【R18】特攻E小隊

SoftCareer

文字の大きさ
50 / 53
第二章 E小隊・南方作戦

第二十四話 空から来た援軍

しおりを挟む
 西半島大規模奪還作戦当日、正午過ぎ。ダイスロック共和国、シガラキ執行官室。

「それで、戦況は」
「はっ、執行官様。今日の朝方、王国側が砲撃を開始し我が国駐在連隊もこれに応戦。今のところ互角の勝負となっているようです」
「バカモン! 互角とはどういうことだ! 竜族入れて楽勝なんじゃないのか!」
 また、灰皿が飛んで来たが、副官はついよけてしまった。
「よけるな!バカモン。灰皿が勿体なかろう」
と言いざままた灰皿を投げ、今度はちゃんと副官の眉間に命中した。

 シガラキ執行官は焦りを隠せなかった。
 だいたい、ワイズマンは何をしている。大金使って遺跡みたいな監獄を改造して……戦略兵器の秘密は押さえたとは連絡が来たが、その後いっこうに顔を見せん。まさかとは思うが戦略兵器を手に入れて野心が芽生えたか!
 それとも、中央平原の要塞司令のように、ションベン臭いエルフのガキにでもたらし込まれたか……まあ、あいつの場合、それはないか……などと考えていたらデスクの電話が鳴った。

「シガラキだが……えっ、補佐官!? こ、これは失礼しました。シガラキ執行官です。バルタン半島はいまも互角に……えっ、何ですって! 竜族が同盟破棄を申し入れてきた!?
 そんな、それは何かの間違いで……先日も使いに行かせた大尉からは、今回の侵攻戦用に竜族一個小隊を借りられると……なんですって―。大長老が崩御したぁ!? それで喪中だと!
 なんで、それで同盟破棄って……ええっ、三賢のワームクロノスが、大統領府の庭ですごんでいる? いや、なんとかしろと言われましても……」
 …… 
 なんとか補佐官からの電話はごまかしつつ切ったが、ちくしょ―、どうなってるんだ。
 とにかく、すぐにワイズマンと合流しなくては。奴が抑えたはずの戦略兵器でこの状況を打開するしか、生き残る道はなさそうだ。

 ◇◇◇

 もうすぐ陽が暮れる。西半島付け根の戦闘は膠着状態だが、敵の勢いが明らかに落ちている。報告によると、半島内部の兵達の撤退のために時間稼ぎをしているようだ。多分、竜族が離反した事が敵軍にも伝わっていると思われる。まあ、窮鼠猫を噛むとも言うのであまり深追いはせず、撤退させたほうが良いだろう。

 カリストスはそう考えた。
 沙羅ちゃんが試練で出かけたと聞き、コトブキから聞いていた話で、まあどこかの魔族のところだろうとは思っていたが、まさか竜族のところへ行ってたとは。これは大金星だ。
 本来は無断で戦線離脱なんで脱走兵扱いなんだが、差し引いてもおつりが来そうだ。

 この戦闘は明日の朝くらいまでには決着がつくだろう。となると、危急の課題は、ローアイ中尉達だ。途中、支援AIシェルの自爆信号をキャッチしたので嫌な予感しかしないが、まだ敵兵がうろついている中を援軍で突っ込んでいくのはな―……と思っていたら沙羅が駆け寄って来た。

「少佐―。話は大体アイリスさんから聞いた―。早く小隊長たちを手伝いにいかないと!」
「いや、そうはいってもまだ敵地のまっただ中だからね。明日になれば我が軍が入れるとは思うけど……」
「なにいってんのさ―。トロイさんがいるじゃん。連れてってもらおうよ―」
「え、なにそれ。そんなのOKなわけ?」
「あったりまえじゃん。僕とメルヘンはもはや一枚岩。お願い聞いてくれるに決まってるじゃん」
「しかし、それだと竜族が我が軍に肩入れしたことになっちゃう……」
「だいじょぶ、だいじょぶ。人命救助!」
 ……ははは、確かにそうだ。言い訳なんかあとでいくらでも考えられる。沙羅ちゃんに教えられるとは、僕も鈍くなったたものだな。

「わかった、沙羅ちゃん。それじゃ、竜族さんにお願いしてもらえるかな。とはいえあの籠だとそんなには乗れないよね?」
「……ちょっと聞いてくる」
 やれやれ、本当にフットワークのいい子だ。

