異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈

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#38 美味しいお味噌を作りましょう。その2

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「この木桶にちょうど入る位の中蓋が欲しいんだ。あるかな」

 壱が木桶を見ながら言うと、茂造が考え込む。

「中蓋のう。中蓋はともかくそのサイズは無いかのう」

「なら、材料を用意すれば我が作るカピ」

「え? サユリそんな事も出来るのか?」

「当たり前カピ。我は初代ユミヤの住んだ小屋も作ったカピよ。中蓋を作る事くらい朝飯前あさめしまえカピ」

 サユリが得意げに鼻を鳴らす。

「じゃあ俺材料もらって来る。何か木材とか、そういうの貰って来たら良いんだよな? えーと、あれ、どこ行ったら良いんかな」

 この村に来て今日で3日目。しかし銭湯せんとう以外にまともに外に出ていない事に気付いた。

「そう言えば、村の案内もまともに出来ていなかったのう。今は時間があまり無いからのう、また後にしてもらうとして、うむ、儂が行って来るかの」

 茂造はそう言い立ち上がった。

「いやじいちゃん、さっき大豆ももらって来てもらったのに」

 老体であろう茂造にあまり動いて貰うのは申し訳無い。五体満足に見える茂造だが、不調があってもおかしく無い年齢の筈だ。

「構わんよ。儂も健康の為に足腰動かさんとのう。長時間の立ち仕事は辛いが、歩く事はさほど苦では無いんじゃよ」

 茂造は言うと、颯爽さっそうと階段を降りて行った。

「じいちゃん、ありがとーう!」

 その背中を追い掛ける様に壱は声を上げる。

 では、茂造が戻って来るまでに使った器具の洗い物を済ませておこう。それが終わると重石おもいしの選別だ。確か裏庭にいくつか良さそうな石があった。壱はスケールと紙を持つ。

「サユリ、ちょっと裏庭に降りて来る」

「我も行った方が良いカピか?」

「ううん、大丈夫。待ってて」

 壱は下に降りると、厨房のドアから裏庭に出る。スケールを置く為の椅子も持ち出す。

 重石は味噌の出来上がりの重量の2、3割の重さがいる。スケールの上に紙を置いて、石の重さを測って行く。

 手頃な石を見付け、それに付いている砂を出来る限り払って紙に包み、また椅子の足を拭いて元の位置に戻すと2階に戻り、洗って綺麗にする。

 そのタイミングで茂造が戻って来た。

「ただいまじゃ。壱よ、これで大丈夫かの?」

 茂造が手にしていたのは、厚さ1センチ程の木の板。

「うん、バッチリ。じいちゃんありがとう。じゃあサユリ、木桶の内径ないけいに合わせて、よろしく頼むよ」

「うむカピ」

 サユリの右前足が上がる。すると四角い板があっと言う間に丸く切り取られた。

「これでどうカピ?」

 壱は出来上がった内蓋を取り上げて、見る。見事だ。サイズは入れてみないと判らないが、やすりを掛けた様ななめらかな断面は、さすがとしか言い様が無い。

「うん、これで行けると思う。じゃ、乗せてみよう」

 大豆にかぶせられた落とし布の上に乗せる。するとぴったりだった。

「凄いなサユリ!」

「当然カピ。きちんとサイズも見て作ったカピよ」

 その上に重石を乗せる。壱はやりきったと言う様に大きな息を吐いた。

「これで、1年くらい熟成じゅくせいさせるんだ」

「では、また我の出番カピかな」

 サユリが右前足を振るう。今までよりやや時間を掛けて。

「終わったカピ」

「本当に便利だな! さて、ちゃんと出来てるかな」

 重石と内蓋を上げ、落とし布を外す。そこにあったのは、黴も生えておらず、艶々つやつやと色濃く光る、しっかりとした味噌だった。

「うわぁ……!」

 壱は木桶に鼻を近付け、まず香りを確認する。しっかりと発酵が進み、どことなく甘い、だがぎ慣れたもの。しかし実家の蔵で使う大豆とこうじの違いがはっきりとしていて、それとはまた違う美味しそうな味噌の風味がする。

 ほんの少量をスプーンで掬い、舐める様に口に含む。しっかり味わって、壱はこぶしを握って声を上げた。

「味噌だー! やったー! 出来たー!」

 この村に来て、正確にはこの世界に来て、壱のボルテージが1番上がった瞬間だった。
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