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第一章 ナナとエリカ
第17話 反撃
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「こん中にいるのは間違いなさそうだな」
エリカは、リヒトの気配を追って非常階段を下り、最下階に着いた。
他に人の気配もするが、多少の助っ人など、マナが使えりゃ問題ねえ!
エリカは、戸を蹴り飛ばして部屋の中に入った。
いやがったなリヒト。観念しやがれ……って、あれ? なんであんたがここにいる?
そこには麻美が手足を縛られて、リヒトの足元に転がっていた。
猿ぐつわをかまされていて言葉も出せない様だ。
「はは。驚いた? 君が芳野に借りてたスマホ。あいつのお古だろ? あれ、どこにいても、居場所分かっちゃうんだよね……」
はー。そんな機能あるんだ……。
部下の居場所わかるのは便利だよなー……じゃなくて。
「それで、あたいらの居場所を……」
「そう。僕が電話した時、君がいた場所に、すぐ人をやったんだよ。そしたらこの人……浮浪者見たいにベンチに転がってたんだって!」
くそ……すぐにけーさつ行かした方がよかったか。
「それじゃ、来宮さん。これで終わり。君の負けだよ。どんな手品で鉄砲弾き返したのかはわかんないけど……ま、種は教えてもらわなくてもいいや。もう夜も遅いし、さっさと親子で海にでも沈んでもらおうかな。僕、早くうちに帰って、豚の世話しないといけないんだよ」
リヒトの指示で、ドラム缶が二つ運び込まれた。
何か液状のものが、すでに七分目位入っている。
「さっ。入った入った。ああ、大丈夫。首から上はちゃんと出しておいてあげるから。今日は上弦の月なんだって。海中から眺めたら綺麗だと思うよ」
そして、理人の周りにいた男たちが、麻美をドラム缶に投げ込み、首が沈まないよう、手で押さえている。
どうする。あたいだけなら何の事はないけど、麻美がいたら悪夢も使えねえし、こんなに狭くちゃ魔力もうかつに爆裂させられねえ……。
ズキン!
うおっ! ナナのアラートか……。
(お願いエリカ。あいつら全部ぶちのめして……。
あたしの身体壊れてもいいから……)
いや、壊れちゃ困るのは、あたいなんだが……。
でも……よっしゃ、分かった。
ナナ……しっかり怒って、マナよろしくな!
「全身強化!」
エリカの髪の毛と身体全体が黄金に輝いて、その身体能力と反射速度が、通常の数十倍に跳ね上がり、次の瞬間、麻美を抑えていた男二人が宙を舞って床に叩きつけられた。そして、麻美の身体がドラム缶から飛び出して、理人に投げつけられたかのように飛んで行った。
「ぐはっ!」
麻美がぶつかって、理人も後ろに倒れ込んだ。
「すまんな、かあちゃん。直接打撃だと、ナナの身体壊しそうで……だが、これで詰みだ! リヒト! 観念しやがれ!」
「来るな!」
理人が、気を失っている麻美の頭を抱え込んで、銃を突きつけていた。
「バカヤロー。そんなんで撃ったら死んじまうぞ!」
「何をいまさら。元々殺す気だったんだよ! だけど、こうすると君は動けないよね。来宮ナナ! さあ、お前がここで死ね! そうすりゃ、かあさんの命だけは助けてやるよ!」
「麻美……」すでに引き金は引かれかかっており、エリカも迂闊には動けない。
その時だった。猿ぐつわが緩んでいたのだろう。
麻美が、ポツンと言った。
「ナナ。お前を一人にゃしないよ……あたしも魂になるから……二人であの世に行こ……」
「何血迷った事言ってやがる! このくそばばあ! ほら来宮! そこの奴が持ってる拳銃で自分の頭吹っ飛ばせよ! 早く!」
プワーーーーーーーーン!!
うわっ、何だこれ。突然身体の中で何か膨らみやがった!
こ、こりゃ……マナか……くそ、ナナの作るマナが暴走してやがる。
うわっ、ダメだ! 制御できねえ!!!
ナナ、落ち着け! このままじゃみんな吹っ飛ぶぞーーーー!!!!
ピカーーーーーーーン!!!!!!!
ものすごい閃光が走り、ドーンという大音響とともに部屋全体が大きな地震の様に揺れた。
…………………
…………………
くーーっ! なんてこった。やっちまったぞこりゃ……。
質量欠損クラスじゃねえよな?
エリカが目を開けると……あれ?
ありゃ…………ナナか?
麻美が気を失って床に倒れているが、その上に、ナナが麻美に覆いかぶさる様にしがみついている。
ああ……あいつの魂……この身体から出られたのか……。
それにしても、こりゃ一体。
エリカが周りを見渡すと、まわりの空間そのものが黄金色に輝いている。
これは……マナが空間に満ちてるんだ。
これみんな、ナナの思いが作ったマナかよ……。
それでリヒトは?
横を見ると……あちゃー。あれ、生きてるかな?
手足の形がおかしいぞ……骨折も一、二か所じゃなさそうだが……。
やがて周りのマナが収束していき、部屋の中がだんだん元の状態に戻っていく。
周りの音も聞こえだしたが、どうやら火災警報器とやらが鳴ってるようだ。
そしていよいよマナが消えようとした時、麻美の上に乗っていたナナの魂の姿も、徐々に薄くなっていった。
エリカは、涙をこらえる事が出来ない。
ああ、ナナ。お前……ちゃんと天国行けよな……。
ピーポーピーポー……ファンファンファン……
何やら外が騒がしくなってきたが……。
まあ……もう少し泣いてていいよな?
エリカは、リヒトの気配を追って非常階段を下り、最下階に着いた。
他に人の気配もするが、多少の助っ人など、マナが使えりゃ問題ねえ!
エリカは、戸を蹴り飛ばして部屋の中に入った。
いやがったなリヒト。観念しやがれ……って、あれ? なんであんたがここにいる?
そこには麻美が手足を縛られて、リヒトの足元に転がっていた。
猿ぐつわをかまされていて言葉も出せない様だ。
「はは。驚いた? 君が芳野に借りてたスマホ。あいつのお古だろ? あれ、どこにいても、居場所分かっちゃうんだよね……」
はー。そんな機能あるんだ……。
部下の居場所わかるのは便利だよなー……じゃなくて。
「それで、あたいらの居場所を……」
「そう。僕が電話した時、君がいた場所に、すぐ人をやったんだよ。そしたらこの人……浮浪者見たいにベンチに転がってたんだって!」
くそ……すぐにけーさつ行かした方がよかったか。
「それじゃ、来宮さん。これで終わり。君の負けだよ。どんな手品で鉄砲弾き返したのかはわかんないけど……ま、種は教えてもらわなくてもいいや。もう夜も遅いし、さっさと親子で海にでも沈んでもらおうかな。僕、早くうちに帰って、豚の世話しないといけないんだよ」
リヒトの指示で、ドラム缶が二つ運び込まれた。
何か液状のものが、すでに七分目位入っている。
「さっ。入った入った。ああ、大丈夫。首から上はちゃんと出しておいてあげるから。今日は上弦の月なんだって。海中から眺めたら綺麗だと思うよ」
そして、理人の周りにいた男たちが、麻美をドラム缶に投げ込み、首が沈まないよう、手で押さえている。
どうする。あたいだけなら何の事はないけど、麻美がいたら悪夢も使えねえし、こんなに狭くちゃ魔力もうかつに爆裂させられねえ……。
ズキン!
うおっ! ナナのアラートか……。
(お願いエリカ。あいつら全部ぶちのめして……。
あたしの身体壊れてもいいから……)
いや、壊れちゃ困るのは、あたいなんだが……。
でも……よっしゃ、分かった。
ナナ……しっかり怒って、マナよろしくな!
「全身強化!」
エリカの髪の毛と身体全体が黄金に輝いて、その身体能力と反射速度が、通常の数十倍に跳ね上がり、次の瞬間、麻美を抑えていた男二人が宙を舞って床に叩きつけられた。そして、麻美の身体がドラム缶から飛び出して、理人に投げつけられたかのように飛んで行った。
「ぐはっ!」
麻美がぶつかって、理人も後ろに倒れ込んだ。
「すまんな、かあちゃん。直接打撃だと、ナナの身体壊しそうで……だが、これで詰みだ! リヒト! 観念しやがれ!」
「来るな!」
理人が、気を失っている麻美の頭を抱え込んで、銃を突きつけていた。
「バカヤロー。そんなんで撃ったら死んじまうぞ!」
「何をいまさら。元々殺す気だったんだよ! だけど、こうすると君は動けないよね。来宮ナナ! さあ、お前がここで死ね! そうすりゃ、かあさんの命だけは助けてやるよ!」
「麻美……」すでに引き金は引かれかかっており、エリカも迂闊には動けない。
その時だった。猿ぐつわが緩んでいたのだろう。
麻美が、ポツンと言った。
「ナナ。お前を一人にゃしないよ……あたしも魂になるから……二人であの世に行こ……」
「何血迷った事言ってやがる! このくそばばあ! ほら来宮! そこの奴が持ってる拳銃で自分の頭吹っ飛ばせよ! 早く!」
プワーーーーーーーーン!!
うわっ、何だこれ。突然身体の中で何か膨らみやがった!
こ、こりゃ……マナか……くそ、ナナの作るマナが暴走してやがる。
うわっ、ダメだ! 制御できねえ!!!
ナナ、落ち着け! このままじゃみんな吹っ飛ぶぞーーーー!!!!
ピカーーーーーーーン!!!!!!!
ものすごい閃光が走り、ドーンという大音響とともに部屋全体が大きな地震の様に揺れた。
…………………
…………………
くーーっ! なんてこった。やっちまったぞこりゃ……。
質量欠損クラスじゃねえよな?
エリカが目を開けると……あれ?
ありゃ…………ナナか?
麻美が気を失って床に倒れているが、その上に、ナナが麻美に覆いかぶさる様にしがみついている。
ああ……あいつの魂……この身体から出られたのか……。
それにしても、こりゃ一体。
エリカが周りを見渡すと、まわりの空間そのものが黄金色に輝いている。
これは……マナが空間に満ちてるんだ。
これみんな、ナナの思いが作ったマナかよ……。
それでリヒトは?
横を見ると……あちゃー。あれ、生きてるかな?
手足の形がおかしいぞ……骨折も一、二か所じゃなさそうだが……。
やがて周りのマナが収束していき、部屋の中がだんだん元の状態に戻っていく。
周りの音も聞こえだしたが、どうやら火災警報器とやらが鳴ってるようだ。
そしていよいよマナが消えようとした時、麻美の上に乗っていたナナの魂の姿も、徐々に薄くなっていった。
エリカは、涙をこらえる事が出来ない。
ああ、ナナ。お前……ちゃんと天国行けよな……。
ピーポーピーポー……ファンファンファン……
何やら外が騒がしくなってきたが……。
まあ……もう少し泣いてていいよな?
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