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エンデラ王国と不死族
レプリカーズド
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――――ナカ……ナカ……
「イタカッタ……ですねえ」
集束彩玉をまともに食らったパイルエスカルネの手に持った顔はひしゃげ、胸に大きな穴が開いているが、血は出ていない。そして急速に元の形状へと修復している。
「御館様、あれはもう切ってもよろしいのですか?」
「色々聞きたいことがあるが、やつはそこそこレベルが高い、暴れられても面倒だ、切っていいぞ、天音」
「かしこまりました、御館様」
「ヴィネリア様からの命を受けていたので、ここに来るまで一番早い道のりを選んだのですがあ――失敗でしたか、先にエンデラを滅ぼしてから来ればよかったですかねえ」
パイルエスカルネは、手に持った顔を首の付け根に押し付け、こちらを睨み「エジュラ! こいつらを食い殺せ」と叫んだ。すると、空を旋回していた漆黒のドラゴンが、猛スピードで滑空してきた。近づくにつれ、それがかなりの巨体であることに気づく。それを、天音が飛び上がり、襲い掛かってくるエジュラの羽の付け根に、カウンター気味に刀を走らせた。羽は見事に、ぷつりとちぎれ、羽を刈り取られたエジュラは地面に叩きつけられる他になかった。しかしその様子を見ていたパイルエスカルネは、なにも意に介してないようであった。
「天音、まだだ、そいつは生きている」
エジュラの胴体から黒い肉のようなものが溢れ出し、溢れた肉は幾筋もの蛇のようになり、切り取られた羽の方に向かって、素早く這いずっていく。そして切り取られた羽の断面に蛇の頭が獲物を狩るように突き刺ささる。
「斬撃、爆撃、は耐性ありそうだな」千景がそう言うと、天音は表情を変えず「そうですね」と言って、持っている刀をしまい、違う刀をイベントリから取り出した。パイルエスカルネは、その間もこちらを見ているだけで動く様子はない、向こうもこちらの手の内を探っているようであった。
エジュラが体を起こし、どでかい咆哮をかまして、まだ修復しきってない羽と肉の塊で、力いっぱい薙ぎ払ってきた。それを天音が刀技能『鉄鬼一角』を使い、跳ね上げた。エジュラはさらに咆哮する。
「そちらが貴方様の使徒ですか? お強い、そして美しい、人間にしておくのはおしいくらいだ」それに対して、天音は冷ややかな視線を送る。
周りの建物から兵士達がこちらの様子を伺ってはいるが、ドラゴンであるエジュラの巨体に恐れているのか、外に出てこようとはしなかった。でもそれは、千景達にとって都合がよかった。ここにいる兵士達では、押しつぶされるのが関の山だ。
次の瞬間、パイルエスカルネが両手を広げた。すると、体中から針のようなものが、千景達に向かって襲い掛かってきた。しかしそれは千景達には届かない、防御結界が張ってあり、その針は千景達の目の前で止まる。針の先端がドリルのようになりその防御結界に穴を開けようとしているが、押し返される。
「やはり『レプリカ―ズド』と言ったところでしょうか――」
「さっきから言っている『レプリカ―ズド』とは何だ」
「杖に選ばれてこちらの世界に来た者です、貴方様もそうでしょう? 本来の役目を思い出して下さいませ」
――――杖に選ばれてこちらの世界に来た者――俺だけじゃないのか、くそっ、顕現者とはつまりは他所の世界からこちらの世界に呼ばれて顕現してきたということか、それじゃあ俺達よりも強い存在というものがいくらでも出てくる可能性があるということじゃないか……これ以上こちらの情報をパイルエスカルネに与えるのはまずい、やつをここから逃がすのもまずい、イレギュラーなことがいくらでも起こる。今まで得た情報はもうなに一つ当てにならなくなった。
「時代の変革とは、常に世界の外側から来るものです。その者達の脅威に晒され、その時になって初めて内側に存在していた人々は気づくのです、自分の無力さ、脆弱さを……そうすることにより強く、強く、より強く、神に救いを求めるのです」
パイルエスカルネは自分に酔っている。この世界の住人はこんなのばっかりだな、シンツーのことが千景の頭の中でよぎる。
「一気にいくぞ天音」「かしこまりました、御館様」
千景は刀を地面に突き刺し、忍術『真影捕縛の術』で一人と一匹の動きを止めにかかる。術の効果はパイルエスカルネには、効かなかったが、エジュラの動きは固定された。そして千景は高位忍術『口寄せ炎獄三猿』を発動した。炎にまみれた三猿達が、パイルエスカルネに襲い掛かる。止め猿、絞め猿、殺め猿がそれぞれの役割をこなしたが、心臓を抉ることが出来ずそのまま消えていった。三猿達の攻撃により、体は焼かれ、傷ついてはいるが、すぐに修復された。――あいつの体の中に、心臓がない、そればかりか臓器もなさそうだ、やつの体の中は空っぽ、ただ偽物とか、分身というわけではない
「わたしくしの不死の体にその様なものが、効くはずがないでしょう、ヴィネリア様の使徒に選ばれたこのわたしくしが」