「少佐―。腰ひもの数珠繋ぎでよければ、十人くらいはくわえていけるってさー」
 はは、やれやれ。あっちは十人いるはずだから、沙羅ちゃんとメルヘンちゃんしか行けないじゃん。でもドラゴンさんが行ってくれれば、明日まで持ちこたえるくらいの支援を送る事は出来そうだな。

 推し兵達が決死隊を名乗り出てくれ、そこから十名の身体を紐に括りつけて、援軍としてトロイさんに運んでもらう事にした。
「沙羅ちゃん、これ持ってって! これがあればあの子も頑張れるから」アイリスが沙羅にメグの刀を渡した。
 そして、ポコが使えず現地の情報がわからないと動きずらいので、フォルテも沙羅に同行させた。

「沙羅ちゃん。明日になれば必ず友軍がたどりつくから、絶対無理はしないでね。まあ君たちの小隊長はちょっとやそっとではやられないとは思うけど、よろしく頼む」
「うん、任せてよ!」

 そう言って沙羅とメルヘンは、トロイに推し兵十名をぶら下げてもらって、空に舞い上がった。

「あの子、すごく大人っぽくなりましたね」
 アイリス中尉の言う通りだ。
「うん、やっぱり試練は、人を成長させるんだねー」

 ◇◇◇

 もうほとんど陽は沈み、あたりがどんどん暗くなってきた。
 ウォレント監獄のガレージには、ローアイ達一行がまだ立てこもっていた。とはいえ、敵兵の姿は周囲には確認できない。監獄内にいた連中はひとまとめにして監禁してあるので気にしなくていいだろう。それにしても脱出用の足がない。

 早くローアイを治療しなくてはいけないのだが、ワイズマンたちが乗って行ったトラック以外は、ガソリンを抜かれていたりしてすべて動かない事が分かった。
 戦況的には、敵が撤退を開始したとみて間違いなさそうなので、明日の昼には友軍が駆けつけてくれるだろう。しかしそれまで、ローアイが持つか……コトブキは少々焦っていた。

 幸い、盛られた薬は大した事なかったもののようで、マイケル達もだんだん動ける状態に戻ってきていたが、まだローアイを背負って行軍できるほどではなさそうだし、歩いても友軍の場所まで優に二~三十Kmはあるだろう。

 カレンは、マナが溜まる度にローアイにヒールを施している。
 もう、男性……少なくともローアイに触るのは問題なさそうだ。
 たまに意識のないローアイの股間をつついているのはあまり感心しないが……。

「マイケルはん。このままここで夜明かしは出来そうでやんすか?」
「うーん、敵も引いてるようですし、僕らは問題ないかと……ただ、中尉はやはり早く治療しないと危険でしょうね」
 ふー、見解は同じか。

 その時、メグが声を上げた。
「コトブキさん! あれ……ドラゴン!?」
「なんですと――――っ」
 コトブキが素っ頓狂な声をあげた。

 確かにあれは……ドラゴンだ。
 なんでこんな時に、こんな所に……
 あの、ワイズマンとかの仕業か……畜生……あんとき吹っ飛ばしておけばよかった。まあ、そんなチャンスはなかったようにも思うが、余りにも悔しい。

 皆が絶望して空を舞うドラゴンを見つめていたら声が聞こえてきた。

「お―い、みんな―、援軍おまたせ―」

「沙羅? 沙羅なの!?」
 その声を聴いて、カレンがガレージから飛び出してくる。
「何よ……馬鹿沙羅。何を今さら。しかもドラゴンと一緒なんて……」
 口では文句を言ってるようだが、カレンが全身で喜んでいるのが判る。

 ドラゴンがすぐそばに着地し、一緒にぶら下がっていた見知った顔の推し兵達が駆け寄ってきた。あ―、これは助かったんでありんすかな―。コトブキは、半ば放心状態だ。

「あ―、カレンばばあ、お待たせ―。あっ、こっちは竜族のお姫様のメルヘンちゃんね」
「沙羅ぁ――――」
 カレンが沙羅に駆け寄って思い切り抱きしめた。
「うわ、ばばあ、痛い、苦しいって……もう逃げも隠れもしないからさ。落ち着いて。で、小隊長たちはどこ?」
「うわ――ん、沙羅ぁ――――」
 カレンが泣き出してしまった。

