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①
しおりを挟む「「ありがとうございました」
慌ただしくも穏やかな春の日々。わたしが勤務するスーパーもこの季節ならではの催事で大変な賑わいと多忙さがやってくる。
お客様の対応、お礼の言葉と深々と礼をすると大抵丁寧なお辞儀だとお言葉を頂戴する。でもそれは当然のことじゃないかと思いつつも笑顔で「そんなことないですよー」と謙遜をする。
ふと自動ドアの向こう側に視線を向ける、街路樹の桜並木は今年も見事な桃色の吹雪を優雅に散らしながら満開に咲き誇っている。そして今年もまたわたしはあの桜を見ない振りをして、日々を忘れた振りをする。
「お先に失礼しますー」
「お疲れ様ー!夜道はまだ人多いから気をつけて帰ってね」
「あはは、心配ありがとうございます。きっとみんな桜にしか興味ないだろうし大丈夫ですよ。」
ひとりひとりに挨拶をしてからバックヤードか
ら出てひとり夜道を歩き出す。
もう随分と夜が深いというのに人の波は昼間と変わらず一向に減りそうになさそうだ。
それはそのはず、いまは桜のライトアップだとかで、桜祭りが連日連夜続いていて、桜の木なのも街頭が巻きつけてあってそれがイルミネーションのように照らされきらきらと街中に光り輝いている。人並みを避けながらそれに背を向けて反対側に向かう。早くたくさんの光から目を背けたくて。
「…おい、ちょっと待てって!さくら!」
背後からわたしを呼ぶ声に思わず立ち止まり振り向く。そこには自転車に乗りながらも息を整えながらパーカーの袖で汗を拭っている見慣れた彼。
「翔ちゃん、どうしたの?なんで走って…?」
「何でとか酷いな、さくらを待ってたんだよ。今日最後までって言ってただろ?
裏でいんのに、気付かねえもん。焦るわ」
口調は怒っているようなのに、困ったように眉を下げて笑っている。思わず表情とのギャップに少し笑えてくる。
「えー。そんなこと気にしなくていいのに」
「…さくらになんかあったら、顔向け出来ないだろうが」
「………馬鹿だなあ。何もないよ。それこそ気にしなくていいのに。何年経ったと思ってんのさ」
「でも、」
「吹っ切れたよ、流石に。」
しばしの無言劇。言葉なくただふたり、桜に背を向けながらゆっくりと歩き出す。
「………」
「………」
翔ちゃんは何か言いたそうだったけれど、わたしに遠慮をしているのだろう。ただ、わたしの後ろを自転車で押しながらついて歩いてくれるだけ。今までもだけど、絶対に横に歩かない。さらさらと流れる風と桜吹雪だけがやけに冷たい空間を更に冷徹なものに変えていく。
こんな時、何を話せばいいのか、あれから月日を重ねた今でもわたしには思いつかないでいる。
「じゃあ俺はここで、風邪引くなよ」
「それはわたしの台詞だよ。ごめんね、夜遅いのに。わざわざありがとう。」
マンションのエントランス。
たわいの話だけをして、あとは帰宅のみ。いつもと同じ慣習。
翔ちゃんは自転車に跨ってわたしの帰宅を見届けてから帰るようで、なかなか動き出そうとはしないようだ。
「あ、あとこれ。貰い物で悪いけど、消化出来ないから良ければ貰って。」
ビニール袋を手渡されて重みのあるそれを中身をよく見ずに受け取って謝礼と別れの挨拶。
「ありがとう。家に帰ってから見るよ。だからもう行って大丈夫だから。またラインするね」
「…おー。じゃあな。」
自転車が見えなくなるのを確認してから、オートロックを解除して部屋に戻る。
つい数週間前までは凍てつく様な冬の寒さだったのに、季節の流れは早いものだ。玄関を開けてもあのひんやりとした冷気が流れてこないのだから。
一息ついて、ダイニングテーブルに貰ったばかりのビニール袋を置き何気なく中身を取り出す。
「………!」
がたん!ばたん!!
