復讐姫の王国記

朝木 彩葉

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さて、どういうことでしょうか。

目が覚めた私の目に入ってきたのは、むふふ、くくく、うふふ、と不気味にニヤニヤしている妖精2人。

え、なに?

「…なに?そんなににやけて。」

「ふふーん。覚えてないんだぜ?」

「あら!覚えていないのかしら!」

「なにをいっているの?」

「昨日の夜!あんなに可愛かったのに!覚えていないなんて残念!」

「確かに可愛かったんだぜ!」

むふむふ言っている2人には悪いけどなんの事か全くわからない。

「きのうのよる?きのうはあっていないでしょう?」

「それが会ったんだぜ!」

「寝ぼけてちょっとだけど甘えてきたのが可愛かったわぁ!」

「あの可愛いアリスともっと話しておくんだったぜ!」

な、な、なんてこと!

顔に熱が集まってくるのがわかる。

甘えてた…?

この2人にそんな恥ずかしいこと!するはずがないわ!!

もしかしたら昨日先生とあんなことを話した後だったからかしら。

もうもう!

キャイキャイはしゃぐ2人をよそに私は恥ずかしさでベッドをのたうち回ったのだった。





「それで?話ってなんだぜ?」

「そうね、昨日話したいことがあるって言っていたわ!」

「あ、そうなのね。わたしにはふたりしかほんとうのことをはなせるひとがいないの。それでね、さんにんでみらいのために、さくせんかいぎをしたくて。」

「ふむふむ。いいぜ!かっこいいもんな!作戦会議!」

「そのために、わたしのしらないこと、おしえてほしいの。
たとえばわたしがしんだあと、どうなったかとか。」

「なるほどね、その前に一つだけ伝えておかなければいけないことがあるわ。」

「なあに?」

「私たち、伝えてもいい事といけないことがあるの。」

「頼まれたこと、聞かれたこと以外の事は自発的に伝えられないんだぜ。
たとえばアリスが今尋ねた、死んだ後のことは細かく聞かれれば答えられるけれど、ルーが何しているか、とかカーラはアリスの死後何をしていたか、とかは聞かれていないから答えられないんだぜ!」

「勝手に追加で情報を出せないってことよ。だからよく考えてたくさん質問してね!」

「わかった。じゃあしつもん。わたしがしんだあと、こくみんは へいわにくらせた?まちのようす、おしえてほしい。」

「最初に聞くのがそれなんだぜ…?」

「そうね…、はじめのうちは良かったわ。
みんながそう信じて断罪したのだから。
多少変に思うことがあっても前よりはマシなはずって自分たちを誤魔化していたのかもしれない。
でも半年くらい経ってから、もう自分たちを誤魔化しきれなくなってきたのでしょうね。
毎日街には悲壮な顔をした人達が溢れていたわ。
みんな大っぴらには言わなかったけれど井戸端会議のおば様たちや、仕事帰りの酒場のおじ様たちからはヒソヒソとあなた達への断罪の後悔や、してはいけないことをしてしまったと謝罪の声が止まなかったわ。
それでもあなた達のお墓なんて存在しないから謝る場所すらなくて、みんな王宮に向かって涙を流して頭を下げていたの。」

「どうして?さいしょうはきちんとせいじをおこなわなかったの?」

「宰相までもおかしくなってしまったのよ。どうしてかしらね、急に戦争を始めるとか言って徴兵するし、税率も急に高くなったの。」

「貧民が増えてスラムも出来たんだぜ。治安がものすごく悪くなっていったんだぜ。
見回りの騎士たちももう対処出来ないくらいになってしまったんだぜ。
それに騎士の中にもガラの悪いやつが増えたんだぜ。」

「もうみんな何がしたいのか分からなくなっていたわ。」

そんな…。

正直、私たちが死んだ後でみんなが平和に暮らせていたのなら、ものすっっごく悲しいし悔しいけれど、それはそれで受け入れようと思っていた。

もう王族の時代じゃないのかもって。

けれど、私たちの大切な民たちがそんなに苦しい生活を強いられていたなんて。

それなら私は今世では絶対に王位を譲れない。

民を守ることが王族の役割だから。

幸せで暮らせる人を1人でも多くすることが私達の役割だから。

止まらなくなった涙をぐいっと袖で拭って決意した。

「ありがとう。ふたりとも。
わたし、やっぱりしねないね。
しんじゃだめだ。」

「当たり前なんだぜ!」

「ええ!私たちから見てもあれは酷かったわ。」

それにしても、よくわからない。

宰相は結局何がしたかったのかしら。

長い間宰相として勤めていたのだから、政治についてわからないはずがないのに。

まるで自ら破滅に向かっているみたいじゃない。

それにそんなに好戦的だったかしら。

私の知っている彼は、芯からじっくり腐らせて、気づいた頃にはもう外側まで手遅れにしてしまうようなタイプよ。

間違っても急に戦争を始めて他国を攻めたりしないわ。

「ねえ、その戦争ってどうだったの?勝ったの?」

「いいえ、ボロボロだったわ。
辛うじて国が残ったくらいの。」

「あれは世紀の大敗だったんだぜ。」

ありえないわ。まるで無計画じゃない。

一体どうして?

彼がやるならきっと相手の国に沢山間者を送り込んで内戦でも起こした後、経済を崩壊させたり国力の低下を促してから攻めるはず。

無駄に自国民を殺すなんてこともったいないからするはずないのに。

だめだ、どんどん頭がこんがらがってきた。
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