186 / 190
#186 焼うどんの朝ご飯
しおりを挟む
一夜明け、壱はまた朝食を作る為にキッチンに立つ。
今朝は米を仕掛けていない。代わりに使うのは小麦粉である。
ボウルに小麦粉、塩少々、水を入れて、力を込めて練って行く。
しっかりと纏まったら、綺麗に丸めて寝かせておく。
その間に他の食材を取りに厨房へ。冷蔵庫から豚肉、棚からきゃべつ、玉ねぎ、人参を取り出す。裏庭からは玉ねぎの苗を。
上に戻り、早速下拵え開始。まずは大きな鍋に水を張り、火に掛ける。
次に、玉ねぎは櫛切り、きゃべつはざく切り、人参は短冊切り、玉ねぎの苗は小口切り、豚肉は薄切りにして一口大にし、塩と白ワインを揉み込んで下味を付けておく。
さて、寝かせておいた小麦粉の塊を再度練る。力を込めて、掌で押し付ける様にして伸ばし、纏めては伸ばしを繰り返す。
鍋を見ると、そろそろ湯が沸いて来た。
台と小麦粉の塊に打ち粉をして、綿棒で四角く伸ばして行く。厚さが5ミリほどになったら蛇腹に折り畳み、端から8ミリ程の幅に切って行く。
麺状になったそれを、湯が沸いた鍋に入れて茹でる。麺同士がくっつかない様に菜箸で解してから、麺が湯の中で踊る様に、だが吹き零れない様に火加減を調節して。
さて、合わせ調味料を作る。味噌を水でクリーム状になる様に解き、砂糖を加える。
続けて鰹節を引き削りにしておく。
さて、調理開始。フライパンを火に掛け、温まったらオリーブオイルを引き、まずは豚肉を炒める。
しっかりと火が通って色が変わったら人参、玉ねぎを入れる。玉ねぎがしんなりして来たらきゃべつを加え、塩を振り、更に炒めて行く。
さて、そろそろ麺が茹で上がる時間だ。フライパンの火を止めておき、麺をざるに開け、しっかりと水洗い。麺同士を擦り合わせる様にして滑りをしっかりと取る。
後は仕上げなので、サユリたちが起きて来てからするとしよう。その間に洗い物を済ませておく。
すると茂造がキッチンに顔を出した。足元には眠たそうなサユリ。
「おはようの。今朝もありがとうの」
「おはようカピ」
「おはよう。すぐ出来るよ」
「ほいほい。じゃあ儂は支度をして来るからの」
茂造は洗面所に。サユリはテーブルの上へ。
フライパンを再び火に掛けて炒め直す。温まったら水をしっかりと切った麺を入れる。
具と麺がしっかりと絡む様に混ぜながら炒め、合わせ調味料を入れ、更に炒めて行く。
芳ばしい香りが立って来たら鰹節を入れ、ざっと混ぜる。
皿に盛って、玉ねぎの小口切りをぱらりと振る。
焼うどんの完成である。
今日は汁物は無しで勘弁して貰おう。
「ほう、味噌の芳ばしい匂いがするのう。焼うどんじゃの?」
茂造が嬉しそうに鼻を寄せる。サユリも鼻をひくつかせた。
「うどんと言うものは焼く事も出来るのだカピか」
「そうそう。焼いても美味しいよ。味付けもね、これは普通の味噌使ったけど、赤味噌にしたらまた変わるし」
「それもまた作ると良いカピよ」
「うん。今度ね」
フンと鼻を鳴らすサユリに、壱は微笑んだ。
「ではいただくかの」
「いただくカピ」
「いただきます」
箸でうどんと具を合わせて持ち上げ、口に運ぶ。うどんのコシはなかなか。手で捏ねるしかしていない事を思えば、充分及第点だろう。
問題は味である。うん、砂糖が入っている事もあって、合わせ調味料を入れた後は焦げやすかったのだが、それが良い味わいを出している。
鰹節も良い仕事をしている。我ながら素晴らしい味付けである。
「うんうん、旨いのう。やはり味噌が芳ばしくて良いのう」
茂造が嬉しそうに頷くと、サユリもふんふんと鼻を鳴らす。
「ふむ、焼いたうどんもなかなか良いカピ」
「気に入ってくれた? なら嬉しいな」
壱は嬉しくなって、ふんわりと微笑んだ。
さて、食べ終わったら、また慌ただしい1日が始まる。
この世界に来てからの1番の懸念が晴れたので、心は晴れやかだ。
と言いつつ、実際は普段の忙しさや楽しさに埋もれて、スマートフォンを眼にしなければ思い出す事が少なかったのではあるのだが。
これからは家族を安心させる為にも、出来る限りまめにメッセージを送る事にしよう。
まずは米の苗の水遣りからだ。みんなで世話をしているお陰で、かなり伸びて来た。もうそろそろ田んぼに植えられるだろうか。
そうなると田んぼに水を張らなければ。
「ごちそうさま!」
壱は空の皿を前に、手を合わせた。
