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After Story…My Dearest.65
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首を傾げたリヴィが私を見つめている。
私自身も何に対して疑問を抱いたのかが自分でもよく分からなかった。ただ、漠然とした疑問が私の脳裏に走りそれを口にしてしまったのは確かだ。リヴィの表情? 父さんに愛されていたという事実? 思い浮かぶものはたくさんあったけど、そのどれもがしっくりとくるものではなかった。
……暫く沈黙が続いて店内の雑音が鮮明に聞こえ出す。するとリヴィが小さな溜息を吐き、囁くようにそっと口を開いた。
「何故……かしらね。私にも分からないわ。ただ……、私は臆病なだけ。きっと貴女は変わらない。変わらないでいてくれると思うのだけれど、私は今が……、曖昧なままの今が心地良いの」
リヴィはまた、空いた皿をジッと見つめている。……時折見せるどこか寂しげな眼差し。
「ごめん、よく分かんないんだけど」
横から覗き込んだリヴィの視線は動かず、私の質問には答えずにその目だけが静かに微笑んだ。
きっとまたあれだ。自分の中だけで話を進めて一人で勝手に納得してしまう癖。私なんか放っておいて勝手に話を終わらせる悪い癖。それがどうでもいい事なら私も無理に追求もせずにその話を流すのに、リヴィがこうなるのはいつも決まって大事な話の時。そうやって私の中に"気になる木の種"を撒いて自分はさっさと別の場所へと立ち去ってしまうのだ。
私はジッとリヴィを見つめて答えを待った。するとその視線に込められた想いが通じたのか、はたまたただの気紛れか、リヴィが私を一瞥してそっと口を開いた。
「そうね。今は分からないままでいいわ」
"あぁ、やっぱりか"
その返答にまた私はその"種"を心の奥底に埋めて踏み固めようとした。……でもその時、"このままじゃ何も変わらないんじゃない? "って声が私の頭に響いて……、私は我慢するのをやめた。
「良くないっ」
リヴィの目が私に向けられる。そしてその目は次の言葉を待つように薄っすらと開いて私の唇へと向けられた。
「そういう曖昧なのもうやめてよ。私がちゃんと納得するまで帰さないから」
するとリヴィの目が真剣な眼差しに変わっり、私は言葉を詰まらせてしまいそうになる。だけどここで黙ったら意味が無い。そう思って私はリヴィに負けないくらいの眼差しを返すと、グッと拳を握ってから続けた。
「言いたくないなら聞かないっ。だけど曖昧な返事するようなら全部喋ってよ!」
「ゼンブ? 私は貴女の事を思って言っていないだけ。もし……、もしも貴女が本心で望むのなら私は話してもいいわ。本心で望むのなら……ね」
その表情を見て感じた。リヴィは単純に"言いたくない"なんて簡単な感情ではぐらかしていたんじゃない。私に言ってはいけない、知られてはいけないような何かを胸に留めているのだと。
返す言葉が思いつかない。噛んだ下唇からじわりと血の味が広がる。
「帰してもらえるって事でいいかしら?」
リヴィの手が伝票立てへと伸ばされる……。そしてその手が一枚の紙切れに触れた時、私は「待って!」とその細くしなやかな腕を掴んだ。
私自身も何に対して疑問を抱いたのかが自分でもよく分からなかった。ただ、漠然とした疑問が私の脳裏に走りそれを口にしてしまったのは確かだ。リヴィの表情? 父さんに愛されていたという事実? 思い浮かぶものはたくさんあったけど、そのどれもがしっくりとくるものではなかった。
……暫く沈黙が続いて店内の雑音が鮮明に聞こえ出す。するとリヴィが小さな溜息を吐き、囁くようにそっと口を開いた。
「何故……かしらね。私にも分からないわ。ただ……、私は臆病なだけ。きっと貴女は変わらない。変わらないでいてくれると思うのだけれど、私は今が……、曖昧なままの今が心地良いの」
リヴィはまた、空いた皿をジッと見つめている。……時折見せるどこか寂しげな眼差し。
「ごめん、よく分かんないんだけど」
横から覗き込んだリヴィの視線は動かず、私の質問には答えずにその目だけが静かに微笑んだ。
きっとまたあれだ。自分の中だけで話を進めて一人で勝手に納得してしまう癖。私なんか放っておいて勝手に話を終わらせる悪い癖。それがどうでもいい事なら私も無理に追求もせずにその話を流すのに、リヴィがこうなるのはいつも決まって大事な話の時。そうやって私の中に"気になる木の種"を撒いて自分はさっさと別の場所へと立ち去ってしまうのだ。
私はジッとリヴィを見つめて答えを待った。するとその視線に込められた想いが通じたのか、はたまたただの気紛れか、リヴィが私を一瞥してそっと口を開いた。
「そうね。今は分からないままでいいわ」
"あぁ、やっぱりか"
その返答にまた私はその"種"を心の奥底に埋めて踏み固めようとした。……でもその時、"このままじゃ何も変わらないんじゃない? "って声が私の頭に響いて……、私は我慢するのをやめた。
「良くないっ」
リヴィの目が私に向けられる。そしてその目は次の言葉を待つように薄っすらと開いて私の唇へと向けられた。
「そういう曖昧なのもうやめてよ。私がちゃんと納得するまで帰さないから」
するとリヴィの目が真剣な眼差しに変わっり、私は言葉を詰まらせてしまいそうになる。だけどここで黙ったら意味が無い。そう思って私はリヴィに負けないくらいの眼差しを返すと、グッと拳を握ってから続けた。
「言いたくないなら聞かないっ。だけど曖昧な返事するようなら全部喋ってよ!」
「ゼンブ? 私は貴女の事を思って言っていないだけ。もし……、もしも貴女が本心で望むのなら私は話してもいいわ。本心で望むのなら……ね」
その表情を見て感じた。リヴィは単純に"言いたくない"なんて簡単な感情ではぐらかしていたんじゃない。私に言ってはいけない、知られてはいけないような何かを胸に留めているのだと。
返す言葉が思いつかない。噛んだ下唇からじわりと血の味が広がる。
「帰してもらえるって事でいいかしら?」
リヴィの手が伝票立てへと伸ばされる……。そしてその手が一枚の紙切れに触れた時、私は「待って!」とその細くしなやかな腕を掴んだ。
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