55 / 190
#55 田んぼの作り方(その1、レンガの材料調達。その3)
しおりを挟む
およそ10分後に目的地に着く。途中は林の中や開けたところを通り、着いたところは山の麓で、その地面のあちらこちらには浅い穴があった。
壱はカリルに教わりながら馬車を停め、荷台から全員が降りつつ道具類を下ろす。
「ここに質の良い粘性の土があってのう。村の煉瓦の材料はここで掘っておるんじゃ。では早速掘って貰うかの。よろしく頼むぞい」
茂造の台詞に、みんなが気合を入れた返事をする。サユリは変わらずヒメの背中で寛いでいる。
みんながシャベルを使う中、壱もそれに倣ってシャベルを動かす。足を使って地中に突き入れ、両腕に力を入れて掘って行く。そして出た土を大きなトレイに入れて行った。
「っと!」
「うらぁ!」
「っしゃあ!」
それぞれ声を上げながら、やがて掘り起こした土がトレイを埋めた。
「店長、終わったっす!」
「うんうん、本当に助かったぞい。ありがとうなぁ。では荷台に積んで、村に帰るとするかの。帰ったら風呂じゃぞ。勿論儂持ちじゃぞい」
茂造のその台詞にみんなが沸く。風呂は助かる。すっかり汗だくで、肌も土で汚れている。この状態で飲食店の厨房に立つ事は出来ない。見ればみんなも額や首筋をタオルで拭っていた。
壱はうっかりとタオルを持って来なかったので、行儀が悪いと判っていながら、流れる汗の気持ち悪さに我慢出来ず、シャツの裾をたくし上げて汗を拭いた。どうせすぐに洗濯するのだし。
土の入ったトレイとシャベルを荷台に積み、全員が乗り込む。壱とカリルはまた運転席に。
復習も兼ねて、またカリルに教えて貰いながら馬車を動かす。往きよりは慣れた気がする。とは言え流石にひとりでは不安だが。
来た道を辿り、村に戻る。無事に着きゲートを潜り、そのまま食堂に向かう。
「ほいほい、お疲れじゃったの。じゃあまた済まんが、土を裏庭に運んでくれんかの」
みんなは疲れなど見せず元気に返事をすると、ひとつのトレイをふたり掛かりで運んで行く。
それが終わると、みんなは漸く一息吐いた。
「本当に助かったぞい。ありがとうの。馬車と馬を戻して、風呂に行くかの。各々着替えを準備するなどして使ってくれの。さっきも言ったが儂持ちじゃからの。番台に言ってくれの」
カリルたちは一時解散。壱と茂造も着替えを準備して、まずは馬車を戻し、次に馬。ここで漸くサユリがヒメの背中から降りた。またカッツェに見送られて、銭湯に向かう。
「疲れた~力仕事とか久々だった~」
壱がやや音を上げると、茂造が小さく首を傾げた。
「この前の味噌作りを見ていると、なかなか力の要る作業の様に見えたがの?」
「蔵では大概の作業は機械がやってくれるよ。潰すとか捏ねるとか。あー、味噌も無くなる前に作らなきゃ。今度は麦で麹作りかな」
さて銭湯に着き、壱は漸く汗を流す事が出来た。
少し休んで、夜営業の仕込みが始まる。土の採掘に駆り出されたカリルとサントは、代休か特別手当を選べるとの事で、ふたりは揃って特別手当を希望した。
壱も同じ事を聞かれ、やはり特別手当を望んだ。休んでもやる事が思い付かないし、かと言って特別手当の使い道も今のところ無い。だが以前茂造が街への買出しの事を言っていたので、その時に使えたらと思ったのだ。
今欲しいのは、やはり好みのデザインの服である。村人が用意してくれたものも悪くは無いが、可も無く不可も無いものばかりだったので、少しは自分好みのものが欲しいと思ったのだ。
さて、仕込みを続けていると、漁師が来た。鮮魚の入荷である。
「店長、鰹捕れましたぜ! 1尾しか上がらなくて申し訳無いです!」
そう言って漁師が掲げた1尾の鰹。見事。サイズはこの世界サイズで小振りだが、ぱんぱんに腹が張って、肥えて旨そうだ。
「おお、ありがとうの。充分じゃ。食堂の分と分けて計上してくれの」
「解ってますよ。けどどうすんです? 鰹ってあんま好きな奴いないでしょ」
「ほっほっほ、儂らの世界の食べ方があるんじゃよ」
茂造が笑って言うと、漁師は興味深げに眼を開く。
「へぇ? そりゃあ一体?」
「また食べて貰う機会もあるかもの。その時にはよろしく頼むぞい」
「はい、楽しみにしてますぜ」
そう言い残して漁師が辞すと、茂造はカリルに声を掛ける。
「カリルよ、済まんが手の空いた時にこの鰹を卸してくれんかの。個人用なもんで済まんのじゃが」
「良いっすよ。卸した後はどうしたら良いっすか?」
「粗は、今回は捨ててくれて良いかの。身は冷蔵庫に入れて置いておくれ」
