異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。

山いい奈

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幕間4 焼きうどんが食べたい!

淡白な味がソースに凄く合うんだな

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「焼きそばか焼うどんが食べたい……」

 ロロアの研究を手伝っていた浅葱あさぎは、ふとそう呟いた。

「やきそばにやきうどん、それはどんなお料理なのですカピか?」

「中華そばとうどんは、僕の世界の麺類めんるいなんだ。中華そばはかん水がいるけど、うどんだったら作れるだろうから、作ってみようかなぁ。商店で買える小麦粉って、何があるのかなぁ」

 料理に使う小麦粉は、基本的に薄力粉である。この家にあるのも薄力粉だ。うどんは薄力粉でも作れない事は無いが、やはりある程度のコシは欲しい。薄力粉だとコシや粘りの元となるグルテンを出すのに苦労するだろう。

「小麦粉に種類があるのですカピか?」

「うん。いつも使ってる薄力粉と、中力粉に強力粉。麦の種類が違うんだ」

「僕は分からないのですカピ。カロムさんならご存知だと思うのですカピ」

「そうだね。ちょっと聞いて来るね」

 浅葱は切りの良いところで手を止めて、研究室を出た。



 カロムに聞いて、買い物の時に寄ったのは小麦粉の商店。

 軟質小麦で出来た薄力粉は勿論、硬質小麦で作られた強力粉、中間質小麦と軟質小麦が合わさった中力粉が、様々な大きさの袋に入れられて売られていた。

「これこれ。中力粉で作るんだ」

「へぇ。パン作るのに使う中力粉で麺か」

「もちもちして美味しいよ。パスタとはまた違った食感だよ」

「そりゃあ楽しみだ」

 浅葱はうどん3人分、300グラム程の中力粉を購入した。



 さて、では早速うどんを打とう。

 まずは塩水を用意する。水に塩を加えて、泡立て器で良く混ぜて塩を溶かす。

 大きなボウルに中力粉を入れ、そこに塩水を少しずつ注いで行く。そして指を使って全体がそぼろ状になる様に混ぜ合わせる。

 次にねて行く。両のてのひらを使ってまとめながら捏ねる。力を込めて何度も繰り返して行く。

 足踏みをしたいところなのだが、ビニール袋が無いので、手の力だけで少しでもコシが出る様に捏ねて捏ねて捏ねて。

 浅葱とカロム、交代で捏ねて行く。

 やがてつるんとした団子状になる。

 それを布で包み、しばらく寝かせておく。

「この後伸ばして切ったら、うどんっていう麺になるんだ」

「へぇ、本当にシンプルなんだな。中力粉と塩だけか」

「うん。だからいろいろな味付けで食べられるんだ。今日はソースで炒めるけど、スープに入れても良いよ」

「パスタもそんな感じだが、小麦粉の種類が違うもんな」

「そうだね。パスタはデュラム小麦だもんね。うどんはパスタより淡白と言うか。普段作る料理にはパスタの方が合うと思うけどね。お店で買えるし」

「確かにうどんは店では買えないもんな。じゃあちょっとした贅沢ぜいたく品だ」

「本当だ」

 浅葱はくすりと笑みを零す。元の世界では1玉幾らで手軽に食べられたうどんが、この世界では贅沢品だなんて。

 さて、少し寝かし時間は短いが、延ばしに入ろう。

 寝かせたうどん生地に打ち粉をする。こちらは薄力粉を使う。

 団子状のそれを掌で軽く伸ばして平たくしたら、綿棒の出番である。器用に押したり転がしたりしながら、四角く延ばして行く。厚さは3ミリ程度。

 それを蛇腹じゃばら状に折り、端から切って行く。こちらも3ミリ程で。

「パスタよりも太めなんだな」

「うん。茹でたらもう少し太くなるよ」

「へぇ」

 切り終わったら打ち粉を振るい落とし、たっぷりと沸かした湯で茹でて行く。麺同士がくっつかない様にトングで解し、後はぐらぐらと沸く湯の流れに任せる。

 その間に焼うどんの具を準備しておく。今回はシンプルに、玉葱はくし切り、きゃべつはざく切り、人参は短冊切り、豚ばら肉は一口大の薄切りに。

 12分程が経ったところで1本引き上げて食べてみる。コシはちゃんとあるがやや柔らかめに茹で上がっている。丁度良いだろう。

 鍋を傾けて、うどんをざるに上げる。流水に晒し、ぬめりをしっかりと洗い流し、締め、笊を上下に振って水分を切ったら。

 艶々つやつやと輝くうどんの完成である。

「へぇ、この太さだと確かに弾力が楽しめそうだ」

「手だけで捏ねただけだけど、コシもちゃんとあったしね。巧く出来てると思うよ」

「これを炒める訳か」

「うん。麺同士がくっつかない様に、オイルをまぶしておこう」

 オリーブオイルを振り掛け、トングで全体を混ぜておく。

 さて、では焼うどんを作って行こう。

 フライパンにオリーブオイルを引き、塩胡椒で下味を付けた豚ばら肉を炒めて行く。火が通ったら人参を入れてさっと炒め、続けて玉葱ときゃべつを加えて、軽く塩を振って炒めて行く。

 野菜がしんなりして来たらうどん投入。全体を混ぜ合わせながら炒め、ウスターソースと少量のケチャップで味付け。

 香ばしく炒めたら、焼うどんの完成である。

「おお、旨そうだな!」

「焼いたソースの香りが良いなぁ」

 皿に盛って、カロムが作ってくれた玉葱と卵のスープと一緒に食卓へ。

「ロロア呼んで来るな」

 カロムが研究室へ。間も無くロロアと一緒に戻って来た。

「ソースの良い香りがするのですカピ」

 ロロアは嬉しそうに食卓に着く。

「これが焼うどんと言うお料理なのですカピね?」

「そうだよ。ソースは何度か食べて貰ってるけど、うどんは初めてだよね。僕の世界では普段から良く食べられている麺類だよ。口に合うと良いけど」

「じゃあ食うか」

 浅葱たちは神に祈りを捧げ、いただきますをして、フォークを手にした。

 パスタの様に巻くにはうどんが太くて難しいので、適量を刺して口へと運ぶ。

 うどんはもちもちでコシもしっかりと出ていて、滑らかに美味しく仕上がっている。それに絡むソースは香ばしく、更に食欲を誘う。豚ばら肉やしゃきしゃき感が残る野菜の甘みも引き出されて、うどんと一緒に食べると何とも味わい深い。

「うどんの淡白な味がソースに凄く合うんだな。確かにパスタじゃこうは行かんだろうな。これは旨い」

「美味しいですカピ。お肉もお野菜もソースに合っているのですカピ。おうどんもちもちしていて良い食感なのですカピ」

「スープも美味しいよ。とろとろの玉葱とふわふわの卵で」

「お、ありがとうな」

 焼うどんはジャンクと言ってしまえばそうなのだが、久しぶりに食べた日本食は、とても懐かしい味がした。

 以前ソースを作った時にお好み焼きを焼いたが、小麦粉をブイヨンで溶いたので、やはり食べ慣れた味とは少し違ったのだ。

 うどんを打つのはなかなか大変であるのだが、日本食が食べたくなった時にはまた打ちたい。この焼きうどんはそう思える味だった。

 浅葱はすっかり満足し、ふぅと息を吐いた。
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