パイルエスカルネがそう言った瞬間、天音が背後から、小太刀で切り上げた。
「イタカッタ……ですねえ」
集束彩玉をまともに食らったパイルエスカルネの手に持った顔はひしゃげ、胸に大きな穴が開いているが、血は出ていない。そして急速に元の形状へと修復している。
「御館様、あれはもう切ってもよろしいのですか?」
「色々聞きたいことがあるが、やつはそこそこレベルが高い、暴れられても面倒だ、切っていいぞ、天音」
「かしこまりました、御館様」
「ヴィネリア様からの命を受けていたので、ここに来るまで一番早い道のりを選んだのですがあ――失敗でしたか、先にエンデラを滅ぼしてから来ればよかったですかねえ」
パイルエスカルネは、手に持った顔を首の付け根に押し付け、こちらを睨み「エジュラ! こいつらを食い殺せ」と叫んだ。すると、空を旋回していた漆黒のドラゴンが、猛スピードで滑空してきた。近づくにつれ、それがかなりの巨体であることに気づく。それを、天音が飛び上がり、襲い掛かってくるエジュラの羽の付け根に、カウンター気味に刀を走らせた。羽は見事に、ぷつりとちぎれ、羽を刈り取られたエジュラは地面に叩きつけられる他になかった。しかしその様子を見ていたパイルエスカルネは、なにも意に介してないようであった。
「天音、まだだ、そいつは生きている」
エジュラの胴体から黒い肉のようなものが溢れ出し、溢れた肉は幾筋もの蛇のようになり、切り取られた羽の方に向かって、素早く這いずっていく。そして切り取られた羽の断面に蛇の頭が獲物を狩るように突き刺ささる。
「斬撃、爆撃、は耐性ありそうだな」千景がそう言うと、天音は表情を変えず「そうですね」と言って、持っている刀をしまい、違う刀をイベントリから取り出した。パイルエスカルネは、その間もこちらを見ているだけで動く様子はない、向こうもこちらの手の内を探っているようであった。
エジュラが体を起こし、どでかい咆哮をかまして、まだ修復しきってない羽と肉の塊で、力いっぱい薙ぎ払ってきた。それを天音が刀技能『鉄鬼一角』を使い、跳ね上げた。エジュラはさらに咆哮する。
「そちらが貴方様の使徒ですか? お強い、そして美しい、人間にしておくのはおしいくらいだ」それに対して、天音は冷ややかな視線を送る。
周りの建物から兵士達がこちらの様子を伺ってはいるが、ドラゴンであるエジュラの巨体に恐れているのか、外に出てこようとはしなかった。でもそれは、千景達にとって都合がよかった。ここにいる兵士達では、押しつぶされるのが関の山だ。
次の瞬間、パイルエスカルネが両手を広げた。すると、体中から針のようなものが、千景達に向かって襲い掛かってきた。しかしそれは千景達には届かない、防御結界が張ってあり、その針は千景達の目の前で止まる。針の先端がドリルのようになりその防御結界に穴を開けようとしているが、押し返される。
「やはり『レプリカ―ズド』と言ったところでしょうか――」
「さっきから言っている『レプリカ―ズド』とは何だ」
「杖に選ばれてこちらの世界に来た者です、貴方様もそうでしょう? 本来の役目を思い出して下さいませ」
――――杖に選ばれてこちらの世界に来た者――俺だけじゃないのか、くそっ、顕現者とはつまりは他所の世界からこちらの世界に呼ばれて顕現してきたということか、それじゃあ俺達よりも強い存在というものがいくらでも出てくる可能性があるということじゃないか……これ以上こちらの情報をパイルエスカルネに与えるのはまずい、やつをここから逃がすのもまずい、イレギュラーなことがいくらでも起こる。今まで得た情報はもうなに一つ当てにならなくなった。
「時代の変革とは、常に世界の外側から来るものです。その者達の脅威に晒され、その時になって初めて内側に存在していた人々は気づくのです、自分の無力さ、脆弱さを……そうすることにより強く、強く、より強く、神に救いを求めるのです」
パイルエスカルネは自分に酔っている。この世界の住人はこんなのばっかりだな、シンツーのことが千景の頭の中でよぎる。
「一気にいくぞ天音」「かしこまりました、御館様」
千景は刀を地面に突き刺し、忍術『真影捕縛の術』で一人と一匹の動きを止めにかかる。術の効果はパイルエスカルネには、効かなかったが、エジュラの動きは固定された。そして千景は高位忍術『口寄せ炎獄三猿』を発動した。炎にまみれた三猿達が、パイルエスカルネに襲い掛かる。止め猿、絞め猿、殺め猿がそれぞれの役割をこなしたが、心臓を抉ることが出来ずそのまま消えていった。三猿達の攻撃により、体は焼かれ、傷ついてはいるが、すぐに修復された。――あいつの体の中に、心臓がない、そればかりか臓器もなさそうだ、やつの体の中は空っぽ、ただ偽物とか、分身というわけではない
「わたしくしの不死の体にその様なものが、効くはずがないでしょう、ヴィネリア様の使徒に選ばれたこのわたしくしが」
パイルエスカルネがそう言った瞬間、天音が背後から、小太刀で切り上げた。
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