手に取ることが出来ず思わず落としてしまい、それはコロコロと床に転がっていく。まるでそれはあの日と同じように、静かに壊れていく様で。
それを見た瞬間から額には冷や汗、ガタガタと震えだす指先。そして機能的に瞳に浮かぶ雫。瞼の裏側にひらひら舞う桜。
忘れたいに、どうしてすぐ溢れ出そうとするの?そればかりが思考の海を泳ぎ、身動きが何一つ取れなくなる。床に落ちたさくらんぼのジュース。浮かび出す桜吹雪。
はぁと大きく息を吐き、目を強く擦って涙でさえ見ないふり。貰ったそれは拾い再度ビニール袋に終いきつく結んで押入れに隠す。本当は二度と見たくなくて捨ててしまいたいけれど、何も知らない翔ちゃんの好意を無碍にしてしまうと憚れたからだ。
一通りの事を終わらせ、ベランダへ風に当たりにいく。カラカラと小気味好い音と共に生暖かい風がふわりと顔に直撃する、けれどもあまり嫌悪感はない。
柵に腕を預け視線を遠くにやると先程までいた、あの桜のイルミネーションが遠くの方で煌々と光溢れている。
「(わたしはもう大丈夫。全部過去に出来たの。)」
言い聞かせ。でなければ桜を眺めることは出来そうになくて。
夜桜のイルミネーションなんて、今も昔もわたしには縁のないことだ。そう思考でまとめ今暫し思い出しかけた記憶を小箱に押し込めきつく封をする。
わたしが桜を敬遠する理由、今も離れない強い罪悪感。
永遠に見いだせない答え。
はあと零れる溜息、今度こそぽろっと流れた雫には見ないふり。そして自問自答。
わたしはどうしたら良かったのだろうか。
3年前のあの日、あの人がいなくなってしまった。
それは今と同じ、晴れた暖かくて桜が美しい春の日のこと。
どこを探しても、二人で過ごしたあの部屋に行っても。もうどこにもいない。わたしの手の届かないところへいってしまった。
たくさんの贈り物と思い出とわたしを置いて、彼は遠くへいってしまったのだった。
信じたくなくて、でもそれは紛れもない真実で。けれども、思考が追い付いてこないまま彼は空へいってしまったようだ。空へと聳え立つ塔を通じて蒼を目指している彼を見つめていると初めて実感した。
嗚呼、もう、本当に彼はいなくなってしまったのだと。
誰にも気づかれないように無意識にわたしは、彼の一部をこっそり白いハンカチに包んであの場所を後にした。
軽くなったあなたに戸惑いを感じながら。
我に返り、直ぐ様に自分のしでかしてしまった行為に強い罪悪感を感じたわたしは、彼を蒼へと連れていくために、もう一度火葬をするかそれとも静かに眠らせてあげるために、桜色の瓶と共に埋葬するか迷いに迷った。
迷うような性格ではなかった筈なのに、なかなか決意は決まらずこんなにも優柔不断な所があったのかと、驚きを隠せなかった。
こんな時、彼がいたら「馬鹿だなあ」って笑ってくれただろうに。
悩んだ挙句に、前に一度彼が大好きだと言っていた桜の木の下に眠らせてあげることにしたのだった。
二人で並んで笑い合った思い出のあの桜の木。
ここならば、桜の花も綺麗に咲いてくれるし、彼もきっと喜んでくれる。
桜は皆に愛されている花。
きっと、桜を見る度に、皆…彼がいた事をずっとずっと忘れないでいてくれる。
そう信じて、誰にも気付かれないように深く深く埋めた。
でもそれが一生抱えることになる罪悪感と悔いしか残らない日々と失敗の始まりだった。
わたしの傷心振りを見かねた彼の親友だった翔ちゃんが、“彼の代わり”と言って献身的に何かと気にかけてくれるようになった。一度は激しく断ったのだけれど、「さくらに何かあれば俺があっちで殴られる」なんて笑いながら変わらず側にいてくれそれが当たり前になるには時間はかからなかった。
桜が散って木々が緑葉になった頃、わたしは全てをなかったことにした。それまでの仕事も辞めて、彼と全く関係のないスーパーでアルバイトを始めた。髪も切ったし洋服もインテリアも全て買い替えてあの頃の残像を全て殺してしまった。
そこでわたしは失敗したことに初めて気付く。
あの桜の木を見ることが出来なくなっていた。
近付くことさえ出来ず、ただただ零れ落ちてきそうな何かを小箱に押し込め記憶の海にへと沈め続けた。