「了解っす」
今度魚の捌き方を教えて貰おう。壱は思った。
壱はカリルに教わりながら馬車を停め、荷台から全員が降りつつ道具類を下ろす。
「ここに質の良い粘性の土があってのう。村の煉瓦の材料はここで掘っておるんじゃ。では早速掘って貰うかの。よろしく頼むぞい」
茂造の台詞に、みんなが気合を入れた返事をする。サユリは変わらずヒメの背中で寛いでいる。
みんながシャベルを使う中、壱もそれに倣ってシャベルを動かす。足を使って地中に突き入れ、両腕に力を入れて掘って行く。そして出た土を大きなトレイに入れて行った。
「っと!」
「うらぁ!」
「っしゃあ!」
それぞれ声を上げながら、やがて掘り起こした土がトレイを埋めた。
「店長、終わったっす!」
「うんうん、本当に助かったぞい。ありがとうなぁ。では荷台に積んで、村に帰るとするかの。帰ったら風呂じゃぞ。勿論儂持ちじゃぞい」
茂造のその台詞にみんなが沸く。風呂は助かる。すっかり汗だくで、肌も土で汚れている。この状態で飲食店の厨房に立つ事は出来ない。見ればみんなも額や首筋をタオルで拭っていた。
壱はうっかりとタオルを持って来なかったので、行儀が悪いと判っていながら、流れる汗の気持ち悪さに我慢出来ず、シャツの裾をたくし上げて汗を拭いた。どうせすぐに洗濯するのだし。
土の入ったトレイとシャベルを荷台に積み、全員が乗り込む。壱とカリルはまた運転席に。
復習も兼ねて、またカリルに教えて貰いながら馬車を動かす。往きよりは慣れた気がする。とは言え流石にひとりでは不安だが。
来た道を辿り、村に戻る。無事に着きゲートを潜り、そのまま食堂に向かう。
「ほいほい、お疲れじゃったの。じゃあまた済まんが、土を裏庭に運んでくれんかの」
みんなは疲れなど見せず元気に返事をすると、ひとつのトレイをふたり掛かりで運んで行く。
それが終わると、みんなは漸く一息吐いた。
「本当に助かったぞい。ありがとうの。馬車と馬を戻して、風呂に行くかの。各々着替えを準備するなどして使ってくれの。さっきも言ったが儂持ちじゃからの。番台に言ってくれの」
カリルたちは一時解散。壱と茂造も着替えを準備して、まずは馬車を戻し、次に馬。ここで漸くサユリがヒメの背中から降りた。またカッツェに見送られて、銭湯に向かう。
「疲れた~力仕事とか久々だった~」
壱がやや音を上げると、茂造が小さく首を傾げた。
「この前の味噌作りを見ていると、なかなか力の要る作業の様に見えたがの?」
「蔵では大概の作業は機械がやってくれるよ。潰すとか捏ねるとか。あー、味噌も無くなる前に作らなきゃ。今度は麦で麹作りかな」
さて銭湯に着き、壱は漸く汗を流す事が出来た。
少し休んで、夜営業の仕込みが始まる。土の採掘に駆り出されたカリルとサントは、代休か特別手当を選べるとの事で、ふたりは揃って特別手当を希望した。
壱も同じ事を聞かれ、やはり特別手当を望んだ。休んでもやる事が思い付かないし、かと言って特別手当の使い道も今のところ無い。だが以前茂造が街への買出しの事を言っていたので、その時に使えたらと思ったのだ。
今欲しいのは、やはり好みのデザインの服である。村人が用意してくれたものも悪くは無いが、可も無く不可も無いものばかりだったので、少しは自分好みのものが欲しいと思ったのだ。
さて、仕込みを続けていると、漁師が来た。鮮魚の入荷である。
「店長、鰹捕れましたぜ! 1尾しか上がらなくて申し訳無いです!」
そう言って漁師が掲げた1尾の鰹。見事。サイズはこの世界サイズで小振りだが、ぱんぱんに腹が張って、肥えて旨そうだ。
「おお、ありがとうの。充分じゃ。食堂の分と分けて計上してくれの」
「解ってますよ。けどどうすんです? 鰹ってあんま好きな奴いないでしょ」
「ほっほっほ、儂らの世界の食べ方があるんじゃよ」
茂造が笑って言うと、漁師は興味深げに眼を開く。
「へぇ? そりゃあ一体?」
「また食べて貰う機会もあるかもの。その時にはよろしく頼むぞい」
「はい、楽しみにしてますぜ」
そう言い残して漁師が辞すと、茂造はカリルに声を掛ける。
「カリルよ、済まんが手の空いた時にこの鰹を卸してくれんかの。個人用なもんで済まんのじゃが」
「良いっすよ。卸した後はどうしたら良いっすか?」
「粗は、今回は捨ててくれて良いかの。身は冷蔵庫に入れて置いておくれ」
「了解っす」
今度魚の捌き方を教えて貰おう。壱は思った。
2
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる