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#06 魔法でお米を育てましょ。その2

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 茂造がボウルに湯を張り、種もみを入れる。全体がかる様に、手で軽く混ぜる。

「本来なら10分待つところカピが、ここは我の魔法で、と」

 サユリは先ほど種もみを取り出した時の様に、右前足で空中に何かを描く。

「はい、終わったカピ」

「マジか!」

 10分がほんの数秒に短縮されるなんて。凄い。

「じゃあそれを取り出して、今度は水に浸けるカピよ。本来なら1週間ぐらい。これももちろん我の魔法で一瞬なり。今度はボウルに水を入れて来るカピ」

「おう」

 壱は予備で持って来ていたボウルを手にカウンタへ。水を張り、速やかに戻る。湯の中からてのひらで種もみを器用に掬い、1粒残さず水のボウルに移す。

「いいカピね」

 サユリはまた右前足で空中に何かを描く。

「はい、終わりカピ」

 水の中の種もみを見ると、それらは少し膨らみ、白い芽を出していた。

「本当に便利だなその魔法!」

「次は種を土に植えてある程度育てるカピ。土は畑のもので良いカピよ」

「じゃあ畑に行ってもらって来るかの」

「じいちゃん、俺も行こうか。力仕事になるだろ?」

「いや、お前がおるといろいろ聞かれて面倒そうじゃ。すぐ近くじゃから、少し待っておれ」

 言うと茂造は食堂を出る。フロアには壱とサユリふたりっきりになる。沈黙ちんもくも気まずいので、いろいろと聞いてみる事にする。

「便利だな、時間の魔法。普段も使ってるのか?」

「使わないカピ。便利に慣れると人は堕落だらくするカピ。この村の人間には汗水らして働いてもらわないと駄目なのだカピ」

「ふぅん。でもうちの世界に来れる魔法とか、凄いんだな」

「我は優秀な魔法使いカピ。魔法の中でも異世界に行く魔法はかなり高度カピ。我ほどの魔法使いでも魔力を貯めるのに数年かかるカピ。これは先ほども言ったカピね」

「この世界に魔法って概念がいねんは普通なのか?」

「普通ではあるけども、魔法使いは全体数が少ないんだカピ。従って人間の魔法使いはほとんど国のお偉いさんになるのだカピ。国のために尽くす事を強いられるカピ。我、動物で良かったと、今では心の底から思うカピ」

「動物の魔法使いって、サユリ以外にいるのか?」

「いるカピよ。だが、魔法が使える事と動物の本能は別ものカピ。獰猛どうもうな狼とかライオンとか熊とかに現れると大変なり。野生の世界でとどまってくれたら良いカピが、変に知恵がある為に人里に下りて来たりするカピ。その駆除くじょも人間の魔法使いの仕事カピ」

「大変なんだな」

「人里には魔法使いが獣避けの結界を張っておるカピが、それを上回る動物魔法使いがたまに出るカピよ」

「この村はどうなんだ? サユリが結界? 張ったりしてるのか?」

「当然カピ。我はここの村で唯一の魔法使いカピ。村を守る責任があるカピ」

「へぇ、凄いんだな。じゃあ」

「待たせたのう」

 他の話を振ろうとした時に茂造が戻って来て、話は中断された。

「畑の土を貰って来たぞい。表に置いてある」

「じゃ、早速植えるカピ」

 サユリは言うと軽々と床に降り、ドアに向かった。
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