復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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さて、いよいよ今日は音楽の授業記念すべき1回目!
あれから何度か考えたの。
どうして前世で起こらなかったことが今回起きたのか。
私はまだ何もしていないし、シャネラ先生が自ら先生になろうとするほど優秀じゃないから、きっと原因は私じゃなくて先生にあると考えたのね。
もしかしたら先生も回帰したのかもしれない。
元々ふしぎなところがあった先生だもの。
きっとそんなことがあってもおかしくないわ。

昔好きだった先生にもう一度会えるなんて。
その方が嬉しいわ。
もしかしたら前世の話もできるのかしら。
あまり辛い話はしたくないから、もっと楽しい話が出来たらいいのだけど。

私がウキウキしていると、マリがイヤリングを触って何か話している。

「殿下!先生が来られたようです!今回は殿下のお母様もご一緒されるそうですよ!」

「わかりました。むかいます。おかあさまといっしょなのね。」

「はい!向かいましょう!」

2人で応接室に向かった。

部屋の前に着くと中からオホホと笑い声がする。
仲良しなのかしら。

扉を開けて中に入るとそこにはとても懐かしい顔があった。

「せんせい…」

「アリス、私の隣にいらっしゃい。」

お母様は私のあまりに小さすぎた声には気づかなかったようで、隣に来るように仰った。

ハッとして隣に立ち挨拶をする。

「ありす・みら・るいすえーるです…」

感動のあまり名前しか言えなかった私を先生は優しく見つめる。目尻のシワを一層深くして微笑むと

「まあ、可愛らしいお姫様。素敵なご挨拶をありがとうございます。シャネラ・ベナレスと申します。」

と優雅に挨拶をしてくださった。

嬉しい笑顔…
だけど先生から感じられるのは可愛らしい幼児をみる大人の視線だけだった。
あぁ、違うのね。
少し期待していただけに心がずんと重くなる。

「アリス?どうしたの?」

「ど、どうもしてないです!だいじょうぶです。
せんせい、よろしくおねがいします。」

もう少しでこぼれ落ちそうな涙を必死にこらえた。

じゃあ何?
何が起こって先生は手紙を書いたの?

「では先生、アリスをよろしくおねがいしますね」

お母様はぺこりと軽くお辞儀をして部屋を出ていった。

部屋に残ったのはシャネラ先生と私とマリの3人。

「な?やっぱりそうだったろ?」
「ほんとね、今回ばかりはあなたの言う通りよ。」
「ワハハ!だから言ったんだ!」

突然部屋にキャラキャラした話し声が聞こえる。

だ、誰?

とキョロキョロしていると

「まあ。もしかして…。すみません、少しだけ2人で話したいのですが、侍女の方は席を外していただけますか?」

とシャネラ先生が言った。

「は、はい。まり、すこしそとでまっていて。よぶまでね。」

「かしこまりました!」

パタリと扉が閉まると、先生が私に言う。

「殿下は妖精の声が聞こえるのですか?」

「よ、ようせい?きこえないわ。」

「嘘よ!聞こえてるくせに!」

「そうだそうだ!なんで嘘つくんだよ!」

「わぁ?!なあに?!」

「やっぱり聞こえていらっしゃるのね。」

「これがようせいのこえなの?」

「ええ、私が殿下に手紙を差し上げたのも妖精の指示があったからなの。」

「えぇ?」

「私も妖精の声はうっすらとだけど聞こえるのです。
これは子供の時に1度高熱を出してから聞こえるようになったわ。
うっすらとだからいつも耳をすませて聞いているのだけど、殿下はよく聞こえておられるみたいですね。」

「はい。あの、ようせいのしじってなんですか?」

「妖精はいつもこっちの方がいいよ、とか簡単な指示をしてくれる時があって、いつもその通りにするといい事があるの。
だから今回もきっと何かわけがあるのだわと思ってその通りにしたのよ。」

「そうなのですね。」

「ええ、こんな可愛らしい殿下に会えたのだもの。今回も信じて良かったわ。」

先生はそう言ってニコニコしている。

ということは、今回のことは先生じゃなくて妖精に原因があったのね。

と先生の周りをぴょんぴょん飛んで追いかけっこを始めた妖精を見る。

「もしかして。殿下は妖精の姿までお見えになるのですか?」

「え?はい。せんせいのまわりでおいかけっこをしています。」

「なんてこと。すごいわ!私は姿を見ることは出来ないの。きっと親和性が高いのね!」

先生は少し興奮しているみたい。

「でもあまり人前でその事を言ってはいけませんよ。
私は昔妖精がいると言ったせいで周りからおかしな子を見る目で見られたことがあります。
嘘はいけないと怒られたこともあるわ。
だから伝えるのは殿下の大切な人だけにしておいて下さいね。」

「はい、わかりました。」

不思議。前世では妖精なんて全く縁がなかったのに。
どうして見えるようになったんだろう。

「せんせい、せんせいはどうしてようせいがみえるのですか?わたしもどうして?」

「分からないわ。でもきっと私のきっかけのひとつは高熱が出たことだと思うの。その後から聞こえるようになったから。殿下もお熱になられませんでしたか?」

「いいえ、そんなにたかいおねつはでたことがありません。」

「あら。じゃあ一体どうしてなのかしら。」

2人でうーんと考えていると、当の妖精が私の目の前に来て胸を張った。
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