今朝は米を仕掛けていない。代わりに使うのは小麦粉である。
ボウルに小麦粉、塩少々、水を入れて、力を込めて練って行く。
しっかりと纏まったら、綺麗に丸めて寝かせておく。
その間に他の食材を取りに厨房へ。冷蔵庫から豚肉、棚からきゃべつ、玉ねぎ、人参を取り出す。裏庭からは玉ねぎの苗を。
上に戻り、早速下拵え開始。まずは大きな鍋に水を張り、火に掛ける。
次に、玉ねぎは櫛切り、きゃべつはざく切り、人参は短冊切り、玉ねぎの苗は小口切り、豚肉は薄切りにして一口大にし、塩と白ワインを揉み込んで下味を付けておく。
さて、寝かせておいた小麦粉の塊を再度練る。力を込めて、掌で押し付ける様にして伸ばし、纏めては伸ばしを繰り返す。
鍋を見ると、そろそろ湯が沸いて来た。
台と小麦粉の塊に打ち粉をして、綿棒で四角く伸ばして行く。厚さが5ミリほどになったら蛇腹に折り畳み、端から8ミリ程の幅に切って行く。
麺状になったそれを、湯が沸いた鍋に入れて茹でる。麺同士がくっつかない様に菜箸で解してから、麺が湯の中で踊る様に、だが吹き零れない様に火加減を調節して。
さて、合わせ調味料を作る。味噌を水でクリーム状になる様に解き、砂糖を加える。
続けて鰹節を引き削りにしておく。
さて、調理開始。フライパンを火に掛け、温まったらオリーブオイルを引き、まずは豚肉を炒める。
しっかりと火が通って色が変わったら人参、玉ねぎを入れる。玉ねぎがしんなりして来たらきゃべつを加え、塩を振り、更に炒めて行く。
さて、そろそろ麺が茹で上がる時間だ。フライパンの火を止めておき、麺をざるに開け、しっかりと水洗い。麺同士を擦り合わせる様にして滑りをしっかりと取る。
後は仕上げなので、サユリたちが起きて来てからするとしよう。その間に洗い物を済ませておく。
すると茂造がキッチンに顔を出した。足元には眠たそうなサユリ。
「おはようの。今朝もありがとうの」
「おはようカピ」
「おはよう。すぐ出来るよ」
「ほいほい。じゃあ儂は支度をして来るからの」
茂造は洗面所に。サユリはテーブルの上へ。
フライパンを再び火に掛けて炒め直す。温まったら水をしっかりと切った麺を入れる。
具と麺がしっかりと絡む様に混ぜながら炒め、合わせ調味料を入れ、更に炒めて行く。
芳ばしい香りが立って来たら鰹節を入れ、ざっと混ぜる。
皿に盛って、玉ねぎの小口切りをぱらりと振る。
焼うどんの完成である。
今日は汁物は無しで勘弁して貰おう。
「ほう、味噌の芳ばしい匂いがするのう。焼うどんじゃの?」
茂造が嬉しそうに鼻を寄せる。サユリも鼻をひくつかせた。
「うどんと言うものは焼く事も出来るのだカピか」
「そうそう。焼いても美味しいよ。味付けもね、これは普通の味噌使ったけど、赤味噌にしたらまた変わるし」
「それもまた作ると良いカピよ」
「うん。今度ね」
フンと鼻を鳴らすサユリに、壱は微笑んだ。
「ではいただくかの」
「いただくカピ」
「いただきます」
箸でうどんと具を合わせて持ち上げ、口に運ぶ。うどんのコシはなかなか。手で捏ねるしかしていない事を思えば、充分及第点だろう。
問題は味である。うん、砂糖が入っている事もあって、合わせ調味料を入れた後は焦げやすかったのだが、それが良い味わいを出している。
鰹節も良い仕事をしている。我ながら素晴らしい味付けである。
「うんうん、旨いのう。やはり味噌が芳ばしくて良いのう」
茂造が嬉しそうに頷くと、サユリもふんふんと鼻を鳴らす。
「ふむ、焼いたうどんもなかなか良いカピ」
「気に入ってくれた? なら嬉しいな」
壱は嬉しくなって、ふんわりと微笑んだ。
さて、食べ終わったら、また慌ただしい1日が始まる。
この世界に来てからの1番の懸念が晴れたので、心は晴れやかだ。
と言いつつ、実際は普段の忙しさや楽しさに埋もれて、スマートフォンを眼にしなければ思い出す事が少なかったのではあるのだが。
これからは家族を安心させる為にも、出来る限りまめにメッセージを送る事にしよう。
まずは米の苗の水遣りからだ。みんなで世話をしているお陰で、かなり伸びて来た。もうそろそろ田んぼに植えられるだろうか。
そうなると田んぼに水を張らなければ。
「ごちそうさま!」
壱は空の皿を前に、手を合わせた。
10
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる