異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。

山いい奈

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4章 偏食お嬢さんと、血液を作るご飯

第2話 こういうのも食うもんでどうにかなるものなのか?

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「ロロア、この色の変化で、病気とかそういうのが判るの?」

 浅葱あさぎが色りとなったプレートを見渡しながら聞くと、ロロアが「そうですカピ」と頷く。

「アントン先生からお電話をいただいた時には、恐らく貧血だろうと言う事でしたカピ。ですが念の為、他のご病気も調べておきましょうと言う事なのでしたカピ。貧血、鉄分の過不足は、この濃い赤に変化した血液で見ているのですカピ。鉄分不足であればあるほど、色が濃くなるのですカピ。これはかなり濃い方なのですカピ」

「へぇ、そうなんだ」

 浅葱は変色した血液たちを興味深げに眺めてしまう。

「クリントさん、貧血のお薬はまだありますカピか?」

「はい、まだ大丈夫です。ですがマリナさんの症状がそんなに酷いとなれば、処方量も増えますので、すぐに足りなくなるかも知れません」

「そうですカピね。ではまた作っておきますカピ。お買い物に行くカロムさんにお預けしますカピね」

「いえいえ、こちらから取りに来ますよ」

「大丈夫なのですカピ。カロムさんは「ついでだから」と軽く引き受けてくれるのですカピ」

「じゃ、じゃあ僕が忙しい時にはお願いします。ありがとうございます」

 クリントは恐縮した様に頭を下げた。

「では病院に戻ります。錬金術師さま、ありがとうございました。アサギさんはどうします?」

「僕も一緒に行きます。お買い物もまだですしね。じゃあロロア、また行って来るね」

「行ってらっしゃいカピ。クリントさん、よろしくお願いしますカピ」

 浅葱とクリントはまた馬にまたがり、病院へと戻る為に馬を走らせた。



「本当にごめんね、ありがとう」

 アントンに貧血の診断を受け、その場で1回分の薬を服用したマリナは随分と楽になった様で、顔にも赤味が戻って来ていた。

 それでも浅葱とカロムは「でも心配だから」と、マリナを家まで送り届ける事にした。

 浅葱、マリナ、カロムと並んで、ゆっくり歩いてマリナの家に向かう。

「構わんさ。それより大分回復したみたいで良かったぜ」

「本当です」

「うん。最近目眩めまいはちょこちょこあったの。でもさっきみたいに酷いのは初めてで吃驚びっくりしちゃった。貧血ってあんな事になるのね」

「僕の世界でも貧血ってあって、気を失って倒れてしまったりする人もいましたよ」

「そうなの? じゃあ私はまだましって事ね」

 そう気軽に言うマリナに、カロムは「いやいやいや」と首を振った。

「失神しなかったのは運が良かっただけで、酷いのは酷いんだからな? 放っておいたらまた同じ目に遭うぜ。それこそ失神も。ちゃんと薬飲めよ」

「解ってるよ。ちゃんとお薬も飲むから心配しないで。もう、本当にカロムはお兄ちゃんみたいだなぁ。同い年なのに」

「あ、やっぱりおふたりは同い年でしたか」

「はい。あ、私にも丁寧語は無しで大丈夫ですよ。歳変わりませんよね?」

「じゃあ僕にも普通に話してやってください」

「はい。じゃあ。あの、家が隣でね、小さい頃から良く一緒に遊んでたの」

「あ、じゃあ幼馴染なんですね」

「おう。俺はひとりっ子なんだが、マリナにマルスってふたつ下の弟がいてな。赤ん坊の頃から3人で良く遊んだもんだ。まぁ狭い村なもんで、その辺に子どもがいたら自然とつるんでたがな」

「懐かしいねぇ」

 マリナは楽しそうに眼を細めた。

「あ、うちもうそこだから、ここまでで良いよ。ありがとう」

「いや、家の前まで送るぜ」

「ううん、大丈夫。お母さんに見付かったら、大事になっちゃう」

「貧血の事、お袋さんに言わないつもりか?」

 カロムが少し眉をしかめると、マリナは焦った様に首を振った。

「ううん、言う言う。そうじゃ無くて、見付かったら家に連れ込まれてやれお茶だやれお菓子だって出されて離してくれなくなるよ」

「ああ~確かにそうかもだな」

 カロムは可笑しそうに「はは」と笑う。浅葱は首を傾げた。

「私のお母さんね、世話好きと言うかお節介と言うか、お持て成し好きって言うか。お客さまが来たらもう大変なの」

「そうなんだ。でも楽しそうだね」

「楽しいと言えば楽しいけど、たまにやり過ぎて恥ずかしくなっちゃって」

 マリナはそう言い苦笑する。

 そんな事を言っていると、そのマリナの家の方から「あら、マリナ! お帰り!」と女性の声がした。

 見ると、女性が笑顔で手を振っていた。

「カロムも一緒かい。お茶でも飲んで行かないかい!?」

「お母さん……」

 女性はマリナの母親だった。溌剌はつらつとした印象だ。そして押しも強そうである。マリナは「あちゃー」と眼を閉じ、カロムは「くく」と小さく笑う。

「おばさん、今日は時間無いから、また今度な!」

 カロムがそう言って手を上げると、マリナの母は「あら、少しだけでも駄目? 駄目なの? そう……残念」とまなじりを下げた。

「じゃあなマリナ、大事にな」

「お大事に。ではまた」

「本当にありがとう。またね!」

 浅葱たちはマリナと別れ、また村の中心地に戻るべく、きびすを返した。

「それにしても、貧血って酷くなるとあんな事になるんだな。俺も気を付けんと」

「カロムは今まで目眩とかは?」

「たまのたまに立ちくらみぐらいだな。基本は健康だからさ」

「じゃあ多分大丈夫だね。ねぇ、マリナさんって、もしかしたら偏食へんしょくとかしてない?」

「ああ、確か結構好き嫌い多かった気がするな。最近は一緒に飯食う事も無いから、今はどうなのか判らんが、確か肉も魚も嫌いだった様な」

「どっちもなのかぁ」

「後、嫌いな野菜も多かったな」

「そうなの? ううん、確かに貧血になりやすい体質って言うのもあると思うけど、そうで無かったら、バランス良く食べていたら、貧血にはならないと思うんだよね」

「そうなのか?」

「うん。鉄分はまぐろの赤身とかレバとか、後お野菜だったらほうれん草とかに多いんだけど、吸収を高めるにはやっぱりビタミンも必要なんだよ」

「ああ、それでバランスな」

「そう。偏食だったら、それがかたよっているかも知れないね」

「なぁアサギ、こういうのも食うもんでどうにかなるものなのか?」

「うん。それとお薬ね。あそこまで酷いと、やっぱり心配だもんね」

「けど偏食なぁ……」

 カロムは困った様に眼を伏せた。

「じゃあ、マリナさんに好きなもの嫌いなものを聞いてみる? もしかしたら大人になった今なら偏食も治ってるかも知れないし、まだあるんだったら聞いてみようよ」

「そうだな。そしたらアサギ、何か料理考えてくれるか?」

「うん、勿論。美味しく食べられて貧血が治まる料理、考えてみるね」

 浅葱はそう言って頷いた。
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