「あんたはんが沙羅はん?」
「ん、そうだけど、あんた誰? って、いうか何、そのおっぱいお化け!」
「んも―、失礼でありんすな―。あちきはコトブキと申します。あんたはんが、軍を脱走されたとかで、急遽駆り出されたんざんす!」
「あ―、はは、脱走……ごめんなさい……」
 コトブキが現状を沙羅に説明した。

「小隊長―。ごめんよ―。僕がいないばっかりに―。
 小隊長が死んじゃったら、摂政誰がやるのさ―」
 摂政? とりあえず細かいところはいいかと、コトブキは思った。
 とにかく、ローアイの治療が最優先だ。

「沙羅はん、ドラゴンはんで、ローアイはんを友軍まで運べはる?」
「多分問題ないよ。でも、すいか姉ちゃんはどうしよう……」
「さっきのアイリスさんたちのところまで、そんなに時間はかからない。あなたの小隊長さんを届けてその足で、そのすいかさんを追いかけるのはどう?」
「メルヘン! ナイスアドバイス。それで行こう。その逃げた奴らも、半島の付け根通るしかないんだよね。だったらアイリスさんとこからそんなに離れていないんじゃないかな!」

 確かにそうやわ。この子見た目より賢いみたい。そういえば、ツルマンジュはんの直系やったか。あん人も若いころは、かなりやんちゃだったらしいからな―。さもありなん。
 コトブキは勝手に納得した。

「それじゃそれでいきまひょ。でも籠にローアイさん入るかね。お腹に風穴あいとるんで、あまり揺らしたくないんでありんすが……」
「私と小隊長をす巻きにして、ドラゴンさんにくわえてもらって下さい。友軍に着くまでずっとヒールし続けます」
 カレンが進言した。

「あれ―カレンはん、す巻きやなんて……それは不倫の慣れの果てですって……でも、いい考えやわ。マイケルはん、お二人を連理の枝のごとく、す巻きにしなんしゃり」
「は? はぁ―……」
 カレンがローアイに抱き着いた状態で、マイケルが二人をロープです巻きにした。
「あれ―、ばばぁ。小隊長にさわっても大丈夫になったんだ―」
「ああ、それはあとでゆっくりね。いまはそっとしておこ。沙羅ちゃん」メグが沙羅に諭す様に語りかける。

「それじゃ行ってくるね―」
 す巻きにされた、ローアイとカレンを口に咥え、背中の籠に、負傷した推し兵一名と沙羅、メルヘンを乗せ、トロイランスが飛び立っていった。

「あの―コトブキさん」
 メグがコトブキに質問する。

「不倫の慣れの果てってどういう意味ですか?」
「あ―、あれな。大昔のことでありんすが、不倫した男女は、双方死罪だった時代がありんすよ。そん時の処刑方法が、不倫した二人をむしろです巻きにして大川に投げ込んだんでありんす。それで、男女のす巻きは不倫の慣れの果てと」
「あ―、わかりました。エルちゃんという本妻がありながら、カレンさんとエッチしちゃったんで、す巻きで死罪なんですね!」

 うーん、当たらずと言えども遠からず……それならあちきもす巻きでありんすな……ま、いいでありんすか。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

完結(R18 詰んだ。2番目の夫を迎えたら、資金0で放り出されました。

にじくす まさしよ
恋愛
R18。合わないと思われた方はバックお願いします  結婚して3年。「子供はまだいいよね」と、夫と仲睦まじく暮らしていた。  ふたり以上の夫を持つこの国で、「愛する夫だけがいい」と、ふたり目以降の夫を持たなかった主人公。そんなある日、夫から外聞が悪いから新たな夫を迎えるよう説得され、父たちの命もあり、渋々二度目の結婚をすることに。  その3ヶ月後、一番目の夫からいきなり離婚を突きつけられ、着の身着のまま家を出された。  これは、愛する夫から裏切られ、幾ばくかの慰謝料もなく持参金も返してもらえなかった無一文ポジティブ主人公の、自由で気ままな物語。 俯瞰視点あり。 仕返しあり。シリアスはありますがヒロインが切り替えが早く前向きなので、あまり落ち込まないかと。ハッピーエンド。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる

柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった! ※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。

処理中です...