傍にいてさえいれば何時でも逢える、そう信じて桜の元にと願ったのに、近付くことに強い罪悪感と自己嫌悪を抱えるようになった。
夏が過ぎ秋になり、冬が訪れまた桜の季節になる。十夜、百夜と幾度も夜を重ねてもわたしは彼から目を逸し続けた。
それでいいと思った。あんなにも皆は忘れないでと願ったのに、卑怯なわたしは一番に彼を忘れたくて何もなかった振りを続けた。
過去に出来た、そう思っていた。
あれから3年。気付けばすっかり翔ちゃんにも甘え続けた日々。そろそろ潮時かもしれないと、ベランダで蹲りながら涙を拭う。この街から離れない限りわたしはいつまでも幽玄な彼の幻影に囚われ続けてしまうのかもしれない。
だからこそ最後に行っておこう、あの日と同じ日に。そう固く決意をした。
ゆらゆらと薄紅の欠片は風にのってわたしのもとにも舞い落ちる。
それさえも見ないふりをして、スマホを手に取り翔ちゃんにメッセージを送る。決意が冷めないうちに。
すると直ぐ様に電話が掛かってきた。
「もしもし、」
【今のどういう意味だよ】
「…そのままだよ。ずっとごめんね、狡くて」
【だからそれは、】
「今のままじゃきっとわたし、翔ちゃんまで傷付けてしまう。
翔ちゃんは翔ちゃんで、自分の幸せ見つけて」
【さくら、俺は…】
そこで通話終了のボタンを押す。これ以上の言葉を言わせてはならないと思ったから。
ベランダの扉を閉め、薄手のパーカーだけを羽織って家を飛び出す。何故だろうか、彼に呼ばれた気がして。
桜並木。3年前、この道を手を繋ぎながら歩いた小道。「そろそろお花見の季節だね」なんて言うと、彼は「じゃあ駅前の夜桜のイルミネーション見に行こうよ」なんて笑う。
結局は行けなかったけれど、本当に行けたならきっと素敵だったのだろうと夢想するしかいまは術がない。
思い出の中央公園、彼が眠る桜の木。
満開に咲き誇る薄紅の欠片たち。
こんなにも美しいものだったのか、と3年越しに再確認する。埋葬してから逃げ続けたこの場所、勇気をだして木に触れる。すると途端に、何重にも封をしてしまい込んでいた記憶と想い、それに忘れようとした感情が、小箱から溢れ出し桜の花と共に甦って胸を締め付け始める。桜の木を見つめながら、幸せだった頃の残像を甦らせていた。あんなにも目を反らしていたというのに。
笑っていた。わたしも、彼も。
ポタポタと溢れ出した涙を止める術がわたしには見付けれずただ崩れ落ちる。
嗚咽をあげ咳を切ったようにただ、声をあげ続けた。
ずっと。忘れたつもりでいた。
動き出した気でいた。彼をいつまでも引き摺っているということは過去に縛られている気がした。
だからいつかわたしを置いていなくなった彼を逆恨んで嫌いになってしまうんじゃないかって思えて、それが怖くて思い出さないようにしていただけに過ぎなかった。
なんて、わかっている。それは自分を守るために言い聞かせた言い訳だってことを。
嫌いになるはずがない、なれるわけがない。
だからこそ苦しいのだ。
後悔と懺悔がチラチラと桜に混じって降り続く。
がしゃんと遠くの方で大きな音が鳴る。
自転車を放り投げたのだろうか、そのままにして同時に駆けてくる足音も一緒に響きそれが近付いてくる。
気に留めず泣き明かす私の肩を暖かな何かが包みこむ。
「…なんで何時もそうやってひとりで泣くの。
あいつが心配してるよ、だから自分を責め続けないでさくら。
あれは誰のせいでもなかったんだ、仕方なかったんだよ。」
ぐっと肩に力が込められる。きっと翔ちゃんも行き場のない想いに雁字搦められているのだろう。だからこそ言わなければならない、あの時の事を。軽蔑されるかもしれない、怨まれるかもしれないけれど。
「…違う、違うの。わたしのせいなの。
わたしのせいで、ユキくんが…!」
3年前のあの日。
珍しく風邪を拗らせて寝込んでいたわたしのお見舞いにわざわざ来てくれたユキくん。
頭の撫でてくれたり、氷嚢を取り替えたりと甲斐甲斐しく傍にいてくれた。
「治ったらイルミネーション行くんだから、早く良くなれよ」なんて言ってくれたんだっけ。
その時高熱で働かない頭で、うんとかはーいしか返答出来なかったくせに、ユキくんからの「なんかいるほしいものある?買ってくるよ」の言葉ははっきり聞こえて、「じゃあさくらんぼのジュース飲みたいかな。好きなの」なんて何の考え無しに言ってしまった。
