女性な訳じゃ無いんだからぁ、これ以上聞き分けの無い事言ってみんなに迷惑掛けていたらぁ、店長さんに怒られちゃうわよぉ~」
マーガレットのその台詞にメリアンがハッと眼を見開き、顔を強張らせる。そのままゆっくりと首を回しその視線は、口角は穏やかに上げながらも眼が笑っていない茂造の顔へ。
「ごっ、ごめんごめん! ボクだって可愛いのにって悔しかったの! は、運ぶね!」
そう慌てて言うと、ローストポークの皿に手を伸ばした。
壱は一連の流れに苦笑しつつ、アクアパッツァの皿を抱えた。
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