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1章 いらない子、アシェ
12 魔物退治
オレは騎士団庁舎の一角にある医務室を目指していた。
怒りが抑えきれない。
紋章を簡単に盗まれるような警備体制だった。
それは騎士団長としてのオレの落ち度だ。
それだけなら謝罪し返しに来たら、二度とこのようなことはするなと殴って済まそうと思っていた。
だが、罪のない子どもを身代わりに立てただけではなく、自ら罰せられたいと頭を下げさせるよう命じた。
「もう戻れない」と泣く声。
天国に持っていくために持参した、大切な本。
痩せ細った身体。擦り切れた衣服。
何度も繕われた靴と鞄。
誰にも頼れなかった。
いや、頼り方なんて分からなかったのかもしれない。
いつ、その命の灯火が消えてもおかしくなかった。
アシェは1人でよく、頑張ってきた。
騎士である以上、殺しはしない。
だが、“苦しみ”を知らずに逃がすつもりもない。
「ルシアン。居るか」
「乱暴だなぁ。居るよ」
勢い良く医務室の扉を開ける。
そこには、眼鏡をかけ、髪を雑に結んだ男が椅子に座っていた。こちらに気づき、面倒くさそうに振り返る。
彼の名はルシアン・ベルネ。
彼はこの騎士団庁舎に所属している、治癒魔法使いだ。治癒魔法の腕は優秀だが、相変わらず書類整理は苦手なようで、医務室は散らかっている。
「伝令文見たよ。
彼を新しくウチに置くことにしたんだね。
彼の境遇を知って反対する者は、ここには居ないだろうね。放っておくなんて、騎士団の名折れだ」
「責任持ってオレが面倒みてやる。
ただ健康面に対してはルシアン、お前のが秀でているだろう。診てやってくれないか」
「言われなくとも。
それに君だけが背負わなくても、皆協力してくれるはずだよ」
「助かる。それから……以前、お前が話していた魔法。試せる場所を確保できた」
「本当かい…!?」
ルシアンは目を輝かせている。
「ああ。――試してもらわないと、俺の気が済まない」
「……なるほど。実は今日彼の話を聞いて、最初から同行したいと願っていたんだ。
同時にこの魔法を試せる機会をもらえるなんて。嬉しいね」
「自分も、いいっすか?」
医務室に入ってきたのは、見慣れた顔、リオットだ。
「彼のことを放っておけないのは自分も同じっす。ヴァルドさん。ご一緒していいですか?」
「……あぁ。着いてこい。
これから向かうのはただの――醜悪な魔物退治だ」
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