傍にいてさえくれればそれだけでいい、とどうして言えなかったのか。
「ちょっと待ってて。ちゃんと寝てろよ」が彼から聞いた最期の言葉だった。
ガチャンと閉まる扉。いま思えばまだ間に合ったのに。
「わたしがあんな我儘言わなければ…ユキくん家から出なかったのに!あんな事故に巻き込まれなかったのに!」
少し眠っていたタイミング、大きな物音に驚いて飛び起きた。すると胸に凄く嫌な予感が過って熱も寝間着もそのままで飛び出し階下へ下ると、そこには見たくもない事実が広がっていた。
横転した車の下からユキくんの腕時計。そして道路に広がるさくらんぼジュース。
「あの時、何もいらないって言えば良かったのに…!わたしのせいで、わたしの…」
あれから大好きだったあのジュースも飲めなくなった。手に取ることも。
桜を見ると約束も後悔も何もかも甦りどうしようもなく苦しくて。
記憶と想いを閉じ込めて過去にして動き出したと思わなければ雁字搦めになって桜に溺れていたかもしれない。
「誰もさくらのせいだなんて思わない…!」
強く肩を掴まれたかと思えば、そのまま翔ちゃんの腕の中に閉じ込められる。
暖かい感触が身体を巻きつける、けれどもそれも彼とは違う暖かさでそれがまた無性に哀しくて涙が溢れ出す。
「そんな悲しいこと言うなよ。誰がさくらのせいに出来る?
あいつだって、そんなこと夢にだって思ってないよ。」
「な…んで翔ちゃんがわかるの…?」
ふふっと笑い声が聞こえたと思えば、すっと身体は引き離され翔ちゃんと対峙する。
そこには赤く目を腫らして強がって笑う彼の姿があった。
「そりゃわかるよ。あいつとは親友だから
あと、どれだけユキがさくらのことが大切だったかも。」
その言葉だけでまたポロポロと桜の花びらのように舞う雫。
見れなくなった桜、飲めなくなったさくらんぼジュース。過去にしたわたし。彼はどんな気持ちでここで眠っていたのだろうか。
そっと手を伸ばし、桜の木に触れる。何故かそこがじんわり暖かくて、彼に触れている気がした。
小箱から溢れた想いは留まることを知らない。
思わず吐き出す叶わない願い。
「逢いたい…逢いたいよ、ユキくん…」
けれど、今のわたしじゃきっと逢えない。
嫌われるかもしれない。
元の、彼が好きだったわたしに戻らなきゃ。だって、ずっと。
「(愛していてほしいから)」
一迅の風が吹き、ぱぁと桜が散る。まるでそれは桜吹雪のようで辺りを薄紅に変えてゆく。
まるで彼がわたしの言葉と願いに反応してくれたかのように桜の花が舞い散る。
ゆらゆらと静かに舞い落ちる薄紅の欠片たちが、全て彼の一部なんだと思えて、涙が止めどなく溢れ思わずまた翔ちゃんの腕を借りて泣き崩れてしまう。
「翔ちゃん、ユキくんはずっとここにいてくれてたのかなぁ…?」
「ずっとさくらのそばにいたよ。
それに今もこうして俺がそばにいるのが気に入らなくてキレてるに違いない」
ふと翔ちゃんの顔を見ると、先程から風と花びらが彼の顔面目掛けて吹いているように見え、頭から何まで花びら塗れになっていた。
それが何だか昔の掛け合いに似ていておかしくて思わず笑う。
「ふふふっ。そういえば前もこんなことあったね」
「全くあいつの嫉妬僻みは死んでも治らんみたいだ」
泣き笑い。そこでもただ、ただ桜は舞うのを止めず、ゆらゆらとわたしを包み込むように降り続いていた。
気付けば季節はまた過ぎて、桜の花も散り青々しく緑の葉が木に芽吹き初夏へと様変わりする。
わたしは街を出ることを辞めて、変わらずあのマンションと通い慣れたスーパーの仕事を続けている。
前と違うのは、毎朝あの木に挨拶をしてから一日を始めるということを始めたこと。
まだ胸の痛みは消えないけれど、いつかきっとそれさえも乗り越えられる。そう思えるようになれたのだ。
「おはよう、ユキくん。今日も行ってくるね」
煌々ときらめく太陽。
きっと来年の桜の咲く頃にまた逢える。
今度こそ逃げずに約束の夜桜を見る、そう強く桜の木に誓って一歩前に踏み出す。
春を待ち遠しく思いながら。
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