4 / 190
#04 懐かしい味
しおりを挟む
「まず、ハーブじゃな。この村で作っているから、様々な種類があるぞ。あとは胡椒。他のスパイスはカレーが作れるやつを作ってもらっておる」
「ハーブ……焼いた肉に香りを付けるくらいしか思い付かないんだけど」
「まさにその使い方がメインじゃな。サラダも出来るぞ。オリーブオイルでな。あと、ここは海が近いでな、塩も作っておる。主食は麦じゃな。米は無いんじゃ」
他に様々な食料を説明されたが、それはおいおい記して行く事にするとして。
「じゃあ、日本食は食べられないんだ」
「そうじゃな」
茂造が挙げた調味料の中に、味噌や醤油など、日本食に欠かせない調味料は含まれていなかった。特に味噌が味わえないのは壱にとって痛かった。
「なぁじいちゃん、味噌とか作れそうな豆類って何か無いかな」
「豆、そうじゃな、味噌は何の豆から作られるんじゃ?」
「大豆」
「大豆か。大豆、は無いのう。ひよこ豆、レンズ豆、枝豆……」
「それだ!」
「な、何じゃ?」
茂造が言い終わる前に壱が声を上げたものだから、茂造は驚いて眼を見開いた。
「それだよ枝豆! 枝豆がもっと育ったら大豆になるだろ」
「そうなのか? 先代がここに来た時、枝豆の種を買って帰る時だったとかでのう、ポケットに入っていたんじゃと。せっかくじゃからと植えたものが、今でも継がれとる。種は枝豆を収穫してからもっと待って茶色くなってから出来ているんじゃが、そうか、枝豆の種と大豆は同じものなのじゃな」
「厳密には枝豆用の種と大豆用の種は違うんだけどな、まぁそう思ってくれて良いよ。そっか、じゃあ味噌も醤油も、豆腐なんかも作れるな。よっしゃ、テンション上がって来た!」
壱が嬉しそうに拳を握ると、茂造もうんうんと頷いた。
「豆腐は嬉しいのう。この村は年中暖かくてな。枝豆は毎月種を撒いて、毎月収穫しておる。もちろん種もな。とりあえず、種を少し譲ってもらって、味噌なり豆腐なりを試作してみるかの?」
「味噌からな。それは譲らない」
壱が言うと、茂造はほっほっほっと笑いを上げる。
「好きなものから作るとええ。上手く行ったら大豆の栽培量を増やしてもらったりも出来るじゃろうし、味噌なんかを使った料理をこの食堂でも出せるかも知れん」
「じゃ、まずは麦麹を作らなきゃな。本当は米麹も欲しいとこだけど、米そのものが無いんだから仕方が無いか」
「壱よ、それなのだカピ」
サユリは言うと、右の前足を上げると何やらくるくると空中に何かを描く。するとそこに黒い円状のものが浮かび上がった。
サユリはその黒い円状に上げたままの前足を突っ込み、小さな布の巾着袋を引きずり出した。それを壱に突き出す。
「開けてみるカピ」
壱が言われた通りに袋を開け、その中身を少し掌に出してみる。茶色くて細長い、種子の様なものだった。どこかで見た事のある様な気がするが……
「何だっけ、これ」
「お米の種だカピ。農協とやらからちょこっと失敬してきたカピ」
種もみか。確かテレビで見た事がある。いや、それよりも。
「何しれっと泥棒してんだ!」
壱が突っ込むが、サユリはどこ吹く風。
「夜中にちょいちょいとカピ。少しぐらいならバレないカピよ。ほんの100粒ほどカピ」
「そりゃそうかも知れないけどさ」
「茂造がたまに溜め息吐きながら言っていたカピ。「米が食いたいのう」と。だから土産カピ」
「おおサユリさん、ありがとうなぁ!」
茂造がサユリをまるで女神かの様に見つめる。
しかし100粒で食べられる分はどれだけ収穫出来るのか。そしてこの村の気候に合うのか。田んぼも整備しなければ。
「育て方は我が覚えて来たから安心するカピ。米は夏から秋に掛けて育てるものだから、気候も問題無いと思うカピよ。最終的には育てるのも希望者を募るカピ。村民は好奇心旺盛なのが多いから、大丈夫カピ」
「それは助かるし良いんだけどさ、100粒だと実ってもそんな多くは無いだろ」
「それも大丈夫カピ。種の段階で我の魔法で増やすカピ」
「そんな事出来るの!?」
「出来るカピ。我は魔法で大概の事が出来るカピよ」
サユリが胸を張る様に、フンと鼻息を吐く。それなら食べる分も充分確保出来そうだ。
「白米楽しみじゃなぁ。こっちに来てから食べられなかったからのぅ」
真っ白でふっくら。ほかほかと湯気の上がるご飯を思い出しているのか、茂造は眼を細める。
「なら、我の時間魔法で、とりあえずこの100粒を育ててみるカピか?」
