異世界転移料理人は、錬金術師カピバラとスローライフを送りたい。

山いい奈

文字の大きさ
77 / 92
8章 好きなものを作って、食べて、そして。

第3話 こんな旨い出汁が取れるなんてなぁ!

しおりを挟む
 日本人である浅葱あさぎなので、和食、日本食が食べたくなる事も実は多い。

 例えば出汁だし。これは基本昆布と鰹節かつおぶしで取る場合が多い。もしくは煮干し(いりこ)など。

 昆布は自ら海に潜って取って来るか? と思った事もある。しかしそれはどうも現実的では無さそうだ。

 鰹節に関しては、この世界には燻製豚ベーコンがあるので燻製くんせい設備はあると言う事だ。

 なら作るか? と思うが、流石の浅葱も鰹節の詳しい作り方は覚えていなかった。

 見た事はあり、茹でた後に焙乾ばいかんする、程度の知識ならあるのだが、それ止まりだ。要する日程や時間などはおぼろげだった。

 となると、鰹節作りも断念するしか無い。手探りでやってみて、もし食材を無駄にしてしまう様な事になれば、その方が浅葱は嫌だった。

 なら、この世界、村で使える食材で作れる日本食と言えば。

「うん、まずはあれを作ろうかな。カロム、お買い物僕も一緒に行くよ」

「お、何が欲しいんだ? また旨いもんが食えるのか。楽しみだ」

 カロムは言って口角を上げた。



 その買い物の時、商店の大将に「はぁ!? こんなもんがるのか? はあぁ、異世界のお人はまた変わった事を考えるもんだなぁ」と、呆れ半分感心半分で言われたものだった。

 そうして購入したものは、魚の骨や頭などの、所謂「あら」と呼ばれるものだった。今回は鯛のものを用意した。

 まずは塩を振ってしばらく置く。そうしたら水分とともに臭みが出て来るので、水で洗い流して丁寧ていねいに血合いやうろこを取り、水分を塵紙ちりがみで拭き取る。

 骨の隙間や頭にまだ付いている身をスプーンで綺麗にき出し、残ったあらはオリーブオイルを薄く敷いたフライパンでこんがりと焼いて行く。同時に鍋に湯を沸かしておく。

 香ばしい焦げ目が付いたあらを、沸いた鍋に入れて煮込んで行く。

 掻き出した身は包丁で粘りが出るまでしっかりと叩いておく。出来たらり下ろした生姜しょうがと小麦粉を加えてしっかりと混ぜ合わせる。

 さて鍋を見ると、透明だった湯はほのかに白濁はくだくしている。あらからしっかりと出汁が出ているのだ。灰汁あくが出ているので丁寧に取り除く。

 大きなあらをトングで取り出し、細かいものはざるして行く。それをまた火に掛け、米酒を入れてアルコールを飛ばしたら野菜を入れる。斜め切りにした牛蒡ごぼう、半月切りにした人参、ざく切りにした玉葱たまねぎ

 料理に使う米酒は長粒米ちょうりゅうまいで作ったものだ。短粒米たんりゅうまいの酒を料理に使うのは流石に贅沢ぜいたくである。

 浅葱は元の世界では食堂勤務で、作っていたのは洋食ばかりだったが、家では和食を作る事も当然あった。

 いつぞやか和食の料理人が言っていた。

「料理には料理酒では無く、例えどんな安酒であっても日本酒を使え」

 と。

 なので浅葱は料理用に、安いパック酒を買い置いていた。

 火が通ったら魚のり身を団子にして入れる。それにも火が通ったら下茹でしたほうれん草を加える。

 さっと混ぜたら仕上げである。塩で調味をしたら。

 鯛の潮汁うしおじる、完成だ。

 今夜はそれに炊いた米とでいただく。潮汁は具沢山にしたので、汁物ではあるが充分におかずになると思う。

 潮汁はお代わりがし易い様に鍋ごと食卓へ。米を盛った皿、潮汁用のスープボウルをトレイに乗せて食卓に運んだ。

「お魚の捨てるところで出汁を取ったのですカピか?」

 ロロアは驚きながらそう言って、スープボウルに注がれた潮汁に鼻を寄せる。

「香ばしい香りがするのですカピ」

「俺も吃驚びっくりしたぜ。魚の骨や頭からまだ付いてる身を取って、残った骨とかを焼いてから煮込んで出汁を取ったんだ。買い物の時にも驚いたが、そんな調理法があるんだなぁ」

「魚だけじゃ無く、鶏でも豚でも牛でも、骨からは美味しい出汁が取れるよ。ブイヨンなんかもお野菜の捨てるところから取るでしょ」

「そうだな。へぇ、食材には無駄は無いって事か」

「食材は凄いのですカピ」

「じゃあ食べよう。お口に合うと良いけどなぁ」

 神に感謝を捧げ、手を合わせていただきます。

 浅葱はスープボウルを持ち上げ、早速出汁をすする。あらを焼いてあるので香ばしさは勿論、魚そのものから出ている、甘味を含んだ旨さが広がった。

 この場合、味付けが米酒と塩だけと言うのが功を奏している。魚の味を邪魔しない、むしろ高めているのだ。

 浅葱の世界で潮汁のレシピを見ると、野菜などは殆ど入っていない。しかし具沢山にしたかったので根菜をメインにいろいろ入れた。そこからも良い出汁が出て、魚の出汁を相まって良い風味である。

 甘い玉葱と人参に、しゃきしゃきほっくりとした牛蒡。くったりしつつも歯応えを残したほうれん草も、出汁の味をしっかりと含んで美味しい。

 これは浅葱にとっては懐かしい故郷の味だ。浅葱はつい「はぁ~」と心地の良い溜め息を吐いた。

 見ると、ロロアとカロムも揃って「はぁ~」と息を吐いていた。

「これは旨い! 魚の骨とかからこんな旨い出汁が取れるなんてなぁ!」

「本当ですカピ! とても美味しいのですカピ! 驚きましたのですカピ」

「本当!? 良かったぁ~。嬉しいなぁ! 僕の世界の、僕の国のお料理なんだよ。潮汁って言うんだ。お野菜は入れない事が多いけど、今回は入れてみたんだよ。でもうん、我ながら美味しく出来たと思うなぁ」

 浅葱が言って胸を撫で下ろすと、ロロアもカロムも「ははっ」「ふふ」と笑みを浮かべる。

「アサギたちはいつもこんな旨いもん食ってるのか? いや、勿論この世界の飯も旨いんだが、これはジャンルと言うかさ、そう言うのがそもそも違うからなぁ」

「潮汁は僕たちはそんなそうそう食べないなぁ。海が近い人とか、漁に出る人とかが良く食べているイメージがあるなぁ。あらはお店で買えるから、作ろうと思ったらいつでも作れるんだけどもね」

「ああ、今日も商店で買ったんだしな。そりゃあアサギの世界でも買えるよなぁ」

「アサギさん、このお団子もとても美味しいのですカピ。ふわふわなのですカピ。

「お魚、鯛のお団子だよ」

「骨とか頭からとかから取った身から作った団子な。凄いよな、本当に無駄にしないんだよな」

「鶏とかもそうだけど、骨に近いお肉が美味しいからね」

「そんなもんか。あまり考えた事無かったなぁ。骨付きの肉とかってこの世界と言うか村では売ってないから」

「そうだよねぇ。手羽先とか美味しいんだけどもなぁ」

「てばさき?」

「鶏の腕の部分だよ。骨が多いけどこれが美味しいんだ」

「それは是非食べてみたいですカピ」

「商店にお願いしたら用意してくれるかなぁ。今度聞いてみようかな」

「じゃあまた今度一緒に買い物だな。旨いもんを食えるのは大歓迎だ」

「僕もですカピ!」

 ロロアとカロムが嬉しそうに声を上げるので、浅葱も笑みを浮かべた。

「嬉しいな! 僕も食べたかったから楽しみだよ」

 手羽先で何を作ろうかな。浅葱は早速頭の中でレシピを組み立て始めた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪
ファンタジー
   日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。    そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。  しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。  高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。    確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。  だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。  まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。  ――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。  先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。    そして女性は信じられないことを口にする。  ここはあなたの居た世界ではない、と――  かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。  そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます! ※AI学習禁止・無断転載禁止・無断翻訳禁止・無断朗読禁止

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...