サユリの台詞に、壱と茂造は顔を見合わせて首を傾げた。
「ハーブ……焼いた肉に香りを付けるくらいしか思い付かないんだけど」
「まさにその使い方がメインじゃな。サラダも出来るぞ。オリーブオイルでな。あと、ここは海が近いでな、塩も作っておる。主食は麦じゃな。米は無いんじゃ」
他に様々な食料を説明されたが、それはおいおい記して行く事にするとして。
「じゃあ、日本食は食べられないんだ」
「そうじゃな」
茂造が挙げた調味料の中に、味噌や醤油など、日本食に欠かせない調味料は含まれていなかった。特に味噌が味わえないのは壱にとって痛かった。
「なぁじいちゃん、味噌とか作れそうな豆類って何か無いかな」
「豆、そうじゃな、味噌は何の豆から作られるんじゃ?」
「大豆」
「大豆か。大豆、は無いのう。ひよこ豆、レンズ豆、枝豆……」
「それだ!」
「な、何じゃ?」
茂造が言い終わる前に壱が声を上げたものだから、茂造は驚いて眼を見開いた。
「それだよ枝豆! 枝豆がもっと育ったら大豆になるだろ」
「そうなのか? 先代がここに来た時、枝豆の種を買って帰る時だったとかでのう、ポケットに入っていたんじゃと。せっかくじゃからと植えたものが、今でも継がれとる。種は枝豆を収穫してからもっと待って茶色くなってから出来ているんじゃが、そうか、枝豆の種と大豆は同じものなのじゃな」
「厳密には枝豆用の種と大豆用の種は違うんだけどな、まぁそう思ってくれて良いよ。そっか、じゃあ味噌も醤油も、豆腐なんかも作れるな。よっしゃ、テンション上がって来た!」
壱が嬉しそうに拳を握ると、茂造もうんうんと頷いた。
「豆腐は嬉しいのう。この村は年中暖かくてな。枝豆は毎月種を撒いて、毎月収穫しておる。もちろん種もな。とりあえず、種を少し譲ってもらって、味噌なり豆腐なりを試作してみるかの?」
「味噌からな。それは譲らない」
壱が言うと、茂造はほっほっほっと笑いを上げる。
「好きなものから作るとええ。上手く行ったら大豆の栽培量を増やしてもらったりも出来るじゃろうし、味噌なんかを使った料理をこの食堂でも出せるかも知れん」
「じゃ、まずは麦麹を作らなきゃな。本当は米麹も欲しいとこだけど、米そのものが無いんだから仕方が無いか」
「壱よ、それなのだカピ」
サユリは言うと、右の前足を上げると何やらくるくると空中に何かを描く。するとそこに黒い円状のものが浮かび上がった。
サユリはその黒い円状に上げたままの前足を突っ込み、小さな布の巾着袋を引きずり出した。それを壱に突き出す。
「開けてみるカピ」
壱が言われた通りに袋を開け、その中身を少し掌に出してみる。茶色くて細長い、種子の様なものだった。どこかで見た事のある様な気がするが……
「何だっけ、これ」
「お米の種だカピ。農協とやらからちょこっと失敬してきたカピ」
種もみか。確かテレビで見た事がある。いや、それよりも。
「何しれっと泥棒してんだ!」
壱が突っ込むが、サユリはどこ吹く風。
「夜中にちょいちょいとカピ。少しぐらいならバレないカピよ。ほんの100粒ほどカピ」
「そりゃそうかも知れないけどさ」
「茂造がたまに溜め息吐きながら言っていたカピ。「米が食いたいのう」と。だから土産カピ」
「おおサユリさん、ありがとうなぁ!」
茂造がサユリをまるで女神かの様に見つめる。
しかし100粒で食べられる分はどれだけ収穫出来るのか。そしてこの村の気候に合うのか。田んぼも整備しなければ。
「育て方は我が覚えて来たから安心するカピ。米は夏から秋に掛けて育てるものだから、気候も問題無いと思うカピよ。最終的には育てるのも希望者を募るカピ。村民は好奇心旺盛なのが多いから、大丈夫カピ」
「それは助かるし良いんだけどさ、100粒だと実ってもそんな多くは無いだろ」
「それも大丈夫カピ。種の段階で我の魔法で増やすカピ」
「そんな事出来るの!?」
「出来るカピ。我は魔法で大概の事が出来るカピよ」
サユリが胸を張る様に、フンと鼻息を吐く。それなら食べる分も充分確保出来そうだ。
「白米楽しみじゃなぁ。こっちに来てから食べられなかったからのぅ」
真っ白でふっくら。ほかほかと湯気の上がるご飯を思い出しているのか、茂造は眼を細める。
「なら、我の時間魔法で、とりあえずこの100粒を育ててみるカピか?」
サユリの台詞に、壱と茂造は顔を見合わせて首を傾げた。
27
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる